けいた と おちぇの親方日記

わんこと暮らす、のんびり日記

小説「蜩の記」(葉室麟著)

2014-12-06 09:00:00 | 書籍(コミック)
葉室麟さんの直木賞受賞作品「蜩ノ記」を読んだ。



いわゆる時代小説を読むのは初めて。
年配者の読み物という気がして敬遠していたが、
正直な感想、とてもよかった。

7年前、前藩主の側室と不義密通を犯した廉で、
家譜編纂と10年後の切腹を命じられた戸田秋谷と
編纂補助と監視に遣わされた檀野庄三郎との話であるが、
親子、夫婦の絆や愛情、そして日本人らしい律義さ、
今では忘れ去られた日本の良さがたくさん描かれている。

良かったところを少し抜粋。

庄三郎が秋谷の子・郁太郎(10歳)を思った場面。
「親はこの世に生のある限り、
 子を守り、無事を祈り続けてくれるのだ。
 その思いに支えられて子は育つものなのだ、
 と親を亡くして初めて知った。」

弁解をしない理由を聞く庄三郎に対し、秋谷が答える場面。
「忠義とは、主君が家臣を信じればこそ尽くせるものだ。
 主君が疑心を持っておられれば、家臣は忠節を尽くしようがない。
 されば、主君が疑いを抱いておられるのなら、
 家臣は、その疑いが解けるのを待つほかない。
 疑いは、疑う心があって生じるものだ。
 弁明をしても心を変えることはできぬ。
 心を変えることができるのは、心をもってだけだ。」

年貢を納めさせるのに威張るだけの武家はいらぬという郁太郎に
源吉が答える場面。
「こん世の中のことは、みんなお天道様が決めなさる。
 いらねえもんなんか、何もねえ。
 それが(武家の)お役目なんじゃから、しかたがねえよ、
 そげんするようにお天道様に決められちょるんよ。」

郁太郎の仇打ちに同行し捕らえられた庄三郎の心持ちを映す場面。
「ひとは心の目指すところに向かって生きているのだ。
 心の向かうところが志であり、それが果たされるのであれば、
 命を絶たれることも恐ろしくない。」

幽閉の身ながら郁太郎と庄三郎を救いに城下へと向かおうとする秋谷。
秋谷の身を案じる妻・織江、娘・薫に対し、言い聞かせる場面。
「わしの命は郁太郎が引き継いでくれるであろう。
 親が先にあの世へ参るのは自然の理ではないか。何の不都合があろうか。」

「そなたにとって郁太郎は何物にも代えがたい大切な息子ではないか。
 その息子を取り戻しに参るのだぞ。」

「檀野殿は信ずるに足るひとだ。いずれそなたの伴侶になってくれることを
 わしは望んでいる。わしはそなたのために檀野殿を取り戻したいのだ」

今より不条理で貧しい時代。
しかし、そこで生きる日本人は今よりも美しかったのだろうと思う。

ところで、本作品は映画化され、現在、上映中である。



戸田秋谷役に役所広司さん、檀野庄三郎役に岡田准一さん、
秋谷の妻・織江に原田美枝子さん、
娘・薫役に堀北真希さん(自分的にはイメージぴったり)
息子・郁太郎役は吉田晴登さん(存じ上げません)
庄三郎の親友・水上信吾役に青木崇高さん。





DVDになったら是非観たい作品である。
コメント
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