日のあるうちに着くのは無理だと言うのを振り切ってきたことを後悔し始めていた。
藪をかき分けたとたん、すとんと音をたてるように夕日が沈んだ。星明かりを歩く。分かれ道の石仏に見覚えがある気がする。同じ所をぐるぐる歩いてるようだ。
何度めかの分かれ道、男が腰を下ろしていた。
「あの…どっちに行けばいいんでしょう。」
男はちらりとこちらを見た。独り言のように言う。
「酔っぱらって一晩中歩きまわり朝 . . . 本文を読む
それは微かな地響きからはじまった。
「近づいてきます。時速20キロ」
「首都をめざしているものと思われます」
地球防衛軍は活気づいていた。防衛軍が一応設置されて以来、はじめての活躍なのだ。
人々も異常に気づきはじめていた。地響きが足音だとはっきりし、皆が不安に右往左往している時、それは人々の前に姿を現した。
「うーむ。なんというか…」
「少し…ダイエットの必要がありますかね」
そんな素直な . . . 本文を読む
コンビニへの道を歩いていた。ふたつめの角で象に会った。
「コンニチハ」
いつものように軽く会釈して通り過ぎようとすると、今日の象は声をかけてきた。
「あのー、お願いがあるんですけど…」
大きな耳をやたらバサバサする。乱れた髪をなでつけながら聞き返した。
「なんでしょう」
象は体のわりに小さな目をショボショボしながら言いにくそうに言った。
「えーと、あのー。僕を捨てていただけないでしょうか」 . . . 本文を読む
花を摘む。
薄い花弁が細い指先で揺れる。咲きつづける儚い花はあしたになれば散ってしまうから。花は摘まれるために首をさしのべている。
たなびく春霞。遠近に鈍い響き。
行軍する足音が近づいてくる。少女はふりむかない。靴音はそのまま遠ざかっていく。また、別の方角から足音。くりかえしくりかえし。来ては去る。この山は兵士でいっぱいだからと名づけられた山。峰も谷も軍靴の音で満ちている。けれど山の主は兵 . . . 本文を読む