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録画人間の末路 -

人は記録をしながらじゃないと生きていけない

マニア泣かせのブックレート付き、「巨大生物の島」

2019-03-05 13:19:20 | 特撮・モンスター映画
監督の名前を見ただけでDVDの購入を決定してしまうMr.BIGことバート・I・ゴードンの作品、「巨大生物の島」のBDが先月発売されていたのを今月に入って知ったので慌てて注文、それが届いたので鑑賞した。なんで気が付かなかったかというと、Amazonの「ニューリリース情報」の中に出てこなかったから。以前はAmazonと言えば「お客様へのおすすめ」から調べるのが便利でそれ経由買っていたのだけど、なぜかAmazonはそれを廃止。一応代わりにマイストアにそのニューリリース情報から見ていたんだけど、格段に不便になっている。すでに発売されている「ニューリリース」とまだ出ていない「まもなく発売」を区別してくれないし、リストにはすでに購入・注文済の品も平気で掲載する。さらにどうやら50個までしか記載してくれないので、本来わたしへ勧める優先度が高い商品が平気で漏れることがある。特に最近は「SSSS.GRIDMAN」のBDをまとめて注文したせいでニューリリース情報がアニメ関連だらけになってしまっていて「巨大生物の島」BDが漏れてしまっていたのだ。だから「お客様へのおすすめ」廃止はイヤだったのに。買い逃したら損じゃないか。

まぁそれでも売り切れ前に注文できたから御の字。ちなみにこの「巨大生物の島」のDVDは16年前に一度登場したことがあるだけ。それもAmazonのような通販サイトやDVDショップには一切仕入れられることはなく、メーカーのサイトから直販されるだけの非常にひっそりとした販売方法だったのでマニアでも所有者は多くないだろう。わたしの場合は「宇宙船」の済にその記事が掲載されていたのを見て急いで注文し、購入することができたのだが、しばらくして売り切れ。近年はそのDVDの中古が当時の数倍の値段で出品されているのみだった。今回はBDに媒体を変更したため、新規購入はもちろん当時購入したマニアも安心して買い増し出来る品になっている。もちろん単なるブローアップではなく新規のHDリマスターだ。なお、発売は16年前のDVDと同じ株式会社スティングレイ。なんで当時は直販のみで今回はAmazonでも扱うのかは謎。

巨大生物の島 [Blu-ray]
バート・I・ゴードン
メーカー情報なし


ちなみに単に巨大生物の島、とタイトルをふると「SF/巨大生物の島」という作品もあったりするが、それはレイ・ハリーハウゼンが得意のストップモーションアニメで巨大モンスターを手掛けた、若干牧歌的な匂いもする作品(魚屋で買ってきたカニの中身を食べて残った殻を組み立ててコマ撮りで仕立て上げた巨大ガニが微笑ましい)。そのせいでこちらの作品は「新・巨大生物の島」などと言われたこともあるが全くの別作品。だいたい「SF」の方はネモ船長とノーチラス号が出てきたりしてジュール・ヴェルヌを原案としているのに対し、こちらの原題は「H.G.WELL'S THE FOOD OF THE GODS」、つまりH.G.ウェルズ原作になっていて出発点が違う。と、言っても原作の登場人物の名前と「神々の糧を食したネズミが巨大化した」のところだけを使っていて準拠性は薄く、むしろレイ・ケロッグ監督作品の「人喰いネズミの島」の方が内容が近い。
本作の監督は前述したとおり何度も取り上げているバート・I・ゴードン。実在の生物や人間を合成して巨大怪獣にしたてあげる作品を得意とした監督である。ただ、変に世間の流れに乗って作った「巨人の村(これもH.G.ウェルズの"神々の糧"原作)」がうまくいかなかったのかそれ以降は鳴りを潜め、マッドボンバー(BD発売済)のようなサスペンス作品がポツポツ出るだけになっていた。「巨大生物の島」は「ジョーズ」によって訪れたアニマルパニック映画ブームに便乗して作ることができるようになった作品と思わる。
バート・I・ゴードン作品と言えば決して演出は悪くないものの、なぜかクライマックス~巨大生物もの故にアクションシーンになるわけだが~になるとそれまでの丁寧さが失速し、大雑把演出・平坦な画面構成・荒い合成になってしまっていつも通りだと楽しませてくれるガッカリさせられることが多い印象。クライマックスまでに時間と予算を使いきってやっつけ仕事になってしまっていたのだろうか。しかし、本作「巨大生物の島」はその失速感がなく、一本調子ではあるもの最後までそれなりに緊迫感を保って進めてくれる。一時BIGはアクションシーンが苦手なのでは? と考えたこともあったが本作を見る限りその感じはない。
今までの作品の巨大生物はもっぱら10mクラスの見上げるような怪獣サイズであったのに対し、本作の巨大生物は一番大きな鶏でも3~4m、メインとなるネズミは人間大くらいでそれほど大きくない。そのくらいのサイズだとむしろ演出のセンスがより問われることになるのだが、BIGにはこのくらいの方がちょうどよかったようだ。予算もそこそこ出たのか、合成とミニチュアを組み合わせ、その中を本物のネズミや実物大造形物を使って表現した巨大ネズミ軍団は恐怖を誘う不気味さがあるくらいにはよくできており、当時の技術水準からしたら出色の出来栄えと言っても過言ではない。特にネズミの演出がすばらしく、あまりチョロチョロせず、みな同じ方向に歩き、同じように主人公たちが立てこもる家によじ登ったり入ろうとしたりする。勝手な明後日の方向へ走ったりするネズミはほとんど見られない。まるで飼いならしたようで、どうやってネズミにある程度規則的な行動ととらせたのかその技法が全くわからない。同じく本物のネズミを使って撮影しようとした大映の「大群獣ネズラ」では逃げ出したり死んで悪臭やダニが発生し、近所の多大な迷惑をかけたので中止(代わりに作ったのがあの「大怪獣ガメラ」)したのとはえらい違いだ。「巨大生物の島」では医療用の、実験用ラットを使ったとのことで大人しい性質だったことが功を奏したのだろう。なお、BDに掲載されたブックレットによるとBIG本人の談で「ネズミへの銃撃は血糊を含んだパンを特殊な銃で撃ちこむことで表現しており、それによって死んだネズミはいない、撮影後はペットショップに引き渡した」とのこと。映画を見る限りどう見ても銃弾を受けるたびに血を噴き出して肉片をまき散らしているようにしか見えないので、見事な表現方法だと思う。ただ、その銃撃によってネズミは苦しそうな表情で後ろにひっくり返っているし、爆発で吹き飛ばされたり柵に流した電流や水に溺れさせられて明らかに動かなくなったネズミも多々見受けられるから、どうみても少なからぬネズミが死んでいるのでは? と思われるが・・・。ひょっとしたら「死んだネズミはいない」というのは銃撃の直撃限定なのかも知れない。

そう、このブックレットが本BD最大の問題。詳しすぎるのである。前のDVDにもブックレットはついていたが、BD版はそれをベースにのちに入手した情報を加えて大幅に加筆されており、その視点は極めてマニアックで痒いところの奥にまで手が届いてしまっていて、わたしが書きたい疑問に思うことのほとんどが書かれてしまっている。わたしはこうしたブログの記事を書くのは映画や作品を紹介したいというより自分の解析や他作品への影響、類似性などの研究結果を書きたくてやっているのだが、「巨大生物の島」BDのブックレットはそれを先回りして全部潰してくれているので、書くことがほとんどない。「SF/巨大生物の島」はもちろん、名前だけの続編「ゴッドフード」のことさえ記してある(ちなみにDVD化はされておらず、某レンタルビデオ店が閉店する際の在庫処分で出ていたのを確保してある)し、その上映の背景さえ書かれている充実ぶりで本作の資料としてはもうこれで十分、後は何を書いても前述のようなブックレット情報の話への追記程度にしかならない、二重の意味でマニア泣かせの内容になってしまっている。ただし、DVDには付属していた公開当時のパンフレット縮小復刻盤は特典映像にも付属していない。DVDから買い増す人への配慮だろうか。

「巨大生物の島」によって見事復活を遂げた、かに思われたBIGだが続く「巨大蟻の帝国」で失速、というより墜落。それ以降活躍することはなかった。しかし、それでも「巨大生物の島」は氏の集大成。本物の生物の出す迫力は一見の価値あり、と思う。

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