お城でグルメ!

ドイツの古城ホテルでグルメな食事を。

ヴァルデック城

2023年05月01日 | 旅行

ドイツのほぼ真ん中のへッセン州にある国立公園〈エーデル湖〉の湖畔から急坂を登った標高200mのところに、ヴァルデックという小さな町があります。この保養地には湖畔からゴンドラが出ているのですが、これが1961年から動いている二人乗りの年代物なのです。

 

ゴンドラの内部

この付近は湖畔と周囲の山にトレッキングコースがたくさんあって、湖には何ヵ所かの湖岸を結ぶ観光船が行きかいます。さらにメルヘン街道の一角を占めている観光地です。 

この町のはずれの湖を望むところに4星スーパーに格付けされたヴァルデック城ホテルがあります。中庭から湖の方を向いたテラスがあり、景色が抜群。

 

テラスから湖を望む 

 

湖から城を望む 1 & 2

ホテルの中はきれいに修理修復をしていて、結構新しい様子です。レセプションの素人っぽいお姉さんが外国人客に、自身の英語がうまくない事をわびているのに驚きました。ドイツ人にはまず無いことだからです。他の従業員もよく挨拶をして気持ちがいい。ルームサーヴィスが部屋の掃除に来る時間帯に、〈起こさないで下さい。〉のカードを出しておいたら、黙ってタオル一式とトイレットペーパーを袋に入れてドアの取っ手にかけておいてくれました。これもドイツで初めての経験です。

私の部屋は大変にモダンなセンスの良いダブルルームで、石壁のくぼみに置かれた照明を当てられた小さな花の鉢植えとドイツには珍しい引き戸で入る洗面室に使われた黒い御影石が、贅沢な雰囲気をかもし出しています。置いてあるアメニティー・グッズは必要最低限ですが、レセプションでその他の物をもらえるそうです(コンドームも!)。

  

私の部屋 1 &

  

私の部屋 3 ・ 良い雰囲気の鉢植え

さてこのヴァルデック城ですが、岩の上に築かれた城砦として歴史に初めて現れるのは12世紀であるらしいのです。その後17世紀の半ばまで何度も改築を繰り返して、城館風に建てかえられました。過去に色々なことに利用された建造物で、まず最初は要塞として、それから兵舎になり、18世紀の半ばから19世紀の半ばにかけて女囚刑務所であったそうです。1920年からはある役所に属する公的建物でした。テラスに、1870/71年の独仏戦争で実際に使われた二門の大砲が置いてあります。こんにちホテル・レストランの他に博物館が併設されていて、主に当時の女囚刑務所に関する展示物が観光客や学校の遠足に人気があるようです。

  

登城の道 ・ 城の中庭

 

中庭に立つ塔 

  

城の中庭と湖 ・ 城内の博物館にある拷問器具 

夕食をとるカフェ・レストラン〈アルタネ〉は別の建物にあるのですが、5階の私の部屋から渡り廊下で直接行けます。大きな窓から見える景色に圧倒されます。

 

私のテーブル

聞こえないくらい静かにジャズが流れていて、愛想の良いお姉さん2人が給仕をしてくれます。ナプキンこそ白布ですが、ごく普通の簡単なドイツレストランです。

突き出しはナッツ入りの茶色パンと白パンが2枚ずつで、バター、トマト一切れ、サラダの葉っぱ1枚、大粒の塩が付きます。昔同じヘッセン州のフランクフルトに住んでいるときに知ったリンゴワインを、アルコール無しヴァージョンで注文しました。フランスのシードルを少し下品にした感じです。コースメニューがないのでア・ラ・カルトで注文しました。

前菜はヘッセン州風ポテトスープ。通常のポテトスープより固めのドロドロで、小ネギの千切りを上に散らせてあり、人参と胡椒とベーコンを極小に刻んだのが入っています。繊細さはないけれども、まあまあ旨い。グッと来る感じでいっぺんに腹が膨れてしまいます。

主菜はこの地方の豚肉のバター・ラード焼きです。シュニッツェルといって、豚肉をたたきのばしてパン粉をつけて揚げてある、薄いトンカツみたいなものです。スリッパぐらいに大きいのをレモンだけで食べます。肉が固いし不味い。付け合わせはジャガイモで、ネギとタマネギとベーコンを小さく刻んだのと一緒に炒めてあります。これは熱いうちは美味しかったけれども、冷めるとグッと味が落ちてしまいました。別皿でミックスサラダがたくさん出てきました。酸っぱくなくて薄味なのはいいのですが、薄味すぎてパンチがありません。

デザートはやめてエスプレッソだけにしました。

満腹にはなったけれども心が満たされていないのです。あぁ、美味しいご飯を食べたい。

朝食もカフェ・レストラン〈アルタネ〉で。ミルクと水とジュースの下に氷を敷いているし、使用済みティーバッグを置く小皿も用意しています。供される物の質量、種類、全部いうことなく、展望は言わずもがなです。

一日目には知らなかったのですが、このホテルには中庭を横切って行ったところにもう一つレストランがあります。グルメレストラン〈古い時計塔〉といいます。美味しい食事にありつける期待をもって、二日目はこちらにしました。レストランの入り口付近に建つ8角形の時計塔は、16世紀ごろに建てられた後ゴシックスタイルだそうです。

厚い石の壁に挟まれた黒い木の梁がある細長い台形の部屋で、テラスがあります。内装の色調は黒白赤で決めています。ポピュラー音楽がごく静かに聞こえ、グルメ食への期待が高まってきました。

 

2日目のレストラン

若い、ぎこちなくて素人っぽい給仕スタッフが3人います。たとえば、ワインがいるかどうか聞きません。使わないグラスと空のアペリティフグラスを最後まで片付けません。パンがまだテーブルにあるのにバターを持っていってしまうのです。水をなかなか注いでくれないので、隣のテーブルに置いていた瓶を私のテーブルに持ってこさせて自分で注ぐことにしました。気配り目配りが足りません。アペリティフにノンアルコールのカンパリ・オレンジはどうですか、と言うので注文すると、イチゴか何かのシロップにオレンジジュースを混ぜたのが出てきて、甘ったるいだけでカンパリ特有の心地よい苦みが全くありません。それなのに結構高いカンパリ・オレンジの値段をとっていて、詐欺にあった気がします。

〈おいおい、大丈夫かい。しっかり美味しい食事をさせてくれよ。〉という気持ちです。

厨房からのサーヴィスはナッツ入りパン、バター、マイルドな味のオリーヴ、それとローストビーフ一枚。それなりに結構でした。

ここでもコースメニューがないのでア・ラ・カルトで注文します。

まずマグロのカルパッチョなのですが、〈刺身マグロのカルパッチョ〉と意味が明確でない表現になっています。おそらく〈サシミ〉という言葉をどうしても使いたかったのでしょう。この挽きつぶした胡椒を上にかけてある超極薄のマグロ、水っぽくないのは良いのですが、薄すぎてマグロの味がほとんどしないのが残念です。真ん中にロブスターの肉とアスパラガスのサラダを盛ってあり、それにストロベリー・ヴィネグレットソースが程よく絡まっていて、これは繊細な美味しさです。

メインには〈ドライ・エイジド・ビーフ〉、すなわち熟成牛肉のステーキを頼みました。どの部位の肉でしょう。筋肉の間の結合組織が多く、それに脂肪組織がたくさんくっついています。切りにくいし、よく焼けていないし、咀嚼によって細かく出来ないし、味もまずいのです。付け合せはアスパラガスとアミガサタケ(食用キノコ)と刻んだトマトの炒め物のポートワインソースかけ。ソースの味が私には少々濃すぎますが、美味しいと思います。炭水化物はポテトとクリームを交互に重ねてクロワッサンのような生地で包んでオーブンで焼いた料理です。美味だし量も多くなくて満足しました。

デザートの皿には野生のバラのクリームと自家製のカシュウナッツ・アイスクリーム + 細いチョコバーと煮イチゴがのっています。ふっと苦みがあるバラのクリームは、バーナーで作った表面の焼き砂糖と一緒に食べると旨いのです。煮イチゴは少し酸っぱく、私は生の新鮮なやつの方が好きですね。

さて、〈グルメレストラン〉の名前は妥当でしょうか?

雰囲気は楽々合格です。料理に関しては、牛肉は良くありませんでしたが、まあ合格点を与えられるでしょう。給仕スタッフは残念ながら改善の余地がまだかなりありますね。全体として、また食べに来るか、と聞かれれば、私はYesと答えます。 

ヴァルデック城館ホテルにはひなびてしっぽりした古城の雰囲気はありませんが、快適に住めます。空気がいいし、高いところから下を見ると、地上の喧騒から離れて天国に近い所にいる気分になるのです。湖畔から見上げて、あの山頂の城に泊まっている、という満足感を味わえます。観光船やゴンドラに乗って楽しめます。トレッキング、ヨット、ゴルフ、水泳などのスポーツも可能で、宿泊客には無料の博物館も面白いのです。

チェックアウトのときに、部屋にあったコメントカードに記入して置いてきたら、3日ほどして自宅にお礼の手紙が届きました。ドイツのホテルでは初めての出来事です。

いつか一週間ぐらいの滞在を考えています。 

 

〔2016年11月(宿泊したのは5月)〕〔2023年5月 加筆・修正〕

 


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 山形旅行 | トップ | ヴィンデック城塞 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

旅行」カテゴリの最新記事