キツネノマド

松岡永子
趣味の物書き
(趣味とはなんであるか語ると長くなるので、それはあらためて)

主役とは何か 『山月記』

2014-07-12 06:04:28 | 創作でないもの
前にアップしたのと同じ、昔同人誌に書いたもの。文字遣いなど一部訂正しているが基本的にそのまま。(袁○(イに参)は出なかった)    中島敦の『山月記』はよく教科書に載っている。  都合がいいから、だろう。適当な短さの小説だし、難しい漢字がたくさん出てくるから試験問題を作りやすいし、なによりわかりやすいし。なぜ自分が虎になったのかを分析的に告白する、という形で語られるから、「なにかわけのわからな . . . 本文を読む

秋の気配

2014-07-05 06:09:56 | 掌編
落ち葉で朱く染まった石段。乾いた石ののぞいているところを選んで座る。 ふたつ後ろの段に気配が静かに腰をおろす。   さびしい。 この気配は、鬼だ。 落ち葉が音を立てる。甲高い声で鳥が渡っていく。わたしは気づかないふりをして午後の木洩れ日をみあげる。気づかれてはならない、わたしが気づいたことに。彼は鬼なのだ。 わたしが気づいてはならない。 彼が鬼なのだ。 . . . 本文を読む