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千年の日本語を読む【言の葉庵】能文社 (nobunsha.jp)
中世日本を中心に、世界中からこれまで多くの偉人の格言をご案内してきました。
今振り返ってふと気づいたのが、本来の意味と真逆の言い回しを意図的に使用する“逆説的”な名言が多いことです。
「急がば回れ」などのように、ストレートに表現しないことで、注意を呼び、深く意味を考えさせる逆説表現。一瞬、誤りのようですが、立ち止まって思いを巡らすと偉人の深い意図に至り、長く心に刻まれるものです。
【言の葉庵】HP過去掲載分も含め、いくつかの味わい深い逆説的名言をご紹介しましょう。
【逆説名言辞典】
『風姿花伝』世阿弥
・上手は下手の手本、下手は上手の手本。
上手が下手の手本になるのは当たり前。だが、下手を見て、上手が「あんな下手から何を学ぶのだ」という自身の慢心に気づかせてくれるから先生となりお手本となる。
・秘すれば花なり。
本当の秘伝は、いままで誰も気づかなかったからこそ秘となり、絶大な効を発する。その内容ではない。
・初心忘るべからず。
初志貫徹という意味ではない。その時々、年代のもっとも得意であったもの(芸や考え)を「あれはもう幼い、古い」と捨てず、自分の中に保ち続け、必要に応じて取り出して応用する。
『歎異抄』親鸞
・善人なをもて往生す、いわんや悪人をや。
浄土宗の教えでは、自らを救済できる善人でも亡くなれば往生できる。ましてや自らを救うすべのない極悪人こそ、阿弥陀様がもっとも哀れに思い救ってくださるのだ。
『源平盛衰記』平敦盛
・仇をば恩で報うなり。
人と人とは前世の縁で導かれるもの。もともと敵同士であったわけではないので、仏の慈悲で敵にも報うのだ。
『葉隠』鍋島直茂
・わが気に入らぬことが、わがためになるなり。
良薬口に苦し、のたとえの通り。トップの耳に入るのは追従の言葉が多く、忠義無私の諫言は、受け入れ難いもの。
・大事な思案は、軽くすべし。
重要な議案は会議のメンバーすべて、日頃から熟慮に熟慮を重ねているはず。提議されれば、すばやく一決し、実行に移されるような意思決定システムを作っておくこと。
・耄碌は、得意な分野から進んでくる。
人は加齢とともに記憶力が衰えても、自負心だけが強いままである。
『紹鷗遺文』武野紹鷗
・すべての芸に、下手の名をとるべし。
一芸の名人になるためには、他芸に目移りしてはならない。
『山上宗二記』千利休
・上を粗相に、下を律儀に。
賓客には飾らず接し、並みの客は丁寧にもてなすべし。
『貞観政要』唐の太宗
・楽しみは極むべからず。楽しみを極めれば悲しみを生ず。
『スッタニパータ』釈迦
・人々が安楽と称するものを、聖者は苦しみであるという。
『道徳経』老子
・知る者は言わず、言う者は知らず。 第五十六章
高い見識のある者は誤りを恐れて無口となり、
浅薄無知なものほど聞きかじったことを得意げにぺらぺらしゃべるものだ。
・学を絶てば憂い無し。
学ぶことによって、かえって苦悩が深くなる。 第二十章
・曲なれば則ち全し、枉がれば則ち直し。第二十二章
まっすぐな木よりも、曲がっている木こそ、その天寿を全うできる。
・道は常に無為にして、而も為さざるは無し 第三十七章
道は常に何事もなさないが、それでいて全てを成し遂げている。
・知りて知らずとするは上なり。 第七十一章
知っていても知らないとするのが最上である。