私的海潮音 英米詩訳選

数年ぶりにブログを再開いたします。主に英詩翻訳、ときどき雑感など。

頌歌 ―不死なる幼きころに 第九連②

2014-01-30 12:06:58 | 英詩・訳の途中経過
Ode:
Intimations of Immortality from Recollections of Early Childhood

William Wordsworth

IX [ll.137-148]

Delight and liberty, the simple creed
Of Childhood, whether busy or at rest,
With new-fledged hope still fluttering in his breast:―
Not for these I raise
The song of thanks and praise;
But for those obstinate questionings
Of sense and outward things,
Falling from us, vanishings;
Blank misgivings of a Creature
Moving about in worlds not realised,
High instincts before which our mortal Nature
Did tremble like a guilty Things surprised:


頌歌 ―不死なる幼きころに

ウィリアム・ワーズワース

IX[137-148行目]

よろこばしさと気ままさよ 幼きころのかざりない
たったひとつの義しさよ 急くときも休むときにも
そのむねで あらたに羽の生えそえめるのぞみとともに舞うものよ―
けれどそれらをありがたく
たたえる唄をつくるより
ただそのころのたゆみない物問いこそを唄いたい
幼ごころは問いもとむ 触れては離り消えてゆく 
うわべのことをたゆまずに
そのまっさらな慄きよ 覚りきれないうつし世を
さまようものの心根よ
生まれついての高らかなさがと向き合わされるとき 不死ならぬ
吾らはふいに咎をえた何かのようにうちふるう



 ※久々の続きです。138行目「義しさ」は「タダしさ」、「急く」は「セく」、143行目「離り」は「サカり」とお読みください。そして142行目「物問い」は、正直あまり気に入らない訳です。「探求」とか「追求」にあたる美しい和語があればよいのですが…

頌歌 ―不死なる幼きころに 第九連①

2014-01-16 16:41:32 | 英詩・訳の途中経過
Ode:
Intimations of Immortality from Recollections of Early Childhood

William Wordsworth

IX [ll.130-136]


O joy! that in our embers
Is something that doth live,
That nature yet remembers
What was so fugitive!
The thought of our past years in me doth breed
Perpetual benediction: not indeed
For that which is most worthy to be blest―


頌歌 ―不死なる幼きころに

ウィリアム・ワーズワース

IX[130-136行目]

よろこびよ 吾らの名残りの焔のうちで
活けるよろこび在ればこそ
この世は移ろうものごとを
未だ忘れずとどめおく
過ぎた年日を思いいるこころが吾のみのうちに
生せる尽きせぬ幸よりも
ことほがれるにあたいする 何かがあろうはずもなく―



 ※七行のみ何とか訳せました。だんだん自転車操業になってきました……。130行目「焔」は「ヒ」、135行目「生せる」は「ナセル」とお読みください。


頌歌 ―不死なる幼きころに 第八連②

2014-01-08 13:27:33 | 英詩・訳の途中経過
Ode:
Intimations of Immortality from Recollections of Early Childhood

William Wordsworth

VII [ll.119-129]

Thou, over whom thy Immortality
Broods like the Day, a Master o'er a Slave,
A presence which is not to be put by;
Why with such earnest pains dost thou provoke
The Years to bring the inevitable yoke;
Thus blindly with thy blessedness at strife?
Full soon the Soul shall have her earthly freight,
And custom lie upon thee with a weight,
Heavy as frost, and deep almost as life!



頌歌 ―不死なる幼きころに

ウィリアム・ワーズワース

VII[119-129行目]

ああ汝よ 汝がうえを 不死なるさがが
日のように 奴のうえの主のように
斥けられることのない御稜威のようにおおうのに
なぜそれほどにきまじめな 痛みとともに
年をして さけえぬくびきをもたらさせ
やみくもに おのれの幸と揉めるのか
遠からず 汝がたましいは うつし世の生の重荷に充たされて
ならいが重く横たわる
霜さながらにずっしりと 生さながらに深々と




 ※あけましておめでとうございます。年末年始で少々ばたばたしておりましたが、ようやく訳の続きができました。
  119行目「ああ汝よ」は「ああなれよ」、「汝がうえを」は「ながうえを」、121行目「御稜威」は「みいつ」とお読みください。
  このあたりの厭世観はテニスンのThe Lotos-Eatersを思わせます。思わせるというか、言葉の選び方その他が三連目とたいへんよく似ている印象。↓

  The Lotos-Eaters Alfred Tennyson

[ll.57-60]



Why are we weigh'd upon with heaviness.
And utterly consumed with sharp distress,
While all things else have rest from weariness?
All things have rest: why should we toil alone,



蓮を喰うものたち   アルフレッド・テニスン

[57-60行目]

  Ⅲ

なにゆえわれらはひしがれて
なべてするどいくるしみに 身を砕かれねばならない
ものみなすべてうれいから まぬかれ
安んじるときに

  

 
「蓮を喰うものたち」の題名で2011年の五月ごろに訳しておりますので、よろしければ合わせてご覧ください。一回につき2~3行という極度のぶつ切りの訳ですが…