小さいワタリガニの悲しみ
西海岸の海辺に大きなワタリガニと小さなワタリガニが住んでいた。彼らはある日海辺の砂浜の上にそっと這い上がった。海辺の砂の中があまりにも寒くて息苦しく、海見物もちょっとして、日光もちょっと浴びたかった。
「あぁ、気持ちがいい。外に出ることは本当にいいね。」
「あれをちょっと見てみろ。子供たちが波に乗って遊んでいるじゃないか。あぁ、本当にかっこいい。」
大きなワタリガニと小さなワタリガニは誰が先と言わすにため息をつきました。ところがその時小さいワタリガニが外に出る時に作った自分の砂の穴を見て、大きなワタリガニに言った。
「大きいカニさん、ちょっと変だ。私が作った穴がこんなに小さくて、君が作った穴がなぜこんなに大きいの。」
「それは、私の体が大きいからだ。君の穴が小さいのは君の体が小さいからで。」
「それなら、自分の体の大きさに合わせて穴が掘られると言うことか。」
「そうだ。私たちは自分の体に合わせて穴を掘らないとならない。死んだ母さんがいつもそんな話をしていた。そうしないと大変なことになる。それが私たちの身の程を知ると言う事だって。」
大きいワタリガニはかわいいと言う風に小さいワタリガニの背をトントン叩いてやって言いました。小さいワタリガニは大きいワタリガニの言葉がよく理解でいなかった。ただ、自分も大きいワタリガニのように大きい穴を掘りたかった。心を決めれば大きいワタリガニのよりも大きい穴を掘ることができると思った。
その日の晩、空には星が光っていた。小さいワタリガニは大きいワタリガニに内緒でもう一度海辺に来て砂浜に穴を掘り始めた。足とはさみを一生懸命使って自分の体よりも何倍もある大きな穴を掘った。波が押し寄せて一生懸命掘った穴をサーっと押し流してもがっかりすることもなくまた穴をもっと大きく掘った。
「これぐらいだと大きいワタリガニが掘った穴よりも何倍も大きいはずだ。これで私も大きいワタリガニがうらやましくない。」
小さいワタリガニはそんな思いをしながら口元に満足の笑みを浮かべた。
その時だった。小さいワタリガニの触角を熱く刺す光が差した。
「あ、いた。ここにいる。」
子供たちの大きな声が足音と一緒に聞こえてきた。
小さなワタリガニはギクッとして、怖くなった。すばやく自分が掘った穴に身を隠した。しかし穴があまりにも大きすぎて自分の体を隠すことができずそのまま懐中電灯を持った子供の手につかまってしまった。