母に会ってくる。
4月よりも母は衰亡していた。
言葉を捨てたように黙して語らず・・・
昨年5月に妹がガンで死んだことは、どうしてもまだ伝えられない・・・
母は目を見開いて、まっしぐらに息子を見ている。
今年の5月は親友がガンで死んだ。
故郷に帰る。
親友の工場のあとかたづけを手伝ってきた。
親友は電気設備とモーター修理をしていた。
廃業である。
ちいさな工場には小学生からの趣味だった
いくつものプラモデルがあった。
プラモデルのモーターに魅せられ、そして親友は電気の仕事が生涯となる。
「少年の夢と素直さ」その宝石のような魂こそ親友の生涯でもあった。
母がお世話になっている病院の窓から
6月の森が見える。
「がんばってね!」帰るとき母の衰亡した手を握る。
母は小指で握り返した。
生命潮流の応答である。
文明が滅んでも母は死なず・・・
5月に死んだ詩人 寺山修司の言葉である。