特殊相対論、ホーキング放射、ダークマター、ブラックホールなど

・時間について特殊相対論からの考察
・プランクスケールの原始ブラックホールがダークマターの正体であるという主張
 

もう一つの固有時パラドックス

2023-03-31 03:18:11 | 日記

1、時計Aの固有時について

「時計Aからみた時のNM図」: http://fsci.4rm.jp/modules/d3forum/index.php?post_id=29864 :では

『それで注意が必要なのは時計Aが示している経過時間5秒、と言うのはこのMN図の座標時であり、時計Aの固有時ではない、という所にあります。

というのもイベント①で時計Bとすれ違ったのは時計Cであって時計Aでないからです。

そうして固有時の定義「2つのイベントの間を移動する時計の経過時間が固有時である」に相当するのはこの場合時計Bの時間経過だけである、と言う事になります。』と書きました。

この記述はこれで成立しているのですが、この時に「時計Bからみた時のNM図(図2): http://fsci.4rm.jp/modules/d3forum/index.php?post_id=29901 :で登場した時計Dを上記のMN図(図1)に追加したらどうなるのでしょうか?

その状況を図4で確認します。

図4のプロット(図1に時計Dを追加する)

y=0,x=0,y=-1.25x+5,x=4,y=5,y=-1.25x,x=-4  プロット  -10<x<10, -10<y<10

図4の実行アドレス

https://ja.wolframalpha.com/input?i=y%3D0%2Cx%3D0%2Cy%3D-1.25x%2B5%2Cx%3D4%2Cy%3D5%2Cy%3D-1.25x%2Cx%3D-4%E3%80%80+%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%83%E3%83%88%E3%80%80%E3%80%80-10%3Cx%3C10%2C%E3%80%80-10%3Cy%3C10

時計A、B、C、については図1と同様です。

そこに時計Dが y=-1.25x として加わりました。

この時計Dは慣性系βに属し、時計Bと同期がとれています。(=時刻合わせが済んでいます。)

さてこの時計Dは原点で時計Aとすれ違います。

これがイベント③です。(注1)

そうしてその時に時計Aは0秒を指していました。



それでこの時に時計CはX=4の場所で時計Aと同様に0秒になっており、それに対してすれ違った時計Bはそこで時計をリセットしました。(注2)

これがイベント①でした。

そうして時計Bはそのまま左側に進んで時計Aとすれ違います。

これがイベント②でした。



さてこのように舞台設定を行いますとその結果は次のようになります。

時計Bの固有時=イベント①からイベント②まで時計Bが移動するのにかかった、時計Bで測定した経過時間=3秒

これは「時計Aからみた時のNM図」: http://fsci.4rm.jp/modules/d3forum/index.php?post_id=29864 :での結論であり、これが変わる事はありません。

そうして時計Dを図1に描きこむことで図4が出来上がるのですが、図4を見ますと時計Aの固有時が分かります。

時計Aの固有時=イベント③からイベント②まで時計Aが移動するのにかかった、時計Aで測定した経過時間=5秒(注3)



さて、こうして図1では時計Aがイベント②で示していた時刻5秒と言うのは固有時とは言えず、座標時でした。

そこに時計Dを追加し、この時計Dが原点で時計Aとすれ違うようにしますと時計Aのイベント②で示していた時刻、5秒がMN図の座標時である事と同時に固有時にもなるのです。(注4)



さあそうなりますと図4においては

時計Bの固有時は3秒、時計Aの固有時は5秒、と言う事になり、両方とも固有時となりましたからこの2つの値はローレンツ不変である、と言う事になります。

つまり時空の中で客観的に存在している、実在するデータであって、どのような第三の観測者が観測してもイベント②での時計Aと時計Bの針の位置には変化は起らないのです。

従ってイベント②での観測によって、「時計Bは時計Aより2秒遅れている」という結果を得ます。

そうしてMN図4は又「時計Aが属している慣性系αが静止系である」という事も示しています。(注5)



さてそれでこの時に時計Bに立っている観測者が「いや、当方の視点では時計B=慣性系βこそが静止系である」と従来からある「時間の遅れはお互い様」論に従って主張したらどうなるでしょうか?

このような時計Bの観測者の主張は時計Bと時計Aの固有時を変更するでしょうか?

時計Bの観測者の主張を聞くと時計Bの固有時は3秒から5秒に変化するのでしょうか?

いやいや、時計Bの観測者がどのような主義でどのような主張を展開されても、一度決定された、ひとたび観測された時計の針の位置の値には何の影響も与える事はできないのです。

もし「観測者の主張によりひとたび決定された固有時が変化する」というならば、少なくともそれは「我々が暮らす宇宙の中の出来事ではない」という事になります。



そうでありますから「固有時は所定の時計があるイベントから次のイベントに移動する間にその時計で計った経過時間」であって「その値はそれを観測している観測者の影響を受けない」=「客観的な観測データである」と言われるのです。(注6)



以上、示しましたように「図4のMN図が示す状況では時間の遅れはお互い様ではない」という事になります。



こうしてここでもまた

・固有時が存在する。

と言う事と

・時間のおくれはお互い様

と言う主張は両立しない、という事が分かるのです。(注7)



さてそういうわけで、これが「もう一つの固有時パラドックス」となります。



注1:図4のイベント③では時計Aは時計Dのゼロ秒に合わせて時刻をリセットする事はしません。

これが「時計Bからみた時のNM図」: http://fsci.4rm.jp/modules/d3forum/index.php?post_id=29901 :に登場する図2のMN図での時計Aの挙動とは違う、と言う事になります。

図4のMN図ではただ単に「原点位置で時計Aと時計Dはお互いの時計の針の位置を確認し、それを自分の時計の針の位置データと伴に記録に残す」のです。

しかしながらこの「お互いに観測しあう」という行為がイベント③を成立させているのです。

注2:時計のリセット方法については「時計Bからみた時のNM図」の「追記:時計のリセットについて」にてご確認願います。

表現上「時計Bは時計Cに合わせてリセットする」と書いていますが、実際は時計Bのリセットボタンをここで押す必要はありません。

注3:こうして一枚のMN図のなかに時計A、B、C、D、を全て書き込みますとこれが「その3・ランダウ、リフシッツ パラドックス」:http://fsci.4rm.jp/modules/d3forum/index.php?post_id=29616 :で説明した「4つの時計による時間遅れの測定」と同じ設定となります。

注4:「固有時が同時にまた座標時になる」という事は「その場合に限り、その時計は静止系に属している」という事を示しています。

注5:時計Aは空間軸方向には移動しませんが、MN図の時間軸方向には移動します。

それで空間軸方向と同様に時間軸方向に対しても「移動する」という表現を使います。

しかしながら特殊相対論ではこの状況を指して「時計Aは静止系=慣性系αは静止系」と表現するのでした。

加えてMN図4で示されている「時計Aは静止系である」という事実は時計Aと時計Bの示す時間が固有時である事から、MN図4をどの様にローレンツ変換しても変わる事はないのであります。

注6:ランダウ、ジューコフによれば

『どの様な基準系から見ようと(注4)針が10回転した事実はかわりませんので“固有時”は絶対的な量です。(注5)』と宣言されています。

なおこの件詳細につきましては「固有時パラドックス・相対論」: http://fsci.4rm.jp/modules/d3forum/index.php?post_id=29799 :を参照ねがいます。

注7:同様の議論を「時計Bからみた時のNM図」: http://fsci.4rm.jp/modules/d3forum/index.php?post_id=29901 :の図2のMN図について行う事が出来ます。

その結果は時計Aの固有時は3秒となり、時計Bの固有時は5秒となります。

これは今度は時計Aの属する慣性系αは静止系ではなく運動系としてMN図に登場するからです。

その事から分かります様に「時計Aを静止系とするMN図が示す状況」と「時計Bを静止系とするMN図が示す状況」はまったくの別物である「この宇宙で起きている全く異なる二つの状況をそれぞれのMN図が示している」と言う事になります。

というのも「時計Aの固有時が5秒である」ということと同時にまた「時計Aの固有時が3秒である」と言う事はできないからであります。

ちなみに以上の事は「MN図の唯一性定理」: http://fsci.4rm.jp/modules/d3forum/index.php?post_id=28603 :が主張している事の再確認にもなっています。



2、問題は解決したのか?

さてそうであれば以上で最初に提示したお題

「距離 L だけ離れてリセットされた、相対速度0.8Cで接近しつつある二つの時計AとBの時間の遅れはどうなっていますか?」

の答えは出たのでしょうか?

残念ですがいまだにその答えは明らかになっていません。

但し、「お互いが相手の時計が遅れていると観測する」という主張、「時間の遅れはお互い様」という主張はここまでの議論によって「我々の暮らす宇宙では成立してはいない」という事は明らかになりました。

つまりは「一方の時計が他方の時計に対して遅れている」と言う事を観測したのであれば「その時同時にその場所ではその逆の事象(=遅れている、と観測された時計を進んでいると観測する事)は起きてはいない」と言う事になります。


PS:相対論・ダークマターの事など 記事一覧

https://archive.md/RfWxu

https://archive.md/EEp68