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噴飯ものの「ワン・シアター(One Theater)」構想 ―国連軍地位協定の焼直し―

2025-04-22 | 小日向白朗学会 情報
 
 2025年4月16日、朝日新聞は「ワン・シアター構想「今の日本に実行する覚悟あるのか」」とする記事を配信した。
『インド太平洋地域を一体の「戦域」と捉え、日米が同志国とともに防衛協力を強化する「ワン・シアター(一つの戦域)」構想。中谷元・防衛相が、3月末のヘグセス米国防長官との会談で打ち出した考え方だ。構想の意義について、アジアの安全保障に詳しい慶応大の神保謙教授に聞いた。
 ――そもそも「シアター(戦域)」とはどういう意味でしょうか。
 「シアター」とは、主要な紛争が起こる地域という意味です。大規模な軍事作戦や安全保障上の活動が展開される広域の地理空間を指します。
 もともとはアメリカ国防総省で用いられてきた軍事用語で、戦略文書にも頻繁に登場します。空・陸・海といった複数の領域をまたぎ、作戦を統合的に運用する単位として位置づけられます。
 ――今回の「ワンシアター」構想の意義はどう捉えていますか。
 米国の安全保障についての考え方は、バイデン政権下でこれまでの二国間同盟重視から、「日米豪印(QUAD)」など多国間の枠組みで防衛協力を強化する「格子状の安全保障協力」に変化していきました。
……』
 この記事を読んでピント来るか方は可なりの安全保障通である。この「ワン・シアター(One Theater)」構想に登場する国々の名前であるが「日本、米国、オーストラリア、フィリピン、韓国」である。つまり、1954(昭和29)年2月19日に、日本は国連軍地位協定を「オーストラリア、カナダ、フランス、イタリア、ニュージーランド、フィリピン、南アフリカ、タイ、トルコ、英国、米国」など12カ国と締結している。その後、日本はこれらの国々と、如何なる関係にあるかといえば次の通りである。
  • 日英円滑化協定:2023年1月12日締結(2022年5月5日ボリス・ジョンソンと岸田首相は協定締結に向け議論することに合意)
  • 日豪円滑化協定:2022年1月6日締結
  • 日比円滑化協定:2024年7月8日締結
  • 英韓円滑化協定:2023年11月20日締結
ところで「日英円滑化協定」とは如何なるものかといえば、その性格を如実に表している条項がある。それが「日英円滑化協定」第四条である。
『……
第四条
3 この協定は、千九百五十四年二月十九日に東京で署名された日本国における国際連合の軍隊の地位に関する協定に基づいて国際連合の軍隊として行動する間の連合王国の軍隊が実施するいかなる活動についても適用しない
……』
とある。この条項に中にある「国際連合の軍隊の地位に関する協定」とは1953(昭和28)年に朝鮮派遣国軍との間に締結した「日本国における国連連合の軍隊の地位に関する協定(国連軍地位協定)」である。つまり、日本とイギリスが締結した「日英円滑化協定」は「国連軍地位協定」が有効な間は適用しないというものである。では「日英円滑化協定」はいつから効力を発するのであろうか。その答えは「国連軍地位協定」(第二十四条、第二十五条)のなかにある。そのベースとなっているサンフランシスコ平和条約第六条には次のように明記されている。
『……
第六条
連合国のすべての占領軍は,この条約の効力発生の後なるべくすみやかに、且つ、いかなる場合にもその後九十日以内に、日本国から撤退しなければならない。但し、この規定は、一又は二以上の連合国を一方とし、日本国を他方として双方の間に締結された若しくは締結される二国間若しくは多数国閻の協定に基く、叉はその結果としての外国軍隊の日本国の領域における駐とん又は駐留を妨げるものではない。
……』
 また、国連軍地位協定には次のように規定されている。
『第二十四条
 すべての国際連合の軍隊は,すべての国際連合の軍隊が朝鮮から撤退していなければならない日の後九十日以内に日本国から撤退しなければならない。この協定の当事者は,すべての国際連合の軍隊の日本国からの撤退期限として前記の期日前のいずれかの日を合意することができる。
第二十五条
 この協定及びその合意された改正は,すべての国際連合の軍隊が第二十四条の規定に従つて日本国から撤退しなければならない期日に終了する。すべての国際連合の軍隊がその期日前に日本国から撤退した場合には,この規定及びその合意された改正は,撤退が完了した日に終了する。』
したがって「日英円滑化協定」が実際に動き出すのは、朝鮮戦争が終戦となった時なのである。

 ところでトランプ大統領はと北朝鮮の金正恩国務委員長は2018年6月12日に、「両首脳が署名した共同声明で、金委員長は『完全な非核化』を約束し、その見返りにトランプ氏が体制保証を提供する」と約束している。その後、7年が経過したが、2025年1月21日にトランプ新大統領は北朝鮮の金正恩総書記について「彼とはとても関係がよかった。核保有国だがうまくやれた。彼は私の返り咲きを喜んでいるだろう」と述べている。したがってアメリカと北朝鮮は早晩、米朝会談を再開して、北朝鮮の核と、北朝鮮の体制保証とを交渉材料として、国交正常化を開始し、ほどなく朝鮮戦争は終戦となる。そもそも、朝鮮戦争は、北朝鮮と韓国とが祖国統一をめざした戦いであった。そのため、前回の米朝協議では、朝鮮戦争を終結させるためには、当事者である北朝鮮と韓国が交渉のテーブルに着く必要があった。ところが、今の北朝鮮では、憲法から「祖国統一」は削除されている。北朝鮮からすると、韓国との戦いはいまだ憲法に「祖国統一」を掲げる韓国の北朝鮮に対する侵略戦争になるという筋書きが出来上がっている。米朝協議が始まれば、すぐに、朝鮮戦争終戦に動き出す準備はととのっている。
 ところが、日本政府は、よりによって、アメリカ政府に対して、日本が防衛三文書で仮想敵国とした北朝鮮を敵とする「ワン・シアター(一つの戦域)」構想で日本の安全保障を進めたいと言い出してしまった。これを「噴飯もの」といわずして、何といえばいいのかわからない。
  折角、トランプ大統領が朝鮮戦争を終戦にさせて、日本を70年にわたり苦しめてきた「日米地位協定」と「国連軍基地協定」という「安保条約」を有名無実化しようとする動きをみせているのに、わざわざイギリスの口車に乗せられて締結した「日英円滑化協定」を盾に、アメリカに代わる宗主国としてイギリスを戴こうとする、間抜けな、安全保障政策ということになる。これは、日本の安全保障を利権としてきた、自民党が、その利権をイギリスに移そうとしていると考える以外に合理的な根拠はない。    以上(寄稿:近藤雄三)
 【参考】

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