これは環境問題研究の国際的な機関であるブラックスミス研究所が昨年の10月に発表したレポートです。
英語の得意な方はこちらの英文サイトへどうぞ
The Blacksmith Institute - World's Worst Polluted Places
上記のレポートを紹介した日本語の記事がこちらです
(Gigazine)世界でもっとも汚染された10の都市
きのうは最もきれいな都市トップ25でしたが、今度は汚い都市です。汚いといっても、汚れているというのではなく、いろんな物質によって汚染されている都市のワースト10です。

・チェルノブイリ(ウクライナ)
1986年に起きた、世界最大の核災害によって汚染されました。GIGAZINEでも何度か取りあげましたが、この地域の汚染はそう簡単に解消されるものではなく、健康被害も甚大。1992年から2002年のあいだにロシア、ウクライナ、ベラルーシで甲状腺ガンと診断されたケースは4000件以上にもなります。
チェルノブイリは現在半径19マイル(約30km)が立ち入り禁止区域となっています。これらの改善には数千億ドルかかるという専門家の予測があり、ロシア、ウクライナ、ベラルーシにとっては重大な財政負担になると見られています。
・ゼルジンスク(ロシア)
冷戦期に旧ソ連の化学兵器(サリンやVXガスなど)を生産する重要な拠点となっていたゼルジンスクでは、1930年から1998年のあいだに30万トンもの化学廃棄物が不適当な処理をされていたそうです。その結果、ノヴゴロドなど大都市の飲料水の源泉にヒ素や水銀などが混じるようになり、ひどい健康被害を及ぼしました。このあたりの共同墓地には、40歳以下で亡くなった人々の墓が驚くほどあるそうです。
・バホス・デ・ハイナ(ドミニカ共和国)
「ドミニカのチェルノブイリ」とも言われているほどの場所。自動車用のバッテリーリサイクル工場があったためか、周辺に住む子供たちが鉛中毒になっています。工場は移転したのですが、汚染は残っているとのこと。
・カブウェ(ザンビア)
ザンビアにあるカッパーベルト(Copperbelt)は世界的な銅の産地として知られており、カブウェはそのまわりにある町の一つ。鉱山の近くにある町の宿命か、このあたりの土壌汚染はひどく、4つの金属の値がWHOの勧告する値より高い状態。子供たちは鉱山から町へと流れる水路で入浴することもあり、金属片を体内に取り込んでしまって中毒状態にあるとか。
・ラ・オローヤ(ペルー)
ペルーのラ・オローヤ。1922年から採鉱の町として発展し、多くの有毒な物質が放出された結果、子供の99%の血中から許容量を超える鉛が検出された。また、二酸化硫黄もWHOの排出ガス基準を越えている。
・臨汾(中国)
「誰かに恨みがあるなら、臨汾の永久市民にさせてしまえばいい」とまで言われるらしい山西省臨汾。中国の石炭産業の重要拠点で、電力の2/3を支える都市だが、空気は中国一悪く、地元では気管支炎や肺炎、肺ガンが増えているとか。
・マイルースー(キルギス)
1946年から1968年のあいだに1万トン以上のウラニウム鉱石を処理した旧ソ連の工場があった。ここで作られたウランからソ連初の原子爆弾が作られたらしい。このあたりは中央アジアでも特に豊で人口密度も高い地域だが、今も196万立方メートルの廃棄物が残されており、ガン患者はキルギスの他地区に比べて2倍にもなるそうです。
・ノリリスク(ロシア)
シベリアの都市ノリリスクには1935年から強制収容所の奴隷を使ってコンビナートが作られ、ロシア最北の大都市として知られています。ここはロシアで一番汚染された場所だと考えられており、雪は黒く、空気は硫黄の味がするそうで、工場労働者の平均寿命はロシア全体の平均を10歳も下回っているらしい。
ノリリスクには世界有数のニッケル鉱山があって、半径60kmにわたって土壌が銅とニッケルに汚染されており、そのためか重度の呼吸器系統の病気にかかる子供が多いそうです。
・ラニペット(インド)
製革工場では製革のためにクロム酸塩や硫酸クロムが使われるのですが、ラニペットでは高レベルのクロムが見つかって使えなった井戸がいくつもあり、農業用地にも影響があるのではないかと考えられています。約150万トンの固形廃棄物を、2ヘクタールの土地に高さ3mから5mに積み上げて放置しているというのだから汚染があって当然ですね…。
・ルドナヤプリスタニとダリネゴルスク(ロシア)
ロシア極東の二つの都市の住民は急性鉛中毒に苦しめられている。最近の研究では、住宅庭園や道端から検出される鉛はUSEPA(米国環境保護庁)の定めた基準を越えているらしい。ここでも子供たちが犠牲になっていて、血中鉛濃度は最大許容値の8倍から20倍だそうです。
特に悪いものとして以上の10件が挙げられていますが、候補は全部で35件挙げられています。
昨年10月19日付山陽新聞のこの記事【1000万人が健康被害に悩む 世界の10大汚染地点を公表】が、要領よくまとまっていると思います。
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【ワシントン18日共同】環境汚染が最も深刻な世界の10地点を、国際的な環境保護団体ブラックスミス研究所(本部ニューヨーク)が選定し、18日公表した。これらの地域で計1000万人余りが健康被害に苦しんでいるという。
かつての鉱工業や軍事産業の後遺症と言えるケースがほとんどで、原発事故があったウクライナのチェルノブイリをはじめ、旧ソ連だけで5カ所が選ばれた。
同研究所は世界300以上の地点から、環境汚染の深刻さや影響範囲の大きさ、健康被害の程度などの観点から7年にわたって検討して選んだ。
それによると、旧ソ連では放射能汚染が続くチェルノブイリのほか、旧ソ連最初の原爆に使われたウランの精錬工場があるキルギスのマイルースー、製錬所から漏れる鉛中毒が問題になっている日本海沿岸のルドナヤ・プリスタニなど。
冷戦時代にサリンやVXガスなど化学兵器の生産基地だったロシアのジェルジンスクは男性の平均寿命が42歳、女性は47歳だという。
アジアでは、中国の石炭産業が集中する山西省の臨汾、皮革工場からの廃液で土壌や地下水の汚染が起きているインドのラニペットが挙がった。
アフリカではザンビアのカブウェで子どもの鉛中毒、南アメリカではペルーのラ・オロヤで鉱毒汚染が深刻化している。
同研究所は「多くはあまり知られておらず、政府からも見放されている場所だ。大部分は現在の技術で解決できる」と対応を求めている。
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中国山西省の臨汾のように、現在も汚染が進行中のところもあるようです。中国の環境汚染の深刻さについては、ここ数年よく耳にするようになりました。メディアの報道が正しいとすれば、そのほとんどが現在進行形のようです。
昨年発表のワースト10には、中国と同じ共産主義独裁国家だった旧ソ連から、5カ所もランクインしています。こういうお粗末な結果をみると、体制が崩壊して当然、もっと早く体制崩壊したほうがよかったのにと考えてしまいます。
中国もヘタをすると5年後10年後には、環境汚染のワーストランキングでトップシェアを占めているかもしれません。
そうはならないことを願っています。
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きのうは最もきれいな都市トップ25でしたが、今度は汚い都市です。汚いといっても、汚れているというのではなく、いろんな物質によって汚染されている都市のワースト10です。

・チェルノブイリ(ウクライナ)
1986年に起きた、世界最大の核災害によって汚染されました。GIGAZINEでも何度か取りあげましたが、この地域の汚染はそう簡単に解消されるものではなく、健康被害も甚大。1992年から2002年のあいだにロシア、ウクライナ、ベラルーシで甲状腺ガンと診断されたケースは4000件以上にもなります。
チェルノブイリは現在半径19マイル(約30km)が立ち入り禁止区域となっています。これらの改善には数千億ドルかかるという専門家の予測があり、ロシア、ウクライナ、ベラルーシにとっては重大な財政負担になると見られています。
・ゼルジンスク(ロシア)
冷戦期に旧ソ連の化学兵器(サリンやVXガスなど)を生産する重要な拠点となっていたゼルジンスクでは、1930年から1998年のあいだに30万トンもの化学廃棄物が不適当な処理をされていたそうです。その結果、ノヴゴロドなど大都市の飲料水の源泉にヒ素や水銀などが混じるようになり、ひどい健康被害を及ぼしました。このあたりの共同墓地には、40歳以下で亡くなった人々の墓が驚くほどあるそうです。
・バホス・デ・ハイナ(ドミニカ共和国)
「ドミニカのチェルノブイリ」とも言われているほどの場所。自動車用のバッテリーリサイクル工場があったためか、周辺に住む子供たちが鉛中毒になっています。工場は移転したのですが、汚染は残っているとのこと。
・カブウェ(ザンビア)
ザンビアにあるカッパーベルト(Copperbelt)は世界的な銅の産地として知られており、カブウェはそのまわりにある町の一つ。鉱山の近くにある町の宿命か、このあたりの土壌汚染はひどく、4つの金属の値がWHOの勧告する値より高い状態。子供たちは鉱山から町へと流れる水路で入浴することもあり、金属片を体内に取り込んでしまって中毒状態にあるとか。
・ラ・オローヤ(ペルー)
ペルーのラ・オローヤ。1922年から採鉱の町として発展し、多くの有毒な物質が放出された結果、子供の99%の血中から許容量を超える鉛が検出された。また、二酸化硫黄もWHOの排出ガス基準を越えている。
・臨汾(中国)
「誰かに恨みがあるなら、臨汾の永久市民にさせてしまえばいい」とまで言われるらしい山西省臨汾。中国の石炭産業の重要拠点で、電力の2/3を支える都市だが、空気は中国一悪く、地元では気管支炎や肺炎、肺ガンが増えているとか。
・マイルースー(キルギス)
1946年から1968年のあいだに1万トン以上のウラニウム鉱石を処理した旧ソ連の工場があった。ここで作られたウランからソ連初の原子爆弾が作られたらしい。このあたりは中央アジアでも特に豊で人口密度も高い地域だが、今も196万立方メートルの廃棄物が残されており、ガン患者はキルギスの他地区に比べて2倍にもなるそうです。
・ノリリスク(ロシア)
シベリアの都市ノリリスクには1935年から強制収容所の奴隷を使ってコンビナートが作られ、ロシア最北の大都市として知られています。ここはロシアで一番汚染された場所だと考えられており、雪は黒く、空気は硫黄の味がするそうで、工場労働者の平均寿命はロシア全体の平均を10歳も下回っているらしい。
ノリリスクには世界有数のニッケル鉱山があって、半径60kmにわたって土壌が銅とニッケルに汚染されており、そのためか重度の呼吸器系統の病気にかかる子供が多いそうです。
・ラニペット(インド)
製革工場では製革のためにクロム酸塩や硫酸クロムが使われるのですが、ラニペットでは高レベルのクロムが見つかって使えなった井戸がいくつもあり、農業用地にも影響があるのではないかと考えられています。約150万トンの固形廃棄物を、2ヘクタールの土地に高さ3mから5mに積み上げて放置しているというのだから汚染があって当然ですね…。
・ルドナヤプリスタニとダリネゴルスク(ロシア)
ロシア極東の二つの都市の住民は急性鉛中毒に苦しめられている。最近の研究では、住宅庭園や道端から検出される鉛はUSEPA(米国環境保護庁)の定めた基準を越えているらしい。ここでも子供たちが犠牲になっていて、血中鉛濃度は最大許容値の8倍から20倍だそうです。
特に悪いものとして以上の10件が挙げられていますが、候補は全部で35件挙げられています。

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【ワシントン18日共同】環境汚染が最も深刻な世界の10地点を、国際的な環境保護団体ブラックスミス研究所(本部ニューヨーク)が選定し、18日公表した。これらの地域で計1000万人余りが健康被害に苦しんでいるという。
かつての鉱工業や軍事産業の後遺症と言えるケースがほとんどで、原発事故があったウクライナのチェルノブイリをはじめ、旧ソ連だけで5カ所が選ばれた。
同研究所は世界300以上の地点から、環境汚染の深刻さや影響範囲の大きさ、健康被害の程度などの観点から7年にわたって検討して選んだ。
それによると、旧ソ連では放射能汚染が続くチェルノブイリのほか、旧ソ連最初の原爆に使われたウランの精錬工場があるキルギスのマイルースー、製錬所から漏れる鉛中毒が問題になっている日本海沿岸のルドナヤ・プリスタニなど。
冷戦時代にサリンやVXガスなど化学兵器の生産基地だったロシアのジェルジンスクは男性の平均寿命が42歳、女性は47歳だという。
アジアでは、中国の石炭産業が集中する山西省の臨汾、皮革工場からの廃液で土壌や地下水の汚染が起きているインドのラニペットが挙がった。
アフリカではザンビアのカブウェで子どもの鉛中毒、南アメリカではペルーのラ・オロヤで鉱毒汚染が深刻化している。
同研究所は「多くはあまり知られておらず、政府からも見放されている場所だ。大部分は現在の技術で解決できる」と対応を求めている。
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中国山西省の臨汾のように、現在も汚染が進行中のところもあるようです。中国の環境汚染の深刻さについては、ここ数年よく耳にするようになりました。メディアの報道が正しいとすれば、そのほとんどが現在進行形のようです。
昨年発表のワースト10には、中国と同じ共産主義独裁国家だった旧ソ連から、5カ所もランクインしています。こういうお粗末な結果をみると、体制が崩壊して当然、もっと早く体制崩壊したほうがよかったのにと考えてしまいます。
中国もヘタをすると5年後10年後には、環境汚染のワーストランキングでトップシェアを占めているかもしれません。
そうはならないことを願っています。
