二胡工房 光舜堂

二胡を愛する全ての人へ

駒は難しい。

2019-01-19 10:09:38 | 二胡の救急箱・補習講座

二胡の救急箱には、ほとんど駒の話を書いていません。

といいますのは書くことがありすぎて、書ききれないのも一つありますが、

例えば紫檀の駒といったとしても、紫檀の使う部分によっては、響きも音色も違うからです。

よくある老紅木の駒一つにしても、それぞれ微妙に音が違います。

当然ですよね。

木それぞれの場所によって硬さも重さも違うのですから、

そのうえ紫檀黒檀、老紅木、楓、あとは何だかわからない、黒く塗った駒。

それぞれに、音色は違います。

高さも大きさも、そして穴の開いている位置も違いますし。

その穴の大きさも違います。

駒一つ一つがもう違う働きを持つと考えてよいのではないかと思います。

ですから本当はご自身の二胡に合わせて選びたいですよね。

現在では、楽器屋さんがそばにない限り、通販で駒も買うのが普通ですね。

同じ紫檀といっても、楽器によっては合う合わない、ましてやきちっと調整されていなければ、

雑音になるものまでありかねません。

そこで私は、昔からの松節の駒を、二胡の救急箱ではお勧めしました。

これは、二胡の駒としては、伝統的ではあり、鳴りますし、

そして、同じ松節を、いくつか同じ楽器で交換しても、それほどの変化はないように感じました。

それが紫檀などですと、同じ形態でも、少しづつ違うのです。

楽器によっては相当変化します。

ですから、二胡の救急箱では駒の機能について書きはしましたが、

その樹種の違いによる音の変化に関しては書かなかったのです。というより書けなかったのです。

以前二胡姫さんから発売していただいた駒は、



このように、底部に切り込みを入れることで、多少の皮の伸びにも、皮になじんでくれる、

と考え、繰り返し、この切れ目の入れ方を研究して作ったものです。
(さっすがに自分の作った駒の話は本には載せませんでした

発送する前には一応、硬い皮、柔らい皮試したうえで送り出してました。

しかし、数名の方から、この駒は合わないなどの話もあり、

また、光舜堂にご来店の(いまだにありますが)お客様の中にも二胡姫さんで買ったが、

あまり合わなくて、使っていないなどというお話もありました。

二胡姫さんにお話があった方は、他の駒を送らせてもらって、それが気にいられたようです。

以前にも書きましたが、ご来店の方は、駒を皮に乗せて、再度調整させていただきました。
(これは私の勝手な思いですから、他の駒制作者には、それぞれの考えがあると思いますし、通販会社もこのことは責任ないです)

きちんと調整すると鳴るのですよ。。

駒を変えるだけではなく、きちっと調整すべきなのです。

なぜなら、楽器によって、皮の伸びもちがいますし、駒にしても高さも大きさも違うからです。

通販の場合の問題点はその楽器が調整してあるかしてないかにも関係します。

だいぶ前になりますが、楽器が鳴るというのはどういうことかと、ヴァイオリンも作り始めました。

その時から、駒に対する考え方が、だいぶ変わりました。

ヴァイオリンの駒は、あのヴァイオリンの表板にぴったりと密着させるように削り込みます。

駒は弦の振動を皮に伝える役目です。

弦の振動をもれなく皮に伝えられれば、良い駒と言えると思います。

そのためには、どんな形状と材質が良いのか?

それが、まだ確定していないのが、二胡の駒の現状でしょう。

ですから調整する人それぞれに、材質も違えば形も大きさも違いますね。

そして、底面の形状。

皮は皆さんご存知のように、平ではありません。

鱗で凸凹しています。

当然、駒は密着しません。

しかし、一つの駒を使い続けると、皮は駒より柔らかいですから、多少は駒の底面の形になじんできます。

そのなじんできたころに、駒はその本領を発揮します。

駒の木もなじみ、皮もなじんできます。

皮の工芸で、木型で皮を変形させて形作っていくのと同じことです。

ですから、私は、新しい駒は、せめて一か月くらいは弾き込まないと、その駒の本当の音にならないのではないかと考えています。

商品をただ作って納品するのではなく、形作ってからも、その一つ一つを楽器に装着して鳴らしてみて、

更に鳴るにはどうしたら良いか多少削り直したりして、

いかに調整しない状態で買って使う皆さんが良い状態でお使いいただけるかを追求しながら作ってはいたのです。


しかし、やはり駒へ一台一台に合わせるほうが、より、良いと考えました。

それには、本当は駒を置いてから、千斤を巻き直すのが本来の調整であると気が付きまして、

販売は取りやめさせていただきました。

取りやめてからも、お友達の駒が良かったからと、二胡姫さんに随分お問い合わせがあり、

なんで作ってくれないのと、二胡姫さんにも言われましたが、

本当にきちんとした調整で駒を合わせると、すべての二胡は本当に良い音色で鳴るというのがわかって以来、

単なる駒の販売ということに、気持ちが向かなくなってしまったのです。

もしかしたらきちんと調整できず、なんだか合わない駒だと、しまい込まれるより、

せっかくだから購入した方に、喜んでもらいたい、というのはこれは作る人間みな思うところです。

もちろんその後、ご来店の方や、お問い合わせの方には、より合うように削り込んだり、

樹種を変えたりさせていただいています。

あるいは、北京系にはこの駒でなく、あるいは緩んでしまっ皮には、と説明書きはしてあったとはいえ

それに向かない彪駒などお買い上げなさった方には、松富士と交換させていただいたりしています。(もちろん無料です)

いまだに、二胡姫さんにも黒彪駒や、松富士駒のお問い合わせなどもあるようですが、

出来たら、最近は福岡や名古屋近くにもそして栃木にも駒を作っている人や調整をしている人がいるようですので

直接、楽器を持って行って、調整してもらいながら駒を合わせるというのをお勧めいたします。

そうそう、弓毛の張替えを始めている人もいるようです。画像を見る限り良い状態に張られていると思います。

本当はヴァイオリンほどの数ではなくとも、(ヴァイオリンは各県庁所在地にはいらっしゃるようです)

せめて、電車で行かれるくらいの所に一人づつ調整できる人がいると良いのですが。

もちろん、通販での駒の販売というのを全く否定しているわけではありません。

楽器を調整するという考え方が、二胡愛好家すべてに定着するまでは、通販も有力な一つの方法ではあります。

何しろお近くに駒を販売しているところというのは大変に、少ないですから。

皆さんの楽器に合う物もあるでしょうし、反対に合わない物もあるかもしれません。

二胡に対応してくれるお店の少ない中、より良い音を求めるのが二胡弾きさんです、

すくなくとも、新しい響きに出会えるという点で、通販も役割は果たしているとは思います。

駒は、高さも大切です。新品の楽器などには、比較的合う物も多いように、私には感じます。

ただし底面の形は新しい楽器には、平らな物をお勧めします。

しかし弾き込んでくると皮が変化しますから、それに合わせるというのは、大切だと思っています。

しかし、そのことなどが、はっきり販売するほうも説明しきれず、買うほうもそれがわからず、

ただ購入して合う駒を見つけ、というのが現状だと思うのです。

彪駒や黒彪駒などお持ちの方で、音色は好きだけれど、なんだかしっくりこないという方、

以前にも書きましたが一度ご来店ください。

時々、静岡や金沢また今度の3月31日には、尼崎の園田のアワーズでも、

二胡の救急箱の補修講座(無料)を開きますし、午後は調整も致します。

その時にご来店いただければ、駒の交換もします。











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4 Comments

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駒もコントロールマットも… (神戸の光舜堂ファン)
2019-01-21 20:07:01
いつもブログを楽しみにしています。二胡の救急箱のページを開きながら、ブログを読み、ナットクナットク…と思うことばかりです。
駒は調整をしていただいて鳴るようになる! それを実感しています。
一年ほど前に初めて修理調整していただき、駒もマットも千斤も全て交換していただき、見違えるように響くようになっています。駒はそれまでも自分で色々変えてみましたが、しっくり来ず…調整していただき、ホントに驚きました。マットも、材質、厚さで音色が変わりますよね。
3月の補習、楽しみにしています。午後の調整もしていただけるとのこと、楽しみです。
二胡友が数名、二胡の救急箱を購入しました。3月の補習も興味を持たれていますが、そんなにたくさんの人数でも参加できますでしょうか?
詳細告知を楽しみに待っております。
返信する
(神戸の光舜堂ファン)さん (nisino)
2019-01-22 13:00:37
こちらこそ、ありがとうございます。
信頼していただけるからこそ、十分に力を発揮できるのです。二胡の救急箱もお役に立っているようでありがたいことです。第二版先日発売になりましたが、今回は宇sくないのでもう半分なくなりました、第三版どうしようか、今悩んでいます
返信する
駒の底無しの魅力 (アオメ)
2019-01-23 20:00:29
最近、二胡に加えて西洋の弦楽器を再開したものです。

専門の方とお話しする機会が増えて、弦楽器がいかに繊細で、駒始め調整、フィッティングがいかに大事か、身に染みて感じています。すごい名演奏家が来日の度に調整を依頼するような工房でも、依頼した人の感性によっては、ひどい調整をされたと言われるみたいです…。相性があるのですね。

弦楽器製作においても、西洋の楽器をお手本に切磋琢磨した結果、名工と呼ばれていて、引退された今も評価はとどまるところを知らない方もいらっしゃいます。日本はなんにおいてもレベルが高いんですが…どこも存続が難しいそうです。

さて、二胡を始めたばかりの時は、何もかもがちんぷんかんぷんで、目についたものとにかく手当たり次第試すみたいな感じでした。なので、通販という形で広められたのは過渡期に必要だったのでは…と思います。

やはり大切に調整、修理をして長く使って楽器と一緒に育ちたいものです。

多分、光舜堂さんは西洋の弦楽器の基準値で見られているのではないかと察します。中国のやり方も正解だと思います。ですが、日本は文化、風土として西洋のやり方のが分かりやすいんじゃないかなあと思います。

駒って思っている以上に奥が深いですね、そして深みにはまると、お金もかかりますね…。という、つぶやきでした。

ここまで読んでくださってありがとうございました。
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アオメさん (nisino)
2019-01-24 11:10:21
そうですね、安いものもありますが、20個ともなるとそこそこ、お金がかかりますね、すみません。
作る側からいうと、あんなちいさなものでも、意外と時間も手間もかかるのです。同じ紫檀でもよく鳴るものと鳴らないものもありますし、せっかく作ったものを廃棄するものもかなりあります。自分でもまだなんだかわからないことがたくさんあります。
ヴァイオリンの駒も同じように見えて、安いものでも3000円くらい、高いものなら2万くらいするものもありました。それが合わないときには泣きますね。コメントのお返事長くなりそうなので一項上げさせていただきました。
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