キツネノマド

松岡永子
趣味の物書き
(趣味とはなんであるか語ると長くなるので、それはあらためて)

星菫石の作り方

2010-04-10 05:42:02 | 掌編
円筒形のうつわに少しだけ水を張る。黄昏時。闇を集めはじめる一番星の明かりを拾う。これが核になる。
糸の先にできるだけ正円に近く結び目をつくる。そこに核を移す。
眠たげな獣の眼の形をした二日月が沈むのを待って糸を窓辺に吊るし、闇に浸す。
星々がおしゃべりに倦み夜が疲れ傾くころ。少し青ざめた闇が核に引かれて近づいてくる。朝からの逃げ場所を探している闇は、互いに寄りそい凝りかたまって結晶をつくってゆく。それを三夜くりかえすと目に見えて大きくなる。そこまで成長すれば流れ星を吸収することも可能だ。結晶は東空が白む直前がもっとも太る。

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