ピレネー山脈のアパートメント・ホテルからバルセロナまでの途中で泊まったのが、あの山岳国家アンドラの南に位置する La Seu D’urgell にあるパラドールです。この地方で使われているカタロニア語で、ラ・セウ・ドゥルジェルと発音するそうです。この、すでに紀元前200年にローマ人が基礎を築いた町はそれほど山深くなくて海抜700m。現在の人口は約12.500人。宗教的に重要な町で、6世紀の初めにはすでにカトリックの司教がいました。〈Seu〉というのはカタロニア語で〈司教座所在地〉という意味だとのことです。
付近を車で走っているとカヌーが盛んに行われているのに気付きましたが、それもそのはず、ラ・セウ・ドゥルジェルは1992年のバルセロナオリンピックの時にはカヌー・スラロームの会場になったそうです。
パラドールの近くの大聖堂
複数の大聖堂や教会に囲まれたパラドールは旧市街の真ん中にあります。
パラドール
新しい建物ですが、14世紀に建てられたドミニコ修道会士の修道院の面影が柱や壁に見受けられます。特に、カフェテリアになっている屋根で覆われた中庭と、それを囲むように回廊風に配置された客室は修道院の建築様式です。客室が全部で79あるそうで、私たちの部屋の窓からは真正面に神学校の巨大な建物が見えます。
昼間の中庭 ・ 夜の中庭
回廊 ・ 回廊の2階部分
客室 ・ 神学校
明るくて超モダンなレストランは、例によって20時30分から営業です。ドイツ基準ではかなり遅いのですが、スペインはどこに行ってもこのくらいなのです。
レストラン
きびきびとよく働く愛想のよい給仕スタッフたちが英語を解するので何かと便利です。
〈パラドールのメニュー〉という、何だか一般的な名前のついたメニューを注文することにしました。前菜、メインディッシュ、そしてデザートがそれぞれ4種類ずつあり、自分で選んで3品のメニューを作ります。どれを選んでも値段は固定価格です。
前菜
私: 〈ガーリックソースとバジル(ハーブの一種)とチーズをかけたパスタ〉です。ガーリックとオリーヴ油のソースを使っていて、幅広麺の間に干しトマトが見え隠れします。チーズが少なく塩加減もひかえめなので少し刺激が足りませんが、それなりに美味しいと思いました。少し麺を茹ですぎたみたいです。
妻: パイ生地にパプリカを敷いて、すりつぶしたタラをたくさんのせて焼いてある料理です。細かい千切りの揚げ野菜が新鮮な食感でした。トマト風味のやわらかなソースがよく合っています。
主菜
私: マリネードに漬けたサーモンのタルタルステーキとネギのクリームソース。ネギとポテトをすりつぶして生クリームと混ぜたソースが特に美味しいと思いました。サーモンのタルタルには香菜をまぶしていて、濃い味のアンチョビーの味噌が少し添えてあります。旨いけれども、サーモンに脂がのっていていささかしつこいのが気になりました。
妻: イカのグリル + ブラックライスと煮詰めた玉ねぎ。イカ墨で炊いたと思われるライスの味は印象がうすく、何かが足りないと感じました。しかし、イカの下に敷いている超やわらかに煮たタマネギは甘くて美味でした。
デザート
私: アイスクリームとヨーグルトの木苺ソースかけ。特筆すべきことはないけれど、しっかりした味のアイスクリームでした。少し多すぎたかな?
妻: 上に砂糖をふってバーナーで少し焼いている生クリーム。クリームの下に煮詰めた西洋梨とタフィー(砂糖とバターを煮詰めた菓子)があり、この部分が特に美味しかったのです。アンズとイチゴのシロップが少し添えてありました。これもデザートとしては少々多すぎたようです。
パラドール・シリーズ最後の夕食でした。
ここのレストランでは今まで知らなかったアイデアを盛り込んだ料理を供され、新しい味の組み合わせを経験することが出来て満足しました。
ピレネー山脈は日本人にはあまり馴染みのないところですが、とても良いところです。来年の夏休みもこの地にしようかな、と考えています。
〔2015年8月〕〔2022年11月 加筆・修正〕