たまやんの「大きい画像の貼れるブログに引っ越したい」

お久しぶりです。ネタバレあります。

「イントゥ・ザ・ワイルド」

2008-09-19 17:17:46 | 映画感想
(2008年9月19日 TOHOシネマズ名古屋ベイシティ 2007年・米 シネスコ SRD 148分)
1990年夏、ジョージア州の大学を優秀な成績で卒業した22歳の青年、クリス・マッカンドレス。卒業祝いに新車を買ってあげるという両親の申し出をあっさり断った彼は、通帳にあった預金全額を慈善団体に寄付し、家族に何も告げることなく、文字どおり無一文でアラスカへ向けて旅に出る。

【ネタバレあり】




アメリカに幻滅し、家族、物やお金といった価値観を捨て、自然に打ちのめされる主人公と旅する148分。向こう見ずで、愚かで、ちょっとナルちゃんなクリスはどう考えても自分とは合わなそうな人物なのに、いつの間にか彼のお供として旅する気持ちになっている。自分も同じ哀しみを抱えているから?ショーン・ペンの演出が心の奥底の哀しみを呼び覚まそうとしているから?

自分探しなんて自分には関係ないと思っているのに、この作品を見終わってからは、自分を、そして周りを見つめなおそうかと思っている自分がいる。

向こう見ずな主人公を待ち受けるのは鉄砲水だったり、激流だったり、何も無い砂漠だったり。まさに容赦ない描写が物凄い迫力で襲ってくる。どうやって撮ったのだろうと感心するほど。エンドクレジットを見ると、本当に各地にロケを敢行してるんですね。この辺りにも妥協を許さないショーン・ペンの本気を感じます。分割スクリーンやハッとさせられる編集など、淡々としたロードムービーを全く退屈させない工夫も充分ありました。

旅の中で両親のような、妹のような、祖父のような人々と出会い、擬似家族を形成していく過程が心地よい。人のつながりはちょっとやそっとでは途切れない。しかし自然は人の生命を簡単に途切れさすことができる。その自然と言うのがほんの一握りの植物で、ちょっとした間違いで起こるってのが皮肉だ。

「幸福が現実となるのは、それを誰かと分かち合った時だ」薄れゆく意識の中で真理を見つけ、やがて許しの行為を行う主人公に涙。

そういえば、ショーン・ペンの弟が2006年に薬物使用と内臓肥大が原因で自宅でひっそりと亡くなってるのですが、彼の名前もクリスなんですよね。


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2 コメント

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すごくよかった。 (タイリー)
2008-09-21 21:35:04
ちょと長いし、構想10年の謳い文句に不安があったんだけど・・・、
素晴らしい!
主人公に共感するとか感情移入するとかはあまりないのだけど、何かつきぬけるものを感じるというのかな。
やはり自然の雄大さとかでしょうか。
ショーン・ペンの、妥協を許さない、高潔な映画製作に魅了されたのかもしれません。
スピード・レーサーも気に入ったし、エミール・ハーシュが気になるので「ロード・オブ・ドッグ・タウン」みてみます。
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構想10年 (たまやん)
2008-09-21 23:42:51
「ロード・オブ・ドッグタウン」是非観てくださいよー!
劇場でも全然ヒットしてなかったし、MLの人もどうせチャラい
スケボー映画と思われて観てる人が少なかったもので、
エミール・ハーシュのお陰で見直されそうでなによりです。

構想10年の裏には、主人公の遺族の方に許可を得るのに相当の
期間を必要としたとかあったみたいですね。
いやー、ショーン・ペンいいですわ。
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