人生意気に感ず 功名誰かまた論ぜん。~魏徴『述懐』
今回の名句は、唐王朝建国の功臣、魏徴の詩『述懐』の掉尾を飾る二句です。
志を同じくする人に出会えたなら、自分の生涯は定まってもはやゆるがない。
名をあげ、功を成すことなど二の次である、
と魏徴は高らかに謳いあげています。
これはいにしえの豫譲の「士は己れを知る者のために死す」と同様の境地です。
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『述懐』は、『唐詩選』第一/五言古詩の巻頭に置かれ、漢詩の最盛である唐詩の幕開けを告げる名作です。
わが国でも「人生意気に感ず」は人口に膾炙し、魏徴の名を知らない人もおそらく耳にしたことのある有名な句ではないでしょうか。
さて『述懐』の成立年は特定されておらず、隋末の混乱した時代の中で、どの時期に置くかによって詩の内容と意向は大きく変わってしまいます。
これを通説に従い、武徳八年(西暦625年)とすると、李密のもとに身を置いていた魏徴が、高祖李淵に召され唐に降った頃となります。
この時、魏徴は高祖の命を受け、かつての李密軍の同志、徐世勣(後の李勣)の宣撫に向かうこととなりました。隊列を整え、潼関を進発。その行軍の途上で成した作であろうと推察されます。
「唐の高祖は宿敵であるわれを罰せず。あまつさえ深く信頼し、この重い任を下されたのだ。
あなたもしかるべき主君のもとで存分に働き、新しい国をともに築いていこうではないか」。
もしも高祖の降伏勧告書に、この『述懐』が旧友からの私信として添えられていたのなら、徐世勣は大きく心を動かされたかもしれません。
この後、徐世勣は唐に帰順。太宗の世となってより、大将軍として数々の殊勲をあげ、唐建国に大きく貢献していくこととなっていくのです。
高祖、魏徴、李勣、そして太宗。偉人、傑人とはいえ、一人の力には限りがあります。
しかし国を創らんという「意気」が人と人とを結びつけ、三百年の礎を築きあげました。
出会った瞬間、「百年の友に会った」「この人となら成し遂げられる」と目を開かせてくれる人がいる。
これは何も千三百年前の遠い国の物語ではなく、今のあなたを明日待ち受ける運命の出会いかもしれないのです。
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