慣性系KからK'への相対速度Vでの写像関数の一般的な形が
X'=A*X+B*t
t'=C*X+D*t
である事は前のページで示しました。
そうしてローレンツ変換ではこの写像関数が
t’=a*t+b*X ・・・K'系の縦軸=時間軸成分を求める式・・・①式
X'=a*X+b*t ・・・K'系の横軸=空間軸成分を求める式・・・②式
となるのでした。
但しβ=V/C であり
a=1/sqrt(1-β^2)
b=ーβ/sqrt(1-β^2)
です。( http://fsci.4rm.jp/modules/d3forum/index.php?post_id=28721 :参照のこと。)
さて https://archive.ph/ND6P3 においては赤座標が相対速度V≒0.58Cの場合のローレンツ変換の変換座標を表しています。
そうであればこの場合のβはβ=V/C=0.58であり従って
a=1/sqrt(1-β^2)=1.227571540・・・
b=ーβ/sqrt(1-β^2)=-0.472477555・・・
となります。
従って
t’=a*t+b*X=1.22757*t - 0.47248*X
X'=a*X+b*t=1.22757*X - 0.47248*t
さてそれで、ウルフラムを使ってこの写像関数をグラフ化してみます。
t’ー>z=1.22757*x - 0.47248*y・・・K'系の時間軸成分を決めるもの
実行アドレス
https://ja.wolframalpha.com/input?i=%EF%BD%9A%EF%BC%9D1.22757%EF%BC%8A%EF%BD%98+-+0.47248%EF%BC%8A%EF%BD%99%E3%80%80
X'ー>z=1.22757*y - 0.47248*x・・・K'系の空間軸成分を決めるもの
https://ja.wolframalpha.com/input?i=%EF%BD%9A%EF%BC%9D1.22757%EF%BC%8A%EF%BD%99+-+0.47248%EF%BC%8A%EF%BD%98
写像関数が変数に対して対称形なので斜めになった写像平面を回転させるとt’への変換がX'への変換になるのです。
まあ3次元表示では「斜めになった原点を通る平面がローレンツ変換の正体」であって、この段階ではそれほど奇妙なものとは見えません。
写像関数としてみれば単純なありふれたものと言えます。
ちなみに写像関数が平面であるのでK系がもつ時空の「一様、等方性」がすなおにK'系に「倍率はかかりますがそのまま写像される」という事になります。
その結果 https://archive.ph/ND6P3 にある様に黒座標が赤座標に変換されるのでした。
さてそれで次はK系で原点から半径1の円がどのように変換されるか見ます。
K系の空間軸成分ー>X=cost
K系の時間軸成分ー>Y=sint
但しここで t はプロットの為の媒介変数です。
まずはK系では円の半分、半円を表示させます。
x=cos t , y=sin t パラメトリックプロット t は0からπ
実行アドレス
https://ja.wolframalpha.com/input?i=x%3Dcos+t++%2C+y%3Dsin+t+%E3%80%80%E3%83%91%E3%83%A9%E3%83%A1%E3%83%88%E3%83%AA%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%83%E3%83%88%E3%80%80t+%E3%81%AF0%E3%81%8B%E3%82%89%CF%80
ここでは表示された半円をt=0でX軸上の座標(1,0)からスタートしてY軸に到達し再びX軸(-1,0)に向かう点の動きとして理解しておきます。
それでこの状況を相対速度V=0.58Cでローレンツ変換してみます。
①式より
K'系の空間軸成分 ー>X=a*cost+b*sin t
K'系の時間軸成分ー>Y=a*sint+b*cos t
ここで
a=1/sqrt(1-β^2)
b=ーβ/sqrt(1-β^2)
β=0.58であるので ウルフラムへの入力文は
x=(cos t-0.58*sin t)/sqrt(1-0.58^2) , y=(sin t-0.58*cos t)/sqrt(1-0.58^2) パラメトリックプロット tは0からπ
となります。
実行アドレス
https://ja.wolframalpha.com/input?i=x%3D%28cos+t-0.58*sin+t%29%2Fsqrt%281-0.58%5E2%29+%2C+y%3D%28sin+t-0.58*cos+t%29%2Fsqrt%281-0.58%5E2%29++%E3%80%80%E3%83%91%E3%83%A9%E3%83%A1%E3%83%88%E3%83%AA%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%83%E3%83%88++%E3%80%80t%E3%81%AF0%E3%81%8B%E3%82%89%CF%80
プロット結果は楕円の半分となる。
しかもK系では時間軸成分=0からスタートし+1に到達したのち0に戻る動きをしていたものがK'系ではマイナス時間(=原点より過去の位置)からのスタートになっており空間軸成分=0では時間軸成分は+1に到達しておらず、最終的にプラス時間(=原点より未来の位置)で終わる。
こうして変換関数が1次の項しかない簡単な写像関数のあつまりであるローレンツ変換なのだが、変換の対象が時間と空間の連続体=時空であるために、変換した結果は相当に解釈が難しくなります。
ちなみにこの変換ではK系での円がK'系での楕円になる事を確認しておきます。
K系での円
x=cos t , y=sin t パラメトリックプロット t は0から2π
実行アドレス
https://ja.wolframalpha.com/input?i=x%3Dcos+t++%2C+y%3Dsin+t+%E3%80%80%E3%83%91%E3%83%A9%E3%83%A1%E3%83%88%E3%83%AA%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%83%E3%83%88%E3%80%80t+%E3%81%AF0%E3%81%8B%E3%82%892%CF%80
その円がK'系にローレンツ変換された結果ー>楕円
x=(cos t-0.58*sin t)/sqrt(1-0.58^2) , y=(sin t-0.58*cos t)/sqrt(1-0.58^2) パラメトリックプロット tは0から2π
実行アドレス
https://ja.wolframalpha.com/input?i=x%3D%28cos+t-0.58*sin+t%29%2Fsqrt%281-0.58%5E2%29+%2C+y%3D%28sin+t-0.58*cos+t%29%2Fsqrt%281-0.58%5E2%29++%E3%80%80%E3%83%91%E3%83%A9%E3%83%A1%E3%83%88%E3%83%AA%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%83%E3%83%88++%E3%80%80t%E3%81%AF0%E3%81%8B%E3%82%892%CF%80
こうして分かる事は、上記の変換は縦軸が時間軸であるのでMMの楕円の場合とは状況が異なりますが、K'系で円を表示させるには前もってK系で妥当な楕円を表示している必要がある、という事です。
その前もってK系で準備すべき楕円は、K'系では円から楕円に変換された、その楕円の短軸方向を長軸とするものになります。
こうしてK系で適切な楕円が表示されているとK'系ではそれが円になるのです。
そうであれば「この辺りの状況はMMの楕円の時の状況と相似的である」と言えます。
ちなみに「慣性系間での変換では時空は非圧縮性である」という事からK系での円の面積とそれが変換されたK'系での楕円の面積は同じになっている事が期待されます。
追記:同様の表示をガリレイ変換について確認しておきます。
ガリレイ変換は
t’=t ・・・K'系の時間軸成分を求める式・・・③式
X'=X+c*t ・・・K'系の空間軸成分を求める式・・・④式
但し
c=-V ・・・ここでVはK系に対するK'系の相対速度VでV=0.58C
例によってC=1の単位系を使いますから④式は
X'=XーV*t=Xー0.58*t
となります。
まずは tは0からπまでの半円での確認をすると ウルフラムに入れる文は、
x=cos t-0.58*sin t , y=sin t パラメトリックプロット tは0からπまで
実行アドレス
https://ja.wolframalpha.com/input?i=%E3%80%80+x%3Dcos+t-0.58*sin+t+%2C+y%3Dsin+t++%E3%80%80%E3%83%91%E3%83%A9%E3%83%A1%E3%83%88%E3%83%AA%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%83%E3%83%88%E3%80%80t%E3%81%AF0%E3%81%8B%E3%82%89%CF%80%E3%81%BE%E3%81%A7
プロット結果はローレンツ変換の場合と同等に楕円の半分となります。
しかしガリレイ変換の場合はK系では時間軸成分=0からスタートし+1に到達したのち0に戻る動きをしていたものはK'系でも時間軸成分=0からスタートし+1に到達したのち0に戻る動きをしています。
ガリレイ変換はローレンツ変換の場合のように「過去からスタートし未来で終わる」様な複雑な挙動はしないのです。(注1)
その結果「K系では半円であったものを単に時間の経過とともにーX方向に順次ずらしたものがK'系に写像される」という事になります。
それはもともとのガリレイ変換を行う座標が正方形を横にずらして出来上がる平行四辺形であった、という事からの当然の結果です。
↓
座標のガリレイ変換 : https://archive.ph/cWkwD :
そうであればこの場合は「変換の前後では面積は変わっていない」という事が分かります。
次に円の写像の確認、 tは0から2πまで の状況をみます。
ウルフラム入力文
x=cos t-0.58*sin t , y=sin t パラメトリックプロット tは0から2πまで
実行アドレス
https://ja.wolframalpha.com/input?i=%E3%80%80+x%3Dcos+t-0.58*sin+t+%2C+y%3Dsin+t++%E3%80%80%E3%83%91%E3%83%A9%E3%83%A1%E3%83%88%E3%83%AA%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%83%E3%83%88%E3%80%80t%E3%81%AF0%E3%81%8B%E3%82%892%CF%80%E3%81%BE%E3%81%A7
K系では円の面積がπ(パイ)であったからK'系に写像されたこの楕円の面積もπ(パイ)となります。
注1:ガリレイ変換においては時間と空間は独立でローレンツ変換の様にまじりあう事はない、という事になります。
これはつまり「ガリレイ時空では時間と空間は独立である」という事を示しています。
PS:相対論の事など 記事一覧
https://archive.ph/UPU5I