>東洋経済オンライン >今の若者たちはなぜ「絶対に失敗したくない」のか 自己責任論が生んだ「ゼロリスク世代」の未来像 >> 稲田 豊史,金間 大介 2022/10/28 08:30
(略)
>『映画を早送りで観る人たち ファスト映画・ネタバレ――コンテンツ消費の現在形』と『先生、どうか皆の前でほめないで下さい――いい子症候群の若者たち』。
>2022年の「2大『若者論』本」との評価も高い2冊は、異なるテーマを扱いながらも、現代日本人の抱える問題に、別の側面から切り込んでいる。
>2022年10月3日に本屋B&Bが開催したトークイベントで、著者2人が大いに語り合った。
>(本記事は同イベント「稲田豊史×金間大介『絶対に失敗したくない日本人のエンタメ消費論』」の内容を再構成しました)
>思考停止の時代
>稲田豊史(以下、稲田):金間さんの本を読んで、私の本と同じことを別の言い方で表現されていると思いました。
>その1つが「失敗したくない」というキーワードです。
>今の若者はみんな失敗したくない気持ちがすごく強いですよね。
失敗すると悔しいですからね。
>それで思い浮かぶのが若者のTwitter離れです。
>今のTwitterって、罪に対して罰が大きすぎるんですよ。
>金間大介(以下、金間):と言うと?
>稲田:ちょっとした失言や誤認ツイートが、見知らぬ人たちからの集中砲火を浴びるじゃないですか。
>大学生が軽い気持ちで発した理想論じみたつぶやきに対してすら、いい大人のインフルエンサーが引用リプで冷笑する。
>ほんのちょっとした“失敗”なのに、大きなダメージを食らうわけです。
>金間:失敗を怖がる理由は多岐にわたると思うのですが、例えば世界的な意識調査の中に「見知らぬ人を助けたことがあるか」という設問があって、その結果として、日本はYesと答えた割合が125カ国中125位なんです。
>世界一、知らない人を助けない国ニッポンなんですよ。
日本人は序列のきづなで繋がっていますからね。序列の中に居ない人は非国民・外人ですね。
>「失敗したのは本人のせいだから助けることはない」という考え方が、この結果に含まれていると思います。
日本人には意思がない。だから、失敗したのは恣意 (私意・我儘・身勝手) の行使と考えられるからでしょうね。
>稲田:日本人は自己責任をとても重視するんですね。
私意の自由は何処の国でも許されませんね。
>それにしても非情な国民だ……。
そうですね。我が国は義理と人情の国ですからね。
>金間:就職活動のエントリーシートに書く「ガクチカ(学生時代に力を入れたこと)」にも、若者の失敗回避傾向を強く感じます。
>失敗したくないから、ネット上に匿名でアップされている前年の内定者エピソードをコピペしちゃったりする。
>他人の評価、他人の判断、他人の価値観に乗っかりやすい。
そうですね。日本人には自己の批判精神がありませんからね。’人の振り見て我がふり直せ’ ですね。
>稲田:エンタメ作品も、みんなが観ているものから順番に観る。
>観ている人が多いほうがハズレない、つまり失敗する確率が減るからです。
>金間:私の本では、SNS上のインフルエンサーがなぜこんなに人気なのかについても触れています。
>結論としては、インフルエンサーの勧める商品やサービスに追随していれば、何も考えないで済むからです。
そうですね。日本人は思考を停止していますからね。他人の受け売りをする人がわが国の知識人ですね。
>稲田:インプットからアウトプット、あるいはインプットからアクションまでの時間が短すぎることも、背景にあるように思いますね。
意思決定の過程が省略されているので行動開始が早くなりますね。脊髄反射のようなものですね。
>本来は情報を得たら、自分の感性に照らし合わせて判断を下すために一定の時間が必要です。
>だけど、今は摂取すべき情報が多すぎて、熟考するだけの時間がない。
>それゆえか、「映画はこの10本を観ておけば大丈夫」「アメリカ文学を語るなら、この3冊だけ読めばいい」というような〝ファスト教養〟的なふるまいも横行していますよね。
世はまさにご唱和の時代ですね。昭和時代の前からわが国は唱和の時代でしたね。
>金間:たしかに(笑)。
>テレビCMは、観て興味を持っても、その後自分で比較検討して買うか買わないかの意思決定をしなくちゃならない。
>インフルエンサーの場合は投稿を見てすぐ「買う」ボタンをポチッとすれば完了。
>ファストどころじゃない、瞬間に決めてしまう。
>思考停止消費です。
筋の通った思考をすれば哲学が生まれる。思考を停止していれば空想・妄想が生まれる。哲学ができなければ英米流の高等教育は成果が上がらない。だが、空想・妄想の発達するわが国は漫画・アニメの大国になりました。
>稲田:広告はもちろん、ニュースや「自分の好きなもの」でさえ、ネット上のアルゴリズムによって、個人別にカスタマイズされたサジェストが降ってくる。
>本当に、何かを考えて選ぶ必要がない時代になりました。
そうですね。日本の文化は形があって内容が無い。日本人の営みには作法があって教えがない。
>欲しいのはdoじゃなくbe
>金間:先ほど稲田さんは、倍速視聴する人たちはタイパ(タイムパフォーマンス)を重視しているとおっしゃいましたが、個人的には「パフォーマンス」という言葉にはちょっと違和感もあります。
>いい子症候群の若者たちにはそぐわない積極的な意味が含まれるからです。
>今の若者はワークライフバランスを重視すると言われますが、これも積極性を内包する言葉で、「積極的に時短して空いた時間を有意義に使う」というニュアンスがある。
>それもいい子症候群が好むことではありません。
>少し前、仕事終わりに若者を飲みに誘ったら「それって残業代出ますか?」と返されたという話が話題になりましたが、それは〝意識高い系〟であって、断るだけの主体性をいい子症候群の若者たちは持ち得ていません。
>しかも、仮に空いた時間で若者たちが何をしているかというと……。
>稲田:TikTokを見ていたりする(笑)。
>金間:そう(笑)。
>Instagramで延々とストーリー(動画)を見ているだけだったり。
>稲田:でも、彼らにとってTikTokを見るのはムダな時間ではないと思います。
>映画やドラマを観るのは能動的で積極的な行為、つまりdo。
>しかし、彼らが求めているのは心地いい状態や状況をダラダラと続けること、つまりbe。
>beの最たるものがTikTokじゃないですか。
>金間:なるほど、そこに積極性はない。
>稲田:なんとなくフリックしながら無目的に大量の動画を見続ける。
>つまらなかったらどんどん「次」に行けばいい。
>一瞬たりとも不快のない、心地いい状態が長時間続くのは、ある意味で「コスパがいい」とも言えます。
>「推し」には責任がない
>金間:学生へのアンケートで「あなたが何かに挑戦しようとしているとき、それをためらってしまう要因はなにか」と聞くと、「自分の能力ではできないから」が1位になります。
>これが、いい子症候群を生む日本の根源的な原因ではないかと私は考えています。
>つまり、自己肯定感の弱さです。
>「十分練習したからうまくいくはずだ」と思うのは自信のある状態を指しますが、自己肯定感とは、根拠がなくても、自分なら大丈夫だと思える状態です。
>日本人は、訓練をして自信をつけることはできますが、自己肯定感が低く、備えれば備えるほど「できない」と思うようになっていくのが不思議です。
>稲田:「この作品が好き」などと声高に言えない若者が多いのも、自己肯定感が低いからかもしれません。
>○○が好きだと言ったとたん、「へー、なら○○についてはお前が一番詳しいんだろう」と言われてしまうのが怖い。
>下手に「好き」なんて言えない代わりに重宝されているのが「推し」という言葉です。
>推しは、ただ謙虚に応援しているだけという姿勢の表明ですから、責任が伴わないんですよね。
>これも積極的に踏み出すdoではなく、心地良い状況に浸るbeです。
日本人には意思がない。意思の無い人間には責任もない。責任のかからない感じが安泰の感じを生みますね。
>金間:リアルの世界でも「推し」は好んで使われますね。
>会社や学校で、「私、あの先輩推しなんだ」とか。
>こんな話があります。20代の後輩女性社員が自分を推していると聞いた先輩が、てっきり自分のことを好きなんだと思って告白したそうです。
>ところがすぐに断られた。
>「ごめんなさい。推しってそういうことじゃないんです」と……。
>稲田:痛い(笑)。
>先輩や上司をキャラ化して、離れたところからそっと見ている状態、つまりbeとしての推し行為が快適なのであって、べつに能動的に交際したいわけではないと。
>交際しようとするアクションは完全にdoですからね。
日本人には意思がない。だから、受動ばかりで能動がない。もちろん、その受動に責任もない。
>若者へどうアドバイスすればいい?
>金間:失敗を徹底的に回避するこうしたゼロリスク志向、思考停止状態は今後どこまで続くのでしょう。
>イノベーション研究者としては、日本が何も生み出せない国になってしまうのでは、と心配になります。
そうですね。 我々日本人は日本語と英語の両言語を良く学び、思考における時制の大切さを十分に理解する必要がありますね。英語にある時制 (tense) を使った考え方を会得すれば、我々は自己の意思 (will) を明らかにすることも可能になるし、自分自身の世界観 (world view) を持つことも出来ます。さすれば我々は国際社会において相手の理解も得られ、未来社会の建設に協力することも可能になります。かくして、我々日本人は、人類の進歩に一層の貢献が可能になるでしょう。
>稲田:物語エンタメの世界にも、ゼロリスクの快適さを求める気運が見受けられます。
>普通、主人公は逆境を乗り越えて成長していくものですが、不快な登場人物に水を差してほしくないという声が、ライトノベルやアニメの分野で目立ちはじめている。
>最初から最後まで主人公は最強で、1回も悩んだりしない。
一強多弱の状態ですね。わが国の政界のようなものですね。
>そういう快適さを求めている読者が結構多いと、あるラノベ編集者の方が言っていました。
>金間:同じようなことを危惧される方々から、「今の若者とどう付き合えばいいのか」「仕事上のアドバイスをどう伝えればいいのか」と質問されるときは、こんなふうに答えています。
>「若いとき、自分は~ということをしなくて後悔してる。
>だから、お前は俺のようにはなるな。
>今やれることをやりなさい、応援するから」。
>かっこいい言い方ですが、いい子症候群にはあまり響きません。
>逆に、刺さるのは次の言い方です。
>「あのとき、自分は~ということをしなくて後悔した。
>だから、今からやろうと思って、参考書を本屋で10冊買ってきたんだ。
>さっそく始めてみたんだけど、これがおもしろくてさ」。
>稲田:なるほど。
>今、自分は実行しているよという現状報告ですか。
>金間:そうです。
>いい子症候群の若者たちは、現役選手のことはストレートに尊敬します。
>「こんなキャリアがある人でも、失敗して、またやり直すんだな」というところにかっこよさを感じる。
失敗は良い勉強になりますからね。なにしろストレスが強い。失敗することは経験豊かな指導者になる早道ですね。
>そして、もっと聞かせてくださいという姿勢になります。
>そうなったら、「ちょっと手伝ってくれないか」と言ってみてください。
>「もちろんです。
>何をやればいいですか」と返ってきます。
>稲田:歳を取ると「いい年して奮闘してるなんて恥ずかしい」という感覚が生まれがちですが、その逆なんですね。
>金間:大人ががんばって世界を変えようとすることで、それを見た若者たちも少しずつ変化していく。
>やっぱり「若者は大人のコピー」なんですよね。
.