特殊相対論、ホーキング放射、ダークマター、ブラックホールなど

・時間について特殊相対論からの考察
・プランクスケールの原始ブラックホールがダークマターの正体であるという主張
 

その3・静止系が客観的な存在だと何が困るのか?(sqrt(1-V^2) の正体)

2023-07-01 02:22:19 | 日記

4、従来は「これが相手の慣性系の時間遅れである」とされていた sqrt(1-相対速度V^2) の正体

原点を基準慣性系にとります。

そこから慣性系①、②、③が任意の方向にそれぞれ固有速度a,b,cをもって離れていきます。

但し「3つの慣性系は原点を含んで一つの直線を作る様に移動する」とします。

ちなみに速度はC=1で規格化しておきます。

それでその場合に①から②を見た時の相対速度V12はこうなります。

V12=(b-a)/(1-b*a) ・・・(1)式

逆に②から①を見た時の相対速度は

V21=(a-b)/(1-a*b) ・・・(2)式

(1)式と(2)式は絶対値は同じで方向が真逆となります。

そうしてこれが我々が認識できる2つの慣性間の相対速度そのものでした。

 

 ここで通説に従って①から②を見た時の時間の遅れを計算します。

①から②を見た時の時間の遅れ=sqrt(1-(V12)^2)

=sqrt(1-((b-a)/(1-b*a))^2)

 ウルフラムを呼び出します。

実行アドレス

https://ja.wolframalpha.com/input?i=sqrt%281-%28%EF%BC%88b-a%29%2F%281-b*a%29%29%5E2%29

「別の形」に答えが出ています。

a*b<1である事に注意すると分母は(1-a*b)>0となります。

分子はsqrt(1-a^2)*sqrt(1-b^2)と変形できます。

さてそうすると

sqrt(1-(V12)^2)

=sqrt(1-a^2)*sqrt(1-b^2)/(1-a*b)

となります。(注1)

つまり

慣性系①の静止系基準の時間遅れ*慣性系②の静止系基準の時間遅れ÷(1ー慣性系①の固有速度a*慣性系②の固有速度b)

がsqrt(1-(V12)^2)の正体です。

これを従来は「①から②を見た時の時間の遅れだ」としてきたのでした。

つまりは「sqrt(1-(V12)^2)が慣性系①から慣性系②を見た時の時間の遅れである」というのは「単なる誤解」という事になります。(注2)

 

ちなみにこの導出手順は固有速度aとbについて対称です。

従って

sqrt(1-(V12)^2)=sqrt(1-a^2)*sqrt(1-b^2)/(1-a*b)

=sqrt(1-b^2)*sqrt(1-a^2)/(1-b*a)=sqrt(1-(V21)^2)

となります。

これが通説の「時間の遅れはお互い様の正体」でした。

 

さらに加えますれば、慣性系①から慣性系②を観測した時に観測したかった慣性系の時間の遅れは

sqrt(1-b^2)/sqrt(1-a^2)

であり、また逆に慣性系②から慣性系①を観測した時に観測したかった慣性系の時間の遅れは

sqrt(1-a^2)/sqrt(1-b^2)

となります。

 

注1:最終的に得られた式の形が「時間遅れの合成則」に似ていますが分母が(1-a*b)とマイナスになっている所が違います。

さてそれで「時間遅れの合成則」ではこの話はどうなっているのか、見ていきます。

「時間遅れの合成則」を使った場合は上の話は次のような表示になります。

sqrt(1-b^2)=sqrt(1-a^2)*sqrt(1-(V12)^2)/(1+a*V12)

従って

sqrt(1-(V12)^2)=sqrt(1-b^2)*(1+a*V12)/sqrt(1-a^2)

ここで(1+a*V12)のV12に(1)式(b-a)/(1-b*a)を代入します。

(1+a*V12)=(1+a*(b-a)/(1-b*a))

ウルフラムを呼んで

実行アドレス

https://ja.wolframalpha.com/input?i=%281%2Ba*%EF%BC%88b-a%29%2F%281-b*a%29%29

「別の形」から答えを持ってきます。

(a^2-1)/(ab-1)=(1-a^2)/(1-a*b)

こうしてめでたく

sqrt(1-(V12)^2)=sqrt(1-b^2)*(1+a*V12)/sqrt(1-a^2)

=sqrt(1-b^2)/sqrt(1-a^2)*(1+a*V12)

=sqrt(1-b^2)/sqrt(1-a^2)*(1-a^2)/(1-a*b)

=sqrt(1-b^2)*sqrt(1-a^2)/(1-a*b)

となるのでした。

つまり「導出の過程は違いますが結論の式は同じになる」のです。

 

ちなみにこの得られた式でたとえば地球の固有速度をa<<1(=光速Cに対して無視可能)とし、ミュー粒子の固有速度をb≒1(≒C)とするならば

sqrt(1-(V12)^2)

=sqrt(1-b^2)*sqrt(1-a^2)/(1-a*b)

≒sqrt(1-b^2)*sqrt(1-0^2)/(1-0*b)

=sqrt(1-b^2)

となります。

ここで観測者は地球にいて地球(=慣性系①、固有速度aをもつ)に飛来するミュー粒子(慣性系②、固有速度bをもつ)を観測しています。

つまりは「地球に対するミュー粒子の相対速度V12(=(b-a)/(1-a*b))を使った時間遅れの計算がほぼミュー粒子の固有速度bで発生しているミュー粒子の時間遅れを表している」という事になるのです。

但しここで注意が必要な事は「地球の固有速度をa<<1だから光速Cに対して無視可能である」とできる程度の実験精度でよい場合に限ります。

それはつまり「地球も静止系に対して移動しているので、観測者の持っている時計の時間は遅れている」という事実を無視している事になるからです。

そうであれば「観測者の時間遅れが無視できない場合」=「精密測定の実験の場合には注意が必要になる」と言う事です。

そうして、そのような注意を怠ると「困る事になる」と思われます。

注2:「LLの一般」はまた別の視点から「sqrt(1-(V12)^2)が慣性系①から慣性系②を見た時の時間の遅れである」というのは「単なる誤解である」という事を示しました。

 

PS:相対論・ダークマターの事など 記事一覧

https://archive.md/lKbOa

https://archive.md/Z87xp