goo blog サービス終了のお知らせ 

気まぐれ翻訳帖

ネットでみつけた興味深い文章を翻訳、紹介します。内容はメディア、ジャーナリズム、政治、経済、ユーモアエッセイなど。

現代の言論抑圧

2025年03月13日 | メディア、ジャーナリズム

今回はごく短い文章です。
内容的には、以前の
[現代の情報統制] から [前回の原文・訳文に関する訳注・補足・余談など・4]
までの回の続きみたいなものです。

その[前回の原文・訳文に関する訳注・補足・余談など・4]において、以下のように
書きました。

「現代世界はこのようにひそかに情報統制がおこなわれているだけではありません。情報
統制、情報操作、印象操作、等々がおこなわれていることを明らかにしようとする個人や
組織は、アメリカ政府からやはりひそかな攻撃を受けます。アサンジ氏の例のように。
ロシアや中国のようにあからさまに弾圧はしません。しかし、遠回しにイヤガラセや妨害
工作をしかけられます。」

また、調査報道サイト『コンソーシャム・ニュース』が同サイトに対する妨害工作と
見られる動きについてふれた文章にも言及しました。

今回の文章は、その『コンソーシャム・ニュース』が、これまでこうむってきた妨害
工作に類する動き、および、それらに対する自らの対応を短くふり返ったものです。

原文タイトルは
The War on Consortium News
(『コンソーシャム・ニュース』に対する戦争)

書き手は Joe Lauria(ジョー・ラウリア)氏。
(「ジョー・ラウリーア」、「ジョー・ローリア」とする表記もあり)
同氏はこの『コンソーシャム・ニュース』の編集責任者とのこと。

原文サイトは
https://consortiumnews.com/2024/12/04/the-war-on-consortium-news/

(なお、本訳文では、原文サイトにある画像やリンクは省略させていただきました)

-----------------------------------------------------------------

The War on Consortium News
『コンソーシャム・ニュース』に対する戦争



2024年12月4日

ペイパルから『グローバル・ニュース』、名無しのハッカーに至るまで、一般人が
本『コンソーシャム・ニュース』に接することを望まない勢力が存在する


Joe Lauria(ジョー・ラウリア)


現代はニュースに対する検閲と抑圧が拡大しつつあり、本『コンソーシャム・ニュース』
を片隅に追いやる、あるいは、口を封じようとする動きが確実に数多く存在する。これは
決して誇張ではない。

2016年11月
8年前の感謝祭の日、『プロップオアノット』と名乗るあやしげな組織が、本『コンソーシャム
・ニュース』を、ロシア政府のプロパガンダを広めているサイトの一つとして非難し、
ブラックリスト入りにした。そして、『ワシントン・ポスト』紙は、職業的倫理にそむき、
この『プロップオアノット』の名無しの人間たちの見解を国内版ウェブサイトで紹介して、
われわれおよび他のいくつかのメディアを中傷した ----- 同紙自身はまったくその根拠を
あげず、また、しかるべき精査もおこなわずに。

2020年10月
カナダの「電子諜報機関」である『通信安全保証部』(CSE)は、同国で2番目に視聴者の
多い民間テレビ局『グローバル・ニュース』の報道において、われわれがカナダの政治家
に向けたロシア政府によるネット攻撃の先鋒をつとめていると不当に非難した。われわれは
弁護士の助言にしたがって、『グローバル・ニュース』を名誉毀損の廉で米連邦裁判所に
提訴した。しかし、この訴えは管轄権を理由に却下された。

2021年2月
ユーチューブが本サイトの動画「CN ライブ !」の1回分を削除し、損害をあたえた。
その回の分は1週間ほど放映できないままであった。削除の理由は、ゲストである
グレッグ・パラスト氏のドキュメンタリーの中の1分ほどのシーンをあやまって解釈した
ためである。そのシーンでは、トランプ氏の支持者たちが2020年の選挙でゴマカシが
あったと主張していた。実際には、このドキュメンタリーのテーマは、ジョージア州の
共和党員による「ヴォーター・サプレッション(投票者抑圧・投票抑制)」(訳注・1)を
めぐるものであった。

2022年3月
本『コンソーシャム・ニュース』はウクライナ国内の紛争に対するロシアの干渉について
報道を始めたが、その3ヶ月後、メディア信頼性評価機関の『ニュースガード』は、
われわれを批判する文をかかげた。われわれが、2014年のウクライナ政変(ユーロ・
マイダン革命)および同国内のネオ・ナチズムの役割に関する報道の中で、「虚偽コンテンツ」
を書いたとのことであった。そして、その後、同機関は本『コンソーシャム・ニュース』
に「赤旗」のアイコンを付与し、購読者に「用心して閲覧する」ことを推奨した。

2022年5月
ペイパル社は本『コンソーシャム・ニュース』に対し、同社の送金システムの利用を永続的に
禁じた。そのため、われわれの寄付金受け取りが困難になった。われわれは理由を再三
問い合わせたが、同社は一貫して回答を拒否している。その「利用規約」では、「誤情報」
を拡散することを禁じている。そこで、情報こそがわれわれの唯一の取り扱い品目なので
あるから、ウクライナをめぐるヒステリックな雰囲気を考慮すると、同社はわれわれの
ウクライナ報道に不満があったということが論理的な推測として成り立つであろう。

2022年6月
調査報道サイトの『グレイゾーン』は漏洩した複数の電子メールに言及し、以下の事実を
明らかにしている。英外務省のある高官がニーナ・ヤンコヴィッチ氏に接触を図った。
ヤンコヴィッチ氏は当時、バイデン政権下で米国土安全保障省の「偽情報ガバナンス委員会」
(現在は解散)のトップであった。当該のメールの一つで、その高官は『コンソーシャム
・ニュース』の編集者を調べてみるつもりだと述べていた。これに対するヤンコヴィッチ氏
の返信は、こちらでも『コンソーシャム・ニュース』について「いろいろ情報を集めて
みます」というものだった。

ヤンコヴィッチ氏が誰に情報を求めたか ----- 政府内部の人間かそれとも外部の人間かは
問わず ----- は、わかっていない。が、同氏はその高官に対して、『コンソーシャム・ニュース』
が「資金提供」(これはおそらくロシアなどの外国政府からのそれを意味しているのであろう)
を受けているとは思わない、たんに彼らは「役に立つ馬鹿者ども」(訳注・2)にすぎない
であろう、と返信したとされる。

2022年6月
ツイッター社は、前期の経営陣の下、『コンソーシャム・ニュース』のコラムニスト、
パトリック・ロレンスの書き込みを恒久的に禁じた。同年、これまた同じくスコット・
リッターの書き込みも停止した。もっとも、リッターは新しい経営陣によるXによって再開
できた。が、ロレンスの場合は、説明がないまま、いまだに利用停止は継続している。
(『コンソーシャム・ニュース』は現在、本サイトの動画「CN ライブ !」の制作総責任者
であるキャシー・ヴォーガンに対するXの利用停止をめぐり上訴中である。)

2023年10月
『コンソーシャム・ニュース』は現在、名誉毀損の廉で『ニュースガード』を、米国憲法
修正第1条(「言論の自由」条項)に違反した廉でアメリカ政府を訴えている。

2024年10月
本『コンソーシャム・ニュース』のサイト・サービス・プロバイダー会社によれば、本
サイトは不正侵入を受け、工作をしかけられた。コンテンツのすべてが削除され、スタッフ
全員がサイトへの接触を阻止された。また、3日の間はスタートアップ企業向けの
ランディング・ページ(訳注・3)に置き換えられた。

2024年12月
ニューヨーク州南部地区の連邦裁判所において、被告側の『ニュースガード』とアメリカ
政府による訴訟却下の申し立てに関し、まもなく口頭弁論が始まる予定である。

以上、ここまでのところで、ある一定の型が浮かび上がってくるように思われる。すなわち、
われわれが一般の人々にさまざまなニュースに関して別の視点 ----- 主流派メディアとは
異なった、いかなる企業、財団法人、政府機関などからの影響とも無縁の視点 ----- を紹介
することを妨害しようとする明確な試みということである。

しかし、われわれは活動を休止するつもりはない。であるから、たとえ彼らがどんな攻撃を
しかけてこようと、われわれが今後も活動を続けられるよう、皆様に寛大なご支援を
たまわりたい。ただ今、本『コンソーシャム・ニュース』は今冬の募金運動を展開しています。


-----------------------------------------------------------------

[訳注・補足・余談など]

[訳注]・1
「ヴォーター・サプレッション(投票者抑圧・投票抑制)」(原語は voter suppression)は、
選挙において特定の人々の投票意欲を失わせたり妨害したりする工作のこと。
たとえば、
・黒人住民が多い地域などで投票所や投票機を削減し、投票当日に長蛇の列ができるように
仕向け、投票をあきらめさせる、
・投票当日に第三者の名をかたって「当該候補者はすでに当選確実」などと嘘の電話を入れ、
投票に出向かないよう誘導する、
等々の卑劣な戦術です。


[訳注]・2
ここの原文の表現である useful idiots は英語のほぼ定番的な言い回しです。
オンライン辞書の『英辞郎』には、訳語例として
「〈軽蔑的〉役に立つばか、ばかだが役立つ人」
と載せ、注でその意味を
「策略家などから見て『尊敬に値しないが、利用できる人間』。行動力・影響力を持っていて、
政治上の作戦の道具として利用できる相手。批判的思考力を持たず、自分が利用されている
ことに気付かないような人」
と丁寧に説明しています。


[訳注]・3
「ランディング・ページ」とは、「ネット広告や検索結果を見たユーザーがアクセスして
きた際、最初に閲覧するページ」のこと。



なお、ケアレス・ミスやこちらの知識不足などによる誤訳等がありましたら、遠慮なく
ご指摘ください。
(今回の訳出にあたっては、機械翻訳やAIなどはいっさい使用しておりません)


[補足]

第2段落で述べられている『プロップオアノット』、『ワシントン・ポスト』紙の件については、
検索すると、以下のような興味深い記事が見つかりましたので、全文を引用しておきます。
オンライン・マガジンの『GIGAZINE』(ギガジン)に載った文章です。

--------------------------------------------------

2016年11月29日 21時00分メモ
ワシントン・ポストが「ウソを拡散するニュースサイト」として200以上を列挙した
ブラックリスト記事に批判が集まる

-----
アメリカで発行部数第5位の新聞であるワシントン・ポストが「偽ニュースを拡散させる
ロシアのプロパガンダサイト」として200以上のウェブサイトの名を連ねたブラックリスト
について報じたのですが、ブラックリストを作成した"専門家グループ"「PropOrNot」が
信憑性に欠けるウェブサイトであるとして、複数のニュースサイトが「ワシントン・ポスト
のブラックリスト記事は恥ずべきものである」と批判しています。

2016年11月24日にワシントン・ポストは「ロシアのプロパガンダの努力が大統領選挙中に
『偽ニュース』の拡散を助けた、と専門家らが主張」という記事を掲載しました。その
内容は大統領選挙中に複数のアメリカのニュースサイトがロシアのプロパガンダキャンペーン
の影響を受け、選挙の結果を操作する「偽ニュース」が大量に拡散されたという研究家
グループの主張を取り上げたもの。

独立した専門家チームの報告によると「ロシア人がアメリカの民主主義を攻撃するため、
既存のアメリカのニュースサイトやSNSを利用した」とされており、偽のニュースを拡散
させたニュースサイトのリストにはWikiLeaksなどの200以上のウェブサイトが載っています。
このリストを作成したのはPropOrNotと呼ばれる2016年に開設したウェブサイトで、
ワシントン・ポストはPropOrNotについて「外交政策、軍事的、技術的背景を持つ無党派の
研究者集団」と説明しています。一方で、どこの団体に所属する何という研究者グループ
であるかは伏せられていることや、リストにウェブサイトを掲載する基準が不明瞭であること
などから、ワシントン・ポストは「信憑性に欠ける情報を引用している」として批判を受けて
いるわけです。

The InterceptはPropOrNotに連絡をとり多数の質問を投げかけたところ、「私たちは多くの
コメント要請を受けているところですが、今日中にあなたに返事できると思います =)」と
いう顔文字の入った返信を受け取ったとのこと。その時にPropOrNotは「私たちは30人以上で
組織されたチームで、誰が関係しているかなどの質問には答えられません」と述べましたが、
その後、The Interceptに返答はなかったそうです。

--------------------------------------------------


[余談]

上の[補足]でふれた、第2段落で述べられている『プロップオアノット』、『ワシントン・ポスト』
紙の件について、自分が思ったことを書いておきます。

本ブログの以前の回『現代の情報統制』では、次のような文章がありました。

「CIA内のあるチームの長であったジョン・ストックウェル氏はある動画で、CIAがどのように
世界中のメディアに入り込んだか、どのようににせの放送局や通信社を立ち上げ、アメリカ
政府の敵を悪者扱いすべく世界の世論を誘導したり、あやまった情報を広めたりしたかに
ついて語っている。」

そして、この文章の回とその後の回の[前回の原文・訳文に関する訳注・補足・余談など・4]
までに訳出した文章の内容その他あれこれを考えあわせると、以下のような推測が成り立つと
思います。

すなわち、アメリカ政府(狭い意味で言えば、CIAなどの諜報機関)が、不都合な情報を伝える
この『コンソーシャム・ニュース』などの非主流派メディアに対し、「誹謗中傷作戦」・
「イメージダウン作戦」として、このような記事を『ワシントン・ポスト』紙に書かせたのでは
ないか、と。

そして、問題の『プロップオアノット』もCIAのフロント組織・偽装団体である可能性が十分
考えられます。

『ワシントン・ポスト』紙あるいは『ニューヨーク・タイムズ』紙などのいわゆる一流紙に
直接「根拠のない誹謗中傷」的記事を書かせるのはむずかしいので、『プロップオアノット』の
報道を引用するという形で一般人に伝える。こうすれば、『ワシントン・ポスト』紙などが
100パーセントの信用失墜をこうむることはないわけです。
そして、次には、やはりCIAの協力者である政治評論家やコメンテーターが、ニュース解説
などで「これはワシントン・ポスト紙が報じたことである」と喧伝し、あたかも『ワシントン
・ポスト』紙自身が綿密な調査と適正な手続きを経てこう報じたかのように一般公衆に錯覚
させるのです。『ワシントン・ポスト』紙はたんに引用したにすぎないのに。
卑劣なやり方ですが、こういう手口は昔からあったことでしょう。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« フェイスブックは元CIA職員だ... | トップ | 以前の回の文章の[補足]や[余... »

コメントを投稿

サービス終了に伴い、10月1日にコメント投稿機能を終了させていただく予定です。

メディア、ジャーナリズム」カテゴリの最新記事