前回の文章に関する「訳注・補足・余談など」・2
■[余談・3]
中ほどの段落の文章、
「 ~ イスラエルやウクライナへのアメリカの支援には、ユダヤ人やウクライナ
国民を手助けしようという動機がいくらかでも含まれていると考えるのは大きな
あやまりと言えよう。それはプロパガンダにすぎない。実際にはアメリカの国益の
追求なのである。それは、スエズ運河をアメリカの船舶がつねに自由に行き来できる
ようにしておくため、あるいは、ロシアを世界のビジネスの主潮流に加わらせない
ようにし、制裁措置によって惹起された農産物や鉱物の供給不足から巨額の利益を
フトコロにするため、であったりする。が、いずれにせよ、アメリカの国益の追求
であることには変わりがない。」
について。
ここでは、アメリカがイスラエルを支援する理由の一つとして、スエズ運河の確保
という要素が挙げられています。
アメリカがイスラエルを支援する理由は、石油資源の豊かな中東でアラブ諸国または
イスラム教国が一丸となってアメリカに対抗するという事態を避けるため、中東に
イスラエルというキリスト教圏に属するイスラエルをくさびとして打ち込んでおく、
イスラエルをアメリカの軍事力の前線基地としておき(アジアにおける日本の役割と
同じです)、周囲ににらみを効かせる、というのが大きなものと考えられますが、
そういう役割の中には、スエズ運河の安全確保・警固も含まれているということ
でしょう。
トランプ大統領は、グリーンランドだけではなく、パナマ運河の領有にも言及して
いました。パナマ運河にしろスエズ運河にしろ、いずれにせよ、アメリカ企業(特に
多国籍企業)にとっては、支障なくこれらの運河を自由に行き来できることが商売上
きわめて重要であることは言うまでもありません。
(もちろん、企業の商売上の話だけではなくて、アメリカが世界各地に軍隊を派遣する
場合でも、運河を支障なく通行できることが必須です)
■[余談・4]
最後から2番目の段落の文章、
「人を納得させる力をそなえるのがそもそもプロパガンダというものである。
世界の中で、19世紀中葉までに国家意識と国家体制を強固なものにし、その後、
国家としての独自の「物語」と全国メディアを成長させてきた国々は、大抵の
場合、そのために戦い、死んでもよいとさえ思わせるような国との一体感や国
としての目的意識を国民に浸透させることに成功してきた。」
について。
これはまさに日本にも当てはまることですね。
第二次大戦中、「八紘一宇」だとか「大東亜共栄圏」だとか、いろいろな美辞麗句が
用いられました。「日本は『神の国』」という言い回しは近年でも使われました。
これら国家として独自の「物語」を構築し、全国メディア(大手新聞など)で普及
させました。その結果、「そのために戦い、死んでもよいとさえ」思った多くの
青年が特攻隊などで命を落とすことになったわけです。
(もっとも、このようなプロパガンダ、美辞麗句がすべて「悪」であるとは一概には
言えないでしょう。が、ここでは、これ以上この問題に踏み込むことはやめておきます)
■全般的に訳文について。
ケアレス・ミスやこちらの知識不足などによる誤訳等がありましたら、遠慮なく
ご指摘ください。
(今回の訳出にあたっては、機械翻訳やAIなどはいっさい使用しておりません)
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