手話通訳者のブログ

田舎の登録手話通訳者のブログです。

会社/手話通訳/たいし株

2016-03-29 04:58:07 | 手話
以前、会社での手話通訳で「最悪」の実例を紹介させていただいた。
当然ながら、そんなひどい状況ばかりではなく、うまくいったケースもある。
今回はたいし株が上がった実例。

S社の受付で「手話通訳に来ました」と名乗ると、会議室に通された。
ろう者のCさん、その上司、社長の3人が既に着席している。
固く緊張した、嫌な雰囲気。

しかし、話し合いが始まると、だんだんと緊張がとけてきて、和やかな雰囲気になってきた。
あー、よかった・・・

無事終了。
社長が声をかけてきた。

「あんたの技術は大したもんやな」
えっ? 社長、手話できるんですか?
「いや、俺はど素人や。でも、見ていれば判る。実は、手話通訳者にきてもらうん、あんたが3人目や」
3人目・・・今日が3回目の話し合いだったんですか?
「そう。前の2人は・・・・・俺が話し始めても、手は動かさない。ただじっと、聞いている。俺が話し終わると、手話でCさんに伝えてくれるんやけど、異常に短い。要約して伝えとったんやと思う。でも、あんたは違う。俺が話し始めるとすぐにあんたの手も動き始める。俺が話している間ずっと、あんたの手は動きっぱなしや。で、俺が話し終わると、あんたの手も止まる。つまり、同時通訳してくれていたわけや。今回みたいにトラブルを解決するための話し合いでは、“言い方”がとても大切。相手に伝わるように、言葉を選んで、慎重に話しているわけや。ろう者に伝える時に“要約”されては困るんや」
おっしゃる通りです。聴者の話をただじっと聞いて、あとで要約して伝えるような場合、必ず手話通訳者の主観が入ってしまいます。会話も途切れてしまう。
「そのとおりや。おい、Cさん、もし今度話し合うことがあったら、たいしさんに来てもらえや」


社長が褒めてくれたのは嬉しいが、実は、社長以上に、Cさんが非常に高く評価してくれた。Cさんには持病があり、定期的に通院している。
この時以来、Cさんが通院される時は指名で手話通訳者派遣申込が来るようになった。