私的海潮音 英米詩訳選

数年ぶりにブログを再開いたします。主に英詩翻訳、ときどき雑感など。

頌歌 ―不死なる幼きころに 第九連④

2014-02-24 14:31:14 | 英詩・訳の途中経過
Ode:
Intimations of Immortality from Recollections of Early Childhood

William Wordsworth

IX [ll.156-168]

Of the eternal Silence: truths that wake,
To perish never;
Which neither listlessness, nor mad endeavour,
Nor Man nor Boy,
NOr all that is at enmity with joy,
Can utterly abolish or destry!
Hence in a season of calm weather
Though inland far we be,
Our Souls have sight of that immortal sea
Which brought us hither,
Can in a moment travel thither,
And see the Children sport upon the shore,
And hear the mighty waters rolling evermore.


頌歌 ―不死なる幼きころに

ウィリアム・ワーズワース

IX[156-168行目]

うちの刹那と思わせる そしてめざめるもろもろの まことは
けしておとろえず
ひとも若子も
よろこびにそむくあらゆることどもも
すべて壊せはしないから
あらぶらぬ 凪の日時に
あまさかる 陸の深くにあろうとも
吾らのうちのたましいは 吾らを此方へつれてきた
不死なる海を見出して
刹那のうちに彼方へと かよい
岸辺でたわむれる子らのすがたを目にうつし
力あふれる潮の音の尽きぬうねりを耳にする



 ※ようやくに九連目が終わりました。159行目「日時」は「ヒトキ」、160行目「陸」は「クガ」、161行目「此方」は「コナタ」とお読みください。
  この部分のイメージはあまりにも美しすぎて、満足できるようにはどうしても訳せませんでした。

 ところで、この部分を読んでいまして、ふとイェイツのイニスフリーを思い出しました。こちらが外へと開かれた海の音を聴くのに対して、あちらが聴いているのは「陸の深く」に秘められた湖の音という点は正反対に近い気もしますが、心のもっとも深い部分で波打つ水の音に耳を澄ましている点は、やはり似ている気がします。
 ついでにもうひとつ、わが愛のトールキン作品の設定も無性に思い出しました。あの世界のエルフに植えつけられた海への思慕はほとんど呪いのようです。トールキンはどこの生まれだったのでしょう? 意外と内陸な気もします。