ラインナップもう一つは計算尽く？ iTunesStoreから映画レンタル開始

今日は後でもう一本記事(ただしネタ)を書く予定でいますが、その前にこちらのことを書いておきましょう。

先日登場した2代目APPLE TVに関していろいろ話が出ていますが、本命というべき映画レンタルがすでに開始されている、という記事がAscii.jpに載っていましたので、そこを見てみましょう。

日本始まったな……iTunes Storeで映画レンタル！

「Apple TV」、日本の茶の間にもたらすインパクト


別に今日から始まったサービスでもないのにASCIIとITmediaがいっぺんに書いているところを見ると、APPLEが意図的に「情報を流してくれ」と要求したと考えるほうが自然でしょう。APPLE TVはHD動画～と、言っても1280x720ですが～を再生するためには必須ですが、SD程度いいのならばiPod系でもOKなのは便利です。共用できるのはAPPLE製品のいいところでしょう。
で、iTunesStoreの映画コーナー、覗いてみました。結果は・・・うーん、イマイチないしそれ以下の品揃えといわざるを得ません。ゲテモノ映画好きの魂を揺さぶるものはほとんどありませんし(皆無ではない)、特撮も、大映(現在は角川に吸収)系の特撮はありますが、ガメラも大魔神も散々スカパー！ＨＤで録画しています。画質で言えばAPPLE TV用動画もスカパー！HD並みかそれ以下という感じですから、比較だけならともかくわざわざお金を払ってまでなぁ・・・と思います。
一般映画の視点からみても、あまり良い品揃えとは言えないのではないでしょうか。例えばASCIIの記事にもある「ドラマ」の中の例として挙げられている映画「父親たちの星条旗」。これ、日本ではぜんぜんヒットしていません。日本でヒットしたのはこのアナザーバージョンで、日本側の視点から描いた「硫黄島からの手紙」の方です。むしろ「硫黄島～」を見る邪魔になるからと「～星条旗」を無視した人すら多かったのではないでしょうか。ところが、いくら探しても「硫黄島～」の方は登録されていないのです。いずれはくるのでしょうし、アメリカ側から見れば「～星条旗」の方が表扱いでしょうからこれでいいんでしょうけど、どうにも納得がいきません。他の品揃えも、そこそこ有名な名は連なっていますが、こだわりのマニアが飛びつきたくなるような分野が充実しているとはお世辞にもいえません。

ただ、これはわざとかも知れません。マニアのコレクション魂を満足させるような品揃えを最初からすると、そっちばかりに目が行く＆それで満足してしまい、レンタルDVDやセルDVDに変わるものではなく、単なるコレクション向けとしてしか見られなくなってしまう危険性があるからです。だからこそマニア心をはずし、聞いたことはある有名映画を中心にしたという可能性はあります。「硫黄島～」をはずしたのも、両方同時に置くと「～星条旗」が見向きもされない危険性がありますから、まず「～星条旗」にお金を払ってもらってから、後で「硫黄島～」をリリースして両方買ってもらおうという魂胆でしょう。さすがにAPPLEはしたたかです。

で、このAPPLE TVは日本で普及するでしょうか？　なかなか難しいところです。日本ではテレビの録画規制のために映像ソフトに対する情熱を多くの人が失ってしまい、市場は冷え込んでいます。映像ソフト会社は古い名作のBD化を一時はともかく現在ではあまりやりたがりませんし、新作映画のBD化はするもののその多くがDVDとの抱き合わせというお寒い現状(ただし、いずれも深夜系アニメソフトを除く)。いまや映像ソフトに対して熱心な人々はBonDriverで動作するチューナー製品を利用している人しかいないのではないか、と思えるほどです。スカパーのＳＤ！からＨＤ！への移行も進んでいません。ただ、便利なら市場に戻ってくる潜在的市場は大きいはずです。APPLE TVがその受け皿となるのならば、音楽と同じく足の引っ張り合いになった日本の会社を尻目に市場を独占できるでしょう、HDの方ならDVDよりは一枚画質は上になるでしょうし。ただ、日本にはもはやその種火すら残っていない可能性も大いにありますし、少なくとも現状の品揃えでは種火を燃焼させる酸素の役目は果たしません。マニアにも応えられるラインナップの充実を早く行う、PCの動画サイトで行われているような期間限定の配信無料ソフトを充実させ、顧客を確保するなどの工夫をしない限り、音楽ほどたやすくは成功しないでしょう。APPLE TVも安くて共用できるのはすばらしいんですがHDMIしかなくてやや使いにくいですし、ゲーム機やレコーダーを差し置いて限られたHDMI端子を占有できるようになるかはまだまだ未知数、それも成功の可能性の低そうな未知数です。他の市場から客を奪うのではなく、映像ソフトの顧客を開拓しなければならないのですから。

現状の品揃えで満足できるのならば、安いAPPLE TVは買いです。PCモニタのHDMIなら余っている人は多そうですし、保存の問題も、われわれなら最近やたら選択肢の増えたHDMIキャプを使えばなんとかなりそうですしね。だからこそ、放っておかれているSK-MHD264の問題解決は急務なのですが・・・。さすがにそろそろSKnetに苦情出そうかな？