造花と生花の対話
デパートの特別な贈り物、造花コーナーにプラスチックでできたバラの花があった。彼女はあまりにも美しく、デパートに来る多くの人々からいつも驚嘆の対象になった。
「あら、きれいだわ。本当のバラみたい。」
「どうしてあんなに上手く作れるのかしら。本当に生花と区別できないわ。」
見る人、見る人が驚きを表さずにはいられないほど彼女は生花を同じだった。いや、生花よりももっと美しかった。「造花コーナー」と言う案内板がなかったならば、皆彼女を生花だと思っただろう。
デパートの陳列台に始めて並んだ時、彼女は人々のそんな賞賛が内心恥ずかしかった。しかし、今はそんな賞賛ぐらい当然なことと思った。むしろ、無視して通り過ぎる人がいたらその人がおかしいと思った。
それぐらい彼女は自分の美しさに自信があった。自分が生花よりもいいならば当たり前だし、少しもだめだとは思わなかった。生花とか造花とかできた過程が違うだけで同じ美しさを持っていると思った。花の究極的な価値が美しさの創造にあるとしたら、生花とか造花とか、美しさの創造的次元では同じだと思った。他の造花は造花として生まれた自分を恨んで恥ずかしいと思ったが、ただ彼女だけはそうではなかった。
彼女は自分を恥ずかしいと思う造花をひどく叱った。1本の花としての存在の価値を否定して無価値に考える造花こそが世の中を生きていく価値がないと問い詰めた。
「私たちは、私たち自らが花ならばいいのよ。なぜ、いつも生花と比較する暮らしを生きるの。生花と造花の区別こそが本当に無意味なことよ。今まで私は造花だからといって恥ずかしいと思ったことがないわ。私たちは私たちなりに価値があるのよ。私たちが自ら私たちの価値を否定したら私たちの前には苦しみと死ぬことだけだわ。私たち自身がまず自分を認めて美しいと思ってこそ他の花たちも私たちを美しいと思うのよ。私たちの美しさは私たち自らが悟らなければならない。誰かが悟らせてくれるものではない。」
彼女は他の造花に会うたびに自らの価値に気づく花にならなければならないと力説した。
その後、彼女はデパートを離れ、ヘミの家に行って住むことになったのは、デパートに陳列されてから約1ヶ月たった頃だった。ある日ヘミのお父さんがデパートに来て「これ、結婚記念のプレゼントにいいなぁ。」とさっと彼女を抱き上げた。
「あなた、ありがとう。」
ヘミのお母さんは彼女を抱きしめたまま夫にキスをしました。
「あなた、とてもきれい。こんなにきれいなバラははじめて見たわ。」
ヘミのお母さんは、彼女をまるで生花のように扱った。朝が来ると噴霧器で水を与えたかと思うと、もしや埃でもつくかとフーフー息を吹きかけたりした。時々、家に遊びに来る隣人たちもお母さんが真心をこめているのを見ては大部分の人が、彼女が生花だと思った。時に、直接手で触ってみて造花であることがわかった人も、彼女の美しさに嘆声を上げるのは同様だった。
彼女は幸福だった。世の中に愛されることぐらい幸福なことはなかった。彼女右派造花として生まれたことを神に感謝した。そう思いながらも生花よりも造花が美しいと言う思いを信念化した。造花として美しさと自尊心を自分だけでも最後まで守らなければならないと固く信じた。
そんなある日のことだった。ヘミが一人の男から求婚の贈り物として受け取ったバラの花束を胸に抱いて帰ってきた。もちろんそれは生花だった。ヘミはうれしくてどうしようもないと言う表情でバラの枝を切って、適当に葉をちぎって花瓶にさした。
その夜、夜が深まると生花のバラの花が彼女に声をかけた。
「あなたは私よりもきれいだと思っているみたいね。」
「もちろん。私のほうがきれいでしょ。」
「私はあなたのように傲慢な造花は見たことがないわ。」
「あなたは私よりもきれいだと思っているみたいね。」
「もちろん。そんなの当然なことじゃない。私は生花よ。」
「はは、あなたは本当に馬鹿ね。私は今まであなたのように馬鹿な生花を見たことがないわ。あなたは永遠に変らない美しさを知らないのね。私はあなたのように枯れないし死なないわ。私には死というものがないわ。だけどあなたはもうすぐ死ぬのよ。あなたが大口を叩く日ももう何日も残っていないわ。」
「はは、あなたこそあなた自身を本当に知らないのね。あなたは名前がバラだけど香がないじゃないの。」
「香。」
瞬間、彼女は言葉につまり答えることができなかった。バラには香があるという事実を彼女はまるで知らなかった。
しかし、次の日の朝、彼女のそんな気持ちを知ったようにお母さんが彼女にバラの香がする香水をかけてくれました。
「私からも香が出る。さ、かいでみて。あなたの体から出る香よりもかぐわしいでしょ。」
また夜になると今度は彼女が先に生花に声をかけた。
生花は彼女から本当のバラの香が出てきた以上何の言葉もできず口をつぐんだ。そしてその次の日からだんだんに枯れて見苦しい姿になって死んでしまった。
彼女はヘミのお母さんの手でゴミ箱に捨てられる生花を見て苦笑を禁じえなかった。生花よりも自分の暮らしがもっと美しいと言うことはもはや明らかな事実だった。もう、彼女はつらいことも古くなることも怖くはなかった。この世の中に何も怖いものがなかった。
1年が過ぎた。求婚の意味で捧げられたバラは枯れてしまったけれど、ヘミとその男の愛は枯れずにヘミが結婚することになった。そして今度はヘミがはじめて実家を出て行くことになってパーティをしている時、生花でできたバラの花束を母に差し出した。
「お母さん、今まで私を育ててくれた感謝の印よ。」
「そうか。ありがとう。夫をよく支えて、子供も生んでよく暮らしなさい。」
彼女は笑いがクックッと出てしまいそうなのを我慢した。少したつと枯れてしまうバラを買って持ってきて、ヘミが何だか変なことをいうものだと思った。」
その晩、彼女は眠れず、お母さんが真心をこめて花瓶にさしたバラを何気なく眺めていた。いや、ところがこれがどうしたことか。そのバラは前に一緒に話をしたあのバラではないか。彼女はうれしくて先に声をかけた。
「本当に会えてうれしいよ。枯れてゴミ箱に捨てられたあなたが再び生きてこのように美しいとは。本当に不思議だわ。」
そのバラの花もすぐに彼女がわかった。
「そうね、会えてうれしいわ。私はこうやってまた会えると思ったわ。」
「それはどういうこと。あなたはあの時明らかに枯れてゴミ箱に捨てられたわ。」
「あなたは私が本当に死んだと思ったのね。それはあなたの思い違いよ。私たちはそうではないのよ。私たちは死を通して終わりなくまた生まれるのよ。本当に生きているものは何でも死ななければならないのよ。死ぬことからまた新しい生命を得ることができるのよ。」
「私は新しい生命は必要ないわ。このまま永遠に変らないの。」
「変らないのは美しさではない。変化なのかに美しさがあるのよ。固定されていることはすでに醜いと言うことだ。美しさをどうやって固定することができる。」
彼女は何を言えばいいのかわからずしばらくの間黙っていたが再び口を開いた。
「それなら私も死ななければならないのか。」
「いいえ、あなたは枯れることができないから死ぬことはできない。それは悲しいことよ。」
「私はひとつも悲しくないけど。」
「それはあなたに死がないからよ。死がないということはまさに生命がないということで、生命がない花は美しい花ではないのよ。」
「違う、私は美しい花よ。人々が皆私を美しいと言うわ。」
「それは人々が死を恐れるからだ。永遠に死なないあなたを通してその恐れを慰めようとするだけだ。人は本当に生きていくためには死ななければならないという事を知らないのだ。」
「だけど、私はきれいよ。」
「そうだ。あなたもあなたなりにきれいよ。だけどあなたが本当に美しくなるためには、あなた自身が誰なのか本当に悟らなければだめよ。そうでなければ、あなたは美しくなることはできない。私たちはそれぞれ自身に与えられた人生に忠実にしてこそ美しくなることができるの。あなたは造花としての美しさを持っている時だけが本当に美しいのよ。」
生花のバラは今回も何日も経たないうちに枯れてゴミ箱に捨てられてしまった。
しかし、彼女は今回は生花のバラの花の死を笑わなかった。その代わり、いつかまた会える日を夢見た。そして身の程を守る最も謙遜な造花になることを自ら約束した。