手話通訳者のブログ

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父の想い出

2016-03-15 05:54:01 | 手話
今日は手話とは関係ない話。

父は既にこの世にはいない。
父が体調不良を訴えた時、勘の良い母は、既に病状が深刻であることを見抜いた。
電話をかけてきて、
「忙しい時に悪いんだけど、お父さんを病院に連れていってあげて」
母は車の運転ができない。

有給をとって、父に付き添った。
俺は手話通訳者なんで、病院は頻繁に行く。しかし、父親の付き添いで病院に来てみると、慣れているはずの病院なのに、何故か緊張した。
「ずつねゃーできゃーてって」
父は方言がきつい。地元の人でも、お年寄りでなければ理解できないような方言を使う。

上記の表現、地元の人でなければニュアンスがわからない。
俺は通訳者。
通訳、という観点で、上記の父の言葉に標準語の言葉を補い、翻訳(?)してみよう。

「お前、仕事が忙しいんだろう。俺のために仕事を休んでつきそってもらうなんて気が引ける。俺は一人で大丈夫だから、もう帰ってくれ」

とろいこと言っとってかんて。母さんも病状が尋常でないことを感じとるで、俺に電話くれたんだで。

父と話していると、自分も自然に、故郷の言葉になる。
あっという間だった。あの日、「末期癌」と診断されてから、下り坂を転がり落ちるように、あっという間に、父は逝った。

「たいし、不思議なもんだなあ。そんなふうに手を動かして会話できるんだで」

父は手話通訳活動については、ほとんど理解はなかったが、息子がやっていることを、それなりに評価してくれていたと思う。

あの世で父に再会する日は、そう遠くはあるまい。
手話通訳者としてやるべきことを、やっていこう。あの世に行った時、父に堂々と報告ができるように、ベストを尽くそうと思う。