「ほら、おみやげ」
照明を落とした高層マンションの一室。ボクはライトアップされた水槽に放たれた。
「わあ、きれーい。透明でちょっとだけ白くて、まん中にピンクの星がある。…クラゲさん、だよね?」
少女が目をきらきらさせて言った。できるだけ光るよう、ボクは精一杯、裾をひらひらさせた。
「そうだよ、ゆみは何でもよく知ってるね。」
にこにこしていたパパが真面目な顔になって言った。
「パパ、出張で明日と明後日帰れなくなったんだ。家政婦さんには来てもらうけど…」
「うん、大丈夫だよ。ゆみ、もう年長さんだもん」
ボクから目を離さず、ゆみちゃんは言う。
「そう、じゃあよく頼んでおくから」
ほっとしたように言ってパパはシャワーを浴びにいった。ゆみちゃんが水槽のガラスを突っつく。
「きれいだね、ほんと。」
ボクはできるだけきれいに見えるよう、ゆらゆら揺れた。ごめんね。ボク、ほんとは偽物なんだ。〈癒し系玩具〉なんだ。ほんと、ごめんね。
でも本当は、ゆみちゃんはみんな知ってる。だから、クラゲは何を食べるの、とか、ママはいつ帰ってくるの、とかをパパに訊いたりしない。
「あなた、ママが着ていったスカートにそっくりだよ、クラゲさん」
「500文字の心臓」投稿作 一部訂正
照明を落とした高層マンションの一室。ボクはライトアップされた水槽に放たれた。
「わあ、きれーい。透明でちょっとだけ白くて、まん中にピンクの星がある。…クラゲさん、だよね?」
少女が目をきらきらさせて言った。できるだけ光るよう、ボクは精一杯、裾をひらひらさせた。
「そうだよ、ゆみは何でもよく知ってるね。」
にこにこしていたパパが真面目な顔になって言った。
「パパ、出張で明日と明後日帰れなくなったんだ。家政婦さんには来てもらうけど…」
「うん、大丈夫だよ。ゆみ、もう年長さんだもん」
ボクから目を離さず、ゆみちゃんは言う。
「そう、じゃあよく頼んでおくから」
ほっとしたように言ってパパはシャワーを浴びにいった。ゆみちゃんが水槽のガラスを突っつく。
「きれいだね、ほんと。」
ボクはできるだけきれいに見えるよう、ゆらゆら揺れた。ごめんね。ボク、ほんとは偽物なんだ。〈癒し系玩具〉なんだ。ほんと、ごめんね。
でも本当は、ゆみちゃんはみんな知ってる。だから、クラゲは何を食べるの、とか、ママはいつ帰ってくるの、とかをパパに訊いたりしない。
「あなた、ママが着ていったスカートにそっくりだよ、クラゲさん」
「500文字の心臓」投稿作 一部訂正
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