東西ドイツ統一の前の1949年 から 1990年まで西ドイツの首都であったボンに行ったついでに、ゲルゼンキルヘンという町にあるベルゲ宮殿に宿泊しました。
この宮殿は、もともとは13世紀にこの地方の防衛のために建造された水城でした。今でも建物は堀で囲まれています。その後16世紀に宮殿に改築され、18世紀には再び改築されて、現在は後期バロック様式の領主の館としての姿を保っています。1900年に貴族であった最後の所有者が亡くなった後、地方自治体がまず借り上げ、四半世紀後には買い取りました。そしてそこに国民保養施設が開設されたのです。ナチズムの時代には国民社会主義ドイツ労働者党 (ナチ党の正式名称) が建物を利用し、大戦後の1950年代と1970年代に、そして21世紀初頭にも町が大規模な改装を行いました。
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宮殿の正面 ・ その斜め
薬草園
この、城館内部にあるホテルとレストラン、フランス風庭園、そして複数の湖沼を含む広大な猟獣保護区域は、近隣の住民にとってかけがえのない保養地となっていて、施設全体が1988年に文化財保護の指定を受けたのもうなずけます。
実は今回、月、火、木曜日と連続して講演依頼があり、少しのんびりしようと思って金曜日にここに来たわけです。
宮殿のまわりには湖沼が点在し散歩道が縦横に走る自然が広がっていて、夏でないのが本当に残念です。
猟獣保護区域の入り口のひとつ
猟獣保護区域内 1 & 2
フロント係のお姉さんの明るい笑顔に迎えられましたが、ロビーの真ん中にバーがあり色々な商品が入ったショウケースも並んでいて、私の好きな雰囲気ではありません。まあ、ロビーは長居するところではないのでいいですが、、、、。
ロビー
客室は広くてモダンな家具を配しています。バスルームの設備も申し分ありません。何だか久しぶりにゆったりした気分になります。窓からの景色が結構ですね。
客室 ・ 客室の窓から
レストランは増築されたようで、フランス風庭園に面したガラス張りの縦に長い清潔感あふれる部屋です。残念ながら冬なので庭園に花はありません。イージーリスニングのピアノ曲がほとんど聞こえないくらいの音量で流れ、サーヴィススタッフは明るくきびきびと対応してくれます。金曜日ということもありますが、宿泊客ではない、外から食事に来た客でかなり賑わっています。テーブルサイドで脱いだコートをスタッフがクロークに持って行ってくれるところをみると、この地方ではかなりの高級レストランなのでしょうか。それで料理の写真を撮るのは遠慮しました。
レストラン 1 & 2
レストラン 3
まず黒と白のパン、生ハム、バター、オリーヴ、ししとうの酢漬け、薬味入りクリーム、そしてジャムが供され、それをつまみながらノンアルコールのヴァイツェンビール(小麦を主原料とする発泡性の強いビール)を飲んでいると、お通しが出てきました。それはマリネードに漬けた肉サラダで、タマネギが混ざっています。上にミニ・カイワレみたいな植物がのっていて、ミニ・トマトの1/4が添えてあります。オリーヴ油が多めにかかっていて、「醤油一滴で引き立つのになぁ。」と思った味でした。
前菜はパスタ料理。アルデンテに茹でたラーメンのようなヌードルの食感がなかなか結構です。クリームソースはマイルドで美味しいのですが、こってりした単調な味で多くは食べられません。火を通してある大きめのホタテ貝が二切れ添えてあります。甲殻類からとったエキスの泡がかかっている、とメニューには書いてありますが、それらしき味はしません。結局1/3ほど残してしまいました。
私は不幸にも、このときビールス性胃腸炎からの回復期でした。前夜和食コースを最後まで食べられたので大丈夫だと思っていましたが、やはり西洋料理は重いですね。
さて、主菜は牡牛のほほ肉の煮込み料理です。付け合わせは茹でたカリフラワーに天かすのようなものをふりかけた料理とマッシュポテトで、皿を含めたすべてがたいへん熱々です。茹ですぎていないカリフラワーがよろしいのですが、肉汁を化学物質できつくしたようなこげ茶のソースが美味しくありません。また1/3残しました。
そしてデザートはウィスキークリームのブリュレ(プリンのようなかためのクリームの表面に砂糖をふってバーナーで焼いたお菓子)です。2、3種のベリー・フルーツ、ミントの葉、そしてミント味のシャーベットがのっています。このシャーベットはさっぱりと旨いのですが、ブリュレの方はウィスキーの風味がほとんどなくて甘すぎるし、胃にずっしりと重くて2/3も残したのです。
翌朝は天気が良くて、前述のガラス張りのレストランに朝日が差し込んでいます。キラキラと美しい光の中で、珍しいことにセルフサーヴィスではなく、よく気の付く明るいお姉さんの給仕で朝食です。布のナプキンを使えるし、飲み物の特注や卵料理のリクエストも受け付けるサーヴィスですが、食品の質は普通のようです。昨夜と違っていつも食べる量の朝食を食べられました。
このベルゲ宮殿ホテルは、宿泊客よりも誕生会や結婚式などの催し物を中心に運営していると思われます。
今回の滞在は、まだ寒い時期だったし体調が悪かったからでしょうか、食事も不味くて楽しくありませんでした。
〔2016年2月〕〔2023年1月 加筆・修正〕