旧東ドイツの村や町を車で通ると、質の悪い石炭が燃える臭いがします。いまだに石炭を暖房に使っているのでしょうか。
我が家のあるハノーファーから真西に120㎞走ると、旧東ドイツの田舎にフェルトハイムスブルク城館があります。このお城は13世紀の中頃にカトリックの司教たちによって建造され、15世紀前半にフェルトハイム家の所有になりました。そして19世紀には新ロマネスク様式の城館に改築されたのです。その後お城は1945年までフェルトハイム家のものでしたが、土地改革によって没収されて、戦後はまず青少年の保養施設として、のちに学校として利用されました。そして1990年の東西ドイツ統合の後に、ある起業家が土地と城館を購入し包括的な修復と再開発を実施したのです。2015年に再び所有者が代わり、こんにちお城はホテル、カフェ、(結婚式のために) 戸籍役場の出張所として使われ、中庭では定期的に蚤の市、園芸展覧会、射撃祭り、そしてクリスマスマーケットが開催されます。
城館カフェにかかる写真
フェルトハイムスブルク城館がある村は小さくて静かです。周りの環境は自然が多く牧歌的で住み心地が良さそうです。
城館 1 ・ 城館 2
城館 3 ・ 城館 4
お城は古めかしくて風格のある、見ようによっては童話的な建造物なのです。
城門をくぐって中に入ると、裏庭の一角にさらに古そうな廃墟があります。これは12世紀の後半に築かれたとされる城砦の廃墟で、11メートルの高さの丸い防御塔が残っています。
裏庭 ・ 裏庭に面するところ
裏庭から城門を通視 ・ 城砦の廃墟
裏庭に面するホテルの入口に行くと張り紙が、、、。携帯電話の番号が書いてあって、電話してくれとのことです。来城を告げるとぽっちゃりしたおばさんが出て来ました。
「いやー、この辺は静かですね。」
「はい、冬場はたいへん静かです。」
なるほど、ホテルの設備などを見ると夏場は結構賑やかなのだろうと思います。
「今夜の泊り客は私一人ですか。」
「いえ、もう一人男性がいます。」
こういう所にひとりで泊まるのはまず間違いなく男なんですよねー。でも、若い女性がこんな寂しいところにひとりで泊まるのは、何だか不気味ですね。
おばさんが、板張りでギシギシと音を立てる迷路のような廊下と階段を部屋まで案内してくれました。
階段の踊り場 ・ 廊下
ここには12の客室と2つのアパートメントがあるのですが、全部の部屋に 〈王女の部屋〉、〈伯爵夫人の部屋〉、〈辺境伯の部屋〉 などの名前が付いています。私の部屋は 〈公爵の部屋〉 です。天井が高くて大変広いダブルルームのシングルユース。部屋は清潔で古い重厚な家具を備えてあります。窓ガラスもピカピカに磨いています。バスルームにも必要なものは全部あって快適に住めそうです。
私の部屋 1 ・ 私の部屋 2
夜8時以降、ホテルのスタッフは帰宅し (スタッフといっても今日はおばさん一人だけですが)、お城に居るのは宿泊客だけになります。その8時までに申し出れば、週末の午後だけ手作りのケーキを提供している城館カフェで何か夕食らしきものを食べさせてくれるそうなのですが、ちゃんと夕食を食べたければ車で10分程走らなければなりません。城館のホームページで事情が分かっていたので、私は夕食を持ち込みました。
ドネルケバブ (当地ではドェーネルという) です。私は日本でこのトルコの食べ物を食べたことがないので分かりませんが、ドイツではピザ生地のポケット状の袋に肉と生野菜と3種類のソースをあふれんばかりに挟み込みます。めったに食べませんが、私は好きです。
ドネルケバブ
食べようとして包みを広げてみると、持ち歩いていたので変形しています。それはまだいいのですが、冷たくなってしまって美味しくないのです。それに量が非常に多い。ドイツ人は一般にたくさん食べるのですが、東ドイツの人は特に大食いなのでしょうか。
ファンタ
飲み物は缶入りファンタです。部屋にお茶を沸かす器具も冷蔵庫もないので、あとは水道の水を飲むしかないですね。ドイツの水道水は飲めるので問題ありませんが、何ともさびしい夕食でした。
朝食のビュッフェ ・ 私の朝食
朝食も、量と選択肢が少ないので簡単なものになりました。
フェルトハイムスブルク城館は、飲食に関しては期待できませんが、お城のたたずまいと内装は心を歴史の中に誘い込んでくれます。周りが静まり返っているので、特にそんな感じがします。
[2020年2月]