鳴り、響き、音色。そして二胡の音その５

指板の無い楽器と言うのは、現存するものでは、非常に少ないようです。

大概の弦楽器が、指板に、弦を抑えて、音階を決めて行きます。

指板の無い事で、二胡の音の出方はかなり揺れます。

一定の音階を、維持出来ていないと言っても良いのかもしれません。

同じ音でも、強く押せば１音近く音が上がってしまいます。

要するに不安定な楽器と言えると思います。

しかし、そこが、二胡の独特の良さであると言えるでしょう。

二胡の音色、音、様々に有ります、

極端にいえば、メーカーそれぞれに違う音ですし、

木材の種類が違えば、音色が違います。

一つの楽器でこれほど、違う種類の材料があり得るというのが、

二胡の良さでもあります。

以前から、様々に西野二胡は今までの二胡の音ではないと言われています。

では、ジャーバンファンさんの二胡の音色と、張国良さんの音色が同じですか？

チェンミンさんの楽器の音色は、ジョージガオさんの人工皮革の音色は？

と私は良く聞きます。

そして、緩く張った弓、

これも二胡の特徴となる音を作りだす原因の一つです。

演奏者の感性が、かなり色濃く音そのものの作りに影響します。

ほんの少しの力加減で、音色が変わりますから。

これも二胡の良さでしょう。

しかし、二胡は音の小さいのが、一つの欠点とされています。

あの小さな胴で、あれだけの音が出るのですから、素晴らしい事には違いないのですが。

それにしても他の楽器と混ざると小さいのは、歴然とします。

ですからプロの演奏家の方は、音のボリュームと言うのを大変気にします。

ＰＡ　を使わないで演奏するのが一番であると考えている、演奏家は特にでしょう。

昨晩、ジョージガオさんの演奏会で、

ジョージガオさんが、西野二胡弾いてくれました。

折角の日本製の二胡だからと「荒城の月」

即興も交え、日本の良い音と言う感じもしました、

二胡の音もこのように聞こえるのか、

ジョージガオさんの演奏力の凄さでしょう。

私の気になったのは、２００人に近い、聴衆の後ろまで、音が通るのか？

西野二胡にそこまで、遠鳴りが効くのか、

その一点です。

ジョージガオさんの人工皮革の二胡の音のボリュームと言うのは、

いくら抑えたとはいっても、ピアノと一緒に演奏出来るくらいの威力があります。

しかしそこは、あの大きさの胴でしかありません。

流石に以前の、演奏会では、後ろの席では、聞きにくかったのも、ホントです。

遠鳴り、いかに大切かと、以前お会いした時にも話し合いました。

彼は中国のメーカーとも新式構造の開発やっています。

蛇皮は、その振動の安定度と言う点で、人工皮革にはかないません。

天然の物ですから、幾らひっぱったと言っても、限りがあり案す、

切れてしまうのです。

斑がないという点でも、人工皮革にはかなわないのです。

そこで、私の考えたのは、楽器全体を鳴らす、

棹まで鳴らせば、音のボリュームは、人工皮革にかなわなくとも、

遠くまで、音圧で届くだろう、

要するに、鳴る部分の面積を広げて、音の目減りを減らすということです。

音は、距離が延びるごことに、比例級数で、減っていきます。

特に、聴衆と言う音の吸収体が並んだ場合は。

西野二胡、昨日の結果は、問題が無く後ろの席まで音は通っていたようです。


と言う話は置いて置いて、

二胡の音色は、楽器の違い、演奏者の違い、その時の気分の違い、

それぞれに違うということが言えると思います。


もちろん、他の楽器でもそれは多少あります。

ピアノでも、有るそうです、私の知っている限り殆どの楽器に音色の違いがあります。

しかし、一つの楽器と言われるもので、ここまで、材料の変化の多い物はありません。

まだ新しい楽器だからなのか？

完成度が、まだ低いのか？

或いは、それら木の違いそれぞれを良しとする、楽器として存在するのが、

二胡そのものなのかもしれません。

また、楽器選びをも含んで、

貴方自身の、音色が作れるという点で、ホントに素晴らしい楽器と言えるかもしれません。

貴方自身の音色、作りましょう。


この項終わります。

西野和宏