小日向白朗学会 HP準備室BLOG

小日向白朗氏の功績が、未だ歴史上隠されている”真の事実”を広く知ってもらう為の小日向白朗学会公式HP開設準備室 情報など

統一協会お忘れなくって意味でごく一部だけ~共同通信政治家712人アンケート、583人回答~2022年8月~

2023-01-16 | 小日向白朗学会 情報


芳賀道也/はがみちや/無所属/参・山形

1、献金、パーティー券購入の有無 : ない
  • その時期や金額、趣旨 : ―
  • 2.選挙活動への支援の有無 : ない
  • その支援の内容 : ―
  • 3.集会への出席や祝電の有無 : ない
  • その名称や目的、経緯 : ―
  • 4.政治家の支持表明への考え : 信教の自由は民主主義国家において守られるべきだが、いわゆるカルト集団や反社会的行為を行う団体を支援したり利用したり、または利用されたりすることがあってはならない。ただ、今回のことで、まじめな宗教者や真に人の幸せを願う真っ当な団体までもがいわれなき非難を受けることがあってはならない。

  • ■萩生田光一/はぎうだこういち/自民/衆・東京24区
  • 1.献金、パーティー券購入の有無 : 『ない』と『分からない、答えられない』の複数回答
  • その時期や金額、趣旨 : 組織・団体からはないが、支援者個々の信教まで確認をすることはできず、個人で参加している可能性を完全に否定はできず正確な回答は難しい。
  • 2.選挙活動への支援の有無 : 『ない』と『分からない、答えられない』の複数回答
  • その支援の内容 : 組織・団体からはないが、支援者個々の信教まで確認をすることはできず、個人で参加している可能性を完全に否定はできず正確な回答は難しい。
  • 3.集会への出席や祝電の有無 : 『出席したことがある』と『ビデオメッセージ、祝電等を送ったことがある』の複数回答
  • その名称や目的、経緯 : ①2014年に会合で冒頭挨拶後退席、地元支援者からの依頼、口頭での依頼のため会合名等の詳細は不明 ②2014年に女性イベントに地元支援者の依頼で後援会役員が出席。③2017年に女性イベントに地元支援者の依頼で秘書が代理出席。④地元支援者の依頼で女性イベントに祝電を数回送った可能性あり。口頭での依頼のため記録はなく、盛会をお祝いするといった一般的なものだったと記憶。
  • 4.政治家の支持表明への考え : 当方の支援者には個人、各種団体、企業等様々な方々がおられますが、各人の思想心情や信教については当然尊重されるべきであると考えております。 一方で、事実を隠し、事実と異なる内容で布教活動を行ったり、人の心の弱みに付け込むような行為については看過することはできず、社会通念に照らし明らかにおかしな団体に対しては今後も一切かかわりを持つことはありません。 その上で今後は支援者個人から参加依頼のあった各種の集会等も、その詳細を精査してまいる所存です。

  • 橋本岳/はしもとがく/自民/衆・岡山4区
  • 1.献金、パーティー券購入の有無 : ない
  • その時期や金額、趣旨 : ―
  • 2.選挙活動への支援の有無 : 『支援、協力を受けたことがある』と『申し出を受けたことがある』の複数回答
  • その支援の内容 : 前回(21年10月31日投票日)の選挙において、先方より申し出があり電話作戦に参加していただいた。
  • 3.集会への出席や祝電の有無 : ビデオメッセージ、祝電等を送ったことがある
  • その名称や目的、経緯 : 2018年7月22日岡山ジップアリーナで行われた式典の案内を頂いたので、祝電を送った。メッセージの内容は控えが残ってないので、定型文にての対応。
  • 4.政治家の支持表明への考え : 今後は申し出を頂いても、お断りをする。

  • 橋本聖子/はしもとせいこ/自民/参・全国比例
  • 1.献金、パーティー券購入の有無 : ない
  • その時期や金額、趣旨 : ―
  • 2.選挙活動への支援の有無 : ない
  • その支援の内容 : ―
  • 3.集会への出席や祝電の有無 : ない
  • その名称や目的、経緯 : ―
  • 4.政治家の支持表明への考え : ―

  • 長谷川岳/はせがわがく/自民/参・北海道
  • 1.献金、パーティー券購入の有無 : ない
  • その時期や金額、趣旨 : ―
  • 2.選挙活動への支援の有無 : ない
  • その支援の内容 : ―
  • 3.集会への出席や祝電の有無 : ない
  • その名称や目的、経緯 : ―
  • 4.政治家の支持表明への考え : 宗教は非常に難しい。それぞれの信条なので応援を受けることはある。ただ、組織として受けたり、社会的に課題があったり問題がある団体だと、有権者や消費者からのクレームがあったときに、議員個人がどう対応するかの話だと思う。宗教団体だから応援を受けるではなく、社会的な問題を当然起こしていないのが大前提だと思う。うちは受けていなかったので。個人の判断の中でそうしてきた。

  • 長谷川淳二/はせがわじゅんじ/自民/衆・愛媛4区
  • 1.献金、パーティー券購入の有無 : ない
  • その時期や金額、趣旨 : ―
  • 2.選挙活動への支援の有無 : ない
  • その支援の内容 : ―
  • 3.集会への出席や祝電の有無 : ない
  • その名称や目的、経緯 : ―
  • 4.政治家の支持表明への考え : 社会的に問題が指摘されている団体との関係は、国会議員としての立場を認識し、厳正かつ慎重に対応すべきであり、特に、法令違反が疑われている団体に対して、支持を表明するような行動は慎むべきと考えます。
  • ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

  • 忘れたふりをしないで、ちゃんと覚えておかないと今度の選挙の時に判断に困っちゃいます。
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≪協定≫にご注意!!!  

2023-01-13 | 小日向白朗学会 情報
 円滑化協定(RAA)、という言葉、政治に疎い私は初めて耳にした。英国で岸田さんが締結したということらしいけれど、つい一年くらい前にはオーストラリアとも電話で(?)RAA結んじゃっているらしい。簡単なものだ、いや手続きが簡単ということだが。何も国民にその心を問う必要などはない。電話や雑談の折に結んじゃえ―ってなものなのだろうか。
 協定、と言えば日米安保と同時に結んだ行政協定、岸さんが地位協定ということで改定しているが、これも中身はほとんど民意を反映することなどはない。というか、中身を知らされていないという方が正しい。「密約」とまではいわないが、「条約」といった形式ばった所や法的制約がないだけに簡単に結んじゃう。それで、自衛隊員が紛争地に派遣されちゃう、なんてことはあり得ないはずであろうけれど。
 でも調べようとすれば地位協定の文面は確認できる。しかし、具体的運用については全く別、というのがうまいところなのだ。合同委員会、とかいう会議で決めてしまえはよいことだし、その内容は部外秘扱いとなってしまう。本当にうまい方法を考えたものだと思う。この方法を使えばいかようにも国民をだましとおせるだろう。・・・でも、これにも実は落とし穴がある。この落とし穴、いつか仕掛けてくれる政治家が出てくればよいな、と思っている次第である。落とし穴の作り方なら多少とも相談に乗りたいところである。国民をだます政治家、例えば吉田茂のようなそんな大政治家はもうまっぴらごめんである。
 ちなみに、今回の仏、伊、英、カナダにアメリカ歴訪でロシア、及び中国を仮想敵国として共通認識するのだろうか。・・・・明治40年に山縣有朋の強い意志で策定されたという帝国国防方針というのがある。そのなかに「敵國ハ蓋シ露國ナルヘシ」と明記されていることを読者諸氏はご存じだろうか。日露戦争でロシアに勝ったばかりの明治40年である。すでにそのロシアを最警戒しているのである。1907年のことなので116年前だ。全くレーベルが、いやレベルが変わってないな―――などと悲しい気持ちになってきてしまう。
(文責:吉田)
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浅沼稲次郎氏の演説~政治協商会議講堂における講演      一九五九(昭和三十四)年三月十二日 社会党第二次訪中使節団々長として

2023-01-12 | 小日向白朗学会 情報
 中国の友人の皆さん、私はただいまご紹介にあずかりました日本社会党訪中使節団の団長浅沼稲次郎であります。私どもは一昨年四月まいりまして今回が二回目であります。一昨年まいりましたときも人民外交学会の要請で講演をやりましたが、今回はまた講演の機会をあたえられましたので要請されるままにこの演壇に立ちました。つきましては私はみなさんに、日本社会党が祖国日本の完全独立と平和、さらにはアジアの平和についていかに考えているかを率直に申しあげたいと存じます。(拍手)

 今日世界の情勢をみますならば、二年前私ども使節団が中国を訪問した一九五七年四月以後の世界の情勢は変化をいたしました。毛沢東先生はこれを、東風が西風を圧倒しているという適切な言葉で表現されていますが、いまではこの言葉は中国のみでなく世界的な言葉になっています。いま世界では、平和と民主主義をもとめる勢力の増大、なかんずくアジア、アフリカにおける反植民地、反帝国主義の高揚は決定的な力となった大勢を示しています。(拍手)もはや帝国主義国家の植民地体制は崩れさりつつあります。がしかし極東においてもまだ油断できない国際緊張の要因もあります。それは金門、馬祖島の問題であきらかになったように、中国の一部である台湾にはアメリカの軍事基地があり、そしてわが日本の本土と沖縄においてもアメリカの軍事基地があります。しかも、これがしだいに大小の核兵器でかためられようとしているのであります。日中両国民はこの点において、アジアにおける核非武装をかちとり外国の軍事基地の撤廃をたたかいとるという共通の重大な課題をもっているわけであります。台湾は中国の一部であり、沖縄は日本の一部であります。それにもかかわらずそれぞれの本土から分離されているのはアメリカ帝国主義のためであります。アメリカ帝国主義についておたがいは共同の敵とみなしてたたかわなければならないと思います。(拍手)
 この帝国主義に従属しているばかりでなく、この力をかりて、反省のない、ふたたび致命的にまちがった外交政策をもってアジアにのぞんでいるのが岸内閣の外交政策であります。それは昨年末とくに日米軍事同盟の性格を有する日米安保条約の改定と強化をし、更に将来はNEATOの体制の強化へと向わんとする危険な動きであります。この動きは中国との友好と国交正常化を阻害しようとする動きでもあります。これらの動きはあるいは警職法反対の日本国民のたたかいや平和を要求する国民の勢力によって動揺しつつあるが、しかし、これが今日、日中関係の不幸な原因を作っている根本になっています。以上の日米安保条約の改定と日中関係の不幸な状態とは、いずれも関係しあって岸内閣の基本的外交方針であり、アメリカ追随の岸内閣の車の両輪であります。それは昨年末のNBCブラウン記者にたいする岸信介の放言において彼みずからがこれをはっきりと裏書きしております。これらの政策を根本的に転換させてアジアに平和体制を作る方向に向かわないかぎり、日本国民に明るい前途はなく、ここにもまた日中両国民にとって緊急かつ共通の課題がございます。
 このような問題をいかに解決するかという点に関し中日関係について申上げまするならば、昨年五月いらい岸内閣の政策によって中日関係はきわめて困難な事態におちいりました。それまでは、国交回復はおこなわれていないにかかわらず、中国と日本においてはさきに私と張奚若先生との共同声明をはじめとしまして数十にあまる友好と交流の協定を結び、日本国民もまた国交回復をめざしながら懸命に交流、友好の努力をつみかさねてまいりました。しかしついに中絶状態におちいったのであります。このことにつきましては日本国民は非常な悲しみを感じ、かつ岸内閣に鋭い怒りを感じているものであります。(拍手)ここでわが党の参議院議員佐多忠隆君が貴国を訪問して三原則、三措置、すなわち、(1)ただちに中国を敵視する言動と行動を中止しふたたびくりかえさないこと (2)二つの中国をつくる陰謀をやめること (3)中日両国の正常な関係の回復をはばまないこと――これを受けとり、これを正確に国民大衆につたえたのであります。
 これにもとづきましてわが社会党は一九五八年九月に新しい日中関係打開の基本方針の決定をいたしました。すなわちその項目はつぎのとおりであります。岸内閣の政策転換の要求、(1)二つの中国の存在を認めるが如き一切の行動をやめ中華人民共和国との国交の回復を実現する (2)台湾問題は中国の内政問題であり、これをめぐる国際緊張は関係諸国のあいだで平和的に解決する (3)中国を対象とするNEATOのごとき軍事体制には参加しない (4)日本国内に核兵器を持ちこまない (5)国連その他の機構をつうじ中華人民共和国の国連代表権を支持する (6)長崎における国旗引きおろし事件にたいしては陳謝の意を表し今後中華人民共和国の国旗の尊厳を保障するため万全の措置を講ずる (7)友好と平和とを基礎にする人的、文化的、技術的、経済的交流を拡大し国交正常化を妨害することなくこれに積極的支持と協力をあたえる。とくに第四次貿易協定の完全実施を実現する。さらに台湾海峡をめぐる問題にかんしていえば、蒋介石グループにたいする軍事的支援、とくに台湾に米軍を駐屯することがアジアに緊張を激化するものであるとして、日本政府にたいしては慎重なる態度をとることを要請したのであります。(拍手)
 さらにまた社会党は以上の基本方針にもとづきまして日中国交回復、正常化のために国民運動を展開し、もりあげることにいたしました。その要項は、第一、岸政府の政策の全面的転換を実現するためにすべての国民の力を広範に結集し、強力な運動を展開する。第二、現在の岸政府をもってしては現状の打開はきわめて困難であることの認識に立ち、長期かつねばり強い運動を展開できる態勢を整える。第三、この運動をするにあたっては原水爆反対、沖縄返還、軍事基地反対、憲法擁護などの運動と密接に提携してすすめる。第四、わが党は労働組合、農民組合、青年婦人団体、各経済・文化・民主団体などを結集して財界、保守党の良心分子にいたるまで運動に参加せしめる、とくにわが党が協力している中日国交回復国民会議を強化し、これを通じ積極的に運動を展開する。
 わが党は以上のごとき国民運動および日本の岸政府にたいする政策転換のたたかいをもとめまして、中国側にたいしても浅沼・張奚若先生との共同コミュニケの精神にのっとり日中関係の改善にたいし積極的な協力をもとめる、こういうふうにしたわけであります。さらに去年四月の日本社会党中央委員会ではいままでの軍事基地反対運動、平和憲法擁護運動、原水爆禁止運動、沖縄返還および日中国交回復国民運動と日米安保条約体制打破の国民運動を、とくに本年におきましては日中国交回復国民運動と日米条約体制打破の国民運動に力を結集してたたかうことを決定したのであります。さらにこの運動の一環として時期をみて日本社会党の訪中使節団を送ることを決定しました。それは、いかに不幸な事態においても中日両国民のあいだの友好と交流はたえず努力していかねばならないこと、またそれによって岸内閣の政策に反対する中日両国民の国交回復運動が大きく前進することを期待しているためにほかならないのであります。(拍手)

 この決定にもとづいて私たち使節団はふたたび中国を訪問したわけでありますが、同時に訪中の目的のためには、中国の姿をありのままに沢山みて、その姿を正しく日本の勤労大衆、国民につたえるためであります。私どもが日本を発つにあたって日本において民主団体、平和団体は日中国交回復の国民大会をひらいて次のごとき決議を決定いたしました。そしてわれわれ使節団を激励してくれたのであります。いま参考までに決議文を朗読してみます。
 決議。政府は現在安保条約を改定する方針を明らかにしている。この改定は現行の安保体制を固定化するだけでなく、日本自からの意志でアメリカの軍事ブロックに参加することを再確認し、さらにアメリカとの共同防衛体制に公然と加入することになり、日本の軍事力の増強とアメリカへの軍事的義務の遂行を強制されることによって海外派兵はさけられなくなり、憲法第九条はまったく空文化することになる。とくにこの改定によってアメリカの核兵器持ちこみを許し日本が自ら核武装への道を歩むことは明らかであり、その結果中日関係は決定的事態におちいり、現在の日中関係の打開はおろか、国交回復は最も望みえないものになることもまた明らかである。日本の平和と繁栄を望みいかなる国とも平等に友好関係を保持することを望むわれわれは、かかる危険な安保体制とその遂行のために企図されている秘密保護法、防諜法制定の動きや、警職法改悪にあらわれた国民の基本的人権と自由の圧迫、軍事力強化にともなう国民生活の破壊などにたいして断固としてたたかわなければならない。われわれは昨年警職法改悪の意図を粉砕した経験と成果をもっている。このエネルギーはいまなお国民一人一人の中に強く燃えつづけ、たたかえば勝てるという確信はいよいよたかまりつつある。この集会に結集したわれわれは決意をあらたにしてあらゆる階層とその要求、行動を統一して安保条約改定を断固阻止し、すすんで安保条約を解消し、アメリカのクサリを断固切り、平和政策を樹立し、中日国交回復を実現しよう。右決議する。
 これが内容です。(拍手)この決議にもられているものは、平和と民主主義を愛し、一日も早く中日の国交回復をやりたいという日本国民の熱烈な願望でございます。(拍手)
 私ども中国にまいりましてから約一週間になりました。私たちは人民外交学会をはじめとして中国の皆さんの確固たる原則的態度と同時に大きな友情を感じております。とくに過日農業博覧会において農作物の爆発的な増産をする姿をみ、また工場建設の飛躍的な発展をみまして、とくに人民公社に深い感銘をおぼえたのであります。今後多くの日本国民とりわけ農民諸君が中国にきて、論より証拠のこの実情を目のあたりみられるようにしたいと考えております。(拍手)

 今後中日両国民のあいだにおける重要な問題は、なによりも私たちが、日本における中日国交回復の国民運動を三原則の正しい方針のもとに力強くもりあげて、岸政府の反動政策を打破しさることが第一であると確信しております。しかしそれだけでは日本国民のアジアにたいする責任は解決されません。アジア全体の脅威はどうなっているかと申しあげまするならば、外国の軍事基地を日本と沖縄からなくさなければアジアにおける平和はこないことを私どもは感じます。それは私どもの責任と思っているわけであります。そのため社会党は安保条約体制の打破を中心課題としてたたかっているのであります。この安保条約を廃棄させて日本の平和の保障が確立するならば、すなわち日本が完全独立国家になることができまするならば、中ソ友好同盟条約中にあるところの予想される日本軍国主義とその背後にある勢力にたいする軍事条項もおのずから必要はなくなると私どもは期待をするのであります。そうしてさらに中ソ日米によるアジア全体の全般的な平和安全保障体制を確立して日本とアジアに永久平和がくることを日本の社会党はつねに念願としてたたかっているのであります。(拍手)昨年末この日本社会党の一貫した自主独立、積極的中立政策について中ソ両国が再確認をしたことにたいしましては、私ども平和外交の前進のために心から喜ぶものであります。
 このようなアジアと日本の平和のためにはまず中国と日本との国交の回復がなされなければなりません。中国は一つ、台湾は中国の一部であります。中国においては、六億八千万の各位が中華人民共和国を作りあげておるのであります。日本はこの中華人民共和国とのあいだに国交を回復しなければなりません。また中華人民共和国が国際連合に加盟することも当然と信じます。また同時に日本と台湾政府のあいだにある日台条約は解消されるのが必然であると私どもは考えております。(拍手)日本は戦争で迷惑をかけた国々とのあいだに平和を回復し大公使を交換しています。しかるに満州事変いらい第二次世界戦争が終るまでいちばん迷惑をかけた中国とのあいだには国交が回復しておりません。それは保守党政策のあやまりであります。はなはだ遺憾と存ずるしだいであります。
 私ども社会党は、一日も早く中国との国交回復をのぞんでやみません。元来、日本外交の過失はどこにあるかと考えてみまするならば、つねに遠くと結んで近くのものに背を向けたところにあったと思います。明治年間には遠くイギリスと日英同盟を結んでアジアにおける番兵のごとき役割をはたし、第二次世界戦争のさいはこれまた遠くドイツ、イタリアと軍事同盟を結び中国ならびに東南アジア諸国に背を向け、軍事的侵入を試み帝国主義的発展をなしたところに大失敗があったといわなければならないと思うのであります。いままたアメリカと結び、アメリカの東南アジアへの帝国主義的発展の媒介的な役割を果そうとしております。これは私どもが厳に政府にたいして警告し、これの転換をせまっているのであります。わが社会党はかかる外交方針に反対をいたします。すなわち、遠くと結び近くを攻めるという遠交近攻の政策より善隣友好の政策へと転換すべきであると思います。すなわち、いずれの国とも友好関係を結ぶことはもちろんでありますが、いずれの陣営にも属さず自主独立・善隣友好の外交、すなわち中国との国交正常化、アジア・アフリカ諸国との提携の強化、世界平和のために外交政策を推進しなければならないと考えているものであります。(拍手)
 つぎに経済的には日本と中国は一衣帯水でかたく結ばなければならないと思います。現在日本経済はアメリカとの片貿易の上に立ちアメリカの特需の上に立っているのであります。またMSA協定にもとづく余剰農産物の輸入は、これまたアメリカと結び、アメリカの戦争経済に依存している姿であると私どもは考えさせられます。これにたいして一種の不安を感じています。経済の自立のないところに民族の自立はありません。日本が完全なる自主独立の国家として生きるためには、対米依存から脱却しなければなりません。日本が本来一つであるべきアジアと完全に一致せずアメリカの特需や輸入調達にもとづいているところに、今日の不幸な状態が生れ、またこれが背景となって岸内閣の反動的政策の経済的基礎となっていることも事実であろうと信ずるのであります。したがって、私どもは岸内閣に対し社会党への政権の引渡しをせまり、根本的な政策転換と中日国交回復をおこなった上、躍進しつつある中国の第二次五カ年計画と結びついた安全性のある中日貿易の交流、アジア諸国との経済協定の飛躍的な前進を期待しているものであります。(拍手)かくて日本は独立・中立政策の経済の基礎を確立して、その重工業の技術、設備、飛行機工場にいたるまで平和なアジアの建設のために奉仕するようにしたいと考えるものであります。
 私たちはこのように平和と友好の願いをもって中国へまいりました。みなさんとアジアは一つであるというかたい友情の交歓をいたしまして帰国いたしますと、私たちは国会において岸内閣不信任案の提出、さらにつづいて私たちの中国訪問の報告を全国に遊説し、さらにまた四月からおこなわれまするところの地方選挙、参議院選挙が待っているのでありまして、この二つの選挙闘争も、国会の解散と岸内閣を倒す、これに集中してたたかいをすすめてまいりたいと考えているものであります。(拍手)このたたかいは、われわれが前進をするか、彼らが立ちなおるかの大きなわかれ目に立っているのであります。しかし最近、日本においては平和と革新の力が強まれば強まるほど、岸内閣は資本家階級と一体となってこれに対抗して必死の努力をかまえてきております。私たちはこのたたかいを必ずかちぬきたいと考えるわけであります。今後の政局と政策の根本的な転換をかちとるためにどうしてもかちぬかなければならないと思うのであります。中国ならびに全アジアのみなさんとともにアジアの平和とさらに世界の平和のためにもたたかいぬいてまいりたいと考えております。(拍手)

 最後に申し上げたいと思いますことは、一昨年中国にまいりましたさいに毛沢東先生におあいいたしまして、そのときに先生はこういうことをいわれたのであります。中国はいまや国内の矛盾を解決する、すなわち資本主義の矛盾、階級闘争も解決し、帝国主義の矛盾、戦争も解決し、封建制度の矛盾、人間と人間の争い、これを解決して社会主義に一路邁進している。すなわちいまや中国においては六億八千万の国民が一致団結をして大自然との闘争をやっているんだということをいわれたのであります。私はこれに感激をおぼえて帰りました。今回中国へまいりまして、この自然との争いの中で勝利をもとめつつある中国人民の姿をみまして本当に敬服しているしだいであります。(拍手)植林に治水に農業に工業に中国人民の自然とのたたかいの勝利の姿をみるのであります。揚子江にかけられた大鉄橋、黄河の三門峡、永定河に作られんとする官庁ダム、さらに長城につらなっているところの緑の長城、砂漠の中の工場の出現、鉄道の建設と、飛躍しております姿をあげますならば枚挙にいとまありません。つねに自然とたたかいつつある人民勝利の姿があらゆる面にあらわれているのであります。(拍手)
 人間本然の姿は人間と人間が争う姿ではないと思います。階級と階級が争う姿ではないと思います。また民族と民族が争って血を流すことでもないと思います。人間はこれらの問題を一日も早く解決をして、一切の力を動員して大自然と闘争するところに人間本然の姿があると思うのであります。このたたかいは社会主義の実行なくしてはおこないえません。中国はいまや一切の矛盾を解決して大自然に争いを集中しております。ここに社会主義国家前進の姿を思うことができるのであります。このたたかいに勝利を念願してやみません。(拍手)われわれ社会党もまた日本国内において資本主義とたたかい帝国主義とたたかって資本主義の矛盾、帝国主義の矛盾を克服して国内矛盾を解決し次には一切の矛盾を解決し、つぎに一切の力を自然との争いに動員して人類幸福のためにたたかいぬく決意をかためるものであります。(拍手)
 以上で講演を終ります。ご謹聴を感謝申上げます。(拍手)
 躍進中国の社会主義万才(拍手)
 中日国交回復万才(拍手)
 アジアと世界の平和万才(拍手) 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・  
 田中角栄が1972年9月に日中国交正常化を実現した。それ以前から、浅沼氏がまさに日中国交正常化の下地を作ってたいということではないか。これこそが「白朗メソッド」であると思う。 (文責:吉田)
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行政協定からみた1955年の保守合同 ―自民党結党とは行政協定を順守して秘密を守ることー

2023-01-10 | 小日向白朗学会 情報
 昭和30(1955)年11月15日、日本の保守政党であった自由党と日本民主党が合同し、自由民主党を結成した。この裏には、アメリカCIAが緒方竹虎(コードネーム:POCAPON)を通して保守合同を働きかけていたことが吉田則昭著『緒方竹虎とCIA』(平凡社, 2012.5)で明らかになっている。
その直接の原因は、社会党左右両派が昭和30(1955)年10月13日に社会党(鈴木茂三郎委員長、浅沼稲次郎書記長)を再統一したことであった。
 昭和26(1951)年当時の社会党は、サンフランシスコ講和条約を巡って、講和条約賛成派の社会党右派と講和条約反対派の社会党左派に分裂していた。その後、保守政権による再軍備や改憲に対抗するために反対運動を推進した社会党左派が選挙毎に議席をのばしていたが、社会党右派は党内の対立があって明確な主張を出せなかったため選挙で議席が伸び悩んでいた。ところが昭和30年に社会党が再統一を成し遂げたことで、いよいよ、社会党を中心とする野党が政権を奪取する可能性が生まれた。社会党が政権を取った場合を日米安保条約の観点から見ると、日米安全保障は期限が到来するまで継続するものの、国内法である行政協定は政権移譲とほぼ同時に破棄、若しくは段階的解消して日本の国権を取り戻す政策に転じることは明白であった。係る事態を避けるためアメリカが採用した方法は、日本の国内政治に干渉し、分裂している保守二党を合同させてアメリカの制御が可能な政権与党を早急に準備することであった。つまり内政干渉である。そこまでアメリカが深く介入する必要があったのは、日米安保条約で獲得した自衛隊の指揮権を最大限に利用し自衛隊の戦力増強を図ったのは、第二次朝鮮戦争となった場合に朝鮮半島に出兵させることが不可能となるからであった。加えてアメリカ軍の指揮下で自衛隊を海外に派兵するにあたり最大の問題点は、アメリカの占領施政下で制定した日本国憲法が、皮肉にもアメリカの極東戦略とは相いれないばかりか阻害要因となっていた。この点も保守を合同してできる政党は、行政協定を継続的に容認し順守することは当たり前で、さらに憲法を改正して海外派兵を可能にする政策を実施することであった。これらのアメリカの要望に沿って出来上がった政党の党是は改憲と海外派兵なのだ。そもそも憲法違反の政党が自由民主党なのだ。
 ところでアメリカが対日政治工作を開始しなければならなかったのは、あまりに露骨に国家主権を奪い取り、秘密にしていたことが当時の野党だけではなく与党からも厳しく追及されるようになっていたからである。その好例が「第19回国会 衆議院 外務委員会 第25号 昭和29年3月25日」(別紙資料1)である。当日、外務委員会で政府を追及している並木芳雄は日本民主党議員であった。また、答弁に立つ外務大臣岡崎勝男は同年3月8日に日米相互防衛援助協定(MSA協定)を締結したばかりであった。そして国務大臣緒方竹虎は前述のCIAのエージェントであった。
『……
127並木芳雄
○並木委員 ……駐留軍と日本の自衛隊との共同動作について、現在の安保条約及び行政協定には、緊急の場合と称して行政協定二十四条があるだけ……緊急の事態に処する場合にどちらが指揮権を持つか……。
128 緒方竹虎
○緒方国務大臣 共同作戦の協議には入つて行くべきで……今すぐ安保条約の改正をする必要はない……。
129 並木芳雄
○並木委員 指揮権をどちらに置くかということについて……当然日本側が持つべきでありますが、この点はまだ政府として考慮中だ……共同動作をする場合の指揮権、決定権でありますが、これは両方協議議するときなかなかきまらない場合があると思います。
130 緒方竹虎
○緒方国務大臣 はなはだ抽象的のことを申し上げますけれども、やはり両方で協議してきめる以外にないと思います。それは規模の大小がありますが、第二次大戦以来、そういう連合軍の慣行が自由諸国の間にもできておりますから、そういう形をとるであろう……。
131 並木芳雄
○並木委員 自衛隊法の中に日米共同動作に関する協議事項というものはない……。
132 岡崎勝男
○岡崎国務大臣 ……行政協定二十四条による協議をすれば足りると考えております。
……』
この時の政権は、自由党吉田茂が第5次吉田内閣を組織し第51代内閣総理大臣に就任していた。前年度行われた衆議院選挙で自由党は少数与党となったことから改進党との閣外協力で漸く政権を維持しているという状態で、政権の寿命が長くないことはだれの目にも明らかであった。このような政治状況下で着実に議席数を伸ばす社会党が、さらに再結集することになった。アメリカとしては、早期に保守を合同して日米安保条約及び行政協定を順守する政党を設立することが喫緊の課題となった。
その後は、昭和30(1955)年に保守合同ができると、同年11月22日に鳩山一郎が第54代内閣総理大臣に就任した。総理に就任した鳩山が最初に取り組んだには衆議院議員総選挙において憲法改正に有利な小選挙区制を導入することであった。「鳩山が「ゲリマンダー」」(ハトマンダー)を実施してまで憲法改正を急いだ背景には、保守合同を企画したアメリカの意向が強く働いていたと見ることができる。アメリカが日本国憲法を改正することを急いだ理由であるが、保守合同を行った同年11月に目をアジア全体に向けると南ベトナムに南ベトナム米軍事援助顧問団を設置し南ベトナム政府軍の軍事教練を開始した時期と符合する。その後、ベトナム戦争は激化し、韓国、オーストラリア、タイ、フィリピン、ラオス、台湾が参戦している。日本がベトナム戦争に参戦しなかったのは、アメリカも改定に手を焼く日本国憲法があったからなのだ。

此の寄稿文の終わりに、昭和35(1960)年10月12日に刺殺された浅沼稲次郎の演説に付いて述べておく。(添付資料2)。
浅沼稲次郎は、演説の中で日本は治外法権となっていて完全な独立国家ではないことを力説している。浅沼は、日米安保条約の核心的な秘密を熟知していた。この浅沼の演説は60年を経た現代でもそのまま通用するのだ。そして浅沼が刺殺される直前の演説は「選挙の際は、国民に評判の悪い政策は、全部伏せておいて、選挙で多数を占むると……」とある。その続きは「……どんな無茶なことでも国会の多数ものをいわせて押し通すというのでは、いったい何のために選挙をやり、何のために国会があるのか、わかりません。これでは多数派の政党がみずから議会政治の墓穴を掘ることになります。……」であった。
浅沼は、自民党政権がアメリカに日本を売り飛ばすことに強い憤りを感じていた。そのため社会党が選挙で勝利し政権を取ったならば、日米安保は条約であることからしばらくはそのままにするものの、行政協定は国内法であることから破棄もしくは時間を設けて段階的に廃止してゆくことを構想していたものと考えられる。

 自由民主党は「結党以来、ずっと売国、今も売国」と云う「亡国の政党だ」と云わざるをえない。    (寄稿:近藤雄三)
P.S.
白朗学会所蔵資料の中に小日向白朗が浅沼委員長刺殺事件には大きく関与していたことを示す資料(音声データ)の存在することが最近の調査で判明した。白朗は、当日、右翼団体が浅沼稲次郎の命を狙っていることを知ると、急遽、日比谷公会堂に駆けつけたが、時遅く、浅沼稲次郎は刺殺されてしまっていた。白朗が浅沼稲次郎を救出しようとした理由であるが、浅沼が昭和34(1959)年に日本社会党訪中使節団として訪中し周恩来と会見していることから、白朗が訪中団の調整をしていたと考えられる。さもなければ周恩来との面会は難しい。その関係から、白朗は浅沼の命を狙う一団がいることを掴んだものと考えられる。
(別紙資料1)
第19回国会 衆議院 外務委員会 第25号 昭和29年3月25日
127 並木芳雄
○並木委員 先ほどの答弁ですと、大体地上部隊は別として、アメリカ軍と日本の自衛隊、これは空軍、海軍なども含めて二本建で行く期間が相当続くのではないかと思います。その場合に、駐留軍と日本の自衛隊との共同動作について、現在の安保条約及び行政協定には、緊急の場合と称して行政協定二十四条があるだけでございます。私は今後非常に大きな問題を惹起すると思います。今までは保安隊で微力であり、共同動作を起すようなことがございませんでしたから、表面の問題にはなつて参りませんでしたけれども、これからは一本立ちをするわけでありますから、この共同動作について今後どういうふうに協定をされて行くつもりでありますか。また国内の法規をどういうふうに直して行くつもりでありますか。アメリカとの関係におきましては、安保条約または行政協定をこの点において改正する必要があるのではないかと思います。緊急の事態に処する場合にどちらが指揮権を持つかという点についてです。
128 緒方竹虎
○緒方国務大臣 共同作戦の協議には入つて行くべきであると考えますが、今すぐ安保条約の改正をする必要はないと考えております。
129 並木芳雄
○並木委員 指揮権をどちらに置くかということについて何か構想はございませんか。これは当然日本側が持つべきでありますが、この点はまだ政府として考慮中だというのが今までの答弁であります。共同動作をする場合の指揮権、決定権でありますが、これは両方協議議するときなかなかきまらない場合があると思います。
130 緒方竹虎
○緒方国務大臣 はなはだ抽象的のことを申し上げますけれども、やはり両方で協議してきめる以外にないと思います。それは規模の大小がありますが、第二次大戦以来、そういう連合軍の慣行が自由諸国の間にもできておりますから、そういう形をとるであろうと考えております。
131 並木芳雄
○並木委員 自衛隊法の中に日米共同動作に関する協議事項というものはないように私は読んでおります。ざつと読んだだけですからわかりませんけれども、あればけつこうですが、これも自衛隊法の中にうたつて行くべきじやないかと思いますが、いかがでしようか。
132 岡崎勝男
○岡崎国務大臣 ただいまのところでは、自衛隊法の中にはその必要はないと思います。これは、かりに何か事がある場合には、必ずしも自衛隊ばかりとは限りません。警察隊を必要とする場合もあり、あるいは消防隊を必要とする場合もあり、その必要の限度等は行政協定二十四条による協議をすれば足りると考えております。

(別紙資料2)
『浅沼稲次郎最後の演説(全文)』
一九六〇(昭和三十五)年十月十二日 日比谷公会堂・三党首立会演説会

 諸君、臨時国会もいよいよ十七日召集ということになりました。今回開かれる国会は、安保条約改定の国民的な処置をつけるための解散国会であろうと思うのであります。この解散、総選挙を前にいたしまして、NHK、選挙管理委員会、さらには公明選挙連盟が主催をいたしまして自民、社会、民社の代表を集めて、その総選挙に臨む態度を表明する機会を与えられましたことを、まことにけっこうなことだと考え、感謝をするものであります。以下、社会党の考えを申し上げてみたいと思うのであります。
 諸君、政治というものは、国家社会の曲がったものをまっすぐにし、不正なものを正しくし、不自然なものを自然の姿にもどすのが、その要諦であると私は思うのであります。しかし現在のわが国には、曲がったもの、不正なもの、不自然なものがたくさんあります。そこで私は、そのなかの重大な問題をあげ、政府の政策を批判しつつ社会党の立場を明らかにしてまいります。
 第一は、池田内閣が所得倍増をとなえる足元から物価はどしどし上がっておるという状態であります。月給は二倍になっても、物価は三倍になったら、実際の生活程度は下がることはだれでもわかることであります。池田内閣は、その経済政策を、日本経済の成長率を九%とみて所得倍増をとなえておるのであります。これには多くの問題を内包しております。終戦後、勤労大衆の苦労によってやっと鉱工業生産は戦前の三倍になりましたが、大衆の生活はどうなったか、社会不安は解消されたか、貧富の差は、いわゆる経済の二重構造はどうなったか、ほとんど解決されておりません。自民党の河野一郎君も、表面の繁栄のかげに深刻なる社会不安があると申しております。かりに池田内閣で、十年後に日本の経済は二倍になっても、社会不安、生活の不安、これらは解消されないと思うのであります。たとえば来年は貿易の自由化が本格化して七〇%は完成しようとしております。そのために、北海道では大豆の値段が暴落し、また中小下請工場は単価の引き下げに悩んでおります。通産省の官僚が発表したところによっても、貿易の自由化が行なわれれば、鉱工業の生産に従事する従業員は百三十七万人失業者が出るであろうといわれておるのであります。まったく所得倍増どころの話ではありません。現在、日本国民は、所得倍増の前に物価倍増が来そうだと、その不安は高まっております。その上、池田総理は、農村を合理化するために六割の小農を離村せしむる、つまり小農切り捨てをいっております。このうえに農村から六百万有余の失業者が出たら、いったいどうなるのでありましょうか。来年のことをいうとオニが笑うといっておりますが、これではオニも笑えないだろうと思うのであります。
 物価をきめるにしても、金融や財政投融資、これらのものの問題につきましては、とうぜん勤労大衆の代表者が参加し、計画的経済のもと、農業、中小企業の経営の向上、共同化、近代化を大にして経済政策の確立が必要であります。政府の発表でも、今年度の自然増収は二千百億円、来年度は二千五百億であると発表しております。この自然増収というものは、簡単にいえば税金の取り過ぎのものであります。国民大衆が汗水を流して働いたあげくかせいだ金が余分に税金として吸い上げられているわけであります。池田総理は、この大切な国民の血税の取り過ぎを、まったく自分の手柄のように考えて、一晩で減税案はできると自慢をしておりますが、自然増収はなにも政府の手柄でなく、国民大衆の勤労のたまものであります。(拍手)したがって国民にかえすのがとうぜんであります。さらに四年後には再軍備増強計画は倍加されて三千億になるといわれております。
 わが社会党は、これを中止して、こうした財政を国民大衆の平和な暮らしのために使え、本然の社会保障、減税に使えと主張するものであります。(拍手)
 池田総理は、投資によって生産がふえ、生産がふえれば所得がふえ、所得がふえれば貯蓄がふえ、貯蓄がふえればまた投資がふえる、こういっておるのでありますが、池田総理のいうように、資本主義の経済が循環論法で動いていたら、不景気も、恐慌も、首切りも、賃下げもなくなることになります。しかしながら――しかしながら、どうでしょうか。戦後十五年間、この間三回にわたる不景気がきておるのであります。なぜ、そういうことになるかといえば、生産が伸びた割に国民大衆の収入が増加しておらない、ところで、物が売れなくなった結果であります。したがってほんとうに経済を伸ばすためには、国民大衆の収入をふやすための社会保障、減税などの政策が積極的に取り入れられなければならぬと思うのであります。
 ところで最近では、政府の社会保障と減税とは、最初のかけ声にくらべて小さくなる一方、他方大資本家をもうけさせる公共投資ばかりがふくらんでおるのであります。こんな政策がつづいてまいりましたならば、不景気はやってこないとだれが保障できるでありましょうか。池田総理は、財源はつくりだすものであるといっておりますが、財源は税金の自然増収であります。日本社会党は、社会保障、減税の財源として自然増収によるばかりでなく、ほんとうの財源を考えておるのであります。
 その一つは、大企業のみ税金の特別措置をとっておる、措置法を改正して、大企業からもっとより多く税金をとるべきであると、私どもは主張するのであります。(拍手)
 ここで一言触れておきたいと思いますることは、来年四月一日より実施されんとする国民年金法の問題であります。本年政府は準備しておりまして、二十歳以上から百円、三十五歳になったならば百五十円と五十九歳まで一ぱい積んで、六十五歳から一カ月三千五百円の年金を支給しようというのであります。二十歳から百円、三十五歳から百五十円と五十九歳までかけると五分五厘の複利計算で二十六万有余円になるのであります。それを六十五歳からは三千五百円支給してもらうということは、自分で積み立てた金を自分でもらうということになって、これは私は、社会保障というよりかも、一種の社会保険、保険制度であろうと思うのであります。しかも死亡すれば終りという多くの問題を含んでおります。社会党としては、その掛金は収入によって考えて、さらに国民年金の運営については、その費用は国家が負担し、積立金も勤労国民大衆のために使う、この福祉に使うということを主張しておるのであります。したがいまして、この実施を一年ないし二年延期をいたしまして、りっぱな内容あるものにして実施をすべきであると強く主張しておるものであります。
 第二は、日米安全保障条約の問題であります。いよいよ解散、総選挙でありますが、日米安全保障条約に関して、主権者たる国民がその意思表示をなすということになっておるのであります。いわば今度の選挙の意義は、まことに重大なものがあろうと思うのであります。アメリカ軍は占領中をふくめて、ことしまで十五年日本に駐留をいたしましたが、条約の改正によってさらに十年駐とんせんとしておるのであります。外国の軍隊が二十五年の長きにわたって駐留するということは、日本の国はじまっていらいの不自然なできごとであります。インドのネールは「われわれは外国の基地を好まない。外国の基地が国内にあることは、その心臓部に外国の勢力が入り込んでいるようなことを示すものであって、常にそれは戦争のにおいをただよわす」こういっておるのでありますが、私どももまったく、これと同じ感じに打たれるのであります。(拍手)
 日米安全保障条約は昭和二十六年、対日平和条約が締結された日に調印されたものであります。じらい日本は、アメリカにたいして軍事基地の提供をなし、アメリカは日本に軍隊を駐とんせしめるということになったのであります。日本は戦争がすんでから偉大なる変革をとげたのであります。憲法前文にもありますとおり、政府の行為によって日本に再び戦争のおこらないようにという大変革をとげました。第一は主権在民の大原則であります。第二には言論、集会、結社の自由、労働者の団結権、団体交渉権、ストライキ権が憲法で保障されることになったのであります。第三は、憲法第九条で「国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」これがためには陸海空軍一切の戦力は保有しない、国の交戦権は行使しないと決定をしたのであります。この決定によって、日本は再軍備はできない、他国にたいして軍事基地の提供、軍事同盟は結ばないことになったはずであります。しかるに日米安全保障条約の締結によって大きな問題を残しておるのであります。日本がアメリカに提供した軍事基地、それはアメリカの飛び地のようなものであります。その基地の中には日本の裁判権は及ばない、その基地の中でどんな犯罪が行なわれましても、日本の裁判権は及ばないのであります。(拍手)
 また日本の内地において犯罪を犯した人が基地の中へ飛び込んでしまったら、どうすることもできない。まさに治外法権の場所であるといわなければならぬと私は思うのであります。(拍手)
 このような姿は完全なる日本の姿ではありません。これが、はじめ締結された当時においては七百三十カ所、四国大のものがあったのであります。いまでも二百六十カ所、水面を使っておりまする場所が、九十カ所ある。これは日本完全独立の姿ではないと私は思うのであります。(拍手)
 さらにここには、アメリカに軍事的に日本が従属をしておる姿が現われておるといっても、断じて過言ではないと私は思うのであります。(拍手)
 そればかりではない。この基地を拡大するために、日本人同士が血を流し合う、たとえば立川飛行場は、現在アメリカの基地になっておる、このアメリカの基地を拡大するために、砂川の農民の土地を取り上げようとする、砂川の農民は反抗する、そうすると調達庁の役人は警察官をよんでまいりまして、これを弾圧する。農民の背後には日本の完全独立を求める国民があって支援する。そうやって、おたがいにいがみ合って血を流し、日本の独立はアメリカの飛び地を拡大するために、日本人同士が血を流さなければならぬという矛盾を持っておる独立であるといっても、断じて過言ではないと私は思うのであります。(拍手)
 したがいまして日本が完全独立国家になるためには、アメリカ軍隊には帰ってもらう、アメリカの基地を返してもらう、そうして積極的中立政策を行なうことが日本外交の基本でなければならぬと思うのであります。ところが岸内閣の手によって条約の改定が行なわれ、この春の通常国会で自民党の単独審議、一党独裁によって批准書の交換が行なわれたのであります。これによって日本とアメリカとの関係は、相互防衛条約を結ぶことになった。そうして戦争への危険性が増大をしてまいったのであります。
 さらに加えて、日本はアメリカにたいして防衛力の拡大強化をなすという義務をおうようになりまして、生活的には増税となって圧迫をうけ、おたがいの言論、集会、結社の自由もそくばくをうけるという結果を招来しておるのであります。(拍手)
 さらにわれわれが心配をいたしまするのは、防衛力の増大によって憲法改正、再軍備、徴兵制度が来はしないかということを心より心配するものであります。しかも防衛力の拡充については、日米間において協議をするということになっておりますから、一歩誤まれば、ここらから私はアメリカの内政干渉がきはしないかという心配をもつものであります。いずれにいたしましても、われわれは、このさいアメリカとの軍事関係は切るべきであろうと思う。同時に中ソ両国の間にある対日軍事関係も切るべく要求すべきであろうと思うのであります。そうして日本とアメリカとソビエトと中国、この四カ国、いわば両陣営を貫いた四カ国が中心になって、新しい安全保障体制をつくることが日本外交の基本でなければならぬと、私は主張するものであります。(拍手)
 諸君、もう一つの根源をなすものは、おたがいの独立は尊重する、領土は尊重する、内政の干渉をやらない、侵略はしない、互恵平等の立場にたって、そうして新しい安全保障体制というのがとうぜんでなければならぬと私は思うのであります。ある意味あいにおきまして、私どもはこんどの選挙をつうじまして、この安保条約の危険性を国民に訴えまして、議会においてはああいう状態になっておるけれども、日本の主権者たる国民が安保条約に対して正しき立場を投票に表わすのが、主権者の任務なりと訴えてまいりたいと考えております。
 第三の問題は、日本と中国の関係であります。日本は第二次世界大戦が終わるまで、最近五十年の間に五回ほど戦争をやっております。そのところがどうであったかと申しまするならば、主として中国並びに朝鮮において行なわれておるのであります。満州事変いらい日本が中国に与えた損害は、人命では一千万人、財貨では五百億ドルといわれております。これほど迷惑をかけた中国との関係には、まだ形式的には戦争の状態のままであります。これは修正をされていかなければならぬと思うのであります。現在、日本と台湾とを結んで日華平和条約がありまするが、これで一億人になんなんとする中国のかなたとの関係が正常化されたと考えることは、非常に私は無理もはなはだしいといわなければならぬと思うのであります。中国は一つ、台湾は中国の一部であると私どもは考えなければならぬのであります。(拍手)
 したがって日本は一日も早く中国との間に国交を正常化することが日本外交の重大なる問題であると思うのであります。しかるに池田内閣は、台湾政府との条約にしがみついて、国連においては、中国の代表権問題にかんして、アメリカに追従する反対投票を行なっているのであります。まさに遺憾しごくなことであるといわなければなりません。われわれはいま国連の内部の状況をみるときに、私どもと同じように中立地域傾向が高まっておるということを見のがしてはならぬと私は思うのであります。(拍手)
 もしアジア、アフリカに中立主義を無視して、日本がアメリカ追従の外交をやっていけば、アジアの孤児になるであろうということを明言してもさしつかえないと思うのであります。(拍手)
 諸君、さいきん中国側においては、政府の間で貿易協定を結んでもいいといっておるのであります。池田総理は、共産圏との貿易はだまされるといっておるのでありまするが、一国の総理大臣からこういうようなことをきけば、いかがであろうかと思うのであります。池田総理は口を開けば、共産圏から畏敬される国になりたいといっている。これでは畏敬どころではない。軽蔑される結果になりはしないかと思うのでありまして、はなはだ残念しごくといわなければならないと思うのであります。自民党のなかにも、石橋湛山氏、松村謙三氏のように常識をもち、よい見通しをもった方々がおるのであります。(拍手)
 かつて鳩山内閣のもとにおいて日ソ国交が正常化するについて、保守陣営には多くの反対がありました。社会党は積極的に支持したのであります。われわれは保守陣営のなかでも、中国との関係を正常化することを希望して行動する人がありますならば、党派をこえて、その人を応援するにやぶさかでないということを申し上げておきたいと思うのであります。(拍手)
 第四は、議会政治のあり方であります。さいきん数年間、国会の審議は、ときに混乱し、ときには警官を議場に導入して、やっと案の通過をはかるというようなことさえ起こりました。いったい、こんな凶暴な事態が、こんな異常な事態がなぜ起こるかということを、われわれは考えてみなければならぬと思うのであります。国会の審議をみましても、社会党は政府ならびに自民党の提出します法案のうち、約八割はこれに賛成をしておるのであります。わが党が反対しておる法案は、警察官の職務執行法とかあるいは新安保条約とか、わが国の平和と民主主義に重大な影響を与えるものに対して、この大部分に対して私どもは反対しておるのであります。政府が憲法をこえた立法をせんとするものが大部分であります。日本社会党がこれらのものに本気になって反対しなかったら、わが国の再軍備はもっと進み、憲法改正、再軍備、お互いの生活と権利はじゅうりんされるような結果になってきておったといっても断じて私はいいすぎではないと思うのであります。
  諸君、議会政治で重大なことは警職法、新安保条約の重大な案件が選挙のさいには国民の信を問わない、そのときには何も主張しないで、一たび選挙で多数をとったら、政権についたら、選挙のとき公約しないことを平気で多数の力で押しつけようというところに、大きな課題があるといわなければならぬと思うのであります。(拍手。場内騒然)
〈司会〉会場が大へんそうぞうしゅうございまして、お話がききたい方の耳に届かないと思います。だいたいこの会場の最前列には、新聞社の関係の方が取材においでになっているわけですけれども、これは取材の余地がないほどそうぞうしゅうございますので、このさい静粛にお話をうかがいまして、このあと進めたいと思います。(拍手)それではお待たせいたしました、どうぞ――
(浅沼委員長ふたたび)選挙のさいは国民に評判の悪いものは全部捨てておいて、選挙で多数を占むると――
(このとき暴漢がかけ上がり、浅沼委員長を刺す。場内騒然)
 〈以下は浅沼委員長がつづけて語るべくして語らなかった、この演説の最終部分にあたるものの原案である〉
――どんな無茶なことでも国会の多数にものをいわせて押し通すというのでは、いったい何のために選挙をやり、何のために国会があるのか、わかりません。これでは多数派の政党がみずから議会政治の墓穴を掘ることになります。
 たとえば新安保条約にいたしましても、日米両国交渉の結果、調印前に衆議院を解散、主権者たる国民に聞くべきであったと思います。しかし、それをやらなかった。五月十九日、二十日に国会内に警官が導入され、安保条約改定案が自民党の単独審議、単独強行採決がなされた。これにたいして国民は起って、解散総選挙によって主権者の判断をまつべきだととなえ、あの強行採決をそのまま確定してしまっては、憲法の大原則たる議会主義を無視することになるから、解散して主権者の意志を聞けと二千万人に達する請願となったのであります。しかるに参議院で単独審議、自然成立となって、批准書の交換となったのであります。かくて日本の議会政治は、五月十九日、二十日をもって死滅したといっても過言ではありません。かかる単独審議、一党独裁はあらためられなければなりません。また既成事実を作っておいて、今回解散と来てもおそすぎると思います。わが社会党は、日本の独立と平和、民主主義に重大な関係のある案件であって国民のなかに大きな反対のあるものは、諸外国では常識になっておるように総選挙によって、国民の賛否を問うべきであると主張する、社会党は政権を取ったら、かならずこのとおりに実行することを誓います。議会政治は国会を土俵として、政府と反対党がしのぎをけずって討論し合う、そして発展をもとめるものであります。それには憲法のもと、国会法、衆議院規則、慣例が尊重されなければなりません。日本社会党はこの上に行動をいたします。
 最後に申し上げたいのは現在、日本の政治は金の政治であり、金権政治であります。この不正を正さねばなりません。現在わが国の政治は選挙でばく大なカネをかけ、当選すればそれを回収するために利権をあさり、時には指揮権の発動となり、カネをたくさん集めたものが総裁となり、総裁になったものが総理大臣になるという仕組みになっております。
 政治がこのように金で動かされる結果として、金次第という風潮が社会にみなぎり、希望も理想もなく、その日ぐらしの生活態度が横行しております。戦前にくらべて犯罪件数は十数倍にのぼり、とくに青少年問題は年ごろのこどもをもつ親のなやみのタネになっております。政府はこれにたいして道徳教育とか教育基本法の改正とかいっておりますが、それより必要なことは、政治の根本が曲がっている、それをなおしてゆかねばなりません。
 政府みずからが憲法を無視してどしどし再軍備をすすめ、最近では核弾頭もいっしょに使用できる兵器まで入れようとしておるのに、国民にたいしては法律を守れといって、税金だけはどしどし取り立ててゆく。これでは国民はいつまでもだまってはいられないと思います。
 政治のあり方を正しくする基本はまず政府みずから憲法を守って、きれいな清潔な政治を行なうことであります。そして青少年には希望のある生活を、働きたいものには職場を、お年寄りには安定した生活を国が保障するような政策を実行しなければなりません。日本社会党が政権を取ったら、こういう政策を実行することをお約束申します。以上で演説を終りますが、総選挙終了後、日本の当面する最大の問題は、第一は中国との国交回復の問題であり、第二には憲法を擁護することであります。これを実現するには池田内閣では無理であります。それは、社会党を中心として良識ある政治家を糾合した、護憲、民主、中立政権にしてはじめて実行しうると思います。
  諸君の積極的支持を切望します。
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異次元の少子化対策って新「産めよ殖やせよ」なのか~岸田総理年頭記者会見~

2023-01-10 | 小日向白朗学会 情報

2023年1月4日岸田総理の年頭記者会見のなかで、こんなお話が出ている。
   ・・・・・先ほど私は伊勢神宮に参拝し、国民の皆さんにとって今年が
   すばらしい1年になるよう、また、日本、そして世界の平和と繁栄をお
   祈りしてまいりました。 今年の干支(えと)は、「癸(みずのと)卯
  (う)」です。「癸卯」の「癸」は、十干の最後に当たり、一つの物事が
   収まり、次の物事へ移行する段階を、そして「卯」は、「茂(しげ 
   る)」を意味し、繁殖する、増えることを示すと言われています。この
   両方を備えた「癸卯」は、去年までの様々なことに区切りがつき、次の
   繁栄や成長につながっていくという意味があると言います。 私は、本
   年を昨年の様々な出来事に思いをはせながらも、新たな挑戦をする1年
   にしたいと思います。・・・・・
素晴らしいことではないか。「繁殖、増える」…というキーワードを示したうえで新しい挑戦をするというのだ。「新しい」って、いったい何をする気なのか、この先のお話を聞いてみよう。
   ・・・・・急速に安全保障環境が厳しさを増す中で、国民の命や暮らし
    を守るために待ったなしの課題である、防衛力の抜本的強化、エネル
    ギーの安定供給のためにも、多様なエネルギー源を確保するためのエ
    ネルギー政策の転換とGX(グリーン・トランスフォーメーション)
    の実行、さらには、日本における第二の創業期を実現するためのスタ
    ートアップ育成5か年計画、資産所得倍増に向け、長年の課題であっ
    たNISA(少額投資非課税制度)の恒久化など、先送りの許されな
    い課題でした。昨年に引き続き、本年も覚悟を持って、先送りできな
    い問題への挑戦を続けてまいります。 特に、2つの課題、第1に、
    日本経済の長年の課題に終止符を打ち、新しい好循環の基盤を起動す
    る。第2に、異次元の少子化対策に挑戦する。・・・・・
ということです。防衛力強化と少子化対策、いいですね。「抜本的」とか「異次元」とかフォルテッシモマーク入りですし本当に力を入れるのだと思います。関係なさそうで実はかなり密接に関係しているこの二つの言葉「防衛力」「少子化」、キーワードとして胸にとどめておこう。年頭にきちんと表明しているのはそれなりの心づもりがあるからでしょう。それについて岸田首相はさらに言葉を重ねています。
    ・・・・・権威主義、国家資本主義的な国々と、自由主義、資本主義
     を掲げる我々民主主義国家との対立を深刻化させていま
     す。・・・・・
ということが防衛力強化を進める理由ということらしい。このステロタイプな言葉遣いについてはすでに主要マスコミがこぞって繰り返し使用しながら報道しているので耳にタコができているくらいである。これは一般消費者にある方向性を持ったイメージを定着させるための広告業界の常識的手法らしい。この言葉、つまり、権威主義、とか、自由主義とか、こんなタームをタグづけすることによって消費者の思考を停止させてしまう手法である。その証拠に、あなたは権威主義、国家資本主義という言葉でどこの国を思い浮かべただろうか。自由主義という言葉でどこの国を連想しただろうか。そして、それが対立しているということらしいが、…実は昨今の多様性華やかな時代に世界はそんな単純な二元論では語れないのだけれど、…まあ、この点については別の機会に譲るとして。さらに次のように話されている。
     ・・・・・今年のもう一つの大きな挑戦は少子化対策です。昨年の
     出生数は80万人を割り込みました。少子化の問題はこれ以上放置
     できない、待ったなしの課題です。経済の面から見ても、少子化で
     縮小する日本には投資できない、そうした声を払拭しなければなり
     ません。こどもファーストの経済社会をつくり上げ、出生率を反転
     させなければなりません。本年4月に発足するこども家庭庁の下
     で、今の社会において必要とされるこども政策を体系的に取りまと
     めた上で、6月の骨太方針までに将来的なこども予算倍増に向けた
     大枠を提示していきます。 しかし、こども家庭庁の発足まで議論
     の開始を待つことはできません。この後、小倉こども政策担当大臣
     に対し、こども政策の強化について取りまとめるよう指示いたしま
     す。対策の基本的な方向性は3つです。第1に、児童手当を中心に
     経済的支援を強化することです。第2に、学童保育や病児保育を含
     め、幼児教育や保育サービスの量・質両面からの強化を進めるとと
     もに、伴走型支援、産後ケア、一時預かりなど、全ての子育て家庭
     を対象としたサービスの拡充を進めます。そして第3に、働き方改
     革の推進とそれを支える制度の充実です。女性の就労は確実に増加
     しました。しかし、女性の正規雇用におけるL字カーブは是正され
     ておらず、その修正が不可欠です。その際、育児休業制度の強化も
     検討しなければなりません。小倉大臣の下、異次元の少子化対策に
     挑戦し、若い世代からようやく政府が本気になったと思っていただ
     ける構造を実現するべく、大胆に検討を進めてもらいます。・・・
ということで、かなりの熱の入れようである。なぜこんなに一生懸命に少子化対策を打ち出したのか、その理由につながるのが、昨年12月16日に閣議決定した防衛強化三文書(国家安全保障戦略、国家防衛戦略、防衛力整備計画)である、という仕掛けであろう。いままでこつこつと自民党応援団の統一教会が国内各地方で市議等に働きかけて地道な活動を展開し「家庭」の大切さを切々と訴え続けてきたこと、せっかく「こども家庭庁」と「家庭」という文字まで役所名に組み込んで「家庭」を国家戦略の一つに組み込んできたこと、等々の成果も十分出てきていると踏んでいるのかもしれない。
     ・・・・・本年、再び我が国はG7議長国を務め、5月にはサミッ
     トを開催します。今年の開催地は広島です。ロシアのウクライナ侵
     略という暴挙(注②)によって国際秩序が大きく揺らぐ中で、自由、
     民主主義、人権、法の支配(注①)といった普遍的価値(注①)を守り
     抜くため、そうしたG7の結束はもとより、G7と世界の連帯を示
     していかなければなりません。同時に、対立や分断が顕在化する国
     際社会をいま一度結束させるために、グローバルサウスとの関係を
     一層強化し、世界の食料危機やエネルギー危機に効果的に対応して
     いくことが求められます。・・・・・そして、ロシアの言動により
     核兵器をめぐる深刻な懸念が高まる中、被爆地広島から世界に向け
     て、核兵器のない世界の実現に向けた力強いメッセージを発信して
     まいります。こうした考えの下、まずは、諸般の事情が許せば、1
     月9日からフランス、イタリア、英国、カナダ、そして米国を訪問
     し、胸襟を開いた議論を行う予定です。・・・・・ このうち、米
     国バイデン大統領との会談は、G7議長としての腹合わせ以上の意
     味を持った大変重要な会談になると考えています。我が国は年末に
     安全保障政策の基軸たる3文書の全面的な改定を行いました。そし
     て、それを形あるものにする防衛力の抜本的強化の具体策を示しま
     した。これを踏まえ、日本外交、安全保障の基軸である日米同盟の
     一層の強化を内外に示すとともに、自由で開かれたインド太平洋の
     実現に向けた更に踏み込んだ緊密な連携を改めて確認したいと思い
     ます。
   注記①ウィキペディアによると、英連邦加盟国は民主主義・人権・法の
   支配といった共通の価値観でつながっているそうである。さらに、加盟
   国を「自由で平等」なものとして確立したとも記されており、このまさ
   にステロタイプな語列は岸田総理の言葉ではなく、イギリス連邦からの
   借用である。つまり、普遍的価値と続けてはいるものの、別に普遍的で
   はなく、あえて言えば「イギリス的」ということである。「イギリス的
   価値を守り抜くためG7と世界との連帯を…」と読むと真実を理解しや
   すくなる。
なぜ防衛力を強化する必要があるのかがくっきりと示されている。ロシアのウクライナ侵攻(注②)によって国際秩序が揺らいでしまったので、G7諸国と協力してこの揺らぎをもとに戻す必要がある。そのためには、日本も防衛力を強化しなければならないということなのだろう。けれど、日本国憲法で国際紛争を解決する手段としての戦争は放棄されているのであり、もし、上記に具体的に示されている国々、フランス、イタリア、英国、カナダ、そしてアメリカなどともにロシアを武力で退治するということはできない相談なのである。なら、どうしょうか。そこで出てくるのが「改憲」だ。NATOオブザーバー参加国(parliamentary observer nations)としてのスタンスを確立して、❝アメリカ組❞に認められるためにも改憲して戦争のできる国にしなければならない。昔からの念願なのだ。では戦争のできる国とは何なのか。改憲については、着々と準備を進めており、統一教会系自民議員がのきなみ落選したとしても、さらに政教分離の認識が多少とも深まったりで公明が沈んだとしても、すでに維新、国民民主などの改憲サポートチームとの連立によって3分の2は確保できる、つまり改憲可能と踏んでいるのだろう。維新の躍進、さらに東進攻勢は自信を深める根拠にもなっているのではないだろうか。あえて言えば、自民主体でなく維新主体の与党でも構いはしない、というくらいの覚悟はできていると思う。18歳で選挙参加できるようにし、さらに野党がぼろぼろの今こそ解散総選挙、といった方法論をとればまず戦争禁止をうたう憲法は外されると踏むのもわかる気がする。でもそれだけでオッケー、というわけではない。同時進行的に進めているのが、予算確保して防衛3文書を実現するということだ。そうしておいてこれまた同時進行的に、人的資源の確保をはかなければならないわけである。つまり現状の自衛隊の人的規模では到底戦争は不可能だ。防衛省によれば、現在自衛隊の定員は247,154人、現隊員は230,754人にとどまる。人口6775万人のフランスでさえ31万人の軍人を抱えているのである。人口比で言えば60万くらいは欲しいところと踏むだろう。そのくらいのレベルにはもっていかなければ、という問題意識があるであろうことは容易に想像できる。それが「異次元の少子化対策」の意味だろう。でも今からって。十分だ。小池都知事が一人毎月5000円給付、などというわかりやすい政策を打ち出しているし、これに追随する自治体も出てくるだろう。18歳にもなれば十分に戦闘要員になることができる。ゼレンスキーがロシアの侵攻を受けたとたんに18から60歳までの男子の出国を禁止、消耗品としての兵力確保策に出たことも参考にしたかもしれない。戦争には「人」が要るのである。もちろん戦争で死んでくれる「人」である。ガバメント・イシュー、GIさんがたくさん必要なのだ。そのために以前から竹中=パソナラインの徹底で非正規社員溢れる国家にしたし、若者が希望持てる国ではない中で「国防」こそが若者の新しい「夢」として復活する、と読んでいるのではないか。これから5,000円給付と並んで10代向けの国防プロパガンダが増えてくるような予感がするが、悪い初夢か。
   注記②「ロシアのウクライナ侵攻」によって国際秩序が揺らいでしまっ
   た…とあり、すべての始まりはロシアの侵攻にあるとしている点がほか
   の主要マスコミの報道にも見られており、これも耳にタコができるくら
   い、私たちに刷り込まれている。単純に言っても今回の侵攻については
   ソ連崩壊1992年か、少なくとも2004年オレンジ革命まで、あるいはど
   んなに短くとも2014年マイダン革命までさかのぼらないと真実は全く
   見えない。台湾有事にしても少なくとも1972年上海コミュニケくらい
   までは遡らないと見えてこないのと同じである。
 いまから82年前1941年(昭和16年)1月22日、当時の近衛文麿内閣は「人口政策確立要綱」を閣議決定している。このなかには「一家庭に平均5児を 一億目指し大和民族の進軍」と記されているそうである。
 当時の人口は7350万人、これを1億にまで産めよ殖やせよ、と煽ったのである。目的は兵力・労働力の増強である。さらに当時の朝日新聞には「従来の西欧文明にむしばまれた個人主義、自由主義の都会的性格がいけないのだ」「自己本位の生活を中心にし、子宝の多いことを避ける都会人の多いことは全く遺憾至極である」、「結婚年齢を10年間で3年早め、引き下げる。男子25歳、女子21歳に引き下げる」、「平均5児以上をもうける」、「(昭和35年には)1億人人口を確保する」などとあり、加えて、多子家庭の優遇策や多産家庭の表彰、無子家庭や独身者には課税、などがみられるという。昨今では、2016年5月の「ニッポン1億総活躍プラン」のなかで出生率1.8%を目指す、といった感じでレベルは大きく下回ってはいるものの、発想は全く同一といってよいだろう。
 これより4年前の1937年(昭和12年)に日中戦争が本格化、物資、資金、労働力などを軍需最優先とする国家総動員政策と並行して国民精神総動員運動を推進し同年8月に「国民精神総動員実施要綱」を決定しているが、人口増を狙う近衛の政策はこれらを前提としているものと言える。
 国家が「家庭」を戦略の一環に組み込んでしまうととんでもないことになるということは歴史が証明している。団塊の世代現象が起きたのは「もう戦争がない」という安心感があって出てきたものである。安心してこどもを育てることができ人としての幸せを追求できると誰もが思ったからである。旧統一教会が「幸せな家庭生活のために」…などというのはまあ良いとしても、何ら「安心感」のないところで、国家の力で兵力・労働力確保のために新しい産めよ殖やせよ戦略を実行推進させてしまうと、8月15日の再来も単なる悪夢ではないことになるやもしれない。
(文責:吉田)
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防衛力の抜本的強化~有識者会議への防衛省提出資料~

2023-01-06 | 小日向白朗学会 情報

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昭和27年締結「行政協定」からみた岸田内閣総理大臣訪米の目的 -台湾有事に参戦させられる自衛隊-

2023-01-06 | 小日向白朗学会 情報
2023年1月3日付け朝日デジタルに『岸田首相、ラジオで「米国の役割果たしてほしい」 早期訪米にも意欲』とする記事が掲載された。
『……
岸田文雄首相は3日の文化放送のラジオ番組で、「今年早いうちに日米同盟の強化、確認のためにも米国に行きたい」と述べ、早期訪米に改めて意欲を示した。日本の防衛力強化について「米国にも理解してもらい、日米同盟に基づいて米国の役割をしっかり果たしてもらいたい」と語り、それぞれの役割をバイデン米大統領と確認し、信頼関係を高める考えを強調した。
 番組は昨年12月19日に収録された。首相は「(バイデン氏に)防衛力強化のありようについてしっかり説明する。日米同盟の抑止力・対処力を高めることにつながるので、米国にもしっかり協力してもらいたい。こうした確認をすることは大事だ」と話した
……』
岸田総理大臣は、第211回国会(常会)が開催される令和5年1月中旬までに、日米同盟(日米安全保障条約)を締結しているアメリカを訪問して、日本周辺の緊張が高まる中で安全保障に付いて会談を行いたいということを述べたものである。
日本とアメリカとの間で締結している安全保障条約は長い歴史がある。昭和26(1951)年9月8日サンフランシスコで講和条約を締結したその日に「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約」いわゆる(旧)日米安保条約を締結している。それは次のようなものである。
『……
日本国は,本日連合国との平和条約に署名した。日本国は,武装を解除されているので,平和条約の効力発生の時において固有の自衛権を行使する有効な手段をもたない。……よつて,日本国は平和条約が日本国とアメリカ合衆国の間に効力を生ずるのと同時に効力を生ずべきアメリカ合衆国との安全保障条約を希望する。……これらの権利の行使として,日本国は,その防衛のための暫定措置として,日本国に対する武力攻撃を阻止するため日本国内及びその附近にアメリカ合衆国がその軍隊を維持することを希望する。
……
第一条 平和条約及びこの条約の効力発生と同時に,アメリカ合衆国の陸軍,空軍及び海軍を日本国内及びその附近に配備する権利を,日本国は,許与し,アメリカ合衆国は,これを受諾する。この軍隊は,極東における国際の平和と安全の維持に寄与し,並びに,一又は二以上の外部の国による教唆又は干渉によつて引き起こされた日本国における大規模の内乱及び騒じようを鎮圧するため日本国政府の明示の要請に応じて与えられる援助を含めて,外部からの武力攻撃に対する日本国の安全に寄与するために使用することができる。
第二条 第一条に掲げる権利が行使される間は,日本国は,アメリカ合衆国の事前の同意なくして,基地,基地における若しくは基地に関する権利,権力もしくは権能,駐兵若しくは演習の権利又は陸軍,空軍若しくは海軍の通過の権利を第三国に許与しない。
第三条 アメリカ合衆国の軍隊の日本国内及びその附近における配備を規律する条件は,両政府間の行政協定で決定する。
……」
であった。この条約の最も核心部分である日本の防衛のために駐留するアメリカ三軍が日本国内で如何なる条件なのかについて記載がなく、第三条の行政協定で取り決めるとなっている。つまり批准を必要とする条約内には安全保障を遂行する軍隊に関係する事項を記入せず、批准を必要としない協定に入れて軍事のことを伏せている。問題の行政協定には、当時の交渉過程を記録した文書が残されていて、その中に指揮権を秘密裏に決定してゆく様子も残されていた。
『1……
第四章 集団的防衛措置
(一)日本国域内で、敵対行為又は敵対行為の緊迫した危険が生じたときは、日本国地域にある全合衆国軍隊、警察予備隊及び軍事的能力を有する他のすべての日本国の組織は、日本国政府と協議の上合衆国政府によって、指名される最高司令官の統一的指揮の下に置かれる。
……』
ここでいう警察予備隊とは後の自衛隊である。つまり警察予備隊はアメリカ軍の指揮下に入ることになっていた。この条項は、その後、整理されて第24条としてまとめられることになった。
『……
第二十四条
日本区域において敵対行為または敵対行為の急迫した脅威が生じた場合には、日本国政府及び合衆国政府は、日本区域の防衛のため必要な共同措置をとり、かつ安全保障条約第一条の目的を遂行するため直ちに協議しなければならない。
……』
と、アメリカ軍が警察予備隊の指揮権を握ることは記載されずに密約となった。その後、昭和35年に安保条約を締結し、昭和55年に同条約は改定されている。しかし、軍事の核心部分である自衛隊の指揮権はアメリカが掌握したままなのである。また、日米安保を締結した岸信介は、日米安保の本質は「憲法を改正して自衛隊を海外派兵できるようにすること」だと断言していた。
したがって岸田総理大臣がアメリカでバイデン大統領と安全保障に関して会談する際の条件は「自衛隊がアメリカ軍の指揮下に入っている」ということが大前提で、次に「自衛隊が海外派兵できるように努力している」なのだ。
ところで、岸田総理大臣は、行政の長であることは自明である。その中でも自衛隊に関してはこれまた特別な地位を与えられている。それを定めているのは「自衛隊法」である。
『……
(自衛隊の任務)
第三条 自衛隊は、我が国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、我が国を防衛することを主たる任務とし、必要に応じ、公共の秩序の維持に当たるものとする。
2 自衛隊は、前項に規定するもののほか、同項の主たる任務の遂行に支障を生じない限度において、かつ、武力による威嚇又は武力の行使に当たらない範囲において、次に掲げる活動であつて、別に法律で定めるところにより自衛隊が実施することとされるものを行うことを任務とする。
一 我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態に対応して行う我が国の平和及び安全の確保に資する活動
二 国際連合を中心とした国際平和のための取組への寄与その他の国際協力の推進を通じて我が国を含む国際社会の平和及び安全の維持に資する活動
3 陸上自衛隊は主として陸において、海上自衛隊は主として海において、航空自衛隊は主として空においてそれぞれ行動することを任務とする。
……
第二章 指揮監督
(内閣総理大臣の指揮監督権)
第七条 内閣総理大臣は、内閣を代表して自衛隊の最高の指揮監督権を有する
……』
岸田総理大臣が自衛隊の最高指揮権を有しているのだ。つまり自衛隊の最高指揮権を有する岸田内閣総理大臣が訪米して安全保障に付いて会談するということは、日米安保条約で自衛隊の指揮権を握るアメリカ大統領に自衛隊の状況を報告に行くということなのだ。自衛隊の指揮権をアメリカに移譲したのは国内法であることから、行政の長である岸田がアメリカに出かけて「移譲していることを確認する文書」に署名してくる以外にないのだ。岸田総理大臣に限らず歴代自民党総裁で内閣総理大臣になった者も含め流石に日本国内で「移譲していることを確認する文書」に署名することはできないはずで、おのずと訪米ということになる。吉田茂が、講和条約締結したその日に、国防権を売却した方法と同じなのだ。
では、岸田総理大臣は、アメリカの最高指揮官に安全保障問題で如何なる案件を報告しようとしているのか。それを知るには、令和4年9月22日、内閣総理大臣岸田文雄が「国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議」の開催を決定したことから見えてくる。
令和4年09月30日(17時00分から17時50分)に開催された第一回目の会議には、有識者として上山隆大、翁百合、喜多恒雄、園部毅、黒江哲郎、佐々江賢一郎、中西寛、橋本和仁、山口寿一が、政府側として岸田内閣総理大臣.木原内閣官房副長官〔官房長官代理〕、林外務大臣、鈴木財務大臣、浜田防衛大臣等が出席した。
 冒頭、木原内閣官房副長官より同会議の開催趣旨について説明がった。その要点は次の通りであった。
我が国を取り巻く厳しい安全保障環境を乗り切るためには……自衛隊の装備及び活動を中心とする防衛力の抜本的強化のみならず、自衛隊と民間との共同事業、研究開発、国際的な人道活動等、実質的に我が国の防衛力に資する政府の取組を整理し、これらも含めた総合的な防衛体制』の強化について、検討する必要がある。
……』
次いで、座長の選任が行われ外務省OBの佐々江賢一郎が選出された。続いてこれもまた外務省出身の秋葉剛男国家安全保障局長より「安全保障環境の変化と防衛力強化の必要性」について説明をおこなった。つまり秋葉が提出した資料が、現在の日本が抱える安全保障上の問題箇所だということになる。
『……
  • 国際秩序は深刻な挑戦を受けている。
  • 今回のウクライナへの侵略のような事態は、将来、インド太平洋地域においても発生し得るものであり、我が国が直面する安全保障上の課題は深刻で複雑なもの。
  • ロシアによるウクライナ侵略は.力による一方的な現状変更であり、国際秩序の根幹を揺るがす深刻な課題
  • 中国は、力による一方的な現状変更やその試みを継続し.ロシアとの連携も深化.更に.今般の台湾周辺における威圧的な軍事訓練に見られるように、台湾統一には武力行使の放棄を約束しえない構え
  • 北朝鮮は、弾道ミサイルの発射を繰り返しているほか、核実験の準備を進めているとされており、国際社会への挑発をエスカレート
……』
と、日本が抱える安全保障上の問題点を整理している。
その後、政府側として最初に発言したのが林芳正外務大臣であった。つまり「国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議」は、外務省の要請により設置した諮問機関であるということになる。したがって「力としての防衛力を総合的に考える有識者会議」という日本の安全保障を提言する有識会議は、日本政府が今後採用する安全保障に関する方針なのだ。
では日本の安全保障上問題となる国、いわゆる仮想敵国はどこか。この疑問に対して明確に答えている資料がある。それは同有識者会議に内閣官房国家安全保障局が提出した「安全保障環境の変化と防衛力強化の必要性」である。その一部を添付しておいた。
結論から言うと外務省は、日本政府に対してロシア、中国、北朝鮮を仮想敵国とすることを提言しているのだ。そして、台湾有事を導火線に尖閣諸島に日本の安全保障上に大きな影響が生じるという参考資料を事務局が提出している。つまり事務局は、有識者会議が出すべき結論を示しているのだ。いわゆる、出来レースということになる。それはさて置き以下がその回答である。
「……
経済財政運営と改革の基本方針2022 について(抄)〔令和4年6月7日 閣議決定〕
第3章 内外の環境変化への対応
1.国際環境の変化への対応
(1)外交・安全保障の強化 国際社会では、米中競争、国家間競争の時代に本格的に突入する中、ロシアがウクライナを侵略し、国際秩序 の根幹を揺るがすとともに、インド太平洋地域においても、力による一方的な現状変更やその試みが生じており、安全保障環境は一層厳しさを増していることから、外交・安全保障双方の大幅な強化が求められている。(略) また、NATO諸国においては、国防予算を対GDP比2%以上とする基準を満たすという誓約へのコミットメントを果たすための努力を加速することと防衛力強化について改めて合意がなされた(注)。(略)
また、前述の情勢認識を踏まえ、新たな国家安全保障戦略等の検討を加速し、国家安全保障の最終的な担保となる防衛力を5年以内に抜本的に強化する。(略)
本年末に改定する「国家安全保障戦略」及び「防衛計画の大綱」を踏まえて策定される新たな「中期防衛力整 備計画」の初年度に当たる令和5年度予算については、同計画に係る議論を経て結論を得る必要があることから予算編成過程において検討し、必要な措置を講ずる。
(注)NATO諸国の中でG7メンバーでもあるドイツは、国防予算を対GDP比2%とすることを表明し、そのために憲法に相当する基本法を改正し、 新規借入によって1,000 億ユーロの特別基金を設立しつつ、その償還方法については別途法律で定めることとしている。

令和5年度の予算の全体像(抄)〔2022年7月29日 経済財政諮問会議〕 
2.令和5年度予算編成に向けて 
新たな「中期防衛力整備計画」の初年度に係る施策、(略)については、予算編成過程において検討する。(略) このため、骨太方針2022に基づき、別紙の取組を進める。 (別紙)2.重点分野への投資促進等 l
・科学技術イノベーションと防衛費:スタートアップ含め国内防衛生産・技術基盤の維持・強化、CSTI等との連携強化、デュ アル・ユース技術の活用など

平成31年度以降に係る防衛計画の大綱について(抄)〔平成30年12月18日 国家安全保障会議決定・閣議決定〕
1 Ⅲ 我が国の防衛の基本方針
1.我が国自身の防衛体制の強化
(1)総合的な防衛体制の構築 これまでに直面したことのない安全保障環境の現実に正面から向き合い、防衛の目標を確実に達成するため、あらゆる段階において、 防衛省・自衛隊のみならず、政府一体となった取組及び地方公共団体、民間団体等との協力を可能とし、我が国が持てる力を総 合する防衛体制を構築する。特に、宇宙、サイバー、電磁波、海洋、科学技術といった分野における取組及び協力を加速するほか、 宇宙、サイバー等の分野の国際的な規範の形成に係る取組を推進する。
我が国が有するあらゆる政策手段を体系的に組み合わせること等を通じ、平素からの戦略的なコミュニケーションを含む取組を強化する。(略)
また、国民の生命・身体・財産を守る観点から、各種災害への対応及び国民の保護のための体制を引き続き強化し、地方公共団 体と連携して避難施設の確保に取り組むとともに、緊急事態における在外邦人等の迅速な退避及び安全の確保のために万全の 態勢を整える。
さらに、電力、通信といった国民生活に重要なインフラや、サイバー空間を守るための施策を進める。
……』
有識者会議が提案すべき防衛予算の捻出の仕方まで懇切丁寧に模範解答を示しているのだ。そして令和4年11月22日、「岸田総理は、総理大臣官邸で国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議の佐々江賢一郎座長から報告書を受け取りました」となったのだ。
その結果、令和4年12月から防衛費の大幅増額が急浮上することとなった。それもこれも、すべて「自衛隊の最高指揮官であり行政の長である内閣総理大臣岸田文雄」が渡米して、日米安保条約の定めに従い極東の有事に対応できる軍備拡張を計画し実行していて、予算も確保したこと、「自衛隊指揮権を移譲していることを確認する文書」に署名するためなのである。以上のような現地司令官からの状況報告を受けたアメリカは、自衛隊を海外派兵して台湾有事に活用する道が開かれることになるのだ。

ではアメリカが思い描く台湾有事と自衛隊の関係を思い描いてみる。
台湾有事の場合に、日本は台湾有事に尖閣諸島に自国領防衛という名目で海岸堡を構築することで台湾に侵攻する中国軍を側面から脅かす布陣となって台湾正面に対する圧力を軽減させるであろう。併せてバシー海峡にアメリカ海軍が布陣することで台湾の太平洋側に中国軍は回り込むことができなくする。これに対して中国軍は「祖国統一」を旗印に尖閣諸島に対する侵攻を決意して外洋への出口を探ることになる。つまり、尖閣諸島で日本は「祖国防衛」、中国は「祖国統一」でぶつかりあうことになる。

帝国憲法には第11条で陸海軍の指揮権が、第13条には開戦と講和についての検眼が明記されていた。しかし、現行憲法は、開戦も講和も何ら規定されていない。それは日本国憲法前文に戦争放棄を謳っているため戦争に関係する条文は存在しないことから日本から戦争を開始することはない。さらに、日本は陸海空自衛隊の指揮権をアメリカに譲渡していることからアメリカ軍の都合で開戦が決定してしまうのだ。
全く持って馬鹿げた話である。
そもそも尖閣諸島の領有を蒋介石に勧めたのが岸信介である。その話に応じた蒋介石が尖閣諸島の領有を宣言し、周辺の海域の石油採掘権をガルフ石油に売却した。その後のガルフ石油は日本政府に石油開発を諦めることを約束したが、当の台湾は尖閣諸島を自国領と宣言したことをいまだもって取り消していない。これは巧妙の罠である。
つまり、中国は、台湾に侵攻した場合に尖閣諸島も攻略する必要がある。そのため中国は、台湾に侵攻を決意した場合に日本との開戦となることを覚悟する必要がある。つまり台湾は、中国が台湾に侵攻することを躊躇させる抑止材料として尖閣諸島問題を利用しているのだ。(寄稿:近藤雄三)

以上


 
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日米安保と同時に締結された「行政協定」~~えっ!?司法まで売り飛ばしていたって!?

2023-01-05 | 小日向白朗学会 情報
 国立公文書館に行政協定に伴う各種文書が保存されている。ほとんど極秘の印が押されているらしい。そのなかから、第17条(行政協定)、第18条(行政協定)という部分を散見すると、こんな文章が見られる。
≪・・・・合衆国の軍事裁判所および当局は、合衆国軍隊の構成員及び軍属並びにそれらの家族が日本国内で犯すすべての罪について、専属的裁判権を日本国内で行使する権利を有する。・・・・・≫

≪・・・・・日本国の当局は、合衆国軍隊が使用する施設及び区域外において、合衆国軍隊の構成員若しくは軍属又はそれらの家族を犯罪の既遂又は未遂について逮捕することができる。しかし、逮捕した場合には、逮捕された一又は二以上の個人を直ちに合衆国軍隊に引き渡さなけければならない。‥・・・≫

 そういえば思い当たるふしはいっぱいあるのではないだろうか。日本の司法がだらしないだけと思っていたら、そんなことではなかった。もともと日本の司法自体が売渡されていた。まさに「治外法権」なのではないか。ちゃーんと文書にされている。条約なんかにしちゃうとみんなに分かっちゃうので、うまーく行政の長の間でのお約束事よ、といった体にして隠している。日本の司法はちゃーんとそれを守っただけなのだろう。そういえば、我が国の行政の長、岸田さんは新年早々13日に訪米なさるそうな。バイデンさんと、つまり行政の長同士でお会いになって、まさかね‥まさか指揮権の移譲を約束なんてしてこないよね…。自衛隊は日本を守るのですよね…。

≪行政協定に伴う法律案要綱≫
 (文責:吉田)
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指揮権論議の経緯~~70年前くらいにかくも論議されていたものの~~何がどうよくなった?≪資料編≫

2023-01-05 | 小日向白朗学会 情報

1. 第19回国会 衆議院 外務委員会 第1号 昭和28年12月11日
140 並木芳雄

○並木委員 次に陸軍、海軍、空軍の三軍の統帥権の問題でございます。三軍の統帥権については、現在の憲法下ではあるいは国会にあるのではないか、あるいはいな、それは総理大臣にあるのだ、あるいはまた現在の憲法ではその点がはつきりしておらないのだ、だから新たに規定を設けなければ、統帥権というものは出て来ないのだろうというように、説がいろいろあるようでございます。この際、三軍の統帥機関などの問題が出ておりますから、はつきり政府として、現憲法下において統帥権の所在は何人にあるのか、その点を解明していただきたいと思います。

141 佐藤達夫

○佐藤政府委員 統帥権という言葉自身、私あまり好みませんので、統率権という言葉でお答えをさせていただきますが、元の統帥権に当るような指揮権というものを、現在の憲法のもとで、かりに保安隊を自衛隊に直した場合にどこが持つことになるかというお尋ねだと思います。これについては、今のお話にもありましたように、そういう統率権というものの性格が何であるか、すなわち立法、司法、行政の、三権の外にあるもう一つの違う第四権のようなものだ、本来そういうものだという議論になりますと、話は現在の憲法にはもう乗つて来ないことだと思います。しかし私どもの考えておりますところでは、そういう指揮権、統率権というものは、やはり今の三つの権力の分立の中で分類すれば、広い意味の行政権に入ると見ざるを得ない、また見ることが正しいことだろうと思つております。それが正しいといたしますと、今の憲法の建前から、これはもう並木さんには釈迦に説法になりますけれども、行政権が内閣にあり、そして内閣は行政権の行使について国会に全責任を持つという仕組みの中にはまつて参りますから、やはり一応内閣の責任のもと、統率のもとということに立つのじやないか、そしてそれに関して国会に責任を負うという仕組みになるだろうと思つております。

2. 第19回国会 衆議院 予算委員会 第16号 昭和29年2月20日
107 岡良一
○岡委員 非常に私ども遺憾な御答弁であると思う。言いかえれば、そういう点については政府としても何の御用点も定見もない、こういうふうにおつしやるということは、私どもとしてはほんとうに遺憾にたえません。  重ねてお尋をいたしますが、今日本の現行法規を見てみますと、こういうような事態に関しては、警察法の第六十二条以下のいわゆる同次非常事態というものがある、内乱であるとか騒擾であるとか、重大な災害が起つたときに、治安を維持するがために、国家非常事態を国家公安、委員会の勧告によつて内閣総理大臣は布告することができると書いてある。そういたしますと、日本の警察力というものが日本全域において、あるいはまたその非常事態が宣言された地域においては、これは内閣総理大臣の掌握するところになつておる。こう規定してあるわけなんです。しかしながら警察力は、言うまでもなくこの法律によれば、治安の確保に任ずるとしても、自衛隊は国内における大規模な騒擾等の鎮圧とともに、法が改正されるならば、面接の侵略にも対抗しなければならぬということになる。しかもその指揮がこれまた内閣総理大臣に属する、こういうことに相なりますと、保安庁法改正と警察法の改正とこれを両者合せて考えますと、そういう事態になつたときにおける内閣総理大臣の権限というものは、非常に大きなものになる。私はここであのナチス・ヒトラーの政権獲得の経過を想起いたすのでありますが、一九三一年にあのヒトラーが議会で第一党になつた、次々と絶対的な権力をみずからかちとり、とうとうヒンデンブルグ大統領をたな上げにし、ロボットにし、さらにこれをしりぞけてみずからが総統の地位に上り、国の一切の権力を掌握し、この権力を持つて一切をかり立てて戦争に向つて行く、私どもは今日保安庁法の改正や警察法の改正、これら一連の事実について見ましても、こういう事態を準備するのではないかという懸念を持つのでありますが、こういう問題は、もちろんこれまた政府との間における見解の相違ということになりましようから、私はあえてこの問題に対して深入りはいたしません。  そこで重ねてお伺いをいたしたいのでありますが、ただいまのこの政府の御答弁、緒方副総理の御答弁は非常に不明確であり、むしろ無責任だと思うのですが、こういう事態に立ち至つたときには、やはり日本軍の司令官なら日本軍の司令官に指揮権があるというような点についての明確な規定が、条約なり協定なり法律の上においてあるべきだと思う。こういう点についての御用点があるかないかを重ねてお伺いをいたします。

108 小滝彬
○小滝政府委員 そのときの事態によつてかわることでありまして、かりに日本が指揮をとつた結果事実上悪いということもあり得るのでありまして、これまでも主権国で、そういう外国との話合いによつて向うの司令官が出たということもあるわけであります。でありますから、これと主権国の地位というものとの矛盾は何もない。ただそういうことはきまつておるわけではなしに、そのときの事態に応じて決定せられるべきである。しかもそれは、決して主権国の地位を害するものではないということを申し上げる次第であります。

3. 第19回国会 衆議院 予算委員会 第16号 昭和29年2月20日
107 岡良一
○岡委員 非常に私ども遺憾な御答弁であると思う。言いかえれば、そういう点については政府としても何の御用点も定見もない、こういうふうにおつしやるということは、私どもとしてはほんとうに遺憾にたえません。  重ねてお尋をいたしますが、今日本の現行法規を見てみますと、こういうような事態に関しては、警察法の第六十二条以下のいわゆる同次非常事態というものがある、内乱であるとか騒擾であるとか、重大な災害が起つたときに、治安を維持するがために、国家非常事態を国家公安、委員会の勧告によつて内閣総理大臣は布告することができると書いてある。そういたしますと、日本の警察力というものが日本全域において、あるいはまたその非常事態が宣言された地域においては、これは内閣総理大臣の掌握するところになつておる。こう規定してあるわけなんです。しかしながら警察力は、言うまでもなくこの法律によれば、治安の確保に任ずるとしても、自衛隊は国内における大規模な騒擾等の鎮圧とともに、法が改正されるならば、面接の侵略にも対抗しなければならぬということになる。しかもその指揮がこれまた内閣総理大臣に属する、こういうことに相なりますと、保安庁法改正と警察法の改正とこれを両者合せて考えますと、そういう事態になつたときにおける内閣総理大臣の権限というものは、非常に大きなものになる。私はここであのナチス・ヒトラーの政権獲得の経過を想起いたすのでありますが、一九三一年にあのヒトラーが議会で第一党になつた、次々と絶対的な権力をみずからかちとり、とうとうヒンデンブルグ大統領をたな上げにし、ロボットにし、さらにこれをしりぞけてみずからが総統の地位に上り、国の一切の権力を掌握し、この権力を持つて一切をかり立てて戦争に向つて行く、私どもは今日保安庁法の改正や警察法の改正、これら一連の事実について見ましても、こういう事態を準備するのではないかという懸念を持つのでありますが、こういう問題は、もちろんこれまた政府との間における見解の相違ということになりましようから、私はあえてこの問題に対して深入りはいたしません。  そこで重ねてお伺いをいたしたいのでありますが、ただいまのこの政府の御答弁、緒方副総理の御答弁は非常に不明確であり、むしろ無責任だと思うのですが、こういう事態に立ち至つたときには、やはり日本軍の司令官なら日本軍の司令官に指揮権があるというような点についての明確な規定が、条約なり協定なり法律の上においてあるべきだと思う。こういう点についての御用点があるかないかを重ねてお伺いをいたします。

108 小滝彬
○小滝政府委員 そのときの事態によつてかわることでありまして、かりに日本が指揮をとつた結果事実上悪いということもあり得るのでありまして、これまでも主権国で、そういう外国との話合いによつて向うの司令官が出たということもあるわけであります。でありますから、これと主権国の地位というものとの矛盾は何もない。ただそういうことはきまつておるわけではなしに、そのときの事態に応じて決定せられるべきである。しかもそれは、決して主権国の地位を害するものではないということを申し上げる次第であります。

109 岡良一
○岡委員 とにかく私がこういう点を究明いたしますのは、保安庁法を改正し、警察法を改正し等々のいわゆる反動的な立法によつて、いわば権力の集中化をはかり、しかも私どもが指摘しましたような最終の最も大きなポイントにおいては非常にあいまいである。場合によれば、いわば吉の旧憲法における戒厳令にひとしいような状態のもとにおいて、日本国民の基本的な権利なり自由なり生命なり財産なり、日本の立法権なり行政権なり司法権なりまでも非常に大きな制限を受けなければならないという事態において、小瀧さんのお答えによれば、時と場合によれば第三国軍隊の指揮官があるいは指揮をとるかもしれない。実質的に考えたところで、軍事力の優位するものが当然に指揮権をとるというようなことになつては、その瞬間にわが国の独立とわが国の主権が失われる。私どもはそういう観点から、政府のこの一連の反動、特にこれの主権との関連における点をただしたのでありますけれども、政府の御答弁というものはきわめて不明確であり、無責任であり、不分明であるということを私は非常に遺憾に思う。この点についてはまた別の機会にお伺いをいたしたいと思います。

4. 第19回国会 参議院 予算委員会 第8号 昭和29年3月9日
061 中山福藏

○中山福藏君 その点につきましては十分お考えを給わりまして、国民の納得するような態度をおとり下さるようお願いいたします。殊に吉田首相は個人としては誠にあつさりした、人間と神様の中間を今歩いておられると私は思う。高橋是清氏も非常にあつさりして、国民の信頼を受けましたが、それは垢抜けのした政治家が国会に必要なんだからです。垢抜けまでもう一歩でお入りになると思うのですが、こういうところをあつさりした釈然たる気持で御答弁を願つて、これはわかつた、これから一つそうしようというようなところに落して頂きたいと私は考えておるのでございます。  そこで木村長官がおいでになりましたからお尋ねいたしますが、首相はこの陸海空軍の自衛隊長として、統帥権を把握される。そこで統帥権というのは一体憲法のどこに準拠してこの統帥権、いわゆる最高の指揮監督権というものを持たれるのですか、大体旧憲法の十一条、十二条。十一条には統帥権がはつきり書いてある。十二条には編制権或いは常備兵額というものがちやんと書いてある。然るに今回の自衛隊を設置するということが単に憲法の第九条に該当しないというだけでこれが出発している。私は少くとも国民の基本的な人権に関する事柄につきましては、憲法のどこかにその準拠を持つていなければならんという確信を持つております。保安長官はそういう点についてお考えになつておらなかつたのでしようか。是非御意見を承わつておきたい。

062 木村篤太郎

○国務大臣(木村篤太郎君) お答えいたします。この自衛隊に関しましては内閣を代表する総理大臣が指揮監督権を持つております。要は行政権に属するものであります。いわゆる行政府の長でありまする内閣総理大臣、国会に責任を有する内閣総理大臣、これが指揮監督権を持つておるわけであります。その指揮監督権の下に長官が指揮を受けて部隊を更に統率するということになつておりまするので、いわゆる旧憲法にいう統帥権とは全くその性質を異にするものであります。


5. 第19回国会 参議院 本会議 第20号 昭和29年3月18日
038 山下義信

○山下義信君 私は社会党第二控室を代表し、国家の運命に関する我が国の防衛問題、即ちここに提出された二法案に対し、政府の所信を質さんとするものであります。  第一は、首相の政治責任であります。吉田首相は我が国の防衛問題を巧みに利用し、これを以て政権維持の具に供し、久しく権勢の座を占めて、おのれ一身の栄華をほしいままにし来つたのであります。国民に対しては、如何にも米国に抵抗して再軍備に反対するかのごとく見せかけ、一方米国に対しては、保守勢力を糾合して、彼の要望に添うかのごとく振舞い、一歩々々譲歩することによつて彼の歓心を購い、以て内閣の寿命を延長することに成功したのであります。吉田個人は、疑いもなくその政権慾を満足せしめたでありましよう。併し首相の浪費によつて多くの負債を残された国民は、いよいよ不幸のどん底に陥ろうとしているのであります。吉田積年の悪政は、今日の世相に厳然として現われております。悪政の毒素は、国民の骨髄にまで浸潤するに至りました。国民の気力は沮喪し、独立再建の萌芽は悉くむしり取られ、国家崩壊の危機は恐るべき勢いを以て日増しに増大しつつあるのであります。然るに吉田首相は、内外の情勢に逆行し、国力後退、人心悪化のさ中において、従来の態度を一変し、再軍備への前進を開始したのであります。彼は国民との公約を裏切つたのであります。彼の「憲法は改正いたしません」と称するは、憲法尊重の念から出でたものではないのであつて、実は国民投票に敗れることを知るからであります。卑怯未練な吉田首相は、選挙においては再軍備反対に似せて、我らの投票を詐取し、今においては堂々雌雄を決することを避け、明らかに憲法を蹂躙して強引に押し切り、既成事実を作つて否応なしにこれを国民に押しつけんとするものであります。(拍手)ややもすれば時の権力者に盲従する封建性と、こうなつた以上は仕方がないとする現実追随の諦らめ性と、この国民性の弱点に乗じ、事をうやむやのうちに決せんとするは、如何に吉田首相が経国の宰相に非ずして、ただ単に一個の政権亡者に過ぎざるかを雄弁に物語るものであります。(拍手)政治というものが、うまく国民をだますにありというならば、伊藤斗福と吉田茂といくばくの差があるでありましようか。(拍手)我々は、吉田首相が桑港以来予定のコースをとりながら、終始国民を欺き、重大政策の変更に当つては、当然総辞職するか又は解散を以て信を天下に問うべきにかかわらず、依然居据り工作に耽るがごときは、断じて許容し得ざるところであります。(拍手)内閣は如何なる出処進退を以て今後の政局に対処せんとするか。その所信を承わりたいのであります。  第二は、政府の防衛計画には、更に自主性がなく、自衛隊の性格はまさに傭兵的であるという点であります。ラドフォード統合会議議長、スチブンソン陸軍長官らによつて決定された米国の極東防衛計画は、即ち沖縄を以て世界最強の基地となし、これに原子兵器を貯え、日本駐留の第三海兵師団、空挺連隊、水陸両用戦車部隊を以て新たに機動部隊を編成し、東はハワイ、南は比島の中間までを防衛線とし、沖縄から八百キロの上海に向つてその焦点を集中するの態勢であります。これがため在日米軍の地上部隊として、且つ朝鮮部隊の補充として、日本陸軍十個師を要求し来たつたことは、世間周知の事実であります。米国の態度は意外に強硬で、MSAの交渉過程においても峻厳にこれを迫り、政府は遂にその要求に屈服したのであります。一個師一万八千に食い止めたなどと手柄顔に申しておりますが、その実は予備役を入れて二十二万五千の兵力となし、更に或る種の方法を以て三十二万の兵力となすことは、秘密の了解事項となつているのであります。(拍手)而してこれらの兵力は、我が国防衛上自主的に計画割出されたものではなく、米国がアジアにおける作戦用兵上の必要量でありまして勿論海外派兵をも含め、すべて彼の方針に基き、我がほうの計画というものは全然樹立されてはいないのであります。ただ彼の損害と危険の分担をさせられたに過ぎないのであります。自衛隊ではなくて他衛隊であります。従つて国力との勘案など寸毫も顧慮されてはいないのであります。未だ国防の方針なくして、先ず軍隊を先に作るは、これ即ち米国の傭兵なるが故であります。政府は今次の増強計画を以て果して自主的計画に基くと断言することができますか。文大蔵大臣は如何に国力を勘案したと言うか、防衛費用の総額を幾ばくに抑えんとするや、民生安定費との均衡を如何に考慮したと言うか。財政当局としての所員を伺いたいのであります。  木村長官に伺いたいのは、前述の自主的計画の有無と共に、在日米軍撤恨計画との関係であります。すでに米軍の撤退につきましては、その年次計画が示されてあり、これに対応してMSAの交渉において、我がほうの計画書が提出されてあるのであります。保安庁当局はその一部、即ち昭和三十年度の増強計画を最近に発表いたしました。陸上二万二千名、海上六千名、艦船二十二隻、空軍八千六百名、二百八十機と発表いたしておりますが、この際、その全部をお示し願いたいと思います。  なお、米軍の撤退については、MSA協定発表に際し、両国の当事者は、その促進を声明いたしましたが、事事はこれに反しまして、撤退計画は延期せられ、一部は永久駐留に変更せら九たのではないかと思われます。現に二月十七日、スミス極東委員長代理等の三者会議において、これが決定を見、アリソン大使は旨を受けて帰任したという報道があります。各地の米軍基地関係者も、非公式にこれを肯定しているようでありますが、外相の答弁を粛めたいと思います。  傭兵的性格の顕著なるものは、貸与兵器の問題であります。貸与兵器の大部分は相当の中古品であつて、カービンや小銃等は十年十五年の古品が多く、中には使用に耐えないようなものがあります。今回MSAの貸与に対しまして、日本の要望する兵器は全部断わられたということでありますが、そのことはともかくといたしまして、これらの兵器を通じて、まさしく米軍の完全なる支配を受けているのであります。即ち兵器は、一人々々が米国から貸与された形となつておりまして、みだりに使用すれば一年以下の懲役、万一損傷すれば五年以下の懲役が課せしれ、米軍顧問団によつて厳重に管理されるという建前であります。米軍の許可がなくば兵器の使用はできないという軍隊、隊員の持つ兵器の監督権は上級指揮官になくして米軍にあるという自衛隊、これでも政府は傭兵的でないと言い切ることができましようか。貸与兵器を通じて、完全に米軍の支配を受けているではありませんか。更に不可解なことは、兵器はあつても弾薬はないという事実であります。海上自衛隊で言えば、船は借りても油がないという関係に置かれております。今日の発射速度において、弾薬の需要量は、旧陸軍の十倍以上を必要とすることは論のない常識でありますが、これら弾薬の数量、貯蔵、保管、出入の権限等は如何なる状態に置かれてあるのでありますか。恐らく米国側と何らかの秘密協定があつて、自衛隊自身の自由にはできないことになつていると考えられます。軍機秘密保護法の必要なるゆえんでありましよう。明瞭に御説明を頂きたいと思います。  いま一つ重要なるは、軍事頑固団の使命であります。MSAによりまして七百名という大量の顧問団が正式に派遣され、四億近い経費が負担させられるのでありますが、かかる多数の軍事頑問団を何故必要とするのでありましようか。真の目的は果して奈辺にあるのでありましようか。曾つて大隈内閣の時代において、数名の軍事顧問団を派遣するということに対してすら、当時の中国がこれを国辱として、容易に承服しなかつたという事実があります。然るに今は七百名という空前大量の軍事顧問団を、鞠躬如として迎えんとするのであります。隔世の忍なきを得ないのであります。政府はこれらの任務を兵器の監督、訓練の指導など、さり気なく弁疏しておりますが、何ぞ図らん、これらの顧問団は作戦命令によつて組織的に構成せられ、それぞれ任務を与えられて各部隊に配属し、一朝有事の際には直ちに早変りして日本人部隊を準星し、これを指揮命令して米軍部隊に薪属せしむるのが其の目的であることは、火を見るよりも明らかであります。(拍手)これを以ても自衛隊の性格が傭兵的でないと断言できるでありましようか。責任ある御答弁を望みます。  次は仮想敵国の問題であります。政府は我が国防衛の目標として、ソ連、中共を仮想敵国とするもののごとくであります。現に一月二十八日の本議場におきまして首相はこれを明言しております。併し国民はむしろ奇異の感に打たれるものである。今日多くの国民は、貿易の増大、引揚げの促進等、心から彼らとの友好を望みこそすれ、何人も政府のごとくこれを敵視いたしまして他日の一戦を試みようとするがごとき者は、恐らく吉田首相と木村長官以外には一人もないと思うのであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり、拍手)政府は何が故に、ソ連、中共を目して仮想敵国としなければならないか。又、政府はしばしば米国側から極東の軍事情勢を聞かされておるようでありますが、侵略の危険性がどの程度緊迫しているというのであるか。どの程度宿意性がありと考えられるか。政府は国民の前にこれを説明する義務があると信じます。  第三は徴兵制度の問題であります。政府は飽くまで志願兵制度で行くとシラを切つておりますが、果して徴兵制度は永久に採らない覚悟であるかどうか。ここで言明を願いたいのであります。自衛隊員の募集につきましては、過去のデータから推測いたしまして、その人員に限度のあることは数字上極めて明白であります。昭和二十九年は、満期者その他で六万五千名、新規増員三万名、合せて十万名の募集を必要とするのでありますが、目下頻りにやつておる行政整理の対象者であるとか、失業者であるとか、農村の二、三男等に目をつけて或いは自治体警察官等にも目をつけ、且つこれを数回に分割して充足しようとしておりますが、満員になるか甚だ疑問であります。昭和三十年度に至つては全然見当がつかず、自信がないというのが真相であります。かてて加えてこれから直接侵略に当るということになれば、志願者の激減はけだし必至でありまして政府当局は徴兵制度の不可避を内心予期しておるのではないかと考えられますが飽くまでこれを否定されるならば、志願兵制度存続の確信を数字を以て示されたいのであります。  次は自衛隊と憲法違反の問題であります。総括的に憲法第九条に違反することは賛言を要しませんが、更にその内容において重大なる憲法違反を犯さんとしておるのであります。  第一は統帥権の問題であります。自衛隊法は、曾つて天皇の大権であつた統帥権と等しきものを内閣総理大臣吉田茂に帰属せしめようとするものであります。文武の大権を握る総理大臣の性格は、まさに国の元首に相当し、我が国の首相をアメリカの大統領と同じ地位に押し上げようとするものであります。かくのごとき権能を与えることは、我が憲法の予期して認めざるところでありまして、憲法になき権限を一片の法律によつて強行せんとするは、これを以て憲法の違反と言わんよりは、吉田内閣は多数を以て一種のクーデターを行わんとするものと断ぜざるを得ないのであります。白色テロを警戒し、暴力革命を抑圧せんとする吉田政府が、みずから先んじて憲法無視の革命をなさんとするは何事でありますか。吉田首相の責任を問わねばなりません。およそ民主主義国家におきましては、かくのごとく武力の指揮権を総理大臣に与えることは、国家組織の基本問題として、いずれも憲法中特筆大書するところでございます。政府は何を根拠としてかくのごとき非違を企くたのでありましようか。或いは自衛隊の最高指揮権を以て一般行政権であると強弁するようでありますが、各省大臣を長官とするその上に立つてこれを指揮命令することは、果して各省同列の行政なりと言い得るでありましようか。たとえ行政権説をとるといたしましても、軍事行動或いは軍事準備行動のごとき、当然、行政中の重要行政として憲法第七十三条の列挙中に見出さるべきであると存じまするが、政府の見解は如何でありましようか、承わりたいと思います。  私はこの際、関連して、吉田首相に、文官優越制と軍国主義の復活について如何なる信念を有するか、伺いたいのであります。軍隊の編成上、文官優越制を採用いたしますことは、我が国におきましては初の経験であります。この制度の目的は申すまでもたく、軍事力をして文官の権限に従属させ、行政府に対して軍隊の地位を二次的に置き、それによつて民主主義の確立を図らんとするものであります。併しながら、これがためには三つの条件を必要とするのである。憲法中、軍隊における文官優越性を明記すること。同じく国会の監督権を明らかにすること。同じく軍隊の使用目的を特定化すること。この三点であります。然るに我が憲法におきましては、かかる規定は一ヵ条もないのであります。然らば政府は何を以て文官優越主義を貫徹し得るでありましようか。又、本制度の目的は軍国主義の防止にあるのでありますが、政府はすでに発生せんとする軍国主義の復活につきまして如何にこれを阻止せんとするか。その熱意、その具体策につきまして、首相の答弁を得たいと存ずるのであります。諸外国は、我が国の再軍備と共に、軍国主義の復活を疑心暗鬼で注目いたしております。然るに政府のなすところを見ると、再軍備へのテンポと共に、陰に陽にこれが助長を図り、或いは旧軍人を重視して首相のスタッフとし、或いは天皇神格化の走りとなつて復辞の志を示し、自衛隊においては皇室中心主義を称揚し、この思想を以て愛国心だと言い、一方においては中央集権を強化して民主政治の後退を図るなど、少くとも軍国主義復活の素地を培養するもののごとくでありまして、文官優越主義の確立には一向に誠意のないように思われるのであります。資格制限撤廃のごときはその片鱗である。私はこの点につきまして、右翼との関係浅からずといわれる緒方副総理から、その所信を承わりたいと思うのであります。  憲法違反の第二は、予備役制度の問題であります。兵力増強の手段であり、民兵制の前駆として、政府は予備自衛官の制度を考えたのであります。平素の職業にあるまで月千円の手当を与え、年二回短期の招集に応ずればよい、旅費も手当もやると言つておりますが、防衛出動即ち、いざ戦争というときには、動員命令によつて赤紙招集となり、この招集に応ぜざれば三年の懲役、濫りに職場を離れた者は七年の重刑に処せられるのであります。まさに憲法第十八条に違反し、戦争行為という苦役を強制するものでありまして、断じて許し得ざるところでございます。たとい志願により或いは宣誓などの形式を以てするも、かかる契約は憲法第三章の精神に反し、違憲、無効の規定と言わねばなりませんが、政府はこの方式を以て民兵制度を創設する考えであるか。憲法との関係を如何に考えるか。伺いたいのであります。  又、防衛出動に当つて広汎なる土地収用権等を与えんとする自衛隊法百三条の規定は、誠に粗筆不備でありまして、損害賠償等の措置も明確ならず、単に災害救助法を準用するという程度を以ては、憲法第二十九条の趣旨に合致しないと思われまするが、この権限の行使において、如何なる事態、如何なる場合が予想されるか。又、今次ビキニ湾の原爆被害に鑑みましても、人命等の補償は如何に考えるか承わりたいと思います。  以上で私の質問は終りますが、我々は、吉田首相が民生安定を犠牲として再軍備に狂弄せんとするその愚を憐れまざるを得ないのであります。社会保障を捨てることは民主国家の存在を否定するものであります。大衆の生活を剥奪し、革命の機運を促進して、他方においてその防衛に努力しようとするは、正気の沙汰とは思えないのであります。更に吉田首相の許し難き最大の罪悪は、今次戦役一千万の犠牲者によつて築かれたる平和憲法を破壊し、前後三十年に亘る八千万国民の苦難を一挙に徒労に帰せしめるのみか、再び阿鼻叫喚の悲劇を繰返さんとするものでありまして、人類史上の叛逆者であります。切に政府当局の誠意ある反省を求めて止みません。(指手)    〔国務大臣緒方竹虎君登壇、拍手〕

039 緒方竹虎
○国務大臣(緒方竹虎君) 政府は、吉田首相は、再軍備反対の公約を裏切るのではないかという御質疑でありましたが、(「その通り」と呼ぶ者あり)違います。(笑声)政府は、再軍備の意図は持つておりません。自衛力漸増は従来からの方針であり、自衛隊は憲法の禁止する戦力ではありません。又憲法は国の自衛権までも放棄したものでない以上、今回の自衛隊は決して憲法違反ではないのであります。(「違います」と呼ぶ者あり)それから今回自衛隊を設ける仮想敵国はどちらかという御質問、更に吉田総理大臣が中国並びにソ連を仮想敵国としたかのごとき御議論でありましたが、「たびたびある」と呼ぶ者あり)吉田総理大臣の言われましたことは、そういう趣旨ではないのでありまして、中ソ友好条約が中国ソ連の間にあつて、その条約の中に日本を仮想敵国としている。従つてそれに対する考えが必要であるということは言われましたけれども、今回の自衛隊を作るに中ソを仮想敵国としてその組織を作るということは言うておられない。私も同様に考えております。  それから今回の総理大臣が自衛隊の最高指揮監督権を持つということは、軍閥を作るのではないかというお説でありますが、今度の指揮権は決して旧憲法で言われるところの統帥権ではないのでありまして、統帥権が旧憲法に認められました結果、政府のほかに、或いは政府と対立する一つの権力がありましたために、あのような軍部の横暴を生じたのでありまするが、今度は行政の最高責任者である総理大臣が自衛隊の指揮権を握るのでありまして、その間に曾つての軍閥或いは軍部の横暴というようなものはあり得ない、その点は御安心を願つて差支えないと用います。  それから総理の権限を論ぜられまして、何か私が右翼に関係があるというようなことを言われましたが、右翼ということは、これは複数であつて、私は右翼の者を知つておりまするが、私が右翼の運動のどこに関係がありますか、御指摘をお願いしたい。若し御指摘がなければ、お取消しを願いたい。(拍手)    〔国務大臣木村篤太郎君登壇、拍手〕

040 木村篤太郎
○国務大臣(木村篤太郎君) お答えいたします。  米国駐留軍の撤退の問題でありますが、御承知の通り日米安全保障条約によつて、我が国の外敵からの侵入に対してアメリカ駐留軍が当ることになつているのであります。このアメリカ駐留軍が即時に全部撤退するということはあり得ないことであります。これははつきり申上げます。そこでその一部分がいつ撤退するか、その時期は明瞭にわかつておりません。但し我々は自衛力漸増方針を以て著々と漸増をやつております。二十九年度においては、今御審議願つておる通りでありましてこれが完成したあかつきにおきまして、アメリカの駐留軍の一部地上部隊が撤退することは、これはあり得るであろうと思います。その兵力量はどうかということは、只今のところわかりませんが、今後アメリカとの間に打合せがあると思います。  次に、軍事顧問団の問題でありますが、御承知の通り軍事顧問団は、全くアメリカから貸与を受ける武器のその操作等についての指示を受けるのでありまして、自衛隊に対しての指揮命令とかいうことには断じて関与させまん。又関与すべきではないと考えてやります。  次に、徴兵制度でありますが、徴兵制度は只今考えておりません。徴兵制度を布くということになれば、勿論憲法改正を要することであります。我々は現段階においては、志願制度で行こうと考えておる。然らば志願制度の限界はどこにあるかということになりますと、これはいろいろの観点からいたしまして、約二十二、三万が程度であろうと考えております。  それから三十年の計画はどうかということであります。三十年の計画につきましては、まだ確定的なものは持つておりません。ただ一応の目途程度のものでありまして、今後我々は日本の財政力その他を勘案いたしまして、研究し、計画させたいと考えております。  予備自衛官の問題でありますが、これはすでに申上げた通り、すでに退職になつた旧来の警察予備隊員或いは保安隊員、このうちから志願によつて募集するのであります。勿論この待機その他については、すべて入つて来るいわゆる応募者に周知せしむる。憲法十八条との関係におきまして……。憲法十八条は苦役を課さないということになつております。これは強制苦役のことであります。予備自衛官に対しては強制苦役を何も課しません。本人の意思に基いて入つて来るから問題はないのであります。  それから土地収用等の問題であります。これは先ほど答弁いたしました通り、災害救助法に基きまして、損害を与えるような場合には相当の補償をするということになつておりますから、国民の権利保護については万全を期したいと、こう考えております。(拍手)    〔国務大臣岡崎勝男君登壇、拍手〕

041 岡崎勝男
○国務大臣(岡崎勝男君) 只今山下君は、海外派兵について秘密の約束があるということを断言されました。又アメリカの駐留軍が永久駐留の計画があるのじやないか。こういうことも言われたのであります。ところが政府としては海外派兵のごときことは何ら約束はしないし、又海外派兵をしないということも明らかにいたしているのであります。米駐留軍の永久駐留の報道があるということは、これは取るに足らない問題でありまして、さようなことは絶対にないことはもう明らかであるのであつて、アメリカ側は速かに撤退いたしたいと言うておるのであります。併し先ほども国会の論議においては責任を持てとい、ことが強調されております。山下君が、海外派兵の秘密約束があるなどという断言をせられる以上は、その証拠を出されるべきであると考えております。(「何を言うか」と呼ぶ者あり、拍手)    〔国務大臣小笠原三九郎君登壇、拍手〕


6.第19回国会 参議院 本会議 第21号 昭和29年3月19日
021 曾禰益
○曾祢益君 私は日本社会党を代表いたしまして、MSA関係協定に対しまして、極く重要点だけを政府に伺いたいと存じます。  日本社会党は、日本が自由世界、民主陣営に帰属することを肯定し、これとの団結と協力を是認するものでありまするが、同時に自主独立の外交によつて全世界と友好を求めることを我が国外交の本義と考えるものであります。我が国の安全保障につきましては、国連の国際平和と安全の確保に期待すると共に、現状におきましては、国連の安全保障の補助として地域集団保障制度の必要を認めるものでございます。更に独立国たる以上、我が国は自衛権を有するは当然であり、自衛権の裏付である自衛力は、その基盤である国民の自衛意欲の盛り上るような、健康にして公正な経済、社会秩序の確立が根本であると確信するものであります。併しながら、形式、内容共に不平等な日米安保条約は根本的に改訂すべきであり、又自衛力については現行憲法を遵守し、差当り国内治安を維持するための警察予備隊程度のものにとどめることを主張し、吉田内閣の憲法空文化と国民生活圧迫による再軍備に断固反対するものであります。  MSA関係協定を案ずるに当りまして、我が党は以上の基本的態度から検討を加えんとするものであります。而して我々は、本協定が憲法空文化と国民生活圧迫の再軍備と裏腹の関係にあること。協定成立に至る吉田内閣の外交が秘密外交と自主性喪失の結果であること。協定が安保条約すらを逸脱し、憲法に違反する疑い濃厚であること。顧問団の任務、合同指揮権等が我が国の自主独立を侵害する虞れがあること。並びにMSA援助の受入れが、却つて我が国の正しい経済自立を害し、経済財政上有害である等の理由に基きまして、本協定に対し反対的観点に立つて、以下若干の質問をなさんとするものであります。  先ず第一に、一国の防衛の基本方針は、飽くまで自主独立の立場において、国民の理解と納得の下に策定すべきが当然であるにかかわらず、政府の態度と措置とは全く自主性を欠き、先に、我が国の対外安全は勿論、対内安全の根本すらも挙げてアメリカ軍に依存するとして、安保条約を説明されておきながら、最近の国際情勢の変転に応じ、アメリカの戦略配置が転換して、駐留軍が漸減するに見合いまして、我が国の防衛力の増強を強要して来ると、今度はこの間の情勢の変化に対処する政府の所信を国民に訴えることもなく、我が国の経済力と国民の心理状態も無視し、何らの自主的な防衛方針も計画も持たずして、先ず以てアメリカの要請を受け入れる態度をとつて交渉に当られた次第であります。その結果、ここに二十九年度予算に見られるような防衛力の飛躍的増強と、保安庁法改正に見られるような本格的再軍備が、而も憲法空文化の方法によつて実行されんとしつつあるのであります。MSA協定は、このような政府の防衛問題の本末転倒の取上げ方と、自主性喪失外交の結果にほかならないと考えますが、総理は、この重大な疑惑に対し、進んでその明確なる所信を国民に向つて披瀝される御意向はないか。  第二点、総理は去る十七回国会の本院予算委員会におきまして、先ほど同僚羽生委員も触れられましたが、私の質問に対し、二十九年度の予算提出に当つては、単に二十九年度の防衛増強計画を示すにとどまらず、アメリカ軍の撤退に即応する我が国の長期防衛計画の全貌とその年次計画を明らかにする旨を、明確に答弁されておるのであります。これは第十七回国会参議院予算委員会会議録第五号、十一月七日の分に明瞭になつております。私の今の質問に対しまして、吉田総理は、「これは全体の計画が立つて、そうして各年度の計画をなすのが当然でありまするから、全体の計画ができ、その計画の全貌を示して、そのうち実行し得るものは来年度に幾ら、再来年度に幾らと、年次計画を立てることになろうと思います。」私が更に進んで、「別な言葉で言いますと、少くとも来年度の予算が出るときには……いわゆる長期計画の全貌というものが少くとも同時に国会を通じて国民に示される、かように了解して間違いございませんか。」これに対して吉田総理は、「未だそこまで話し合つてはおりませんが、お話のようなことが順序であるべきものだと、私は常識的に考えて、そう思います。」明瞭であろうと思うのであります。それにもかかわらず、今回こま切れ的に二十九年度防衛計画のみを提案した理由は一体どこにあるか。又この重大な公約の無視に対して、総理の政治的責任をどこに置くかを、明瞭にお聞かせ願いたいのであります。  第三点、元来MSA援助の授受に関する協定は、当該国とアメリカとの間に、これに先んじまして地域集団保障協定というものが存在しておる。存在していない場合は別でありますが、いる場合には、この基本的な防衛協定の存在する場合には、これを前提といたしましてアメリカの援助受入れに対する権利義務を規定する一種の実施協定或いは細目協定の性質のものであることは、これは北大西洋同盟条約諸国とアメリカとの間のMSA協定の例を見ても一点の疑いのないところであります。又このことは、MSA法の五百十一条(a)の(3)に、「合衆国が一方の当事国である多数国間若しくは二国間の協定又は条約に基いて自国が受諾した(過去の形で、ハズ・アツシュームドとなつている)軍事的義務を履行すること」という字句に照らしても明瞭である。然るに今般の協定は「日米相互防衛援助協定、」この名前からして安保条約とは非常に性質が変つていることを示しております。この名前にふさわしく、安保条約とは別個に、別の基本的な日米の共同防衛の権利義務を定める条約であります。即ち、安保条約は、いわば日本がアメリカに守つてもらうことを趣旨とするニカ国間の片務的な、双務的でない、片務的な安全保障協定でございまするが、今回の協定は、ニカ国間の共同、双務的な防衛協定であることは、これ又、同僚羽生君が指摘した通り。  更に安保条約の下では、少くとも厳格に法律的に見るならば、日本の防衛に対する責任を漸増的に負うということは、前文に掲げたアメリカの期待に過ぎず、日本に義務はないということか言えるでございましようが、今回り協定におきましては、すでに同僚が指摘したように、第八条において「自国の防衛能力の増強に必要となることかあるすべての合理的な措置をとる」ことを明瞭に約諾している。更に第八条において「自由世界の防衛力の発展及び維持に寄与する」ことを約諾しているのであります。従つて、本協定は安保条約の基本的な軍事義務以外の義務は含んでおらないという政府の御説明は、言葉は過ぎるようでありますが、欺瞞ではないか。岡崎外相の明快なる御答弁を願いたいのであります。第四に、右のように安保条約から日米相互防衛援助協定へ移つた。即ち片務防衛協定から双務防衛協定に移つた。同時に、更に二国間条約から多数国集団保障制度へ転移するという、極めて重大な外交と安全保障の基本的変化か行われているのではないか。この点は、先ほども申しましたように、第八条の自由世界の防衛力に対する日本の寄与の義務というニカ国間だけの問題ではない。それもはつきり今度の協定は書いている。又第一条には、この日本が供与する援助を、アメリカに対してのみでなくて、第三国に対してもこれを供与する道をはつきりと第一条は開いている。これらの点から言いまして、今申上げましたように、外交と安全保障の基本的な性質の変化を持つている。決して軍事的な援助の受入れというような実施細目協定の性質ではなく、基本的なものであるということを政府は明確に認め、そうしてこれを明瞭に、この基本の違いというものと、これに対処する政府の所信を、堂々と且つ条理を尽してなぜ国民に理解と納得を求めるような態度をとられなかつたのか。  又この協定の締結から、多くの諸君が言われましたように、確かに今の法体系の変化から言いますと、伝えられる太平洋同盟条約等に発展する一歩をはつきりと阻み出していると思いますが、改めて明確なる御答弁を願いたいのであります。  第五に、更に以上のような広汎な義務規定を内包しております協定の中に、海外派兵禁止に関する条項がない。これは何と申されても、かかる二国間から多数国間に、片務条約から双務条約に移つたというこの条約においてこそ、海外派遣禁止の明確な規定がなされなければならないと思いまするが、どうしてもこれを取りつける御意向がないか。改めて明確にして頂きたいのであります。  第六に、アメリカとの共同防衛、自由世界の防衛能力に対する寄与並びに日本の防衛力増強等の条約上の義務を規定する本協定は、果して軍隊その他の戦力の保持を禁止し、交戦権を否認した憲法の条項に違反しないと言えるかどうか。成るほど協定第九条には「各国政府が自国の憲法上の規定に従つて実施する。」こう言つておるからこれでいいのだという御答弁のようでありまするが、これも私をして納得せしめ得ないのであります。これは岡崎外務大臣も昨日のこの席上における御答弁でも申されたように、これは憲法の手続に従つて国会の承認を求めるというような、手続を示したものに過ぎない。これで本協定の内容は憲法に逸脱してないという免責、責任免除の規定の条約文としての体裁から言つても、さような意味を持つものでは断じてございません。而もなおおかしなことには、憲法の手続に従つて実施されるということは、その示している憲法は決して条約上、法律上現行憲法に限らない、そのときの憲法でいい。こういうことになるならば、ますます以て政府が苦心をされて入れたと称する第九条の規定は、何らこの条約の内容そのものが憲法に逸脱しないということの食いとめになつておらないということは、明確至極であろうと存ずるのであります。殊に憲法九十八条第二項の正しい解釈から言うならば、国際法規及び国際条約の或るものは憲法に優先し得るというのが第一次吉田内閣以来の政府の明確なる解釈においておや。ますますこの点は我々としては断じて納得できないのでございます。  協定第七条の顧問団の任務或いは合同指揮権、日米行政協定第二十四条に基く日米共同行動の場合の合同指揮権、これらについての政府の御答弁もどうも我々は納得し得ない。殊に保安庁長官においては、それは日本が自主的にやるのだというようなことを言つて、如何にも日本に指揮権があるように言つておられまするが、これは北大西洋同盟条約の例等を見ましても、さようなことは承服できない。当然に合同指揮権はいずれの国の指揮官がとるか、全体においてはどうだ、陸軍においてはどうだというような問題が当然に起つて来ると思いまするが、明確にお示し願いたいのであります。  次に、政府は元来軍事援助を本旨といたしまするMSAの受入れが、あたかも経済援助を伴うものであるかの宣伝に努めて来ました。併しその全体が何であるかは、今般の余剰農産物買付協定、又苦肉の策である経済的措置に関する協定等によつて、もはやその実体は明らかとなつた。我々は当初から真の経済自立は社会主義計画経済を実施し、援助より貿易、紐付きよりは自立を趣旨とすることを主張し、政府の欺瞞と安易な受入れに反対して警告を発して参つたのであります。仮に今後経済援助が若干与えられるような場合があつたといたしましても、又武器援助そのものが軍事費の切り詰めには若干の貢献は計算上ありましよう。併し他面において厖大な再軍備の創設費及び維持費を必要とするために、この経済財政上の負担は差引き極めて重くなることは明瞭ではございませんか。大蔵大臣にお伺いしたいのは、特にこの協定に当りまして防衛分担金の減額は誠にノミナルなものに過ぎない。今後如何にして防衛分担金の減額を図るか。この見通し如何を伺うのであります。  最後に、岡崎外務大臣は、今度の協定によつて対共産圏国との貿易のいわゆる禁止規定が附属書に譲られたと、よほどの成功であるやに言つておられまするが、世界の態勢から言うならば、今日チャーチル首相が言つておりますように、やはり共産圏に対する自由諸国の貿易についても調整を要し、これを緩和する方向に進むべきではないかというのが、これは現状である。アメリカ諸国の第十回の全アメリカ会議におきましても、共産圏に対する戦略物資の供給を禁止することは賛成である。併しその犠牲に対してはアメリカからその補償をやつてもらいたいという決議が通つており、西ドイツのブリユツヒヤー副総理は、同じくこの対共産圏貿易について、「現実に平等な取扱がなされていない。」かようなことを堂々と述べているのであります。いずれもアメリカの最もちかしい、いわば同盟国の首相にしてそのような態度をとつているのであります。日本社会党は対共産圏貿易のみによつて日本の経済自立ができるとか、或いはこれに対する過大な評価をなすものではありませんが、このMSA協定に当つて、政府はこの日本の経済自立並びに世界の緊張緩和にプラスになり、自由国家群を強化する一助ともなる対共産圏貿易の問題を如何に対処されるか。明確な御回答を願いたいのであります。時間がありませんので、その他重要な細目については委員会における質疑に譲ることといたしまして私の質問はこれを以て終ります。(拍手)    〔国務大臣緒方竹虎君登壇、拍手〕
022 緒方竹虎
○国務大臣(緒方竹虎君) お答えをいたします。  防衛政策というような国の、国民の利害休戚の根底に触れる大きな政策は、国民の理解と納得の上にきめなければいけないという御趣旨は、政府といたしましても全く同感に考えております。これに関連して政府は秘密外交のみをやつているではないかという御意見でありましたが、政府といたしましては、決して秘密外交をやつているつもりは、ございません。ただ交渉の経過におきまして、成る程度秘密が保たれなければならんことは、これは曾祢君におきましても十分御了承のことと考えます。だからといつても自主性がないと断定されることも甚だ迷惑な次第でありまして、政府といたしましては、こういう大きな問題につきましては、どこまでも自主性をはつきりすることに努めている次第でございます。  それから十七国会において防衛の長期計画を出すことを、防衛計画の長期計画を二十九年度予算と同時に提案することを約したが、今日その長期計画の提案がないのはけしからんという御質問であります。自衛力増強の年度ごとの計画は、長期計画の一応の目途をつけてその一環として考えるべきものでありまするし、又長期計画の成案を得れば、これを国会に提出いたしますることは勿論当然でありまして、そのことを申上げたのでありまするが、ただ二十九年度の計画及び予算と同時に長期計画を出すことを約束したとは記憶しておりません。長期計画につきましては、あらゆる角度から検討中でありまするが、将来に亘ることでありまするので、種々不確定を伴う要素がまだ甚だ多い。そういうわけで、まだ今日成案を得るに至つていないのでありまして、成案を得れば、勿論国会の御審議を経て承認を得たいと考えております。(拍手)    〔国務大臣岡崎勝男君登壇、拍手〕

7. 第19回国会 衆議院 外務委員会 第25号 昭和29年3月25日
127 並木芳雄
○並木委員 先ほどの答弁ですと、大体地上部隊は別として、アメリカ軍と日本の自衛隊、これは空軍、海軍なども含めて二本建で行く期間が相当続くのではないかと思います。その場合に、駐留軍と日本の自衛隊との共同動作について、現在の安保条約及び行政協定には、緊急の場合と称して行政協定二十四条があるだけでございます。私は今後非常に大きな問題を惹起すると思います。今までは保安隊で微力であり、共同動作を起すようなことがございませんでしたから、表面の問題にはなつて参りませんでしたけれども、これからは一本立ちをするわけでありますから、この共同動作について今後どういうふうに協定をされて行くつもりでありますか。また国内の法規をどういうふうに直して行くつもりでありますか。アメリカとの関係におきましては、安保条約または行政協定をこの点において改正する必要があるのではないかと思います。緊急の事態に処する場合にどちらが指揮権を持つかという点についてです。
128 緒方竹虎
○緒方国務大臣 共同作戦の協議には入つて行くべきであると考えますが、今すぐ安保条約の改正をする必要はないと考えております。
129 並木芳雄
○並木委員 指揮権をどちらに置くかということについて何か構想はございませんか。これは当然日本側が持つべきでありますが、この点はまだ政府として考慮中だというのが今までの答弁であります。共同動作をする場合の指揮権、決定権でありますが、これは両方協議議するときなかなかきまらない場合があると思います。
130 緒方竹虎
○緒方国務大臣 はなはだ抽象的のことを申し上げますけれども、やはり両方で協議してきめる以外にないと思います。それは規模の大小がありますが、第二次大戦以来、そういう連合軍の慣行が自由諸国の間にもできておりますから、そういう形をとるであろうと考えております。
131 並木芳雄
○並木委員 自衛隊法の中に日米共同動作に関する協議事項というものはないように私は読んでおります。ざつと読んだだけですからわかりませんけれども、あればけつこうですが、これも自衛隊法の中にうたつて行くべきじやないかと思いますが、いかがでしようか。
132 岡崎勝男
○岡崎国務大臣 ただいまのところでは、自衛隊法の中にはその必要はないと思います。これは、かりに何か事がある場合には、必ずしも自衛隊ばかりとは限りません。警察隊を必要とする場合もあり、あるいは消防隊を必要とする場合もあり、その必要の限度等は行政協定二十四条による協議をすれば足りると考えております。

8. 第19回国会 衆議院 本会議 第31号 昭和29年3月31日
034 戸叶里子
・・・・・・・・・・・経済自立体制を確立せんと念願するわが党が、かかる欺瞞と安易な援助受入れに反対することは当然であります。(拍手)  また、MSA協定締結に伴つて、わが国は顧問団なる職員六百五十名をわが国に受入れなくてはなりません。この職員の身分、人数、わが国が負担しなくてはならない行政費等で、なかなか意見の一致を見なかつたようでありますが、問題となるのは、これらの人々の活動及び権限であります。MSA法五百六条にある権限の中に、外国軍人の訓練の監督という項目があります。これはまつたく危険きわまりないのであつて、わが国の自主性は脅かされ、自衛隊の訓練の監督をするという名目で、いかようにもわが方の自衛隊は扱われるでありましよう。ことに、今回防衛二法案の改正によつてアメリカ軍との共同作戦も考えられるのであります。その際、アメリカ軍に対しては指揮権のない日本の自衛隊は、共同作戦の場合は不服ながらもアメリカ軍の指揮下に属さなければなりません。かくして、この軍事顧問団の指揮命令が共同作戦の名によつて内政干渉にまで進んで来ることは火を見るよりも明らかであつて、日本の統帥権はこれによつて喪失するものであります。(拍手)これによつて、まつたく日本の独立国家としての面目は踏みにじられてしまうのであります。  さらに、三条の規定に従つて防衛秘密保護法が制定され、この法律はMSA援助による物件、役務または情報に限つてのみ機密の漏洩を防止することを意図しているようでありますが、その中には、解釈の仕方によつてはいかようにもとれる点や、あるいはまた拡大解釈によつて、かつての軍機保護法的なものにまで発展する可能性を多分に蔵しているのであります。私どもは再び立入り禁止の立札を自分たちの国土の至るところに持たなければならない運命に置かれ、また自由なる言論が極端に封鎖されるに至り、再び過去の軍国主義国家の重苦しい空気の中に逆もどりさせられるのであります。(拍手)  以上のように、憲法に違反し、海外派兵の不安が多分にあり、また国民の求むる経済の安定からは遠ざかり、しかもアメリカ側から隷属的な指揮命令を受け、また日本の自立経済に対して何らの寄与が与えられないMSA援助を、政府が七重のひざを八重にまで折つて受けようとする意図は一体どこにあるのかと了解に苦しむものであります。(拍手)しかも、世界各国が平和に向つての努力がなされているとき、わが国が進んでアメリカより武器の援助を受けんとすることは、アメリカの要望によつて日本が再軍備を強要せられ、日本の軍隊をもつてアメリカの防波堤たらしめんとする意図によるものではなかろうかという疑問は、私たち日本国民の胸から消え去らないのであります。(拍手)この疑問は日本を取巻く国々の人々もひとしく抱くところであり、軍国日本再現に対して警戒するでありましよう。以上申し述べたような内容を包含し、その中には、いつ爆発して海外まで飛び出さなければならぬかもしれないような時限爆弾的危険性を内蔵する要注意のMSA協定は、国会の権威のためにも、これを批准すべきではありません。(拍手)国会は、かかる見地がら、ほうはいたるMSA反対の国民の意思を忠実に反映し、MSA協定の批准を拒み、平和憲法擁護の精神を内外に明らかにすべきであります。今や国会の威信が疑獄に次ぐ疑獄によつて失われております。この際MSA協定を通過させることあるならば、さらに日本憲法史上における最大の汚辱をしるすことになるでありましよう。このことは独立日本にとつて後世ぬぐうことのできない政治的悲劇としてしるされるでありましよう。(拍手)明日の日本の運命を支配する、民族興亡の一大試練に直面し、政府は決然として一大反省を行い、MSA協定に国会は批准せざる旨書き添えてアメリカに送付せられんことを要望して、私の反対討論を終らんとするものであります。(拍手)




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国防権、航空権、電波権を売り飛ばした自民党(吉田茂)シリーズ、「電波権」についても近く投稿へ

2023-01-04 | 小日向白朗学会 情報
  1971年7月号の富士ジャーナルという雑誌に、「台湾解決でアメリカに招かれた元馬賊王」という特別インタビュー記事が掲載されている。「講和で売渡した密約とは」という小見出しの中で、次の文書が読み取れる。
   『・・・・復興資金30億ドルの借りも背景にあってか、講和条約を結ん  
    時に、吉田さんは日本の航空権、国防権、電波権を売り渡し、その自由   
    使用をアメリカに認める特別覚書きを秘かに入れているんだ。今年の4
    月26日にニューヨークタイムズが“核戦力の通過問題”の密約説を発表し
    たが、それはその中の一つにすぎない。・・・・・』
現代史を語るときの常識として心にとめておいていただきたいものである。

(文責:吉田)
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