早仕舞いした日の夜更け、お月さまは二丁目のカフェでお茶してるんだって。見にいこうよ――と言ったのは、もちろんきみを誘うための口実。そんなの都市伝説さ。
だいたいお月さまってやつはいけすかない。気取り屋で気まぐれ。小指を立てて紅茶を飲むんだ。ぼくが豆板を食べてたら
「フン。駄菓子は口に合わないんだが。ま、たまにはいいか」
なんていばって言いながら、勝手につまみあげて頬ばりやがった。ずいぶんこどもの頃のことだけど。
なんてことを思っていたから、テラス席にお月さまを見つけたときにはびっくりした。
うんと細身になったからだにぴったりのストライプ柄のスーツ。気障に足を組みシガレットをふかしてた。
彼女がおずおずと
「あの。サインいただけませんか」
と頼んだら、とがった顎に手をやりながら
「うーん、ボク、スターじゃないから、そういうのはなしにしてるんだよね」
と言って、気取った横顔を見せた。
それを見た彼女が頬を染めたんで、ずいぶんいやな気がした。
「じゃ。明日もまだ早いんで」
と軽く手を挙げて、ステッキを振り振りぼくの脇を通り抜け……るときに思いっきり足を踏んだ。
(このボクが、わざわざ、チャンスを作ってやったんだからね)
よけいなお世話だ! と怒鳴れなかったのが、ちょっとくやしい。
だいたいお月さまってやつはいけすかない。気取り屋で気まぐれ。小指を立てて紅茶を飲むんだ。ぼくが豆板を食べてたら
「フン。駄菓子は口に合わないんだが。ま、たまにはいいか」
なんていばって言いながら、勝手につまみあげて頬ばりやがった。ずいぶんこどもの頃のことだけど。
なんてことを思っていたから、テラス席にお月さまを見つけたときにはびっくりした。
うんと細身になったからだにぴったりのストライプ柄のスーツ。気障に足を組みシガレットをふかしてた。
彼女がおずおずと
「あの。サインいただけませんか」
と頼んだら、とがった顎に手をやりながら
「うーん、ボク、スターじゃないから、そういうのはなしにしてるんだよね」
と言って、気取った横顔を見せた。
それを見た彼女が頬を染めたんで、ずいぶんいやな気がした。
「じゃ。明日もまだ早いんで」
と軽く手を挙げて、ステッキを振り振りぼくの脇を通り抜け……るときに思いっきり足を踏んだ。
(このボクが、わざわざ、チャンスを作ってやったんだからね)
よけいなお世話だ! と怒鳴れなかったのが、ちょっとくやしい。
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