かえるところ

田舎のおうちで何をしよう。ひとまず家族でリフォームし、私は野菜を作ってみよう。

ピアノ調律

2005-10-22 01:44:22 | 古民家再生
黒い革張りの、
様々な道具がぎっしりと、几帳面に詰められた
アタッシュケースを開き、
その人がここまで運転してきた
シルバーの、
傷ひとつない車と同じ色の
スタイリッシュな時計を
かちゃりと外し、
慣れた手つきで
ピアノを分解し始めた。

その繊細な容貌とはうらはらに、
ピアノの重たい部品を
まるで赤ん坊を扱うかのように
軽々と丁寧に、
大切そうにてきぱきと取り外す。
複雑な鍵盤も
見る見る間にただの棒となっていく。

日常に繰り返される作業で
心もち猫背になった後姿、
白い細い指、
地味だけど洗練された
仕立てのよい服。

落ち着いた暖かな、
ささやくような声で
理論的にピアノの内部の説明をする。

ピアノの中で何が起こっていたかをつきとめて、
それを私に報告することに
喜びを感じているかのような、
そんな印象だった。

私はそこで、想像した。
もしここが戦場で、
まわりに弾丸が飛び交っていても、
ときどき銃弾をよけながら
この人は淡々とピアノを分解し
低くゆったりとした情熱的な声で
その役目を果たすのかも知れない。

まわりでは父が柱を削り、
こどもが走り回って
柿やら栗やらを取り合いして
ぎゃーぎゃー言って、
だけどその人は、
ピアノ以外のことを何も聞かず話さず、
ただピアノを取り囲む環境について、
それはピアノのために言っておかないとという調子で、
親切に教えてくれた。

ピアノの調律師は
やはりピアノの調律師だった。



ねずみの巣

2005-10-22 01:17:17 | 古民家再生
なんと、
ピアノ本体と鍵盤の隙間に
ねずみの巣が。

この緑色の巣、
ピアノ内部の
クッション機能を果たす
フェルトでできている。

フェルトをかじり
せっせと運び、
巣を作り上げていた。

ぬくぬくと
なんだか暖かそう。