小日向白朗学会 HP準備室BLOG

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昭和18年のG7と令和5年のG7

2023-03-27 | 小日向白朗学会 情報

 昭和18(1943)年11月5日~11月6日に東京で大東亜会議が開催された。出席国は、日本、中華民国、満州国、ビルマ、タイ、フィリピン、インドの7か国であった。大東亜会議は昭和18年5月29日に大本営政府連絡会議決定で決定した大東亜政略指導大綱に基づき開催されたものである。この大綱の目的は、昭和16年12月に開戦した大東亜戦争を遂行するためアジア諸国家及び諸民族を結集して戦を遂行することであった。
『……
第一 方針
一 帝国ハ大東亜戦争完遂ノ為帝国ヲ中核トスル大東亜ノ諸国家諸民族結集ノ政略態勢ヲ更ニ整備強化シ以テ戦争指導ノ主導性ヲ堅持シ世界情勢ノ変轉ニ対処ス政略態勢ノ整備強化ハ遅クモ本年十一月頃迄ニ達成スルヲ目途トス  
二 政略態勢ノ整備ハ帝国ニ対スル諸国家諸民族ノ戦争協力強化ヲ主眼トシ特ニ支那問題ノ解決ス
……
以上各方策ノ具現ニ伴ヒ本年十月下旬頃(比島独立後)大東亜各国ノ指導者ヲ東京ニ参集セシメ牢固タル戦争完遂ノ決意ト大東亜共栄圏ノ確立トヲ中外ニ宣明ス
……』
 同要綱を検討すればわかる通り、巷で喧伝する「大東亜戦争はアジア民族の解放のためであった」とする説は間違いである。日本は、開戦後わずか半年の昭和17年(1942年)6月5日にミッドウエィー海戦で連合艦隊は主力空母赤城、加賀、蒼龍が沈没するだけではなく最後まで奮闘していた飛龍までも行動不能となって味方により処分することになるという大惨敗を喫していたことと、昭和17(1942)年8月に開始したガダルカナル島奪還作戦も失敗し甚大な被害を被っていた。そのため昭和18年初頭には政府中枢では戦争が容易ならない様相を呈していて、場合によっては敗戦となるかもしれないと噂されるようになっていていた。そのため日本の先行きを心配して資産を海外に移転する動きが出始めた頃であった。またイギリスは、1943(昭和18)年1月11日、中華民国重慶政府に1842 年に締結した南京条約以来100年続いてきた治外法権を撤廃して新たに中英新平等条約(Sino-British Treaty for the Relinquishment of Extra-Territorial Rights in China)を締結したことで、対する中華民国南京政府と日本は、これに対抗する政略態勢を整える必要があった。これが大東亜会議の裏事情であった。
 尚、イギリスが治外法権を放棄した真意は中英新平等条約第8条に見ることができる。同条項には、中華民国重慶政府とイギリスとで新たな通商条約に付いて交渉を始めるのは戦争終結してから6ヵ月後に開始することを定めていた。イギリスとしては、中華民国重慶政府に対して治外法権を放棄して独立国にしたものの、中立若しくは日本と独自に外交交渉行われては困ることから、連合国側に引きいれておく必要があった。その代わりとして連合国側で対日戦に協力するならば十分な軍事援助を与えることにしていた。つまり、中英新平等条約とは、蒋介石に対する「撒き餌」であった。
 日本は大東亜戦争に於いて戦略が欠けていた証拠でもある。そのため敗戦が囁かれるようになった昭和18年になって「……戦争完遂ノ決意ト大東亜共栄圏ノ確立トヲ中外ニ宣明……」となったのだ。そもそも戦略の失敗を戦術の勝利で補うことはできない。それなのに大東亜会議により戦略を再構築しようとしたことは時期を逸したというだけでなく、戦略の欠如により最終的な勝利はありえず敗戦を予兆させるものでしかないのだ。

 それから80年経過した令和5(2023)年5月19日、G7広島サミットが開催される予定になっている。G7(Group of Seven)とは、先進国首脳会議といわれる国際的な首脳会議の一つである。加盟国は、フランス、米国、英国、ドイツ、日本、イタリア、カナダの七か国にEUが加盟している。2023年5月19日から21日まで広島でG7広島サミットが開催されることになっているが、同会議では、自由、民主主義、人権などの基本的価値を共有するG7首脳が一つのテーブルを囲みながら、世界経済、地域情勢、様々な地球規模課題について、率直な意見交換を行うことになっている。
 そして、広島サミットで最も重要な議題の一つは2022年2月に開始したウクライナとロシアの地域戦争の問題である。
 同問題は、2022年2月に開始したウクライナとロシアの地域戦争であるが、ウクライナはコメディアンであったゼレンスキーというパペット(Puppet)により早期解決の道を自らが閉ざし、ウクライナに大きな戦火の爪痕を残してしまった。すでにウクライナ経済は、実際は債務不履行国であり外貨準備資金もすべて底払いし、自力で勝利を得ることは不可能となっていてG7からの支援だけが頼りとなっている。
 そのウクライナであるが、欧州安全保障協力機構(Organization for Security and Co-operation in Europe、OSCE)の監督の下でミンスク2(Minsk II)合意を締結している。しかし国内事情により同合意を反故にしたことがロシアによるウクライナ侵攻につながった。したがって「ウクライナ可哀そう」は、プロパガンであり虚偽である。それを支援するG7は「自由、民主主義、基本的人権の尊重、法の支配」というが、それはウクライナの嘘を正当化して、ロシアが悪いとしたいだけの「不純な価値」なのだ。そして「法の支配」というが、ウクライナ問題に関してG7が決めた価値以外は認めないうえに、公然と国際法を破棄しても構わないという実に身勝手な法概念なのだ。
 その背景にはイギリスのクリミア戦争以後一貫しているロシアを仮想敵国とする国家戦略がある。イギリスがロシアを仮想敵国とした理由は、自国国益を海洋交易と定めそれを保証するのが海軍力であって、その敵対勢力は強力な陸軍力を保持した国、と云うことにある。

 それに同調しているのがアメリカのオバマ元大統領を頂点とするアメリカ民主党であって、同調している理由は有り余る軍事力を使い戦争経済を実行する為だけなのである。
 ところで、オバマ元大統領は、ハワイにあるイギリス国教会系プナホウ・スクール(Punahou School)という学校に在籍し卒業していたことはよく知られている。この学校は在籍していると国籍を変更してくれるという不思議な学校である。オバマ以前にも、この学校の卒業生である孫文は、オバマ同様に国籍を変更している。国籍を変更した孫文は、しばしば日本に滞在していても公安当局から要注意人物として厳しい監視の下にありながらも検挙されることがなかったのはアメリカ国籍を取得していたからであった。つまり、オバマも孫文もイギリスの国家戦略である強大な海軍力を使い海洋交易を通じて世界覇権を維持する活動の一部を担っていたことになる。そのため孫文は香港及び上海を中心としたイギリスの勢力圏内が主要な活動範囲なのである。また現代のアメリカ外交の中枢はRUSIと密接不可分な関係にあり実質的にイギリスの影響下にあると考えられる。
 その表れがG7である。そのためG7は主要仮想敵国をロシアと定め、共通の価値という排他的な障壁を築いて存在意義を誇示している。ただし、G7に加盟する7か国も決して一枚岩ではなく、イギリスとアメリカにより第二次世界大戦の枢軸国であるドイツ、日本、イタリアに対する支配構造が存在する。日本の場合は、日米安全保障条約と行政協定がそれであるが、ドイツの場合は、NATO軍地位協定(Agreement between the Parties to the North Atlantic Treaty regarding the Status of their Forces)と、ドイツ駐留NATO軍地位補足協定(Agreement to Supplement the Agreement between the Parties to the North Atlantic Treaty regarding the Status of their Forces with respect to Foreign Forces stationed in the Federal Republic of Germany)が存在する。またイタリアは、1951年にNATO軍地位協定を締結して、1953年に発効した翌年の1954年、アメリカとイタリアは、イタリア国内の基地施設の使用についての具体的な取極めとなる「NATO条約加盟当事国の二国間における基地施設使用の協定(BIA)」を締結しているが、この協定はイタリア国会の決議により現在も非公開とされている[1]。つまり第二次世界大戦の戦勝国である連合国は、未だ以て枢軸国に参加した三国を許しておらず理不尽なウクライナとの戦争に協力することを求めているのだ。
 そのことが顕著になったのがウクライナ問題である。そもそもNATOが自己保身のためにウクライナに介入したものであったが、予想以上にロシアの素早い対応に、なすすべを知らず狼狽するばかりで問題解決能力が極度に欠如していて烏合の衆であることを明らかにしてしまった。そのためG7がウクライナの正当性を主張し、強力なプロパガンダで輿論を統一して軍事支援に誘導しようとしても、そもそもロシアに対抗するだけの兵力も動機も存在しない関係国の行動は鈍い。当たり前である。それにも拘らずG7とNATOは自己のレゾンデートルの問題からいきり立って武器支援を強行してみたものの、逐次投入は言うに及ばず、補給や整備を無視したその場しのぎの対応となっていて、ウクライナ現地軍もNATO中枢も「引くことも、避けることもなく、ただ単に強攻突破のみという」軍事の専門家とは思えないほど支離滅裂なもので、まるで昭和18年に開催した大東亜会議のころと情況が瓜二つである。つまりG7はウクライナ問題で如何なる対応策を取ろうとも劣勢を挽回するには至らない。したがってはG7速やかに敗戦処理に進むことが戦争による犠牲を少なくする最大の方策と考えられる。

 現代世界の桎梏となっているG7とNATOに振り回されている日本であるが、敢えて日本を治外法権の国にすることを唯一の存在価値としてきた自由民主党は万死に値する。
 その自由民主党は、政治的に追い詰められていることから早晩総選挙は避けられないであろう。そのため、自由民主党は失地回復と総選挙をにらんで、国民に現金を配ることになるはずである。しかし、政府が国民に資金をばらまくにしても、何も自由民主党である必要はなく、いずれの政党も同じ方法しかない。
 なにより、現代日本の諸悪の根源は自由民主党が日本の主権をアメリカに売飛ばしたことであり、このことを70年も隠し続け日本の安全と繁栄の妨げとなっていたということだけではなく、莫大な国富を唯々諾々とアメリカに差し出してきたことである。けれどもいかに隠し続けようともがいても、すでに国民は気が付いてしまったのだ。したがって自由民主党が姑息な政策をいくら幾ら実施しても、売国政党であるという汚名を晴らすことはもはや出来ない。
 したがって、日本の疲弊と混乱を回避するためには、一刻も早く自由民主党を政権の座から引きずり下ろし、日本の主権を取り戻す外交交渉を開始する動きに舵を切る以外に方法はない。
以上(近藤雄三)

[1] 「他国地位協定調査報告書(欧州編)」https://www.pref.okinawa.jp/site/chijiko/kichitai/sofa/documents/chuukan-gaiyou.pdf。

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