二胡工房 光舜堂

二胡を愛する全ての人へ

二胡物語その7。

2012-03-31 10:40:53 | ■工房便り 総合 
バイオリン以前の、古い民族楽器の弦楽器を見ていると、どうも二つの系統があるような気がします。

一つはレバーブに代表されるような、胴の大きな物。

琵琶とかウード、マンドリンなどもそうですね。

一つは、長い棹に小さな胴のついている物。

二胡やキジャック、馬頭琴などですね。

三味線なんかもこの中に入ります。

この二つはどうも、発生が違うのではないでしょうか。

琵琶などは、明らかに、源流をたどれば中近東の楽器にたどりつきそうですし、

現状でもやはりその種類は中近東に多くみられます。

もう一つの、棹が長く胴の小さなものは、比較的東洋に多くみられます。

中国には、それら二つともが混在している感じですね。

唐の時代や宋、モンゴル帝国等、中国本土だけでなく、中近東まで文化的に繋がった時代を経て、両方共に中国にたどりついているのかもしれません。

中国琵琶の原型の楽器というのはあるのでしょうか?Pちゃん2号さん?

日本の琵琶はペルシャからという言い伝えがあります。

では二胡は?

現在の中国での、二胡に近い形の弦楽器の分布から言いますと。

雲南省、貴州省、四川省、広州そして山東省、などには二胡に近い形の古い楽器が残っているそうです。

勿論そのほかの地方にもあるにはあるのですが、中国の中での2次的な伝搬なようです。

胴の大きな弦楽器が、シルクロードを通って来た様子なのですが、胴の小さな楽器は、どうも海廻りではないかという気がします。

中国の北側には比較的少ないのです。

ラヴァナストロンという楽器が、紀元前3千年に(モヘンジョダロの文明の頃)スリランカで作られたとしたら、それは海を越えて、タイやベトナムを経て、竹のあるところを伝って、中国に来たとも考えられます。

と言いますのは、インド南部の人種、言語は、タイやカンボジア、ビルマ等の人種に非常に近いのだそうです。

サンスクリット系の言語を話す、アーリア系の民族がインドに入って来る前にインドに広がっていた人種と言われます。

アーリア人たちがインドに侵入して来て追いやられた民族が、タイやカンボジアなどに移動したということらしいです。

また、比較的にインドでも北側にいた人たちは、シルクロードに逃げたかもしれませんね。

当然、楽器も一緒に移動したでしょう。

地域が変われば、手に入る素材も変わります。その手に入る材料の中で一番良く目的を果たせるように、物つくりは考えます。

現在中国では、二胡の棹を入れる胴の穴を、焼き鏝で開けています。

あの涙的型の穴を開けるにはそれが適していると思います。

或いは金工やすりですかね。

日本に伝わってきて、私はその穴を、レーザーで開けています。

いずれ、中国でもそうなるはずです。精度という点では桁違いに精度が有りますから。

タイやカンボジアに行った人たちは、大きな蛇に出会いその皮の薄さと強靭さに驚きさっそくに楽器の振動板に使ったかもしれません。

北のシルクロードに行った人たちは、竹の代わりに、木の胴を作り始めたかもしれません。

このような事を考えていると、今の二胡の形になるまで、どれだけ多くの物作り達が、より良鳴ると言うことを求めて、どんな改造をしてきたのだかと、とても興味が魅かれます。

折角出会えた二胡という楽器が、私に昔の物作り達の考えと思いを伝えてきます。

当然、私たちが今お目にかからない、何処かの誰かが作った楽器というのも、あったはずです。

何かの理由で、それらは人々に使われなくなり、楽器としての役割を後の人達に伝えられない沢山の楽器もあったことでしょう。

そのなかで、二胡は少なくとも5000年前のラヴァナストロンから伝わってきていると思うと、今日本にある二胡達全てが、いとおしいものに感じます。

ホントかどうかはどうでも良いような気がします。

何百何千の物作り達が、後の楽器を作りつずけて来たというのが、私には大切なのです。

もうこれで完成しているという考えもあるでしょう。

伝統としての二胡という考え方もあるのだと思いますし、それを忠実に守って行こうという方向もあるかもしれません。

しかし、今の演奏家にしても、もっと、高音が出たら、もっと、雑音無くして、もっとボリュームをと、思っているのに違いないのです。

勿論私も思っています。今の二胡の音色を大切にしながら、あの揺れる音を活かした楽器作り。

物作りの端くれとして、折角出会った二胡、自分の全知識と、それを愛する人々の想いを更に形にしていけたら、こんな嬉しい人生は無いかもしれません。


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2 Comments

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ご指名なので (Pちゃん2号)
2012-04-01 00:37:46
今の洋梨形の中国琵琶はペルシャあたりから来たと言われています。それより前に中国で生まれた琵琶があったのですが、それは今の中阮や月琴のような丸い形をしていました。五弦の琵琶は、また系統が違うようです。で、今の中国琵琶はその3種類のいいとこ取りと言われています。
日本の琵琶は、中国から伝わったものですが、中国の方がどんどん改良したために、ずいぶん離れてしまいましたね。もっとも、中国でも、福建の南音というジャンルで使われている琵琶は古い形を残しています。
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Pちゃん2号さんへ (nishino)
2012-04-02 11:40:46
解説ありがとうございます。

やはり日本の琵琶は古い形なのですね。

とかく遠く離れたところに伝わった物の方が、古い形を残しやすいのかもしれません。
また日本人の民族性なのか、伝統というのを大切にしますからね。合理的な物より伝統を重んじる場合が多いですね。
意外と日本に今入っている二胡がこれから100年経つと伝統に忠実になるのかもしれません。中国ではもうジョージガオさんの煙突がたや、人工皮革などの研究がどんどんすすんでいますから。
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