和名 輝ける太陽の子(カガヤケルタイヨウノコ)
種属 ホモサピエンスの幼態
生態 山に棲息するものは虫取り網と虫籠、海に棲息するものは水中めがねを持つ。
小麦色の肌をし戸外を走りまわる。麦わら帽に白シャツ、半ズボンの古体をとどめたものが
典型として人気があるが稀少種である。
生後6〜10数歳。冬季には夏季に吸収した日光をエネルギーに換え、「風の子」となる。
(「 . . . 本文を読む
ぼくの部屋。凍えた夜。
石畳の床に小鳥が落ちていた。冷たい小さな塊。掌にのせると石よりは軽い。指先にかすかに感じる、どこか遠い遠い底のほうで打つ鼓動。両手でそっと包んでみる。ぼくの手では小鳥を押し潰してしまうにちがいないけれど。
それでも掌はあたたかかったらしい。手の中に命が近づいてくるのがわかった。思わず力がはいる。小鳥のからだはやわらかくなっていた。ぼくの手では小鳥を押し潰してしまう。両 . . . 本文を読む
扉に手を掛ける。ノブはない。鍵もかかってはいない。力を込める。力一杯押す。それだけの手ごたえがあって、扉は、古い木がきしむ音をたててゆっくりと開く。僕がちょうど通れるだけの隙間が開く。向こう側に拡がっている闇に背後から光が射す。一本の道のように、迎えの絨毯のように。閾を踏み越える。時間が淀んでいる。そのことでそこが小さな部屋だと知る。壁にそっと触れてみる。黒い磨かれていない石の表面はぬれていた。 . . . 本文を読む
もう戻れない。
夕暮れの道を
どこまでも夕暮れの道を
ずんずん歩いていく。
どこまでも夕暮れの森を
どこまでも夕暮れの浜辺を
どこまでも夕暮れの砂漠を
どこまでも夕暮れの廃墟を
どこまでも夕暮れのジャングルを
どこまでも夕暮れのビル街を
どこまでも夕暮れの月面を
どこまでも夕暮れの吊橋を
ぼくはぼくを置去りにしてずんずん歩いてゆく。
置去りにされたぼくは
いまごろいつもの店で甘い酒に酔っているの . . . 本文を読む