茶の湯の精神をあらわす、代表的な茶書『南方録』。
利休が説く侘び茶の、真の心は、何物にもとらわれぬ格や矩を越えたものでした。
それは無論、茶道が根幹とする禅の悟りから導かれたものですが、
古く中国からもたらされた、陰陽五行思想にも影響を受けています。
冒頭の「覚書」の章は、抄訳や解説書などで広く紹介されています。
それとひきかえ、第六章「墨引」はカネワリをはじめとする茶法の
詳細な解説や、上で述べた禅や陰陽五行思想の論考が深く追及され、
かつ分量も膨大なため、ほとんど取り上げられることがありません。
「くれぐれもいうが、茶の湯の深みは草庵にあるのだ。真の書院台子は、格式、法儀を厳重に調えた、世俗の法である。草の小座敷、露地の一風は、本式の曲尺に基づくとはいえども、ついには曲尺を離れ、技を忘れ、心が無味に帰する世俗を出る法である。」
能文社『南方録 現代語全文完訳』が発刊されて十数年。
http://nobunsha.jp/book/post_8.html
今回、カネワリ論が本格的に展開される「墨引」の冒頭を“立ち読み”ページとして
初公開いたします。
ぜひ深遠なる利休の茶の世界に触れてみてください。
●『南方録』墨引 試し読み
http://nobunsha.jp/img/nanpouroku%20sumibiki19.pdf