けいた と おちぇの親方日記

わんこと暮らす、のんびり日記

小説「約束の冬(上・下)」(宮本輝著)

2016-01-14 18:00:00 | 書籍(小説)
昨年、最後に読んだ小説は「約束の冬」。
1年の締めは宮本輝さんであった。本作品を読むのは、これが2回目になる。



本作は、2000年10月から、産経新聞朝刊で連載されていたもの。

この作品を書いている頃、
宮本さんは日本人の民度が低下、おとなが幼稚化していると感じており、
このような人が自分の近くにいてくれればと思える人物を描いたそうだ。

主人公の氷見留美子は、税理士事務所に勤める32歳の独身女性。
父が拘って建てた目黒の自宅で母・泰江とふたりで暮らしている。
父は出張先のドイツで交通事故にあい、10年前に亡くなっている。

弟の亮は、米国留学後、大手システム会社に入社するも、
間も無く退職し、木工職人を目指している。

そして、須藤俊国(上原俊国)。
10年前、留美子にある手紙を渡す少年である。
10年後の12月5日に岡山県総社市A町の田圃で待っている。
自分はその日26歳になる。
そして、そこで留美子に結婚を申し込むという、少々怖い少年。

留美子の中学校の同級生、芦原小巻。
2か月で小樽に転校してしまうが、
この10年闘病生活を送るが、留美子のある約束に支えられていた。

他にも須藤潤介(俊国の祖父)、黄忠錦、本田鮎子(くわ田の女将)、
新川緑、新川秀道(緑の父)、新川千鶴子など、
こんな人はあまりいないなと思える人物がたくさん登場してくる。

自分もこのような大人になれたらいいな、なりたいと
改めて思わせてくれる作品であった。

留美子が「人間にとって、約束を果たせることって、
大きな幸福のひとつだと思う。」という。

また、新川秀道が「いかに誠実に正直に生きるか、
このような人間であろうとすることや、
このような信条を根本として生き続けようと決めることは簡単だが、
それを生涯実践し続けることは至難の業だ。」という。

また、本作では、小巻が徒然草を暗誦するシーンがある。
「あらためて益なき事は、あらためぬをよしとするなり。」(第127段)


また、少々長いが第150段も諳んじる。
「能をつかんとする人、よくせざらんほどは、なまじひに人に知られじ。
 内々よく習ひ得てさし出でたらんこそ、いと心にくからめと常にいふめれど、
 かくいふ人、一芸も習ひ得ることなし。

 未だ堅固かたほなるより、上手の中に交りて、譏り笑はるるにも恥ぢず、
 つれなくすきて嗜む人、天性その骨なけれども、道になづまず、
 妄りにせずして年を送れば、堪能の嗜まざるよりは、終に上手の位に至り、
 徳たけ、人に許されて、ならびなき名を得ることなり。

 天下のものの上手といへども、始めは不堪の聞えもあり、無下の瑕瑾もありき。
 されども、その人、道の掟正しく、これを重くして放埓せざれば、
 世の博士にて、万人の師となる事、諸道変はるべからず。」

(現代語訳)
「芸能を学ぼうとする人、よくできないうちは、なまじ人に知られないほうがいい
 内々にしてしっかり習い身につけてから表舞台に出たほうが奥ゆかしくてよい
 と常々言うが、こう言う人は一芸も習い得ない

 まだ未熟なうちから、上手な人の中に交じり、謗り笑われることにも恥じず、
 気にせず頑張って打ち込む人は、天性の才能はなくとも、道を外さず、
 怠らず、年月を重ねれば、堪能でも打ち込まない人より、いつしか上手の位に至り、
 人格が備わり、人に認められ、名を得ることになる

 天下の名人といえども、初めは、不評の声もあり、ひどい欠点もあった
 けれども、その人が、道の掟に従い、これを尊重し、気ままな振舞いをしなければ、
 世の知性として万人の師となることは、いずれの道においても変わることはない」

宮本さんの作品は、話の面白さだけではなく、いろいろなことを考えさせられ、
いろいろなことを教えられ、知ることのできるものである。

徒然草は昔の日本人、良き日本の考え方、ものの感じ方などが書かれており、
読みたいと思い、本は購入したのだが、まだ読み始められていない。
今年は少しずつでも読んで行こうかと思う。

(今日のおまけ)
天気の良い休日の午後。
お庭遊びもし、お昼も食べ、お昼寝タイムに。



お外の点検、左よし。



右よし。



正面よし。



では、寝ましょう。



お昼寝をするおちぇを見ながら、自分は少しだけ読書。



疲れたら、おちぇと一緒にお昼寝。



至福のひと時である。
コメント
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