本当の蜂
新しい年になった。多くの蜂が深い森の中の岩の上にぽつんと巣を作って暮らす師匠を訪ねた。
「お師匠様、新年明けましておめでとうございます。」
蜂たちは師匠の前にひれ伏して新年の挨拶をした。
「ありがとう。お前たちもいい年になるように。そうだ。どうすれば私たちが本当の蜂になれるか、今年は誰が言うことができるのか。」
師匠は温和な微笑を浮かべながら弟子たちを見回した。
「決して怠けなければ本当の蜂だということができると思います。」
木の幹に卵を産んで暮らすキバチがすまないように前羽をこすった後まず口を開いた。
師匠は言葉なく首を振った。
「友達のために命を捧げることができる蜂だと思います。」
地の上に巣を作って暮らす地蜂が後ろ足をばたばたと上げて言った。
しかし、師匠は依然と首を振った。
「共同体のために自分がまず何をするのかを考えることができれば本当の蜂だといえると思います。」
今度は狩の上手いといううわさの狩蜂が立ち上がって自信のある声を出しました。
師匠は以前と首を振った。
もうこれ以上口を開く蜂がいません。巣の中に重い沈黙が流れた。すこしたって、師匠はしばらくの間ゆっくりと目を閉じていたが、静かに口を開いた。
「この愚か者たち。もう何年たったのだ。皆、下がれ。私の問いに答えることができなければ、もう私を訪ねてくることを考えるではない。」
師匠の顔には失望と怒りの影が濃く浮かび上がった。
その時だった。一番後ろに座っていた働き蜂一匹が恥ずかしそうに注意深く立ち上がった。
「お師匠様。私が一言言わせていただきます。私はなぜ私たち蜂たちが花を訪ねていき、甘い花粉と水を持ってきてほのかな日差しと香をそのまま置いてくるのかという問題を深く考えてみました。そして私の考えでは、花から甘いもの以外にも色と香まで持ってくることができたら本当の蜂だということができると思いました。」
「おお、そうだ。その通りだ。色と香までも持ってくること蜂が本当の蜂だ。私はお前たちにもう教えることがなくなった。やっと心置きなく目を瞑ることができる。」
師匠は働き蜂の頭を大きく撫でてやった。そしてやっと安らかに息を引き取った。