goo blog サービス終了のお知らせ 

こっちゃんと映画をみまちょ♪

レビューと呼ぶほど中身なし。しかし中身が無いのも中身のウチよのぅ。・・・なんちって。

タイヨウのうた (2006)

2006年05月12日 | しびれるMovie

こっちゃんポイント ★★★★★

鑑賞環境  試写会 
上映時間 119分
製作国 日本
公開情報 劇場公開 (松竹)
初公開年月 2006/06/17
ジャンル ロマンス

雨音薫(YUI)、16才。学校に行かず、夜になると駅前の広場で歌い続ける毎日。彼女は、太陽の光にあたれないXP(色素性乾皮症)という病気を抱えていた。昼と夜の逆転した孤独な毎日。彼女は歌うことでしか生きていることを実感できないのだ。そんな彼女の秘密の楽しみ、それは、彼女が眠りにつく明け方からサーフィンに向かう孝治(塚本高史)を部屋の窓から眺めることだった。太陽の下では決して出会う事のない二人だったが、運命は二人を引き寄せる…。

 


(goo映画より抜粋)

なんて泣かせるんでしょう...。.(つд⊂)ううっ

この物語の女の子は、 太陽の下で無邪気に遊ぶことも、お天気の良い空の下で大好きな人と手を繋ぎ仲良く歩くことも出来ない。生まれつきの”悲しい病気”を抱えた女の子だったのです。

これは 歌が大好きなそんな少女のお話です.....。

泣けます。とにかくあちこちで泣けます。
別に無理に泣けと言われてなんかいないのに、それでも泣けてきます。

たしかに、何も映画を観るたび泣く必要もないですし、またそんな映画ばかり探して観るのも一体いかがなものか?と思うのですが、それでもこんな作品に出会った時には、頭で考えるのではなく、”心”が先に泣き出します。本来、人間と言うのはそういう生き物なんですね。

映画「タイヨウのうた」は、そんなことを教えてくれる作品でした。

明け方、まだ街が目覚めるその前___。

自分の部屋の窓からちょっと離れたバス停を見つめる女の子。そこにはサーフボードを積んだスクーターと一緒に仲間を待つ高校生の男の子の姿がありました。女の子はまだ名前すら知らないその彼に密かな想いをよせ、そしてその男の子の姿を、いつまでもいつまでも ただじっと見続けます。

ところが、そのうちベンチに座った青年は、バス停の標識の影に隠れて見えなくなってしまう・・。

「あ・・・。」

一体なんということでしょう。これは女の子にとっては大問題。
女の子は大きさの限られたその部屋の窓から精一杯首を動かし、なんとか男の子の顔を見ようとするのですが、でも見えない。そのうち男の子の”早朝サーフィン”仲間がやってきて、彼は海へスクーターで走り去って行くのでした。

やがて女の子は、今日もひとりベッドへ入り、毛布に包まるように眠りにつくのです....。

こんなシーンが、セリフもなく淡々と映像だけで繋がれてゆくオープニング。

これを観ただけで、この映画がいかに良いか”予感”した人も多かったのではないでしょうか?
そして、小さなキャンドルに火を灯し、ギターで唄い始める彼女の歌が可愛らしいオープニング・タイトルに繋がっていくあたりで、早くもその”予感”はより確かなものへと成長してゆきます。

この「タイヨウのうた」は、2時間ほぼキッチリの映画ですが、その時間の使い方がとても上手いですね。別に間延びするわけでなければ、必要以上に詰め込むわけでもない。とにかく時間はゆったりと、そして時には緊迫感をもって迫ってきます。観終る頃にはスッカリこの映画の中へ惹きこまれてしまっていました。

こっちゃんにとっては、それくらい感情移入してしまった映画だったのです。

女の子の大好きなもの。
それは「うたを唄うコト」と「まだ名前も知らない男の子を窓からただ眺めるコト」。

昼夜が完全に逆転してしまった生活の中で、彼女は今日も人通りの少ない夜の駅前広場で歌い続けます。

映画の主人公:雨音(あまね)(YUI)は、治療法の見つからない難病を持つ女の子。
XP”と呼ばれるその病気は、日光に当たると、皮膚が色素沈着を起こして著しく乾燥し、角質化する疾患。皮膚癌を生じることもあるという劣性の遺伝病です。簡素化して言うならば、太陽の光を浴びると”死んでしまう”かもしれないという恐ろしい病気。しかしこれは、現実にこの世にある病気です。
太陽の下に出なければそれで良いかといえば、実はそうではない。その病気はいつかきっと発症し、その人の神経を蝕(むしば)んで行きます。そして結局は死に向かっていくという....。

わたしは人とは違う だからわたしは”恋”なんて出来ない

生まれ持ったその病気と16年間も闘いつづけ、やがて訪れるであろう”自分の悲しい未来”を予感しながら毎晩想いを込め、自作の歌を唄う女の子。そんな主人公を歌手のYUI(ゆい)が演じています。

まず、この女の子のキャラクターがとても可愛らしいのが、この映画最大の魅力。
いや、そうは言ってもこれは むしろ男ではなく”女性から見た可愛らしさ”なんだと思います。だから彼女を見ていると”恋心”というよりも、何だかクスクスッと笑みがこぼれ、微笑ましい気分にさせられてしまうんですね。

いつも邪魔するバス停を、ちょっとだけ(?)引きずって移動してみる。

路上ライブ中に見かけた彼を走って追いかけ、いきなり踏み切りで体当たり。
その後、一方的に意味不明な自己紹介を押し付ける。

ビデオカメラの中の”彼”を見ながら、夜 自分も同じ道を歩き、同じバス停のベンチに座ってみたりする。

こんなどこか少女漫画のような感覚の女の子を観ているうちに、いつしか”彼女”のことが好きになってゆきます。

たしかに、映画初主演のYUIや、唯一の女ともだち役の通山愛里ちゃんなど、演技だけを見れば「チョットそれは....」と言えなくもないのですが、それでもYUIに関してはさすがシンガー!と言わせるものがありました。良いですよ、彼女の歌。
この映画の主題歌「Good-bye days」は、彼女自身がこの映画の撮影を進行させながら同時に書き上げたものと聞きました。それだけに、この映画にピタリとハマっています。そしてこの映画のイメージに深く刻み込まれていました。

父親役:岸谷五朗さんや、母親役:麻木久仁子さんも必要なところでしっかりツボを押さえた流石の演技。相手役の塚本高史クンも歯切れ良く、中々の好演です。今回は”優等生ではない好青年”を上手に演じてくれていましたね。

更に、この映画の監督:小泉徳宏氏により、綿密に そして巧みに練られた構成と演出によりとても良い映画に仕上がっています。正直、普通の映画ではネックとなってくるような演技力を、ここまでカバーできる演出はスゴイ!いつの間にやら「あ、この演技はむしろ自然なカタチなんだ」とすら思わせてくれますからね。イッツ・マジックですよ。(笑)

何だか監督に興味が沸いちゃって「この小泉徳宏って方、いったい何者?」そう思って調べてみたんですが、この方なんとまだ25歳(2006.05.12現在)しかしあのROBOT映画部の所属なんですって!

高校在学中の課題で映像制作と出会い、大学進学と同時に自主映画の制作活動を開始。2001年、映画監督篠原哲雄氏のワークショップをきっかけとして、自主制作映画チームI’s film(アイズフィルム)を結成。その代表を務めながら、5本のショートフィルムを監督し、水戸短編映像祭をはじめとする国内外の数々の映画祭で入賞。篠崎誠監督が発案者となり、多数の有名監督が参加した『刑事まつり』でも、自身監督作である『行列のできる刑事』が高い評価を得、注目を集める。2006年劇場長編映画『タイヨウのうた』でデビュー。ROBOT映画部所属。(ROBOT MOTION PICTURE DIVISIONより抜粋)

【ROBOT映画部とは】94年岩井俊二監督の映画デビュー作品「Undo」「PICNIC」を皮切りに、「踊る大捜査線 THE MOVIE」「サトラレ」等 今や日本で最も有名な映画制作会社のひとつとして、多くの映画ファンそしてクリエイターを轢きつける会社。(Japan Design Netより抜粋)

へぇ~~~~ッ!なるほどですねー!スゴイですよ、この人。この映画で長編デビューっていうのに、何という安定感でしょうか!つまりソレは、こんな経歴から来ていたのですね!こういう人がドンドン出てくれれば、邦画の未来は決して暗くないのだと思います。
早速 こっちゃん的には、これからも目を離せない監督さんの一人になりました。

そんな監督によって生み出されたこの映画「タイヨウのうた」は、エンドロールに至るまで、その丁寧な作りが光る作品です。

 

ただこの映画でひとつ残念なことは、公開がまだまだ先ということ。一般公開は6月中旬以降です。こんな良い映画が勿体無い!気持ち的には明日にでも一般公開して欲しいくらいです。

実はこっちゃんは、この度 ある方の「ご好意」でお誘い頂き、この映画を観ることが出来ました。そんなこの映画がとても良かったりして、今ではその方に感謝の気持ちで一杯です。本当にありがとうございました。この場を借りて御礼申し上げます。

そういえば、先日感想に書いた「青いうた のど自慢 青春編」も同じ「~うた」の付くタイトルでしたが、こちらを観終わったときに心に残るものはまるで違います。この「タイヨウのうた」は、切なく悲し過ぎる話なのに 不思議と暖かく嬉しい気持ちにもなれる映画なのです。

そう遠くない未来にやってくる「死」を感じていたこの時に、主人公の女の子は「初めての恋」と「精一杯”死ぬまで生きる”という気持ち」を手にしました。

どうか悲しい結末にだけはならないで....

そう願いスクリーンに釘付けになった人もきっと多かったでしょう。こっちゃんもそうでした。
しかし”現実”は容赦なく彼女を迎えにきます。

”タイヨウに向かって伸びる花”  向日葵(ひまわり)。

いっぱいのその花に囲まれてタイヨウのもとへ帰って行った彼女。
タイヨウとはともだちになれなかったけど、今度生まれてきたら大好きなおとうさんやおかあさんと一緒に思いきりタイヨウの下で笑って欲しい。そして愛する恋人と美しい朝日を一緒に眺めて欲しい。

彼女が残してくれた切ない歌は、そんなこっちゃんの気持ちに答えてくれるような優しい歌でした。そして、その歌は”彼女がそこに生きていた証”であり、そして愛する人たちの”心の中にいつまでも残るもの”であると信じたいですね。

彼女がいなくなっても耳を傾ければホラ。あの歌が....。
”姿”は見えなくても”声”はこれからもみんなの側にいます。

この歌声を、もっともっと多くの人に届けたい。そんな気持ちになる映画です。

 

《2006.08.17記事一部改訂》

【作品】タイヨウのうた

 


アンジェラ (2005)

2006年05月08日 | しびれるMovie

こっちゃんポイント ★★★★★

鑑賞環境  試写会 
上映時間 90分
製作国 フランス
公開情報 劇場公開 (アスミック・エース)
初公開年月 2006/05/13
ジャンル ロマンス/犯罪

48時間後、俺の命は奪われているかもしれない。こんな人生、もうたくさんだ。アレクサンドル三世橋から見下ろすセーヌ河。ここで何もかも終わりにしようと思った。その瞬間、突然、君が隣に現れた。透けるような白い肌に神々しく輝く金色の髪。細く、長く、滑らかな曲線を描く肢体を持つ、美しい人。俺は君を見上げ、息を呑んで、そこに立ちすくんだ。「あなたと同じことをする」いきなりそう告げて君は飛び降りた。次の瞬間、俺も君を目がけて飛び降りていった。「死なせたくない」あまりにも無謀で、無垢で、はじめての感情だった…。アンジェラ、君は一体、何者なんだ?

 

(goo映画より抜粋)

試写会でクギを刺されました。あ。”頭に”とかってコトじゃないですよ。「念を押された」って意味です。
え、何をって?それはネ・・・。( ̄∀ ̄*)ムフフ あ、それを言う前に、まずご忠告!

まだこの映画をご覧になっていない方につきましては、”絶対に”この先を読まないで下さい!

それでも読んじゃうアナタのために、念のため いつもの”こっちゃん流”で、完全ネタバレはさせないように進めて行きますが、その「クギを刺された」一件が、果たして”どの部分”をそう言ったのか?今になって 分からなくなってしまったからです。
そんな不安定なカンジで今回は行ってみたいと思いますので....。

この映画「アンジェラ」は、GW真っ只中に催されたテレビ局主催の試写会で観たのですが、そこで「リュック・ベッソン監督からメッセージが届いております。」などと大胆不敵な発言でこの映画の紹介を始めた司会者さんが、次のようなコトをおっしゃってました。

つまりこの記事の上段のあらすじにもある「”アンジェラの正体”について、アンタの口からバラしちゃアカン!」というモノ(文面詳細はHPの”LETTER FROM LB”に掲載されています)それは今思えば、こっちゃんの勝手な思い込みで、受け取り方を大きく間違っただけかもしれませんが、その時は確かにそんな風に聞こえました。こっちゃんの他にもそう受け取った方が多かったと思います。

し、しかしっ!
後になってみれば、”その正体”についてはなんとクッキリ・ハッキリとチラシの表にも裏にも既に書かれているではないですか!こりゃナンじゃ? (○ ̄ ~  ̄○;)ウーン....。

ちなみに、この映画のキャッチコピーは「泣き虫で凶暴 出逢うはずはなかった 君は天使」です。

しかも家に帰ってTVを観れば、この映画のTVスポットまでもが”その正体”について堂々と名前をあげてしまってる。あれ?あれれ~?

そこで再度、良ぉ~っくチラシを読み直すと「決して”エンディングの秘密”を明かさないで下さい」と書かれているではあーりませんか。「あぁ、そっちね」と妙に納得してしまったワケです。
なんだ”正体”の方じゃなかったか?紛らわしーなぁ。

でもね・・・イマイチその点が自信がない。

つまり、この映画「アンジェラ」のチラシは、日本でも二種類のモノが用意されているのですが(こっちゃんの知る限りの範囲でございます)、その2枚を比べると実はニュアンスが大きく違っています。

当初刷られたチラシには、こんな「秘密にしてね」的発言は一切掲載なく、そして”天使”の二文字もドコにも見当たりません。その上、大まかなストーリー解説さえもなく、これだけでは何の話か分からないほどです。


ここで 恐らく”宣伝初期”と”宣伝後期”に、その宣伝方針が大きく変更されたのではないか?などとマタマタ無謀な憶測をしてしまうのですが、こっちゃん的には「リュック自身はこの作品について、日本でも”内容の全て”を公開せずに観客に届けたかった」のではないか?と思えてならないんです。

フランス本土では公開のその日まで、「作品の内容」「出演者」「映像」「写真」の一切が明かされることなく、記者のための”試写会”すら行われなかったそうですね。
「6年の沈黙を破り、リュック・ベッソンが本当に撮りたかったラヴ・ストーリー」
と称されるこの映画は、リュックにとってそれほど大切で、本当に愛して止まない作品だったに違いありません。

もしかするとこの辺で、作品を大切にしたいリュックと、興業収入にコダワリ 過剰な宣伝を望む側とで、かなり厳しいやりとりがあったのかもしれません。まったく異なる二枚のチラシは”それ”を物語っているのではないかと....。

結局、「”彼女の正体”が明らかになる”衝撃のラスト”が待っています!」的な日本人の”宣伝根性”をチラシにまで刷り込み、その一方であからさまなCMを流すとは・・・なんだか随分チクハグですねぇ。

いっそのコト、そんなことを初めからわざわざ言わなければ、もっと自然にこの試写会に参加した皆が”純粋なラヴ・ストーリー”として受け取れたでしょうに。

そういう意味ではチョット嫌な思いをしたのは事実です。
結局、”宣伝”と”作品”は全く別次元の産物なんだということですね。

よ~く わかりました。

実際、この映画「アンジェラ」には、色んな映画を数多く観てきている人にとって、”腰を抜かすほどの秘密”など隠されてはいません。

しかし、そのラストシーンはこの地上のどの愛よりも美しく、素晴らしいと言えるものでした。
リュックはまたしても”究極の愛”そして”ありえない愛”をフィルムとして完成させてくれました。

同じモノクロという事もありますが、あの名作「ベルリン~天使の詩~」を思い起こさせてくれる映画でもありましたね。リュックがオマージュを捧げたのではないか?と思えるシーンもあったりして。

こっちゃん的には、そんな素敵な作品に「ありがとう」の想いでいっぱいです。

ただ、今こっちゃんの中ではちょっとした葛藤がおこっています。

それは今までダントツで好きだったリュック・ベッソン作の「レオン」と、この作品「アンジェラ」のどちらが一番好きなのか?ということ。

そんな愚かしい悩みに答えを出す必要など無いっちゃー無いのですが、言いたいのはそれほどこの映画「アンジェラ」が好きになったということです。

こういうリュック・ベッソン作品が観たかった!

なんだか今日までそのことをズーッと待っていたように思えるほど愛しい作品です。
そして初めて観たとは思えないほど自然に、体の中にすぅ~っと入り込んでくるような作品でもありました。

もっとも「レオン」のようにアメリカ合作でもないですし、あんなハリウッド色(いろ)の強いリュックが好きな人にはちょっとウケない作品なのかもしれませんけど、この映画はフランス人としてのリュック・ベッソンによるフランス映画だけに、”やりすぎ感”が押さえられ とても好感が持てました。

とにかくリュックの映画は”構図”が素晴らしい!と、いつも思います。
そしてこの映画「アンジェラ」は終始モノクロ映像なので、その構図は”色”に侵食されることなく、一層際立って目に映(はえ)るかのようです。

特にこのモノクロの質感ときたら!
いやぁ。実に柔らかく、美しいですねぇ。見惚(みと)れてしまいました。ウットリです。
単なる色彩では表現仕切れないツヤが ここにはありました。

こんな”お洒落な写真集”の一ページを切り抜いたかのようなシーンを、一枚一枚 丁寧に丁寧に繋ぎ合せて出来上がったかのような この映画。 素敵ですね。

そしてまたリュックらしく、その映像にクスッとさせられちゃうような演出が要所要所で絡んできます。

今回何よりも良かったのは、やはりこの方を主役に持ってきたところ。

ジャメル・ドゥブーズ

オッカナイ人たちから借金してしまったがために、返済できなければ48時間後には死んでしまうかもしれない男:アンドレを演じます。
彼、”片腕を失くしたコメディアン”としてフランスで人気沸騰中らしいですね。
その演技はホント 終始コミカルで、この映画の雰囲気を決定付けます。とても味のある良い俳優さんですねぇ。
代表的な出演作は「アメリ」ですって?あぁ、たしかに観ましたこの人。

それと、今回この物語のキーとなる主役、謎の美女:アンジェラ役ですが、これがまたスゴイ。

なんと、リュックが別れたウルトラヴァイオレットなカミさんの次に主役に抜擢したのはGUCCI専属のスーパーモデルですって!彼女の名前は、リー・ラスムッセン

その身長180センチの体のスラリと伸びた足に踏みつけられたいと願う男性も ごく一部にいるかもしれませんが(笑)、モチロン映画ではその美しさだけではなく、リュックの映画には欠かせない”強さ”そして”凶暴さ”をも見事に表現してくれました。

こっちゃんにとってこの映画「アンジェラ」は、そんな意外なキャスティングにも思える二人によって、予想以上に惹きこまれた作品です。

観る人によっては「ふぅ~ん。」や「あっそ。」で終わっちゃいそうなカンジもしますが、実はこんな映画も何気にこっちゃんのツボだったりします。

少なく見積もっても「あぁ。仮にこれでまた6年間リュック作品が作られなくても過ごせるなぁ~」と思えるほど満足出来ましたからね。
・・・って、あ、嘘です。これからもドンドン良い映画を作って下さい。リュックさん!

ところで、この映画を観終わったあとで「なんだ結局ファンタジーかよ!」って言ってる方がいたようですが、この映画を観た後にそんなコトを言っちゃった方には「だから何?」と尋ね返したいですね。”ファンタジーにしろ、歴史ドラマにしろ、ドキュメンタリーさえも、ぜ~んぶ初めからヒトが作った物”そぅ考えれば皆同じ。良い悪いはまた別問題ですけどね。

あ。ところでこの記事。

誰も読んでないでしょうね?ダメよ読んじゃ。映画を観るまでね。(笑)

 

《2006.08.17記事一部改訂》

【作品】アンジェラ

 


ダンサーの純情 (2005)

2006年05月06日 | しびれるMovie

こっちゃんポイント ★★★★★

鑑賞環境  映画館 
上映時間 111分
製作国 韓国
公開情報 劇場公開 (エスピーオー)
初公開年月 2006/04/15
ジャンル ロマンス/ドラマ

少女チャン・チェリン(ムン・グニョン)が、中国からソウルに到着した。姉の身代わりとして、ダンス大会に出場するためである。将来を有望視されながら、パートナーを失い、さらには足の怪我で絶望の底にいたダンサー、ヨンセ(パク・コニョン)の前に現れた新しいパートナー、それがチェリンだった。彼女の姉はダンスチャンピオンだが、チェリンはダンス未経験。大会を三カ月後に控え、チェリンが素人と知ったヨンセは、一度はチェリンを追い出すも、やがて彼女に特訓を開始する。

 

(goo映画より抜粋)

「嘘でもいい、踊っている間は俺を愛してくれ....」

こっちゃん 恥ずかちくて言えない!そんなこと (*ノωノ) イヤンもぅッ!
久々に”韓国映画らしい”韓国映画を観た満足感に満たされました。

そして 今日に至るまで、”何でもあり” ”開き直りの押しまくり”的な数ある韓国映画作品において、この手のダンス映画を一本も観ていなかったことに新鮮なオドロキと感動を覚えました。

いいですねぇ、これ。

昨今、日本でもTVでレギュラー番組化されるほどの「社交ダンス・ブーム」のようですが。
もしかして韓国も同じなのでしょうか?

日本でその火付け役になったのは、恐らくあの名作「Shall We ダンス?」でしょ?あれはヨカッタですね~♪
役所さんの不器用さ加減がホントとっても良くて、そんな人が何かに打ち込むという事の面白さと、更にそこに家族愛なんかも絡んできてね。
何ともいい感じ”を醸(かも)し出してくれた映画でした。

そして日本で大ヒットしたその映画は、小泉首相・・・じゃなかったリチャード・ギア様主演によってハリウッドでもリメイクされたわけでして、そちらもまた”如何にも米風”で楽しい仕上がりを見せてくれましたよねぇ。

そして今度は韓国。・・・って、別に「Shall~」のリメイクってワケでは全然無いのですが、これがね・・・・

またまた良いんですッ!ダンス最高ですわっ! (←って自分ではやらないクセに言ってるの)

この「ダンサーの純情」は、社交ダンスというこの世界を舞台にした”妬み”や”裏切り”などのヒドイ仕打ちを盛り込みつつ、そんな中 若き傷ついたダンサーが純粋な心を持つ少女とレッスンを重ね踊ることによって、再び愛と希望に目を向けて行く・・・そんなお話。

こんなコトを言うと「そんな話なんてドコにもありそうだろ!」って言われちゃいそう。

でもね。いやいや。これが、これが。どーして、どーして。
そのクライマックスでの展開はさすが韓国と言いたくなりますよ。
だってね、当然のごとく”最大の見せ場”になるであろう「ダンス大会」のシーンでは、アッサリと観客の期待を裏切る流れへ持って行き、それでいて最後には再び誰もが望んでいたであろう愛しい結末へと再び繋げて行くのですからね。

これは中々、心ニクイ作りですよ。(笑)

この映画「ダンサーの純情」の主役は、「韓国国民の妹」と呼ばれるムン・グニョンという人。
その幼く純真なイメージの容姿から飛び出す可愛らしい仕草に始まり、観客を一気に惹きつける”泣きの演技”まで余裕シャクシャクでこなす女の子です。「国民の妹」の意味は見てると自然と納得できますね。

 

そういえばその昔「国民的美少女」という方が日本にもいらっしゃいましたけど、あれは一体どういう意味だったのでしょう?
もしかして”政府公認”って意味だったのかな?

で、結局その「国民的美少女」は、日本国民ではなく、F1を乗り回す外人さんのトコに嫁に行っちゃったワケで。この辺が何とも面白いとこデスねぇ・・・。

おっと!話しがまたそれました。(笑)

とにかくね、この映画「ダンサーの純情」を観ていると、「あぁ、これはムン・グニョンが女優として本気で臨んだ映画なんだなぁ」と感じます。
何と言ってもその熱演ぶりには目を見張るものがありました。

まずセリフ回しを含めて演技の自然さは期待通りの素晴らさですね。普通ならこれだけで十分評価に値するのでしょうが、今回はこれに熱いダンスシーンが加わりますからね。

凄いですねぇ。ホントに彼女って未成年なんですか?(笑)
この根性はハンパじゃありませんよ。

実はこの記事を書いた今日 5月6日が彼女の19歳の誕生日。ということはこの映画を撮った時はまだ18歳だったということですか?映画の役では20歳間近の19歳を演じていましたが、この映画だけで観るならばある意味”年齢不詳系”とも言えます。

恐らく映画を観てもらえれば分かりますが、話の始めに中国から渡ってきたばかりのオドオドした様子の彼女と、大会で踊っているときの彼女は、同じ女性とは全く思え無いほどの変り様ですからね。

これには驚きました!この”艶”というか”ダンサーとしての美しさ”というか、もう舌を巻いてしまうほど素晴らしかったですものね。

もっと驚くのは彼女、この役に入るまで「まるっきりのダンス初心者」だったということ。思わず「え?ほんと?」と聞き返したくなります。って言うか聞いても信じられませんね。彼女のダンスシーンはそれほど完成度が高く目に映りました。

彼女は何でも、この映画のために1日10時間のダンス・レッスンをやり遂げたという頑張りっぷりを見せたそうです。本当に足の爪が剥(は)がれるほどのキツいレッスンがなんと半年間も続いたんですって!それでも笑顔を絶やさずレッスン中、周囲に気遣いまでみせたという彼女の話を聞き、一層胸が熱くなりました。
拍手を贈りたい気持ちで一杯です。

一方 相手方の男性、今回は”失意の天才ダンサー”を演じるパク・コニョンは、もともとミュージカルの舞台俳優出身。とはいってもダンス・スポーツは初体験ということで、こちらも相当な努力があったようです。演技の雰囲気もこの「ダンサーの純情」にはとてもマッチしてたように感じました。こっちの方も とってもナイスなキャスティングでしたよ。

さて、この「ダンサーの純情」は韓国でも大ヒットした映画らしいですね。なんでも250万人が号泣したそうで。
それって誰が数えたのでしょうか?(笑)

・・・そんなことはどうでも良いんですけど、確かにこの映画には泣かされます。

この日観に行った映画館は、驚くことに一席も空くことのない本当の満席状態。「天気の良いGWなんだから外へ行きなさい!」と周囲に座った人みんなに言いたくなりましたが(←ってオマエもじゃ!)この映画の評判を聞きつけ、あえて映画館に足を運んだ人の多さには、さすがに観る前からチョット圧倒されてしまいました。

そして物語がドンドン煮詰まって行くにつれ、周囲からはすすり泣く声が。お?中には男性の声も・・・。

こっちゃんもかなり来ましたねぇコレは。
恐らく同じ劇場でこの映画を観た人のほとんどは満足されて帰ったことと思います。

映画の内容としてはストーリーが分かりやすく、それに加えていかにも韓国らしい背景が見え隠れしたりしてそこがまた良かったりします。コレって、韓国訛(なま)りが分かればもっと楽しかったんでしょうねぇ。

前半は、まるでムン・グニョンのアイドル映画のようなノリすら感じさせる軽いシーンもいくつかありますが、とにかくノリの良い音楽と華のある舞台のシーンを観ているうちに中盤あたりに荷来る頃にはスッカリ惹きこまれてしまいます。

「偽装結婚」をひたすら疑い尾行・張り込みに明け暮れる二人組にも笑わせられましたし、楽しさと切なさが丁度良いカンジで盛り込まれてましたね。

これは韓国映画が苦手という人には特にオススメしませんが、そうでない方ならきっと楽しめる作品だと思いますよ。「デュエリスト」のような、妙な”間”と可笑しな雰囲気の恋愛チャンバラを観るくらいなら、絶対こちらの方をオススメしたいです。

もともと「大会に出る」という目的だけで出会うことになった二人ですが、ダンスというものは互いを”信頼”しなければ決して成り立たないスポーツなのだと、この映画は教えてくれます。

そしてそこで得られた結びつきは表面だけではなく、心に深く印を刻み込むのですね。

チェリンが中国から連れてきた唯一の友達の蛍(ホタル)。その蛍が、ラストではとても上手にシーンに絡んできます。このあたりも良いですね。

そしてその蛍に導かれたこの二人の結末は、熱烈なキスシーンや、強烈なラブシーンのあるドラマよりもずっと心に届くと思いますよ。これからご覧になる方がいらっしゃいましたら、出かける前に念のためハンカチとティッシュの点検をされておいた方が宜しいかと。

涙腺の弱いみなさまに”ダム決壊しちゃうかも注意報”発令中です。

 

《2006.08.17記事一部改訂》

【作品】ダンサーの純情

 


明日の記憶 (2005)

2006年04月27日 | しびれるMovie
こっちゃんポイント ★★★★★
鑑賞環境 試写会(映画館) 
上映時間 122分
製作国 日本
公開情報 劇場公開 (東映)
初公開年月 2006/05/13
ジャンル ドラマ

広告会社の営業マンとして働く雅行(渡辺謙)は、時に家庭を返り見ないほど仕事に没頭してきた。大きなプロジェクトと娘の結婚を控え、忙しい日々を送っていた雅行は、50歳を前にしたある日、原因不明の体調不良に襲われる。ミーティングを忘れたり、部下の顔が思い出せず、心配になった雅行は病院を訪れ、医師から「若年性アルツハイマー」の診断を受ける。そんな雅行を、妻の枝実子(樋口可南子)は献身的に支え、一緒に病と闘うことを決心する……。

 

 

 

(goo映画より抜粋)

久々に映画館での試写会。 

開場し席に着こうとすると、ステージにはマイクスタンドが3本。
「もしや...?」と期待に胸を膨らませつつ、念のためいつもより前の方の席を選びます。
着席し、待つこと約30分。 ブザーが鳴って、さぁ開映。

おおっ!やっぱり出ましたッ!(ってオバケじゃないんだから)

家を出るときには考えもしなかった思わぬ「サプライズ」に、”明日の記憶”どころか、今までの記憶がぜ~~~んぶ飛んじゃいそうに...。( ̄∀ ̄*)キテヨカッタ...

ついに この目で”ナマ謙さん”を見てしまった感激でいっぱいです!
まさかまさかの渡辺謙樋口可南子、そして堤幸彦監督の登場です!!!

今やハリウッドのワタナベ。世界のWATANABE。それが本当に目の前にいるぢゃぁないれすか!

イジワルなコトに、この日の試写会では事前に”舞台挨拶”なるフレコミは一切なし。
試写会応募だって、そんなこと夢にも期待せずに申し込みました。
後になってこのお三方が試写会主催の地元TV局のローカル番組にゲスト出演されたとは聞いたものの、それも夕方の時間帯の番組だったため 当日この会場に足を運んだ人のほとんどが予想だにしなかったビックリ・イベントにイキナリの大変身だったのです。

更に”ヤクルト菌”でお馴染みのヤクルト協賛という事もあり、当日は来場者一人一人に「ヤクルト400」(”400”は400本という意味じゃありません)が配られるサービス付き!(喜)
みなさまぁ!謙さんからプレゼントでえーす♪」なんてアナウンサーさんは調子の良いことを言ってましたが、果たしてそれは本当かな・・・?( ̄∀ ̄*)

まぁそれが事実かどうかなんて正直どーでも良いのですが、こっちゃんはとにかくイキナリ上映前からテンション盛り上がりまくりで、これ以上無いほどゴキゲンな鑑賞スタートとなりました。

ですから今回の感想は、必要以上に感情移入されている可能性があります。
ご注意下さい。

まず、映画「明日の記憶」ですが、これは非常にわかりやすい話。

現役バリバリで若手を引っ張る広告代理店の営業部長が、ある日”若年性アルツハイマー”という病気に犯されてしまいます。この主人公が迎えた非情で身近な現実を発症時期からスタートし、そして日を追うごとにその症状がゆっくりと、しかし確実に悪化の一途を辿って行くという様子がそのまま描かれた映画なのですね。

ステージで渡辺謙サマが「こんな人はドコの会社にもいますよね。」と笑いながら語られてましたが、謙サマ演じるこの映画の主人公:佐伯雅行は、年齢50歳を目前に控えながらもバリバリ元気な中間管理職。若手の部下をグイグイ引っ張り、そして鍛え上げ、またそんな部下からも信頼を寄せられる上司でもあります。
確かにいます、こんな人。(笑)

言うなれば彼は 完全な”仕事人間”なんですね。

みなさんの周りにもいませんか?「自分がいなければ会社は回らない」と思っているような男の人。
佐伯は正に”そんな男”なんです。
その姿は確かに人間としてイキイキとも見えますが、実はその一方で、蔑(ないがし)ろにされているかのような”家庭”のカタチも見え隠れしてきます。

言うなれば「単なる仕事バカ」。 ↓こんなカンジのイメージです。


    「あ、もすもす。 仕事バカですが。」

しかしそんな彼がある日、”自分の頭の中”でなにか小さな”異変”が起こっていることに気が付きます。

出掛けに車のキーの置き場所を忘れる。慣れているはずの道を間違える。人の名前を思い出せなくなる...。そんな小さな小さなコトを積み重ねてゆくうちに、ついにはお得意様との大きなプロジェクトの大事な会議に穴を開けてしまうことに...。

ドコかで既に聞いたようなありがちにも思える話ですが、この映画「明日の記憶」は、”そんな話”を実に見事な演技と演出と音楽でシッカリ観せてくれる映画に仕上がっています。

特に主役の渡辺謙と奥様役の樋口可南子、お二人ともいいですねぇ。

ひさびさに本気で泣かされました。ちょっとウルッなんてもんじゃありましぇん。一瞬スクリーンが見えなくなったホドです。「あれ?ドコ ドコ?」ってスクリーン探しましたもん。(笑)

もっともこの映画は、主人公が49歳の中間管理職ということもあり、観客の年齢層を選びそうなところもややありますが、そんなに歳はとっていないこっちゃんでもスッカリ謙サマ演じる佐伯役にハマる事ができました。

何だかね、彼の”仕事ぶり”を観ていると「あぁ。これわかるなぁぁぁ・・・」なんて思っちゃう場面もあちこちに。だから余計に他人事としてあっさり流せないホド気持ちがこの映画の中に入り込んでしまったのでしょうね。

そのセリフのひとつひとつに偽りではない”重み”が感じられます。演技に「自然さ」を通り越した”現実”を実感します。正直、今まで観た映画の中で「忘れていくことの恐怖」を一番肌で感じ取れた映画でした。

どーしても言っておきたいのは、この映画の演出の良さ。特に前半部分の病気の症状が顕著に現れ始め精神的に追い込まれて行くところは、こっちゃんのストライクゾーンにビシッと来ました。
どうして堤カントクは「こっちゃんの好み」を知っていたのでしょうか?不思議です。ヾ(・ω・o) ォィォィ

あの「渋谷で迷うシーン」なんか、妙に緊迫しちゃいましたもんね。見慣れた街並みが、まるで初めて踏み入れた場所のように牙を剥(む)き、自分に襲い掛かってくるかようなあの迫力。このあたりはまるでサスペンスを観ているかのような気分にさせられましたよ。

他にも部下の顔がまるで別人にスリ替わったり、そこにいるはずの無い妻や娘、そして自分自身に出会ったりするシーンが要所要所で差し込まれ、主人公本人が”今まさに感じている感情を実に巧みに”視覚”として再現してくれます。上手いですね。

ただ人によっては、もしかするとこのヘンを”過剰演出”に感じる人がいるかもしれません。
こっちゃんの場合は「むしろ古臭いイメージを払拭してくれたな」という風に好感が持てましたけどね。
主人公の陥った心境が本当に良く伝わってきましたよ。

樋口さんがおっしゃってましたが、今回のこの映画は”順撮(じゅんどり)”されたそうですね。つまり映画の時間の流れに合わせて撮影が進められたということ。その度 機材や人を移動し撮影場所をあちこち移すのですから、これは中々時間的にもコスト的にもキツかったでしょうね。苦労が伺えます。

しかし、この映画にとって「それが必要だった」というのは、いざ観てみるとハッキリ分かります。こっちゃんは病気の進行具合が妙に生々しく感じてしまいました。
特に「(精神的に追い込まれてゆく主人公の役作りのため)減量をチョット頑張ってみました。」という渡辺謙サマの姿は、シーンを追うごとにやつれて行くのがハッキリと解ります。(ただしこの病気が必ずしも痩せるということではないとはご本人もおっしゃってました。あくまで”役作り”の上の話です。)

実際に目にした謙サマは やはりその映画のままのイメージで、「あ、痩せてる」と言うのが第一印象でしたからね。撮影現場では「毎朝、堤カントクとのディスカンションの繰り返しだった」そうです。
また「撮影を追うごとに、”その日考えなければならないコト”が増えて行った」ともおっしゃってました。

同行された樋口さんも「その日その日で生まれた台詞の多い映画でした」ということで、この「明日の記憶」という映画は脚本の中に納まりきらず 本当の意味で”生きている映画”として完成を迎えたのですね。

この映画。こっちゃん的にはとてもオススメです。

今まで観てきた”記憶系”をあえて振り返るならば、「きみに読む物語」「50回目のファーストキス」「私の頭の中の消しゴム」「博士の愛した数式」などなど、数々の良い作品が頭に思い浮かぶのですが、この映画はそのどれとも違います。もちろん「フォーガットン」などと比べるのはもはや論外。(笑)お話になりません。

「明日の記憶」はそのどれよりも”直球”に近い球を投げ込んでくる映画と言えるでしょうね。それだけに心で受け止めるコトが出来た人は心地良さを十分に満喫できると思います。
もっとも逆を言っちゃえば「それじゃあツマラナイ」という人もいそうだなという部分ではありますが。
更に、この病気に携わるエキスパートの皆さんや、実際にこの病気を家族にお持ちの方が観た時には、その評価は一層厳しくなるのかもしれません。

でも、こっちゃんはモロ前者の”満喫派”です。
「現実過ぎず、ドラマ過ぎず」そんなホド良いバランス感を感じることが出来ました。そして大いに泣き、大いに感動し、暖かい気持ちになりラストを迎えることができました。

「若年性アルツハイマー」というこの病気を「受け止め」、妻と一緒に「闘い」、そしてともに「老いてゆく」...

後半はちょっとマッタリ感も出ますが、とても良い印象の残る優しい映画でしたね。名場面、名台詞、名演技がとても多い映画です。音楽も とても柔らかく、優しく、暖かい。ホント良いですね。

配役も手を抜きませんね。役相応の良いキャスティングに感じました。脇役の香川照之さんなんか、もぅメチャメチャ良かったですよ。
あの「電話」で・・・一気に泣かせます。

 

ところで.....こんな名優(もはや珍優?)も出てました。

良いですネェ、大滝秀治さん。この映画では焼き物のエロジジイ師匠役で出てきたりますが、大声で歌を唄うシーンで、歌詞の「パラダイス」を「ぱらいす」と間違えちゃったりして、ひやひやさせてくれます。

どう見たって謙サマよりもコチラの方がアルツハイマー的でしょ。(笑)

でも、まだまだお元気そうで何よりでした。ハイ。

 

《2006.08.16記事一部改訂》

【作品】明日の記憶


タイフーン TYPHOON (2005)

2006年04月17日 | しびれるMovie
こっちゃんポイント ★★★★★
鑑賞環境  映画館
上映時間 124分
製作国 韓国
公開情報 劇場公開 (東映)
初公開年月 2006/04/08
ジャンル アクション/アドベンチャー/ドラマ

台湾・基隆(キールン)港から北東220km地点。アメリカの偽装船舶が、日本へと極秘裏に輸送していた核ミサイル用衛星誘導装置を海賊に強奪された。事実が公になることを恐れた日米両国は韓国大統領へ事件の黙認を要請するが、韓国国家情報院は独自の捜査を開始する。この捜査の作戦要員として任命されたのは、アメリカで特殊訓練を受けた海軍大尉カン・セジョン(イ・ジョンジェ)。セジョンは東南アジアを根城にする海賊シンとそのグループによる強奪事件であることを突き止める。同じころ、シン(チャン・ドンゴン)は、ヤミ商人ピーターを通じて衛星誘導装置と引き換えにロシアから核廃棄物30tを手に入れようとしていた。そして、探していた“ある女”の情報も....。

(Yahoo!ムービーより抜粋)

イケてます。かなり本気です。本気と書いて「マジ」と読ませるホド、気合の入った映画です。
韓国にしては。

この映画のタイトルは「タイフーン TYPHOON」。それは文字通り大きな”台風”を意味すると同時に、この映画のチャン・ドンゴンが買い上げる輸送船の名前でもあります。

そして、そんなこの映画のネーミングは、いまだにこっちゃんの中で”永遠の「イルマーレ」”であるイ・ジョンジェの心優しき昔の姿や、「アナタガチュキダカラーッ!」のチャン・ドンゴンのやや軟派イメージさえも軽く吹き飛ばしてしまうほどの、物凄いタイフーンをも意味していたのです。

本気モード入りましたねぇ、韓国映画も。
丁度こういう映画が韓国モノで欲しかったトコロでした。
お陰で大いに盛り上がりましたよ。

とにかくこの映画「タイフーン」。話の設定も脚本もシッカリ出来上がっている印象が強く残ります。

決して「こじんまり」せず、韓国はもちろん、タイやロシアにまで舞台を移しての大追跡劇を、キレの良い画質と大迫力の音響の中、体重を7㌔減量したチャン・ドンゴンと、繊細な演技力に陰りの見えないイ・ジョンジェがバッチリ演じてくれました。

冒頭、今や東南アジアを根城にブイブイ言わせる海賊に成り下がってしまったシンチャン・ドンゴン)が、アメリカの偽装輸送船を襲撃し、核関連兵器を奪うところからこの話は始まりますが、そこから描かれる前半部分はモノ凄い力強さで押しまくるのですわ!

しばらく韓国映画でこの”勢い”は味わっていなかったように思います。

ウカウカしていると、強引なまでのあまりの展開の速さに置いてきぼりになってしまうかもしれません。所々場面が飛ぶようにいきなり切り替わったりもしますからね。これは例えですが、まるで頭をグィと掴まれグワングワンと振り回されているかのような大胆な流れ。この「タイフーン」は非常に”オトコ臭い”映画なんです。

カーチェイスだって、こりゃあ中々の”迫力”じゃあないですかっ!

おかしなCG志向に走らなかった点が、なかなか好感触!コレが結構、気分を盛り上げてくれます。
あのジョンジェドンゴンを車で追跡中、「自分の運転する車のフロントガラス越しに発砲する」なんてシーンは楽しいですね!またそんな弾丸(たま)が当たっちゃうから最高デスッ!(笑)
ナルホロ。こりゃスゴ腕だわ。

それにしても124分の映画の中に、良くぞここまで詰め込んだという感じですね。
お見事です。

一人の男が「核廃棄物」によって空から朝鮮半島に「死の雨」を降り注がせようとするこの話は、実に見応えがありました。苦し紛れの韓国側の対応。アメリカ側の強引な決着のつけ方。そういった背景なども盛り込まれ、互いの「目的」のために任務を果たそうとする男たちの熱き戦いが最大のクライマックスとして訪れます。

何故、シンはそれほどまでに朝鮮全土に恨みを向けるのか?
その根本にはやはりあの「南北分断」がありました。脱北し”亡命”を夢見ながらも、銃弾に引き裂かれてしまった家族の悲しみ。やがていつしかそれは、決して消えることのない憎悪の炎となって燃え上がってしまったのですね。

この映画「タイフーン」のチャン・ドンゴンは、その「憎悪に満ちた表情」と「心の奥底にしまい込んだ愛を持つ表情」の二つを実に巧みに使い分けます。

姉妹が再会するシーン・・・これには泣かされました。

こっちゃん的には、このチャン・ドンゴンに大いに同情させられ感情移入してしまったのですが、一方 彼を追う側のイ・ジョンジェも、国家に忠誠を誓う一人の韓国軍人として、そのどこまでも純粋な姿にとても好感が持てる役どころでした。ジョンジェの演じる軍人姿は、決して非情には映りません。もちろん”情”に溺れたりもしないのですが、その態度は実に”誠実さ”を感じさせるモノです。

彼が、海賊シンをおびき寄せるために彼の姉ミョンジュイ・ミヨン)を民家にかくまった時も、決して手荒には扱わず、更に「動揺させまい」と気遣います。自分から進んでは弟の真の姿を話そうとはしませんでした。

最初は筋肉ムキムキのイ・ジョンジェにちょっと戸惑いましたが、観ていくうちに「ああ。これは彼にピッタリの役なのだなぁ。」と思えてきました。

それにしても、幾度も映画になり ドラマになり、それでもまだ取り上げられるこの「南北分断」。

真の想いを持って「これ」を描けるのはやはり韓国以外にはありませんからね。既に知られている事実にしろ、そうではないフィクションにしろ、多くの悲しい思いを産み落とす結果になってしまった「南北問題」は、今も尚 そこに居座っているのです。

これもそんな想いの中から生まれた映画です。
そこに持ってきてこのラストは、「ああ、そう来たかー!」という感じ。

この映画には、ドラマに不要な「恋愛感情」が一切盛り込まれていません。そこがとても良かったですね。
あるのは”家族愛”そして”祖国に対する愛”です。

「友へ/チング」「チャンピオン」の監督であるクァク・キョンテクは、この映画をやはり「男のドラマ」として作り上げてくれましたね。もしかしたらその分、女性にはウケないかもしれません。同じ韓国映画でも「連理の枝」のようなメロメロ・ブリッコ路線とは違い過ぎます。

そこを認識した上で、少しだけ構えて鑑賞に臨んだ方が良いかもしれませんね。
甘ったるい映画ではありません。その分、見応えがあるのだと思います。

 

ところで・・・。

話は変わりますが、この映画でどーしても引っ掛かってしまった一点がありまして。
それが観終わった今でも未だに頭の中から消し去るコトが出来ないでいます。

この、シンのお姉さん役のイ・ミヨンなんですけど。ドーモ誰かに似てるような、似てないような・・・・。

誰だっけ?

(○ ̄ ~  ̄○;)ウーン......................あ!分かった!



真央ちゃんだっ!
(笑)

これ思った人、他にいないのかなぁ?
なんだか誰か仲間が欲しい気分だな。

そこで、ドンゴンは、

                             ・・・なんてね。

 

あれっ?(´・ω・`)

前半はマトモに感想文を書こうと思ってたのに、最後の最後でこんな感想になってしまいました。

こっちゃんも風船で どこか遠くに飛ばしてもらおうかな?

 

《2006.08.16記事一部改訂》

【作品】タイフーン TYPHOON

 


ウィンブルドン (2004)

2006年04月12日 | しびれるMovie

こっちゃんポイント ★★★★★

鑑賞環境  試写会 
上映時間 99分
製作国 イギリス/フランス
公開情報 劇場公開 (UIP)
初公開年月 2005/04/23
ジャンル ロマンス/コメディ/スポーツ

ピーター・コルト(ポール・ベタニー)はかつて世界ランキング11位までのぼり詰めたプロ・テニスプレーヤーだが、現在の成績は119位。特別枠でなんとかウィンブルドンへの出場権を手に入れたものの、頭の中には引退の文字がよぎっていた。そんな彼がホテルで偶然出会ったのが、優勝候補として期待されているリジー(キルステン・ダンスト)。2人は瞬く間に恋に落ち、そのお陰かピーターは全盛期の頃の調子を取り戻すが…。

 

(goo映画より抜粋)

マリア・シャラポワはドコだっ!シャラポワを出せ!しゃらぽわをッ!

「はぁぁぁい。コチラ現地のシャラぽわれぇーッス! だぶるおっけー 」

パッコーン!


というワケで、この映画「ウィンブルドン」ですが、シャラポアは出ません。あしからず。
たぶんオファーもなかったと思われます。(想像)

でもこれはね、実に良く出来た映画ですよ。
ロマンス仕立てになったとこが良いですね。
まず、オープニング・タイトルが始まるとすぐに、そのセンスの良さを実感できます。

テニスボールを互いに打ち合うあの音。心地良い響き。心地良いリズム。

それがまだこの映画のオープニングタイトルが流れ始める前から聞こえ始めます。そして次にそのリズムに合わせてギターのメロディーがチャッチャッ♪と絡み、今度は画面の右に、左にと、リズムの刻みに合わせてキャスティングなどのテロップが入り始めるんです。

あ、これ好きですね~!こういうセンス。

しかも本編に入ってからも、「おお!こんなカメラ・アングル良く見つけたな!」と感心してしまうような映像の連発と、その見事な編集技にスッカリ引きこまれてしまいます。

実は、この映画「ウィンブルドン」は観る前にちょっと抵抗のあった映画なのですが、想像していたよりも遥かにそのタッチは軽く、至るところでクスッ クスッときてしまいました。

何しろ、この主役ピーター・コルトを演じるポール・ベタニーが「いかにもそれらしい」って感じで良いですよ。
これは意表を突いた見事なキャスティングですねぇ。

ちなみに彼の今回の役は世界ランク11位まで手にしたことのあるテニスプレイヤー。しかし現在のランクは119位。もうすっかり落ちぶれたテニス・プレイヤーです。

「自分はもう歳だ(31歳なのですが)」と悟りながらもプレイする彼は、幸運にもウィンブルドンのワイルドカード(主催者の推薦によって出場できる特別枠)を手にし、「勝っても 負けてもこの一大試合を最後に”引退”してやるわい!」と決意します。しかし当然ながら今の彼を見る限り、勝つ見込みなどハナからありはしないワケです。負け戦による幕引きは目に見えていました。

冒頭は”そんな彼”のボヤキに始まりまります。

でね、このポール・ベタニーのボヤきっぷりがサイコーなんですよ。テニスのプレイヤーって、ホントに試合中こんなコトばかり考えてるんでしょうか?(笑)

只今公開中のハリソン・フォード主演「ファイヤーウォール」では、徹底してクールな悪役ぶりを演じてくれた彼ですが、この映画を観て「つくづく”面白いトコロ”にハマる俳優だなあ」と感じました。どの役についても演技が安定してますよね。

この映画「ウィンブルドン」は、そんなオチコボレなポール・ベタニーが「幸運の女性と出会って俄然張り切る!」ってな内容なのですが、この恋物語とウィンブルドン・テニス大会の同時進行具合が、とっても上手く絡んで行くんですね。

キルステン・ダンストポール・ベタニー、二人の恋物語なんて観たくもないわ」そう言っちゃう人もいるかもしれませんが、まぁまぁそう言わず観てみて下さい。この映画「ウィンブルドン」は飛び切りロマンチックとは言いませんが、「こんなカップルいても良いな~」くらいの自然な気持ちにはなれると思います。ちょっと応援したくなりますよ。

映画全体として見ても、キャスト的に非常に好感の持てるキャラが多く、リジーキルステン・ダンスト)のパパ役を「ジュラシック・パーク」シリーズのサム・ニールが演じてたりします。「恋をするとサーブが乱れる」という娘の周りで、「悪い虫を寄せ付けまい!」と右往左往するのが良いですね。最後には物分りの良いパパになっちゃいました。

他に、兄貴の負けを賭けて食い物にする弟のダメっぷりもどこか憎めませんし、身体の不調で勝ちを明け渡した親友も中々の好印象です。

この人なんか(上画像右の人)ハッキリ言って、ポール・ベタニーよりカッコ良かったですよ。ニコライ・コスター=ワルドウという方らしいです。「ブラックホーク・ダウン」や「キングダム・オブ・ヘブン」に出てたと言うのですが、どーも記憶にありません。。。ドコニイタノ?

それより何より、この人方が解説者役で登場したのには驚きました。本物のウィンブルドン・チャンピオンのジョン・マッケンロークリス・エバートです。これは「作品にリアリティを求めた結果のキャスティング」らしいですよ。へぇ~!コダワリなんですねぇ。

この映画「ウィンブルドン」は、たぶんテニスが特別好きでなくても楽しめると思います。よほどのスポーツ・アレルギーでなければOKだと思いますよ。普通の恋愛映画として観ても上出来です。

とにかく、ドラマがとても丁寧に作られていたので、楽しく観ることが出来ました♪

どんどんとエスカレートする恋愛あろう事かドンドン勝ち進んでしまうピーター・コルトの試合
もぅ!どちらも目が離せなくなっちゃいますからッ!

実にユーモアの利いた楽しい映画。その上ちゃんと見せ場も用意されています。

この映画の監督はダレ?・・・と調べてみたら、何と!先ほどチョット話に出した「ファイヤーウォール」の監督さんではないですか!リチャード・ロンクレインという人です。ポール・ベタニーがお気に入りなのかな?

それにしても、試合中 コトあるごとに心の中でボヤくポール・ベタニー。
アナタもしかして「ファイヤーウォール」の犯人の時も、心の中でこんな風にボヤいてたのかな?

そりゃ、テニス・プレイヤーより犯罪者の方が大変だもんね。
もっとボヤきたくもなるよね。(笑)

 

《2006.08.16記事一部改訂》

【作品】ウィンブルドン

 


トム・ヤム・クン! (2005)

2006年04月11日 | しびれるMovie

こっちゃんポイント ★★★★★

鑑賞環境  試写会 
上映時間 110分
製作国 タイ
公開情報 劇場公開 (クロックワークス=
 ギャガ・コミュニケーションズ)
初公開年月 2006/04/22
ジャンル アクション/格闘技

何百年も王を守り、王に献上するための象を育ててきた兵士、チャトゥラバート。その末裔であるカーム(トニー・ジャー)は、父親と、象のポーヤイとともに成長した。ポーヤイを王に献上する審査会の日、ポーヤイは小象のコーンとともに、動物密輸組織に奪われてしまう。2頭を連れ去ったのが、ベトナム人のジョニーだと知ったカームは、単身オーストラリアへ乗り込んだ。しかし、シドニーに降り立ったカームを待っていたのは、警察の追跡だった…!



 

(goo映画より抜粋)

もしかして、涙腺の弱い人なら最初の10分で泣けるかもよ?
こっちゃんは、初めてタイ映画でウルッときました。

だってね。親象が良いッ!子象が良いッ!トニー・ジャーも良いッ!
三拍子揃っとるんやもん。(>∀<)

あのお。コレ意外と知られていませんが、近頃では”タイ人が全て織田裕二に見える症候群”という難病が存在するらしいですよ。恐らくこっちゃんが、日本ではその発症患者第一号であると思われます。もちろんこの病気は、現在の医学では完治するコトが難しいどころか、それを「病気」として認定されるケースすら極 稀(まれ)だと聞きます。おお、クワバラ、クワバラ....。

へ?アンタの脳みそが病んでるだけろって?・・・へ?( ̄∀ ̄*)バレタ?
なんたってこの映画、「トム・病む・君」ですからね。ヘイヘイ。お後がヨロシーようで。m(_ _"m)

さて、トニー・ジャーと言えば、前作「マッハ!」であの『CGなし。ワイヤーアクションなし。吹替スタントなし。限界なし。職なし。金なし。彼女なし。失うものなし・・・』
あれっ?後半チョット違いますか?(笑)まぁとにかくそんなコトを公言し、それをやってのけたことで世界をアッ!と言わせたあのタイのアクション俳優。まるで”ムエタイの塊(かたまり)”のようなそんな彼がまたまたやってくれました!

ハッキリ申し上げてスゴすぎます!

この映画「トム・ヤム・クン!」でも目の覚めるようなムエタイ技を、その”生身”の身体を前作以上に酷使し、数々の名場面を作り出してくれましたっ!

しかもこの映画「トム・ヤム・クン!」は、同じトニー・ジャーの主演作「マッハ!」と比べても、ドラマ性が非常に濃くなっている印象を受けました。

これは面白い!何と今回は「騙し取られたオラの象を奪い返せ!」というお話です。
そんでもって追いかけていった先がなんとオーストラリアはシドニーですよ!
わお。”いんたーなしょなる”な映画でわないですか!(´ω`*)ノシ

舞台をタイから移してのアクションは、大いに見せ場を作ってくれます。全体を通して観ても、この映画に”手抜き”と呼べるよなアクションはほとんど見当たりません。

とにかく飛ぶわ、跳ねるわ、殴るわ、蹴るわで相変わらず大忙しモード。
立ってるだけのトニーなんてトニーぢゃないッ!」と言わんばかりの暴れっぷりですからね。

特に、中盤で早くも悪の料理店「トム・ヤム・クン」にたった一人で殴り込みをかける場面に至るのですが、倒しても倒しても次々と現れる悪男を片っ端からなぎ倒し、一階、また一階と上へ上がって行く様は、思わずコチラまで奮い立ってしまいます!

あんなシーンをたった1台のカメラ長回しで一気に撮ってしまうなんて、全く信じられません!
ハリウッドが逆立ちしても出来ない芸当でしょうね。

もちろんクライマックスにかけて、更にスゴイシーンが連発なのは言うまでもありません!
もはや”当たり前”となった「特撮なし」がハッキリと分かるそのアクション・シーンには、思わず前のめりになって観てしまいます。

今回のオーストラリア撮影が可能になった背景には、「マッハ!」の大成功があるようですね。
どうやら前作で稼いだお金をこの「トム・ヤム・クン!」にどっかーん!と注ぎ込んだらしいです(笑)

こんな景色↑をバックにトニ・ジャーがハイ・ジャンプしたりしてますよ。

トニー・ジャーはこの「トム・ヤム・クン!」のために、「マッハ!」の撮影後、約2年間のトレーニングを積み上げてきたといいます。「マッハ!」を超えようとする意気込みが伝わってきますね~。
何しろ彼は、その「マッハ!」でも撮影前の4年間は映画のためにムエタイ・トレーニングに励んだというくらいの人ですから。今回もその”本物”の迫力はシッカと実感出来ました!

今回、こっちゃん的に押したいところは、親子象とトニー・ジャー演じるカームとの「愛」のドラマ部分。この映画「トム・ヤム・クン!」は父親象ポーヤイとカームの触れ合いのシーンから始まるんですけど、コレがとっても優しいシーンで心を鷲づかみされちゃうんです。こっちゃん、動物モノに最近特に弱くなってます。

母親のいないカームにとって、雄象のポーヤイはもう一人の父親みたいなもの。
そんな”彼”の愛に見守られて人間の子供カームはスクスクと成長して行くのでした。
やがてポーヤイに”奥さん”が出来て子供が生まれる...。しかし心無き悪の密猟者の手によって母象は命を落とし、父象ポーヤイと子象コーンだけが残されてしまいます....。

この時カームの中では、残された親子象の姿と、父と二人暮しの”自分自身”の姿とが重なって見えたのかもしれませんね。そんなカームと父象ポーヤイの愛情はラストにもシッカリと描かれます。

ビルの屋上から転落したカームが”落ちた場所”そこは・・・・。
あれは名場面ですね。泣きそうになりました。

そう言えば邦題で「マッハ!」の名を継いだ「七人のマッハ!!!!!!!」には、トニー・ジャーが出ませんでした。しかしこの作品を観てやはり「タイ・アクションはトニー・ジャーに限る!」とつくづく実感しましたね。彼のオーラは底なしですよ!ちなみにこの監督は「マッハ!」「七人のマッハ!!!!!!!」も手がけたプラッチャヤー・ピンゲーオ(”七人の~”は製作のみ担当)です。

そうそう。「七人のマッハ!!!!!!!」の話をチョットだけしますけど、アレは「ムエタイ」「テコンドー」「体操」「サッカー」「ラグビー」「セパタクロー」「器械体操」という七種類の”技”(と呼べないモノもありますが)を武器に、アスリート達が麻薬ゲリラに立ち向かうという無謀な映画でした。ところがその”無謀さ”は良いとして、どーもイマイチ好きになれなかったトコがあります。

それは『ただ深刻で残酷で乱暴な描写に走ってしまった』という点。必然的に火薬の量が増えます。これが何とも”タイらしくない”っていうか、「別にタイ映画にソレは求めてません」という感じで、どーもイマイチ乗り切れ無い部分もありまして。

そんなことがこの映画「トム・ヤム・クン!」にはありませんでしたねー。

もちろん舞台がタイ本土であろうが、オーストラリアであろうが、この映画はドコまでも”タイ風”であり”トニー・ジャー流”です。そのあたりの雰囲気がお嫌いでなければ、まずはどっぷりとこのムエタイ・アクションにハマれるでしょう。

逆関節技に至るまでCGなし!”....まったくスゴイ根性です。
タイ人恐るべし。同じ人間とは到底思えませんねぇ。

この映画を観終わって席を立とうとしたら、気のせいが自分の骨が「グキッ!」と言ったような言わないような...。( ̄∀ ̄*) ウッ!

でも、なんだか格闘アクションが好きになってきました。(笑)

 
《2006.08.16記事一部改訂》

【作品】トム・ヤム・クン!

 


プロデューサーズ (2005)

2006年04月06日 | しびれるMovie

こっちゃんポイント ★★★★★

鑑賞環境  試写会 
上映時間 134分
製作国 アメリカ
公開情報 劇場公開 (SPE)
初公開年月 2006/04/08
ジャンル ミュージカル/コメディ

最低のミュージカルをプロデュースせよ!?1959年のニューヨーク。落ちぶれた大物演劇プロデューサー、マックス(ネイサン・レイン)の事務所に会計士のレオ(マシュー・ブロデリック)が訪れた。帳簿を調べたレオが、ショウがこけたほうがお金が儲かるという摩訶不思議な事実に気づいたことで、マックスのやる気が充満。レオを巻き込み、大金をせしめようと、初日=楽日を目指す史上最低のミュージカルのプロデュースが始まった!そしてまたとない史上最低の脚本「春の日のヒトラー」が見つかる。 

 

(goo映画より抜粋)


永遠のトッチャン・ボーヤ マシュー・ブロデリック
もはや何もせずして顔だけで笑える ウィル・フェレル

この二人だけでもぅ、お腹いっぱいだよぉ! O(≧∇≦O)(O≧∇≦)O ウキャウキャ

こりゃあ面白い!マジでこっちゃん好みですッ! ヒューヒュー!

事前におともだちがこの映画を観て大変お喜びになったという情報をキャッチ!そりゃあ期待も高まっていたのですが、ここ最近になっておすぎ先生唐沢寿明(弟子になったの?)によるキモい・トーンのCMが流れ始めたこともあり、実は直前になって一抹の不安が過(よ)ぎったのでございます。

「オイオイ、本当に大丈夫なのかい?この映画。。。。。(* ̄◎ ̄*)¥」

ところがドッコイ、スットコドッコイでした!

なんの、なんの。こりゃ、オモロイ!
笑って、笑って、その上また笑って。ホロリとさせる暇がないくらい笑わせてくれるんです。

特にマシュー・ブロデリックの頑張りにはホント頭が下がる思いです。恐らく過去、彼の出演作のどれにおいても、この映画「プロデューサーズ」が一番”頑張った”作品と言えるのでは無いでしょうか?(またしても想像入ってます)

唄って、騒いで、叫んで、抱きつかれて、脅えて、泣いて、フックに吊り下げられて...エトセトラ。(='m') ウププ

ホント、ここまでハジけたマシューは、今まで見たことありませんね。
今回は小心者の会計士・レオの役です。その小心っぷりがタダものではございません。幼少の頃から手放したことがないという青い毛布の切れ端を唯一の心の拠り所(よりどころ)とし、それを人に触られただけで自分を見失ってしまうほど情緒不安定な人物です。

そんな彼が、演劇プロデューサーのマックスネイサン・レイン)の所へ、帳簿の整理にやってくるところからお話はスタートします。彼は今やスッカリ落ちぶれ、色仕掛けで(といってもそんな色男でもないけど)お年寄りから”出資”を半ば騙し取るような毎日を送る有様。

こんな二人が出会ってタダで話が済む訳がない!レオが帳簿を開きながら口にした”一言”が引き金になり、二人はショービジネス界での”裏の荒稼ぎ法”に情熱を注ぐことになるのでした。

レオとマックス、二人の掛け合いは、ほとんどが叫びまくってるような会話ばかりなので、ヤカマシイっちゃぁヤカマシイのですが、この”間合い”が実に絶妙で非常にヨロシイ!上手いですよね~。
この「プロデューサーズ」は、映画自体の作りも、どの役者の演技も実にイキイキしています!

ホント、久々に「”イキ”の良いハリウッド映画を堪能できた!」ってカンジがしますよ。
どのシーンを切ってもピチピチしてますモン。

この映画の監督は、舞台版「プロデューサーズ」の監督兼、振付師もやっているスーザン・ストローマンという人。何だか細くて穴が開いてるような名前です。
そんな彼女がやはり”映画版”でも同じく監督、振り付けを担当しています。実際、舞台と映画では色々と演出なども違ってくるとは思うのですが、この見事な映画の出来には驚いてしまいました!
というか、映画を観に来たつもりが完全に舞台を観ている気分に丸め込まれてしまいます。

特に、今回の試写会はステージの上にスクリーンがあるようなホールで催されましたので、まるでマシューやネイサンがスクリーンから飛び出し、本当にステージ上で踊って唄ってくれてるかのようにも見えました。
Oh!いっつ・まじっく....。( ̄∀ ̄*)

この映画「プロデューサーズ」の話の内容は公式HPなど他を参照してもらうとして、とにかく「オラぁ、ミュージカルは絶対観ないんだ!」というタモリのような人以外には大声でお薦めできる映画です。

とにかく”ナチ・カブレ”のウィル・フェレルが面白すぎる。登場最初のシーンからもぅ大笑いです!
彼の飼っている伝書鳩まで熱演でしたからね。(笑)


あと、”最低の演出家”を初めとする”ゲイ軍団”の棲みつく あの屋敷...。

ここはバケモノ小屋かッ!( ̄∀ ̄*) こういうのをホントの「悪魔の棲む家」と言うのかもしれません。
何だか、フレディ・マーキュリーエルトン・ジョンみたいなオッサンまでおりましたが・・・キモ杉マスッ!
でもオモロイわ。(笑)

そこにきて、コノ上の方が一番笑えた!

コレはもう完全にチャップリン超えてます!「こんなヒトラー見たことない」っていう強烈なインパクト!
あり得ない”総統”の誕生です!

ホント、涙出ちゃいました・・・笑いすぎて。(つд⊂)エーン オカシスギルヨー

ただ、湯屋サーモン...じゃなかった、ユマ・サーマンに関しては思ったほどは活躍はしてませんでしたネ。いえ、こっちゃん的には出番が足りなかったということです。この辺はちょっとだけガッカリかな。もちろん”役”はシッカリありましたけど。しかも今回は”超テンネン”入ってます。(笑)でも周りの俳優のせいか、何だか彼女の背の高さばかりが目立ってました。あんなに大きかったんですね彼女。Ψ( ̄∀ ̄)Ψ ソコマデトハシラナンダ...

 

そーゆーワケで、この映画「プロデューサーズ」絶対的にお薦めです!こっちゃんは大してボキャブラリーも無いので、画像ばっかの記事になってしまいましたが、あまりに映画が面白すぎてとても言葉では表現しきれません。

何より感心させられるのは、終わりの終わりにまで、徹底的に”サービス精神”が織り込まれてるコト。映画が終わってエンドロールが流れ始めても、まだまだ席を立たない方が良いと思います。バックに流れる歌も笑わせてくれますし、”終演後の舞台挨拶”的ショットまで用意されていますから。

ここまでやってくれれば大したモノ。きっとお客さんのほとんどは大満足で帰ってくれるでしょう。

もしかして、ここまでヤルのが”ブロードウェイ流”なのですか?!
思わず「さすが!」と唸ってしまいました。

またしても宣伝では、同じミュージカルと言うだけで「シカゴ」や「オペラ座の怪人」が引き合いに出されていますが、それに関しては「もはや比べるコト自体がナンセンス」だと観客の方は皆知っているハズ。作品それぞれに”味”があり”良さ”があるワケですからね。

しかしながら、あえてこの映画「プロデューサーズ」を一言で誉めるとすれば、「この映画はとにかく底抜けに明るい!」ことでしょうね。これはもぅ”唄う喜劇”です。そこが、こっちゃんにはとても良かったんですねぇ。 

試写会が終わった時も、周りはとっても楽しい雰囲気でした。
みなさん存分に楽しめたようですね♪
きっと少々の悩みがあっても、この映画なら吹き飛ばしてくれるかもしれません。
そんな空気を作ってくれる素晴らしい映画。
2時間14分の楽しい夢の舞台に直行できます。

思わず、面白すぎて時間を経つのも忘れちゃいました。

 

《2006.08.16記事一部改訂》

【作品】プロデューサーズ

 


大統領のカウントダウン (2004)

2006年04月05日 | しびれるMovie

こっちゃんポイント ★★★★★

鑑賞環境  試写会 
上映時間 111分
製作国 ロシア
公開情報 劇場公開 (シナジー=
 エイベックス・エンタテインメント)
初公開年月 2006/03/25
ジャンル アクション

ハンディカムに映った男。アレクセイ・スモーリン少佐。目は落ち窪み、疲弊しきっている。軍事活動でチェチェンの捕虜となった彼は、激しい拷問に遭い、モスクワでの爆破テロに関わったと偽証させられてしまう。この偽証テープがチェチェン独立軍によって利用されれば、FSB(ロシア連邦保安局)は各国政府から糾弾されることになる。スモーリン少佐は反撃のときを待っていた。消え入りそうな心の奥底で、闘争心を研ぎ澄ませて。砂漠ではイスラム過激派「アンサール・アラー」の訓練キャンプが行われていた。来るべきローマ・サミットに向けて、チェチェン独立軍と手を組んだ「アンサール・アラー」は未曾有のテロ計画を実行に移そうとしていた…。

(goo映画より抜粋)

これって、本当に純粋なロシア映画なのかい?!
そう思うと、ちょっとスゴイ....。Σ( ̄ロ ̄lll)プチショック!

9.11以降、目を反らすことの出来ないテロの脅威...」予告編が冒頭でそう語るように、ここ最近、特に今年に入ってから「テロ」を題材に取り扱った映画があちこちで目を引きます。

そしてとうとう、あのロシアからも、こんな映画がやって来てしまいました。

モノ凄い迫力です、「大統領のカウントダウン」!

何だか「今さら」なカンジがするこの邦題ですが、お陰で完全にナメてました。
そして腰を抜かすハメに...。( ̄∀ ̄*)

これとにかく面白い!そしてハラハラ出来るんです。
まったくもって可笑しな話ですが、ここ最近アクション映画でハラハラするコトってメッキリ少なくなったと思いませんか?「ハラハラこそが最大のウリ」でもあるはずのアクション映画でハラハラ出来ないって言うのは、本当に残念なことですよ。

だってね、ココ最近で一番ハラハラしたアクション映画って、ハリソン・フォードの「ファイヤーウォール」ですから。しかも、そのハラハラ感は結構意味合いが違いますからね。
「もしかしてハリソン、この映画で殉職か?」ってそんな”ご老体アクション”にハラハラって意味だもの。(笑)

これじゃあ、イケナイ。

さて、そんな生ぬるいアクションを連発するハリウッドに「”活”を入れちゃる!」と思ったかどうかは知りませんが、このロシアン・アクション(と言うのか?)はかなりの本気モード。重みを出しつつ一級の娯楽作品に仕上げることに成功しています。

なんてったって、出てくる軍事機材は片っ端から”本物”のオンパレード
『スホイ27戦闘機、IL-76輸送機、BTR装甲車、可動式通信施設、特殊工作船に至るまで全て”本物”が使用され、ロシア映画として史上初になるNTN爆弾(トリニトロトルエン)を150キロも使用した(以上、チラシより抜粋)』というのですから、これは十分驚いて良いコトでしょう?

「ロシア軍、全面協力」のフレコミはダテじゃぁありましぇん!この映画を観ちゃうと、戦車やイージス艦をチョロっと出しただけで「自衛隊全面協力」って言ってる日本映画って一体何?って言いたくなりますよ。恥ずかしくなります。

それにしても、まったく惜しげもないというか、大胆というか。こっちゃんは、ロシア映画なのに製作費800万ドルも使ったというのにも既に驚いちゃったんですけど、これだけヤリまくってその金額なら安い!とすら思わせてくれます。これは納得プライスですよ。(笑)

だって撮影秘話も泣かせるじゃないですか!
カメラが動かなくなるほど厳寒のロシアに於いて、カメラ本体を暖めては撮り、暖めては撮りで、なんと撮影日数140日。その間、スタッフは常時50人以上。群集シーンには2000人以上使用するシーンもあったといいますから。良ぅ皆んな頑張ったわ。

オマケに派手な演出もキッチリやり遂げるスバラシさ!

モスクワ市内の道路を片っ端から封鎖し装甲車を走らせ、周りを取り囲むパトロールカーを次々と踏み潰す。大型軍事輸送機が舞台となるあのアクションシーンなんて!もう瞬き(まばたき)すら許されないカンジですもの。手に汗かきました!

ア~~~ッ!キタキタ!これこれっ!
またしても”鳥肌効果”ですっ!

ロシア人の”映画魂”しっかと受け止めましたぞ!

そういえば先日観たあの”映像革命的ロシア国産VFX作品”の「ナイトウォッチ」の製作費が400万ドルといいますから、この「大統領のカウントダウン」は実にその2倍の金額になるんですね。ナルホド。文字通り「ロシア映画史上最高」の製作費なんですね。

実はこの映画を観る前に、その「ナイト・ウォッチ」の鑑賞失敗体験が心の中で引っ掛かってモヤモヤしてたんです。何たって今回も同じロシア映画ですからね。

「今後公開されるロシア映画は全部肌に合わないんじゃないか?」・・・そう思いはじめてましたからね、こっちゃん。でもこの「大統領のカウントダウン」は、そんな心配を見事に吹き飛ばしてくれました。

もっとも、「文芸か?芸術か?」の古きロシア映画とは全く違うんでしょうが(古いロシア映画は観て無いので想像です)、かと言ってコレはハリウッドともまた違う気がします。・・・え、何がって?

.....(○ ̄ ~  ̄○;) ウーン、重みが!

この映画「大統領のカウントダウン」自体は、完全に作られたフィクション映画ですが、実はその背景には”実在の人物”と”実際のテロ事件”が存在するんですよね。

この映画の主人公FSB(元KGB:ロシア連邦保安局)のスモーリン少佐のモデルはアレクセイ・ガルキンというGRU(参謀本部情報総局)の将校。彼はやはりこの映画のスモーリン同様、拷問を受け、薬物投与による偽証の自白をさせられた人物らしいです。

そして、この映画でテロ事件のメイン舞台となる”サーカス占拠事件”。こちらにも2002年にモスクワで実際に起こった悲劇的な事件、「モスクワ劇場占拠」が、まさにそれに当たります。

この映画「大統領のカウントダウン」を製作するというコトは、「当時の忌まわしい悲劇を思い出させる」など、ロシア国内では大きな反響を呼んだらしいです。それ故、いくつかのエピソードの変更を余儀なくされたとか。しかも、この映画の撮影・編集が終わると同時に、今度は「ベスラン学校占拠事件」が起こってしまうという、この実態...。

ロシア軍がこの「大統領のカウントダウン」の撮影に全面協力した背景にはきっと、こうした「テロ行為には屈しない!」という強い意志が存在するのでしょう。だからこれはテロに立ち向かう国とヒーロー側から見た”正義”のお話になっています。

社会情勢に疎いこっちゃんは、上記の事件をニュースでさらっと見ている程度の”平和ボケ男”ですが、世界各国に於いてテロは、もはや”身近な脅威”として存在しているのは事実として認識しています。

そんな重々しい現実を背景に、極めて真面目に正面から取り組みながらも、上質なエンターティメントに仕上げたこの「大統領のカウントダウン」。

ドラマ部分も非常にシッカリしていて展開も早く飽きさせません。初めはコマ割がちょっと多く感じ戸惑いましたが、後半には慣れました。

映像も鮮明ですね。(暗いシーンのヌケがちょっと悪く感じましたが、これは劇場のせいかもしれません)

何より、こんなモノ(右画像)をローマの空からバラ巻くなんていう計画があるなんて話もスケールが大きくて、「えぇぇっ?どーなっちゃうの?」って本気で心配になりました。

ハリウッドにも決してヒケを取らない・・・っていうか、ヘタしたら今やハリウッドよりもスゴイものを作ってしまうかもしれないロシア映画。

侮れませんよ。

いつまでもCG任せのVFXばかりに金をかけ、ドキドキもハラハラもしないアクションをとり続けるマイ○ル・ベイも少し見習った方が良いかもしれませんね。もっと気を引き締めて頑張って欲しいものです。モチロン彼だけじゃなくて、今後ハリウッド全体、本気でかかった方が良いかもしれません。ウカウカしてると抜かれちゃいますよ、すぐに。

もし、皆さんのお近くでこの「大統領のカウントダウン」の看板を目にすることがあれば、試しにご覧になっては如何でしょうか?

「ああ!アクション映画ってこういうものだったよなぁ!」忘れていたそんな気持ちを思い出せるかもしれません。 まるでハリウッド・アクションの名作「ダイ・ハード」が、ブルース・ウィリス抜きでロシアから帰って来た感じ。そんな印象すら受けました。(ちょっとオーバー?)

それと、同じロシアで公開された「ナイト・ウォッチ」と比較しても、こっちゃんはこちらの方が数段好きですネ。これと比べちゃうと「ナイト・ウォッチ」は、まだまだ映像で遊んでいるだけのような気がしますね。まぁ、それも楽しいんですけど。( ̄ε ̄ )

 

ただ、さすがにこの予算じゃぁフェラーリまでは潰せなかったのね。
そんなとこがロシアっぽいなあ。

思わずロシア映画で熱くなってしまいました。

《2006.08.16記事一部改訂》

【作品】大統領のカウントダウン

 


寝ずの番 (2006)

2006年03月29日 | しびれるMovie
こっちゃんポイント ★★★★★
鑑賞環境  試写会 
上映時間 110分
製作国 日本
公開情報 劇場公開 (角川ヘラルド・ピクチャーズ)
初公開年月 2006/04/08
ジャンル

コメディ/ドラマ

映倫

R-15

上方落語界の稀代の噺家・笑満亭橋鶴(長門裕之)が、今まさに臨終のときを迎えようとしていた。見守る弟子たち。なんとか師匠のいまわの願いを叶えようと、耳を近づけ聞き取ったのは「そ○が見たい」との言葉。一同驚きつつも、おとうと弟子・橋太(中井貴一)の嫁・茂子(木村佳乃)を説得。茂子は師匠をまたぎ、そそをお見せした。が、師匠は言った。「わしはそとが見たいと言うたんや……」。そしてご臨終。通夜には師匠ゆかりの人々がわんさわんさと集まり、想い出話は尽きることがないのだった。

(goo映画より抜粋)

さあさ。楽しく寝ずの番や!
え?”寝ずの番”ってお通夜でしょ? 楽しくってアンタ方そりゃ・・・。( ̄∀ ̄*)

とにかくね、「師匠のあの逝きを祝しまして!(≧∇≦)/□☆□\(≧∇≦ )カンパーイ!!
ってくらいですから、この映画のノリはとんでもありませんよ。

でもこれ、めちゃめちゃ面白いデス!(>∀<)
でも、「お子ちゃま」は観ちゃダメね。
これはエッチな、えっちなお話ですからね。

そういうわけでこの映画のお通夜に出席・・・じゃなかった、試写会に行ってきました。当然のごとくバリバリR-15指定がかかっちゃっておりマス。(笑)

 

これ、映画館での上映が終了した後もTV放送は無理でしょう。音声だけでもヤバいもの。(笑)のっけから下ネタの連発です。オトコの「あそこ」や、女性の「あんなトコ」を表現する単語が、容赦なしにポンポンと飛び出してきますからね。

しかも「ところ変れば」と、その地方その地方の、地元ならではの”呼称”の違いまでもご丁寧に教えてくれるというこの親切さ!(笑)ありえません。

ところがコレ、さほどいやらしさを感じないんですね。何故か明るくカラッと笑えちゃう。それどころかね・・・こっちゃん、所々 泣かされてしまいましたよ

え?「笑いすぎて泣いたのか、悲しくて泣いたのか。どっち?」って?
両方です!<(`^´)>キッパリ!

なんたって、これは「人情喜劇」
しかも、最高のキャストがお膳立てされたなかなかのエンターテイメントでもあります。

もしかしたら観終わった後はちょっと頭がクラクラするかもしれません。
こっちゃんは、ちょっと真っ直ぐ歩けませんでした。(笑)でもね、久々に観終わった後に拍手を贈りたくなるような作品を観ましたねぇ。そんな気分。

さて、そういうこの映画なんですが、この作品を撮ったのはマキノ雅彦という監督。え?「まさ彦」?
どっかで聞き覚えのある「まさひこ」だと思ったら、チラシを観て納得。
そーです、あの「まさひこ」です!

そうそう。俳優の津川雅彦さんなんですね。

日本映画界の元祖と言われてる祖父マキノ省三、そして叔父のマキノ雅弘氏の名を継いで、”三代目マキノ”としてご襲名されたそうで。

そして今回、この映画で「初メガホン」なんですって。しかし「初」と言えどもその作品の出来栄えは・・・・。


さ、さすが!なかなか人を楽しませるツボを心得てらっしゃいます
。 

何よりこの映画、キャスティングが良いですねぇ!

このお話が、「いやらしい」 雰囲気を醸し出さないのは、このキャスティングの妙とも言えるトコロ。
中井貴一さんしかり、木村佳乃さんしかりです。歯切れが良く、明るくカラッとしてる。そんなイメージの役者さんを、しっかり話のメインにぶつけてきてくれました。

(中井さんは初めから想定されていた役者さんなんだそうです)

しかも出る人、出る人芸達者な俳優さんばかりで、これまたこっちゃんのツボ。観ていて本当に楽しかったなぁ。蛭子(えびす)能収さんの使い方なんかも上手いですね~。これで何の問題もないと思いますよ(笑)

お兄さんの長門裕之さんはもちろんOK!師匠のカンロク十分。死人としても申し分ありません(笑)あ、今回は津川家の娘さん(上画像左から4番目)もご出演です。奥さんの朝丘雪路さんに似てますねぇ。高岡早紀さんもチョット意外な役どころで楽しめましたし、岸辺一徳さん笹野高史さんはもうさすがですね。

それでも、この映画で 何よりも一番目を引くのは中井貴一さんの演技に他なりません!
とてもじゃないですが、素人のこっちゃんがダメ出しする余地などドコにもありませんでした。 

天才ですよ、この人。上手すぎますっ!

通夜の席で”泣き”のシーンがあるんですが、あの涙がまるでこっちゃんの頭の上にポタポタと垂れてくるかのような感覚。。。。。スクリーンと客席の距離感など一気に超えて引き込まれてしまうような演技に、思わずもらい泣きをしてしまいました。

あそこまでのドタバタ空気を一気にホロリに変えちゃうっていうのは、もう只者じゃないですよ。ハンパな芝居じゃ出来ません。長門サン、岸辺サン、笹野サンらのベテラン演技派に囲まれながらも、あれだけ魅せる演技を披露出来るとは圧巻です!

映画「寝ずの番」を観るならば、ぜひ中井貴一っつあんを一番に観て欲しいですね。

そもそも、このお話はロウソクの火を絶やさんようにと、通夜の席でそれこそ”寝ずの番”をするって話なのですが、亡くなったのは上方落語の師匠、それを偲(しの)ぶのが出来の悪い弟子であり息子であり、その家族でありというとこがミソでございましてね。

お通夜の主役は紛れもない”故人”。しかし見方を変えれば”本人抜きの一大イベント”でもあるわけです。

最も不謹慎な言い方をすれば、親しい仲間が集い、故人を肴(さかな)に夜通し酒を飲むのですから、これほど楽しいこともそうそう無いでしょうね。

なんと、この話。盛り上がったその席は、ついに故人の強制参加による”死人(しびと)のカンカン踊り”にまでエスカレートしてしまいます!

これが死ぬホド面白い!

こんな映画を観て、「こらっ!故人に敬意を払えっ!」
「なんというバチあたりな!」「祟られるぞ!」という声も上がるかもしれませんが、この映画は死んだ人間をバカにして、ただ笑いの為にコケにしているだけの話ではありません。

なんかね、観てるうちに「あ、コレいいなぁ」って思えてきちゃうんです。

本来、お通夜は故人との別れであり、当然ながら「もう会えないね。悲しいね。」という気持ちも湧いてくるモンです。 ていうか、そういう気持ちの方がメインでしょうね。
でも、”故人”の側から見てみた時に果たして本当に「ただ湿っぽく自分の死をひたすら 悲んで送って欲しい」などと願っているのでしょうか?その答えがこの映画にはあるように思えました。
 
もちろん、苦しんで辛い別れになってしまうこともありますけど、「往生」といえる別れもあるわけですからね。その「往生」した人たちにとって、自分の人生の周りを共に過ごした人たちが、バカバカしい昔話や嬉しかった時の思い出を目の前で楽しそうに一晩中語り明かしてくれるなんていうのは、もしかしてこれほど嬉しい見送られ方もないのかもしれません。
 
もちろんそれでも確かに、タブーっちゃぁタブーな話です。
実際、この「寝ずの番」は「他でやろうとして一度映画化に失敗してる。」とカントクの津川・・・いやマキノさんがTVでおっしゃってましたね。それも何となく分かります。でもとうとう出来ちゃったんですね(笑)
 
iconicon この原作は中島らも氏の同名短編集に入ってる「寝ずの番」 icon三部作。興味があればコチラを読まれるのが良いかと思います。心の準備が出来るかもしれません(笑)
 
『抱腹絶倒の傑作短編9本立て!最新笑説集。希代の名咄家橋鶴が最期までオチをつけてオッチんだ。通夜は酔った者勝ちの無礼講。今宵は笑って過ごしやしょう。【寝ずの番】三部作他、らもテイスト満喫の9篇 』 (日販MARC より)
 
むふふ。こっちゃんもすっかり読みたくなりました( ̄∀ ̄*)
 
さて、こっちゃんは基本的に下ネタに頼る笑いが嫌いでした。どの作品がとは言いませんけど、特に下品な行為とギャグに終始するだけの(特にハリウッド系)下ネタが苦手な傾向があるようです。
 
 
でも、そんなこっちゃんもこの映画は楽しめましたね~♪
何故だか上手くは言えませんが、きっと「下品も”品”のうち」と笑って言わせるようなそんな空気がどこかに感じられたからかもしれません。
これもまた”日本でしか出来ない話”でしょうね。間違っても海外リメイクの心配はなさそうです(笑) 
きっと底にある「人の情」というものまでメチャメチャには崩されてはいなかったので、ソコが良かったのでしょうね。
 
カンカン踊り、歌合戦、電車ゴッコで、明け方までクタクタになるほど故人との別れを楽しむ。
自分もそんな風に見送ってもらいたいものです。


《2006.08.15記事一部改訂》

【作品】寝ずの番

 


運命を分けたザイル (2003)

2006年03月27日 | しびれるMovie
こっちゃんポイント ★★★★★
メディア 映画
上映時間 107分
製作国 イギリス
公開情報 劇場公開 (アスミック・エース)
初公開年月 2005/02/11
ジャンル ドキュメンタリー/ドラマ/アドベンチャー

1985年、若き登山家ジョー(ブレンダン・マッキー)とサイモン(ニコラス・アーロン)は、標高6600mというアンデス山脈シウラ・グランデ峰の西壁登頂に見事成功した。前人未踏の偉業を成し遂げた2人だが、自然の猛威には勝てず、下山途中に遭難。足を滑らせたジョーは不運にも片足を骨折した。死に直結する雪山でのケガに、サイモンは危険を承知でザイルを互いの体に結びつけ下山を再開するが、視界を失ったジョーは氷の絶壁で宙づりになってしまう。身動きの取れなくなった2人、このままでは共に命を落とすことになる。運命の決断を迫られたサイモンは…。

(goo映画より抜粋)

「雪」食ったことありますか?こっちゃんはあります。
って、いきなり何を聞いてるんでしょ?ヾ(・ω・o) ォィォィ

ビックリしたのですが、この映画のオフィシャルサイトを開いてみたら、TOPページで、元F1ドライバーの片山右京さんがこの映画に対してコメントしていました。

思わず「なんでアンタがやねん!」とツッコもうとしたのですが、良く見ると肩書きがなんと!「登山家」になっているではあーりませんか?!

∑(゜Д゜ノ)ノ エェッ?そーだったの? 
知らんかった...。 F1降りて山登ってたとは、ね。

さらに突き進んで調べてみると、こんなページ にも辿りついたので、興味のあるかたは読んでみて下さい。

そんなわけで、前々からお友達の間で「高評価」を耳にしていたこの映画なのですが、「いつか観よう。いつか観よう。」と固く心に誓いつつも、とうとう今の今まで観ずに来てしまいました。

え?「それは何故」かって?

アンデス山脈シウラの頂上は険しくて辛いのです。そうカンタンに登れましぇん。そーアンデス(そうなんです)・・・って、またダジャレ?( ̄∀ ̄*)

どーか、こっちゃんをこのままそっとしておいて下さい。(笑)

さてさて。もうすぐ4月というこの時期にこの作品を観たのには理由があります。北海道に住む者がこの映画を真冬に観るのはあまりにもキツイと本能的に悟ったからです。だってこっち(札幌)の冬なんて、ヘタしたら自分の家の前で雪かき中に遭難しそうになりますからね。シャレにも何もなったモンじゃないですよ。だからこの時期にコイツ(この映画)をやっつけて”冬将軍さよーなり~”ってワケです。

で、この映画ってやっぱり”実話”だったんですね。
とてもじゃないけどスゴイ話ですヨ。

要は、二人の山男が、「娘さん良く聞ぃ~けよ♪」と言わんばかりに前人未到のお山の頂上をめざすというお話なんですが、話は登る辛さよりも、”下山の恐怖”にスポットを当てています。

遭難の80%は下山途中におこる
この映画の主人公が語る通り、山は下りるときが一番怖いらしいのです。当然ながらナメてはいけないのですね。

実際、この2人もあっさり”死に目”に合います。

そもそも、山になど登ったことのない人にとっては、”登山”そのものが理解しがたい行為ではあるでしょう。

何が悲しくて、険しく切り立った崖や岩を乗り越えてまで、山のてっぺんまで登らなければならないのか?もっと信じられないのは、そんなに苦労して登った山を今度は降りるってコトですよ。

この辺の感覚がとても理解し難くないですか?こっちゃんだけですか?

そんなこっちゃんがこの映画を観たところで何の意味があるのか?
そして、無謀な挑戦に挑み続けるこの男たちに、果たして共感を得ることが出来るのか?
たしかに疑問ではありました。。。

そして観た結果。

登山家になろうと思いました! ・・・・・ってウソ、ウソ( ̄∀ ̄*)

そんなこと絶対思いません!

無理、無理。絶対ムリ~~~ッ!(つД`)・゜・゜。

 だいたい、こっちゃんの知ってる山登りなんてのは、田舎にあった小さな山の”登山遠足”くらいですからね。せいぜい半日もあれば頂上まで登って降りるコトができる程度の山ですよ。

途中、湧き水を飲んだり、拾った木の枝で前を歩く野郎のお尻をツンツン突っついたり(笑)そんな風にキャッキャッと言いながら登って降りるんです。まったく「御気楽」を画に描いたような登山です。

少なくてもこの映画、そんな風に本格的な山登りを知らない人が観ちゃうと「登山家でなくて良かった。」と思わせるだけの勢いはあるんでしょうね。ましてや今から登山を始めようとしていた人なんかがコレを観れば、せっかく用意した道具類を慌ててリサイクルショップに売りに行っちゃうのかもしれません。

オラには無理だっぺ。こんなこと。」そう言うに決まってます。

もちろん、ベテラン登山家さんだってこの映画を観れば、過去の”ドキッと体験”や”ひやっと体験”を思い出し、思わず変な汗をかきつつフンドシの紐を締めなおすくらいの気持ちにはなるのでしょう。

そんなワケで、こっちゃんにとっても、この映画のインパクトは強烈でした!

 とにかく、この映画で語られる「下山の恐怖」は一見の価値どころか、自分もまるで一緒にもがき苦しむかのような感覚に近いものがあります。

だってね。信じられないですよ。片足を骨折したまま、ほとんどテッペンから一人で下山するなんて!

「これ、ホントに実話なの?」って聞きたくなります。
そりゃあ”伝説”にもなるってモンです。

分かっちゃいるけどガッツ伝説とは大違い。
お構いナシに  バシッ!

あのぉ~、知らなかったんですけど、こんな山の登り方があったんですね?テントを張らずに登って行くっていう方法が。寝るときは雪の中で寝る。たしかに荷物の負担はそれだけ軽くなるのでしょうけど。これまで観てきた”登山映画”はテントを張ってドンドン登って行くってものばかりだったので、これがまず新鮮でした。

この映画、冒頭からこの偉大な登山を成し遂げたジョーとサイモン本人の語りから始まるだけあって、初めから「二人は生き延びたんだ」と分かるのですが、それでも場面場面でハラハラしてしまいますね。
それどころか「どうか助けてチョンマゲ。」と祈る気持ちにまでなってしまいました。

ジョーの骨折により「死」を肌で感じてしまった二人
何とか二人で助かる道を考えながらもとうとう窮地に陥り、苦渋の決断でザイルを切ったサイモン。

後々サイモンのとった行動は非難されてしまったとのことですが、当然ながらあの時ザイルを切らなければ二人とも生きては帰れなかったでしょう。まさにあの”決断”こそが「運命を分けた」のですね。

生き延びたいのではない。一人で死にたくないだけだった」と語るジョーのセリフはあまりに生々しく、心に焼きつきます。

しかしこの映画によって何よりも思い知ったのは、「ハンパな根性と体力では、山は登れない」ということでした。。。

《2006.08.15記事一部改訂》

【作品】運命を分けたザイル

 


エイプリルの七面鳥 (2003)

2006年02月27日 | しびれるMovie

こっちゃんポイント ★★★★★

鑑賞環境  こっちゃんシアター 
上映時間 80分
製作国 アメリカ
公開情報 劇場公開 (ギャガ・コミュニケーションズ)
初公開年月 2004/10/30
ジャンル ドラマ/コメディ

アメリカ中のキッチンで、七面鳥が主役になる感謝祭の日。ニューヨークで恋人のボビー(デレク・ルーク)と暮らすエイプリル(ケイティ・ホームズ)は、生まれて初めての料理と格闘していた。郊外に住むもう何年も会っていない家族をディナーに招待したのだ。仲の悪い母親が、ガンのために余命わずかと知ったエイプリルは、人生最大の勇気を振り絞って母の好きな七面鳥のローストを作ろうと決意するが・・・。 

(goo映画より抜粋)

自身の演技よりも、トム・クルーズとのラブラブちゅっちゅぶりの方ですっかり有名になってしまったケイティ・ホームズ。速攻で妊娠。ここまできてまさか!の大どんでん返し破局説(トムさんは否定してますが)などなど...その後もシッカリ世間に話題を提供してくれております。

さてそんなことはともかく、ケイティ・ホームズが主演のこの作を観てみてビックリ!正直、彼女の映画でこれほど良いモノがあるとは知りませんでした!ブログのお友達の間では、にわかに話題になっていたのでズーッっと気にはとめていたのですけどね。

実に良いですね~、これ。

それにしても、ここ最近の映画としては極めて短い80分という上映時間の中に、なんと多くの感情の揺れ動きを盛り込んだのでしょうか!
しかもその一つ一つが「やっつけ」的にならず、とても丁寧に描かれて行きます。

朝の7時

どう見ても早起きサンには見えない女の子エイプリルは、恋人の黒人男性ボビーに叩き起こされます。

今日は大切な日。準備しなきゃ

そうです。感謝祭のこの日に彼女が計画していたのは、離れて暮らす家族を招待し、七面鳥の手料理で迎えることでした。

生まれてこのかた「手料理」なるものを一度も作ったことのないという彼女が、何故にそんなコトを急に思い立ったか?その奥にある「家族愛」というものがひしひしと伝わってくる映画なんですねぇ。

「なんでわざわざニューヨークに行かなきゃならないの?料理ならわたしが作るわよ!家庭科だって”A”なんだから!」そんな風に無駄な抵抗を見せる妹をはじめ、正直、家族全員乗り気ではないご様子。

そんな空気を察して穏やかに家族に語りかけるパパがなんともイジらしい。優等生ではないエイプリルを必死にかばってマス。

「前は麻薬密売人と付き合っていたが今のボーイフレンドは”パパ似”らしいから大丈夫」など苦しい弁護。

パパの中には「今しかない」という思いもあったんですね。何故ならママはガンに侵されていたから。彼女の心の蟠(わだかま)りを察して、死ぬ前に取り除いてあげたいという優しさの持ち主のようです。 

長男は常にカメラを持ち歩き、家族の思い出をその中に”記録”する。は家族の前では良い子を装うけども可愛げがない。ボケたバァちゃんは、の顔すら分からない状態。そしてママは・・・・自分を曲げず、憎まれ口や家族の笑えないブラックなジョークを平気でその口から吐き捨てる。


こんな家族のニューヨークまでのドライブは初めから一筋縄で行かないわけですよ。途中での買い食い、記念撮影、そして急に航路変更。その上、リスらしき動物を跳ねちゃったりね。うわわ(>ω<)

その一方で、もっとドタバタを繰り広げてるのが主人公の少女エイプリル。

何しろ肝心の七面鳥を焼くオーブンが故障しちゃってる!そんなコトに当日の朝いきなり気がつくという、この致命的なミスに大慌て!

だってね、ムリもないんです。日頃から料理なんかしない彼女が、オーブンの点検なんかしてるわけがない。

七面鳥を焼くために余熱と・・・。おっといけない!その前に、まず中の貯金箱や小物を出して・・・って。
ヾ(・ω・o) ォィォィ、いったいオーブンに何入れとんじゃッ!

まったく、呆れるかぎりです。

せっかく母親や家族のために「生まれて初めて手料理を作るわ!」って思い立ったというのに、肝心のオーブン君は全くの無反応。彼女の心境としては、今働かないでいつ働くのよアンタ!ってカンジなんでしょーね。
ま、そんなことオーブンに言ってもしょうがないんですけど(笑)

実はこのお話の大切な背景として、娘と母親の間の”不仲”があるんですが、それはこの映画を観ていればこちら側にもイヤと言うくらいシッカリ伝わってきます。

とにかく母と娘双方ともに「いい思い出などない」と言い切るほどの悲惨さ。

娘は娘で、恋人ボビーが今日の日のために買ってくれた陶器の調味料入れを見て、母に叱られたイヤな過去を思い出しテンション急降下。

母親に至っては「美しい思い出はひとつしかない」と家族に話せば、それはエイプリルじゃなくて、妹のことだったり。記憶が錯乱しちゃってる。もうサイアクです。

こんな親子が感謝祭のこの日に久しぶりに顔を合わせたとしても、いきなりパパが言うような「楽しい日」になるなんてとても思えませんよね。

それでも、「来るか来ないか分からない」と自分で言いつつも、本当はそれを心のどこかで信じて待ち望み、七面鳥を焼き上げなきゃとアパートを上に行ったり下へ降りたり頑張るエイプリル。

きっと彼女自身も母親の病気を知り大きなショックを受けたのでしょう。心のモヤモヤをこのままには出来ないと思ったのですね。
自分のためにも。そしてママのためにも。

「がんばれ、がんばれ!」
そのあまりに一生懸命な姿を観ているうちに、そんな風にいつしか彼女を心の中で応援していました。

オーブンを貸してくれる人を探し求め、アパート中のドアを叩くエイプリル。そこで出会う他人との触れ合い。自分の悩みを受け入れてくれた”理解”あり。自分自身のしてしまった礼儀知らずの振る舞いに対する”仕打ち”あり。言葉が通じなくても自分を受け入れてもらえた”人情”あり。

たかだか料理、されど料理ですわ。

彼女はこの感謝祭の七面鳥料理を通して、苦悩、失望、怒り、悲しみ、感謝、喜びなどの人間の持てる様々な感情を「舌」ではなく「心」で味わってゆくんですね

さぁ、家族が来るまでに七面鳥は無事焼けるのか?
いやいや。その前に家族はちゃんと来るのか?

タイムリミットが迫るなか、生焼け七面鳥の誘拐事件まで起きてしまうこの映画。楽しいですよ~♪

エイプリルの恋人ボビーは「愛の力」を強く信じる好青年。しかし彼は肝心な時に近くにいませでした。
実は彼は彼でエイプリルのために「この日」が最高の日になるようにと、別なトコロで頑張っていたんですね。でも、そのお陰で”面倒”にも巻き込まれてしまいます。

やがてニューヨークに着く家族の車。荒んだアパートを前に「ここじゃない」と呆然。そんな時に血を流した黒人男性が現れ車にへばりつく。一家は顔面蒼白・・・そして逃亡。泣きじゃくるエイプリル。

さぁて、感謝祭はハッピー気分で終われるのかな?
それは最後まであなた自身が見守ってあげて下さい。

エイプリルは決して”家族を喜ばせる良い子”ではなかったのかも知れませんが、「家族愛」を忘れずに大切に胸の奥にしまってきた娘です。だから泣きます。いっぱい泣きます。
そして母親もまた、そんな娘の母親だと最後には分かります。

脚本はあの「ギルバート・グレイプ」のピーター・ヘッジズと聞き、大いに納得しました!いかにも彼らしい心に染み渡る名作ですね。

他の何にも代え難い「暖かいラスト」が忘れられません。

《2006.08.15記事一部改訂》

【作品】エイプリルの七面鳥

 


県庁の星 (2006)

2006年02月16日 | しびれるMovie
こっちゃんポイント ★★★★★
鑑賞環境  試写会 
上映時間 131分
製作国 日本
公開情報 劇場公開 (東宝)
初公開年月 2006/02/25
ジャンル ドラマ/コメディ

野村聡(織田裕二)はK県庁のキャリア公務員。「政治は人の上に人を作り、人の下に人を作る」を信条に成績もプライドも高く、業務にもそつがない強い上昇志向を持つ男。婚約者も地元大手建設会社の令嬢。今後は「特別養護老人施設建設」のビッグプロジェクトを足がかりに、更なるステップアップを狙っている。そのプロジェクトを前に、県政の目玉である民間企業との人事交流研修のメンバーに選出され得意満面。ところが、研修先は店員達のやる気がなく、客もまばらなしなびたスーパー「満天堂」。しかも、野村の教育係・二宮あき(柴咲コウ)は自分より年下のパート店員だった。それでも出世のためと意気込む野村だったが…。 

(goo映画より抜粋) 

「接客マニュアルを見せてもらえますか?」   
「はぁ?そんなモノありませんけど」
「じゃあ組織図を」  
「そんなモノなくたって回って行きますから、民・間・わッ!」

こんなやり取りが、やたらめったらオッカシィ。

まったく「お役所」と「民間」の感覚の間には、双方のカン違いや思い込みによってまるで大きな大きな川が流れているようでもあります。役人は対岸の民間意見を聞こうとしない。そのくせ岸の向こうから「あーだこーだ」と口出ししては、民意を押し倒し、ねじ伏せ、無理矢理考えを通す。そう、彼ら役人たちが信ずるものは自ら作ったマニュアルのみ。おかしなおかしな”しがらみ”に縛られた哀れな奴隷なのかも・・・。

こんなコトを平気で言えるのは、もちろん、こっちゃんが「お役所」の人間ではないから。

この映画は「役人たちよ、目を覚ませ!そして正しい心によって真の改革をせよ!」と大声で訴えかけるような作品でもありました。そして一般庶民の側であるこっちゃんにも微かな希望を与えてくれる映画でありましたよ。

 

まあ、これは予想通りに面白かった!というのが率直な感想。他にもこの映画に期待している人が多数いらっしゃるかと思いますが、期待した分だけ十分ハネ返って来る映画でもありますよん。

 今までエリート街道まっしぐらで、とある県庁のキャリアまで登りつめた男の野村聡。彼にとって「挫折」など全く無縁。そんなもの今まで味わったことなどありません。全てが自分の思い通りに運んでいるバリバリのヤリ手県庁職員なんです。

全てが順風満帆!総工費200億円の福祉施設一大プロジェクトのプレゼンを任され、その手際の良さと抜かりの無さは同僚をも感心させるホド。
オレたちは資料を作れてナンボだろ?」そう彼自身が言うとおり、机の中には細かい文書一つ一つにまで対応できる自作のマニュアルがギッシリ!野村はそんな自分に酔いしれているような男でもありました。

そんなある日、彼が議員に言った「県政に民間の意見を取り入れる」という一言が耳に留まり、彼は民間企業との人事交流研修のメンバーに選ばれるコトとなってしまいます。スポーツ・ジム、ペットショップ・・・選りすぐりの7人が派遣される企業は様々。そして野村が派遣されたのは・・・・・なんと、三流スーパー「満天堂」!
チェーン店とはいうものの、そのクタビレっぷりはタダごとではありません。

駐車場には、客が使ったショッピングカートがあちっこっちに放置され、店の外壁にはまるで物置がごとくブルーシートや宣伝ノボリが立てかけられている。しかもゴミ置き場には住所不定の浮浪者の姿まで。
彼が手にした店舗パンフの表紙を飾るバビッ!っとしたイラストの建物とは、およそ似ても似つかぬお店だったのです。とにかくまずコレが笑えます。

しかもそれだけに終わりません。
中に入ったら入ったで、店内は消化しきれぬ大量在庫の山、山、山。その「在庫群」は店長室まで押し寄せる勢いではないですか!

野村はこんなトコロで半年間も研修を受けるハメになったのでした。
しかも、「キミの指導を担当する人」と店長に紹介されたのは、なんと年下の女!

「きみ・・・・バイト?」      パートですけど・・・・何か?」ってなモンですよ。

店長はダラしなく歯切れが悪い。店内の仕切りはパートのネェちゃんまかせ。調理コーナーは気の荒い兄ちゃんと、字も読めない外人だらけ・・・・って ( ̄∀ ̄*) 

店も店なら、人も人!(笑)

とにかくねぇ、この映画ってアチコチで苦笑、苦笑の連続です。ガハハハ!なんて大笑いできる感覚ではなくて、もうチョット違った楽しさですネ♪織田クンにもって来いの映画であることに違いは無いし、対する柴咲コウも、まぁこんな役やらしたら天下一品ですわ。

この織田裕二のスーツスタイルから、あの『踊る大捜査線』シリーズを連想しちゃう人もいるかもしれませんが、この映画は「踊る~」(さんま御殿じゃないよ)とはアプローチが全く違います。って言うか、むしろ逆。
「踊る~」(ポンポコリンじゃないよ)で彼は【現場側】の人間でしたもんね。しかしこの「県庁~」では彼は【役人側】からの視点に立つワケです。

「研修で民間から学ぶ」はずが、来た早々役人意識まるだしで店のレイアウトを勝手に変えちゃうわ、惣菜チームの”天ぷら二度揚げ”にダメ出しするわで、予想通りお店の人間全員と衝突しまくる。挙句には従業員用の貼り紙にまでクレームをつける始末。

この見せ方がとにかくコミカルで楽しい。それでいて下品にならず・不必要な笑いに走らずでグーなカンジ。
「学ぶ」どころかこの店を自分流に変えようとする「役人のエゴ的カン違い感覚」をチクチクと浮き彫りにして行く視点がお見事ですね。

この映画を観て「まったく役人ってこうだよなぁ~」ってうなずいちゃう人はきっと多いはず。自ら作った”カンペキなマニュアル”に従って日々の業務を非情にこなす。そんな人種がゴロゴロと登場します。そこに例外などありません。彼らの作ったマニュアルこそが、そう語っているではないですか。

県庁の高いビルから下を歩く人間を見下ろす。庶民の生活の上でアグラをかく。休憩時間には、いかにも高価そうなエスプレッソ・マシーンで落とした美味しいコーヒーを飲み談笑する。それが県民の税金でしぼり出されているコーヒーなのだと、さほど意識もせずに。
政治は人の上に人を作り、人の下に人を作る」って、ヾ(ーー )ォィォィ 
まったく、なんちゅー醜い言葉でしょうね。

しかしこの後、エリート野村は皮肉にも自分自身が信じてきたこの言葉の本当の意味を身をもって思い知ることになってしまいます。

とにかく上手いわ、フジテレビジョン

ただ笑って終わりにはしないもの。中盤からはシッカリと見せ場を作ります。
そしてラストの織田クンの発言シーンになる頃には、もう息を呑むことすら出来なくなってしまいました。おっと、またまた金縛りっ!

人生初めての挫折というものを経験してしまったエリート人間が、この三流スーパーから教わったものは、マニュアルでも、組織でも、コネでもなく、形のない「」そのもの。

そう言えば、このスーパーで彼を苗字で呼ぶ人は誰もいませんでしたねぇ。「県庁サン、県庁サン」みんながそう呼んでいました。
そっかぁ。初めから彼は「お役所の人」としてこのスーパーに迎え入れられたのですからね。そして野村本人もバリバリの役人意識。自分のやり方を押し通し、自ら望んで持ち場を周囲とカーテンで仕切ります。その上で民間意識に勝とうともしていました。考えてみれば「官と民の一体化」とは、まるで正反対の方向へ進もうとしていたのです。

でも、このカタブツのエリート職員の織田クンの顔がドンドン柔らかく変わって行くのがとっても良いんですよね~!そして最後には、県庁さん自らの手でカーテンの仕切りを取り外して行きます。
高級弁当「Aチーム」お手頃弁当「Bチーム」そこにある違いは何なのか?お客様のニーズとは一体?その答えを教えてくれたのは、なんと意外な人物。そこがまたヨロシイ。

Aプラン、Bプラン、どちらが正しい道?
やがて、たかだか1,000円以下のお弁当と、200億円の公共工事がオーバーラップしてくるなんていうのは、本当に上手いですねえ。唸っちゃいます。弁当も工事も金は金。よく考えれば同じですものね。

この映画は、役人側に対して大いに皮肉をぶつけますが、実はそれだけで終わる話ではありません。
民間側のズサンさ、ダラシなさも同時に描いて行くのです。つまり、コレは役人バッシングに終始せず、
「官」と「民」よ、「心」で一体になれ!という叫びがきっと根底にあるんですね。

そうは言ってもこんな話はキレイごと。そう思うのはいとも簡単なのですが、この映画にはそれでも捨てたくはない希望が託されているように感じます。そう自然と伝わってくるんです。
だからこそ、野村が取った勇気ある行動に素直に感動します!彼の発する言葉に胸が熱くなるんです!

「オマエ・・・なんか変ったな」

同僚の友人にそういわれたとき、彼はもう「県庁のタダ・コーヒー」を口にはしてはいませんでした。
そうは言いながらも、結局ひとりの人間なんかで長年甘い汁に溺れ続けてきた役人意識が変るほど世の中甘くない

無情にも我々は、終盤の野村の友人(佐々木蔵之介)のシーンで、そんな”現実”を思い知ることにもなりますが、当の野村本人こそが「そんな簡単には変らないさ」と知っていました。

しかし、彼が仕掛けたラストの小さな小さな「改革」...おおっと!これには思わず拍手です!
「彼」が目指す改革は今まさに、ここに小さな一歩として”呼吸”を始めました。

それはまるで固いアスファルトまでをも割り、太陽の光を浴びようと芽を出すたくましい”新芽”のようでもあります。
この小さなひ弱な芽を思わずみんなで信じ、決して踏み潰してしまうことのないようにと、そっと見守ってあげたい心境にかられてしまいました。

心に刻みたい・・・そんなラストシーンがまた一つ増える。

これはそんな映画です。

《2006.08.15記事一部改訂》

【作品】県庁の星

 


ウォーク・ザ・ライン/君につづく道 (2005)

2006年02月07日 | しびれるMovie

こっちゃんポイント ★★★★★

鑑賞環境  試写会 
上映時間 136分
製作国 アメリカ
公開情報 劇場公開 (FOX)
初公開年月 2006/02/18
ジャンル ドラマ/音楽/伝記
映倫 PG-12

最愛の兄を事故で亡くしたジョニーは、周りに溶け込めない孤独な少年だった。そんな彼の心の拠り所は、ラジオからいつも流れてくるジューン・カーター(リーズ・ウィザースプーン)の歌声。成長したジョニー(ホアキン・フェニックス)は空軍を除隊後、初恋の女性ヴィヴィアン(ジニファー・グッドウィン)と結婚するが、さらに音楽への夢を募らせていく。彼は軍隊時代の自作曲でオーディションに合格、プロのミュージシャンの道を歩むようになるが妻との諍いは絶えず、ジューン・カーターと共演したのを機に、彼女に心引かれていく。

(goo映画より抜粋)

おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお尾尾尾尾ぉ~。
こ、これはスゴイ!スゴいぞぉぉぉぉっ!

目の前の大きなスクリーンですら収まりきらないホドのオーラを放つこの男は、いったい誰だ?
見た目には明らかにホアキン・フェニックス。しかし、この映画のアナタっって・・・
完全に誰かが乗り移ってマスよ!そう。”誰か”があなたの中に入り込んでますってば。

その”誰か”は、間違いなくあのジョニー・キャッシュ本人に違いありません。この映画の撮影中、ジョニーの魂は、ホアキンの体に降りてきたのですね。

そういう意味でこの映画は、正真正銘ジョニー・現金(←キャッシュと言えッ!)のオンステージ・ムービーなのでありますっ!
はっ!( ̄^ ̄ゞ ケイレイ!

これは噂どおりの素晴らしい作品です。

実は鑑賞にあたり、ちょっと事前情報をチェックしてみました。

こんな感じで。

調査報告①
どうやらホアキンが生歌を歌ったらしい。

調査報告②
しかもリーズがこれまた生歌を歌ってるらしい。

調査報告③
そんでもって二人ともアカデミー賞の主演賞(男優、女優のそれぞれ)にノミネートされたらしい。

調査報告④
つまりこれは”音楽モノ”らしい。

調査報告⑤
そういえば昨日【札幌雪まつり】が始まったらしい。 ←これは関係ないだろ!

 

・・・とまぁ、こんな具合です。

これだけ情報があれば、、もうカンペキ。この映画を観るには十分すぎます。

え?「ジョニー・キャッシュの過去のナンバーを全部チェックしなくて良いのか?」って。

アータ、いったい何曲あると思ってるんですか!

この人、アメリカとヨーロッパだけで1,500曲を470のアルバムでレコーディングしちゃってるんですよッ!バケモノですよ、バケモノ。人間業じゃぁありませんてば。ヘタに全部聴いてからこの映画を観ようなんて考えようものなら、いったい鑑賞はいつになるやら。こっちゃんなんて、この人の名前しか知りませんでしたから。
そんなんでいーんです!

でもね、それくらいの方が、逆に楽しめるっていうのはアルかもしれません。ホアキン・フェニックスは確かにスゴイ成りきりようなのですが、別に顔の骨を削ったわけでも、目の玉を取り替えたワケでもありませんからね。

実物の写真とジックリ比べたりしたら、そりゃ違和感も出てくるってモンです。

ハッキリ言っちゃえば、顔はそんなに似てません。でもそれはジューン・カーターを演ずるリーズ・ウィザースプーンも同じこと。

なのに、何故?ってカンジなんですよ。
何故に本人に見えるの?ってコトなのよ。

この映画で観るホアキンはホアキンじゃない。そしてまたリーズもリーズじゃないんです。そうは見えないの。これがとっても不思議。何故かしら、本モノの『ジョニー・キャッシュ』と『ジューン・カーター』という人の姿で、いつしか彼ら自身の生き様を見せ付けられているような錯覚に陥ります。

こ、っこ、っこ、・・・・・コケッコー! コケェッ!コケッ!
こ、こ、こ、こ、これが「真の演技」というものなのかぁーーーーッ?!

役に入りきるにもホドがある。
「役者がやってる演技」というコトを完全に忘れさせる・・・ほんと、そんなカンジです。

これはもう「成りきり」なんて生易しいものじゃなく「憑依」です、「憑依」!心霊現象です!ラップ現象です!エクトプラズムです!金縛りです!呪怨です!輪廻です!優香です!

まるでホアキン・フェニックスの体を借りて、本物のジョニー・キャッシュが歌声を発しているかのよう。

ところが!ところがですよ。こっからが大事です。この映画はホアキン・フェニックスばかりに気をとられてはイケません!ここにももう一人霊に取り憑かれたイタコ的患者サマがいらっしゃいます。


それがリーズ・ウィザースプーン。
もう目がイっちゃってるのがお分かりでしょうか?
ハッキリ言ってこの人スゴイです!ホアキンもスゴイけど、この映画では彼にヒケをとらないほどスゴいんです。

まず彼女の1曲目を聴いて腰を抜かしました!

何という歌唱力!何という声の張り!そして何という美しい響き・・・

アップテンポの陽気なナンバーのハズなのに、楽しいという感覚を通り越し、感動を覚えます。この人、こんなに歌上手かったの知りませんでした。そして知らぬ間に、なんと堂々とした女優さんになっていたのでしょうか。これには驚きを隠せません。

そんなメインキャストに引っ張られ、映画は淡々とミュージシャンの人生を描いて行きます。今さら目新しくもないような典型的なアメリカンなロックミュージシャンのパターン。そんな人生劇場が延々と語られるわけです。

ところが、それが全然つまらなくない。それどころか目が釘付けになってしまいます。音楽の魔力でしょうか?実に魅せます。話の流れもとっても分かり易く、その分感情も入れやすい。しかも編集もなかなか上手かったりしますからね。だから退屈しないんですね。

少年の頃、最愛の兄を事故で亡くしてしまったジョニー。父親とは確執が生まれ、やがて空軍に入隊。その後、セールスマンに転向したりもするが、ある日レコーディングスタジオで耳にした新鮮な音楽に心を惹かれ自動車修理工の仲間2人とミュージシャンを目指す。

オープニングとともに聞こえ始める音楽・・・。小気味良いリズムにのって手拍子、足拍子、床を叩く囚人達。そうです、ここは刑務所の中。前奏が流れているというのにジョニーはまだステージに立ってはいません。いったいドコに?彼は受刑者達の木工作業場で電動ノコギリの歯を見つめているのでした。

最期まで観ていると、このシーンの持つ意味の重みがズッシ~ン!と心に伝わります。

「ああ。そういうコトか。」、と。
ジョニー心境の揺れが手に取るように分かる秀逸な作り。
思わず拍手を贈りたくなる映画です。

素晴らしい!ほんと素晴らしい!

映画で使われるセリフも、厳選に厳選を重ねたと思われるほど素晴らしい。

彼がレコーディング会社のオーディションで言われた一言。

「オマエがいま唄ったゴスペルはもう他のヤツが繰り返し唄ってる。
 その一曲でオマエという人間が全部分かる歌を唄え。」

・・・みたいな。

これ観終わった後も心に残るセリフでしたねー。

とにかくこの映画 観始めたら最後、ホアキンとリーズの歌に心を持っていかれっ放し
気持ちの良い音楽に、体は自然と指や足でリズムを刻みはじめ、
感激で目には涙がうっすら滲んでくるような、そんな映画です。

もっとアップテンポにしたいんだが、自然とああなる。

そんな風に語るジョニー・キャッシュ。
彼のミドルテンポのロック・ナンバーを、ホアキン・フェニックスの声を通して酔いしれることが出来る一品でもありました。

実際のジョニーとジューンのデュエット曲が、この映画のエンドクレジットで流れていますが、リーズの声に関してはカンペキに聴こえるほど似ていました。ただホアキンの声は実際よりチョット太いですね。これ、聴くと分かりますよ。

号泣まではしないまでも、「良い映画を観れた。」という満足感には浸れます。

ちょっとウルッときましたね。

《2006.08.06記事一部改訂》

 

【作品】ウォーク・ザ・ライン/君につづく道

 


THE 有頂天ホテル (2005)

2006年01月15日 | しびれるMovie
こっちゃんポイント ★★★★★
鑑賞環境  映画館
上映時間 136分
製作国 日本
公開情報 劇場公開 (東宝)
初公開年月 2006/01/14
ジャンル コメディ/ドラマ

物語の舞台は大晦日の大ホテル。そこに集ったそれぞれの人々に起こるそれぞれのハプニング。彼らに、幸せな新年は訪れるのだろうか?“ホテルアバンティ”の副支配人である平吉(役所広司)はなんとか今日、大晦日を無事に終えたいと願っていた。しかしなぜだか総支配人(伊東四朗)は行方知れずになり、ホテルにはワケありの人物たちが続々集結。彼の願いもむなしく、トラブルばかりが発生していく。おまけに別れた妻(原田美枝子)と遭遇。働いていると言えなかった平吉は、授賞式に呼ばれて来たのだと嘘を付いてしまうのだった。

(goo映画より抜粋)

あ!すんまそ~ん。30年前にこのホテル予約したこっちゃんなんですけどぉ。

えぇ、今年の大晦日に超高級バリモア・スイートで御予約のこっちゃん様ですよ。ん?なに?あんだって?
犬はスイートに泊まれませんて....それってどーゆーコト?アヒルが走り回ってるホテルで、どーして犬がダメなのよっ!
総支配人呼びなさいっ、総支配人を!

って、出てきたアンタ.....顔面白塗りかいっ!

というわけで観ました。『THE 有頂天ホテル』。
タイトルからして、すでに面白い。

まったくもって、いつもながら三谷幸喜という人の才能には関心するばかりです。「笑の大学」でも彼の脚本世界に、頭のてっぺんから足の先までどっぷりと浸かり笑い転げたこっちゃんでしたが、この映画を駄目と言えるわけも無いことは、観る前から分かっていたこと。

もちろん「ラヂオの時間」「みんなのいえ」の監督作品や、数々のTVドラマも欠かさず観てたりしますけど、どれを観てもどっかツボにクル。こっちゃんにとって三谷幸喜とはそういう人です。だから、こんな感想なんて、書いても書かなくても良いのかもしれないですねぇ。正直、そんな風にも思います。でも書きたいから書きます(笑)。いいでしょ?

大晦日・・・・新年のカウントダウン間近の「HOTEL AVANTI」__。(実は有頂天ホテルという名前ではありません)映画俳優の名のついた4つのグランド・スイートルームを持つという高いステータスを誇る歴史あるホテルです。

そんなホテルの中で巻き起こる超ドタバタ劇を、ぎゅーっと1本の映画の中に詰めれるだけ詰め込んだというのが、この『THE有頂天ホテル』です。

年越しカウントダウンパーティを控えた忙しない雰囲気漂う中、様々な珍客と、どっかズレた従業員たちによって、観る者を「有頂天」気分に登りつめさせるというこの映画。

まぁ~、驚くのはこの登場人物の多さでしょうねぇ。なんせストーリーに絡む主要人物の数だけで、ざっと26人にもなっちゃいますからね(笑)そのほとんどがあっちやこっちで見かける有名俳優。オールキャストな楽しみが満載なのでございますよ。

ところでみなさん、この映画の予告編って事前に観ましたか?

こっちゃん、すでにあの予告編の時点で大笑いしちゃってたんですけど、あの予告編の中にはまぁ色んなショットがギッシリ詰まってましたよねぇ。「こんなにネタ見せちゃって大丈夫ぅ?」ってくらい、見せまくってました。でもね、本編はあんなモンじゃないですよー。

例えばこの画。
役所さんが嬉しそうにスピーチしてる。しかも鹿のカブリもの着用で。(笑)

ホテルの一副支配人が、いったいどーやったらこんな状況に陥るんでしょうねぇ。役所サン!アータ、素敵過ぎますッ!

ハリウッド映画(SAYURI)にまで出た日本の代表格俳優・役所広司にこんな役をやらせるなんて。(笑)これぞ、三谷映画の面白さ。

もちろんキャストの中には、三谷作品の常連サンもいますし、今回初めてこの作品で三谷カントクにキャスティングされた方もいらっしゃいますが、どこを取って食っても良い出汁(だし)染みてます。
今回も名物「三谷鍋」は、出汁たっぷり、隠し味もたっぷりで皆様をおもてなし。最後までお腹いっぱい笑わせてくれますヨ~。

そういえば「報道ステーション」で、ゲストに迎えられた三谷監督がおっしゃってましたが、「この脚本を組み上げるのに半年かかった」そうで。いやぁ、納得です。ここまで、人間関係を連鎖反応的に絡めて行くには、相当頭を使い、練り上げなければならないでしょうね。伏線、伏線、また伏線ですからね。

きっと、脚本家など「その道」を目指す方々なんかは、この作品を観た後で、喧々諤々と熱く語るのでしょうなぁ。まあ、こっちゃんの場合、小難しいコトなんか全然わかりませんけどね。とにかく理屈抜きで楽しませて頂けましたよ、この映画。

そういうワケで、この映画は十分★★★★★に昇格!

小ネタ、小ネタを積み重ねて行くストーリーが、いつしかレバー(肝臓)に入っちゃうような感覚。もうたまりません!ホテル内を走り回り、あちこちで目にする白い伊東四朗には、笑いすぎて涙がちょちょ切れましたし、一番シッカリ者に見えてた役所サンが元妻の前でその場しのぎの嘘をつき通すなんていうのはやっぱ楽しいワケ。「鹿には二種類あります。」にも爆笑しました。

それにしても今年の大晦日。このホテルで新年を迎えようとするお客さまは、どれもこれもワケありばかり。「普通でなくて何が悪い!」と言わんばかりの堂々たる個性が大集合!そして、そのお客様をおもてなしする側の従業員も、「これはどーでしょう?」ってカンジ。なんせ自分の好奇心や見栄を抑えきれず、どんどんドツボにハマって行くのですから。

ヅラまでカブって熱演した唐沢寿明
汚職に手を染めた我がまま政治家佐藤浩市
クネクネダンスのマン・オブ・ザ・イヤー角野卓造
ガラの悪いジャージのマジシャン寺島進
洗顔クリームを求めてSOSを発信する伊東四朗
客の装飾品を身にまといポーズをキメる客室係松たか子
耳のデカい大富豪親子津川雅彦近藤芳正
スッチー姿でホテル内を歩き回る女性客麻生久美子
追い出され続けても何度でもホテルに潜入する篠原涼子

あとね、あとね・・・

とにかく、数え上げたらキリがないけど、こんな人たちとの大騒動なら、自分も一緒に巻き込まれたいと思っちゃうほど面白い。

三谷作品がおキライじゃなければ観る価値アリアリ。
きっと自分のツボにくるエピソードが、一つや二つは見つかるハズです。

  

こっちゃん的に好きなキャラは、オダギリジョーの”筆の達人”。
何故にオダギリ・ジョーがこの役を買って出たか?というのは相当理解に苦しむところでもありますが、基本的にこういうコトが好きなんでしょうね。あと、西田敏行の”死にたがる演歌歌手もサイコー!

今回、この映画では今まで三谷作品では見かけることのなかった俳優のYOUが、意外に良い役どころで登場します。そして今となっては意外な一面ともいえるシンガーとしての彼女を観ることが出来るんですね。

へぇ~、初めて聴きました、彼女の歌♪上手いですねぇ。ロリータボイスで唄い上げる「If My Friends Could See Me Now」は、なかなか素敵でしたヨ♪

感動に打ち震えるほどの名作とは違いますが、観終わるとちょっと幸せ気分になります。佐藤浩市が役所広司に言った「帰りは遅くなる」とかちょっとウルッときます。

な~んか、大晦日にもう一度観たくなる映画。


この幸運の人形の行方を追うのがなかなか楽しいです。

《2006.08.05記事一部改訂》

 

【作品】THE 有頂天ホテル