ところで、今回の銅像事件に関する保守派媒体の報道で気になったのは、事件の責任者としてやり玉に上げられている柏崎市の行政のトップ、会田市長と社民党の関係が何だか過剰に強調されている点でした。
例えばこんな↓具合です。
宮崎正弘の国際ニュース・早読み - メルマ!“より
http://www.melma.com/backnumber_45206_4471738/
払い下げの経緯は不明だが、会田市長は全共闘の出身で、心情は社民党と同じ。テヘランへの自衛隊機派遣を潰して日本が国の恥を晒したのを社民党は手を打って喜んだ。それと同じにトルコが怒り、日本の評判が落ちるのはむしろ彼は望んでいるようにすら思える。
この記事自体は引用されたもので、書いたのはメルマガの主とは別のジャーナリストのようなのですが….。この人にかかると、今回の銅像事件は、実はトルコ国内における日本の評判を落とさんと、会田市長と社民党が意図的に仕組んだ陰謀だったかのような勢いですね。ということは、後々事が大きくなって、市長の地位が危うくなるのも織り込み済みだったということか?
あたかもメガンテを唱えるかのごとく、市長の椅子と政治生命を賭してまでトルコ人の対日イメージを悪化させんと目論む男-会田市長。一体何者なんだ?すごい....すごいよ、会田市長!
あと、社民党はほとんど”死ね死ね団”のような扱いですねw。そういう団体だったのかw。
とりあえず、ネットでこの会田氏という人物について検索したところ、以下↓のような記事を見つけました。
柏崎市長選挙(新潟県) 「原発依存からの脱却」派の現職が推進派の新人を退ける「ザ・選挙」編集部2008/11/16
http://www.senkyo.janjan.jp/senkyo_flash/0811/0811160664/1.php
現職と新人の一騎打ちとなった柏崎市長選挙は現職の会田洋氏(61)が新人で元市議会副議長の桜井雅浩(46)を1000余票差で破って再選された。両者とも政党本部の推薦は受けなかったが、会田氏には民主、社民などの国会議員や無所属の田中直紀参院議員らが応援、市議会の複数会派が支持した。桜井氏は自民・公明両党の柏崎支部、前回に市長選で会田氏に破れた西川正純・前市長らが応援した。
昨年7月の新潟県中越沖地震による被災後初めての市長選。運転停止中の東京電力柏崎刈羽原子力発電所に対する考え方は「原発との共存」「早期運転再開」で一致していたが、原発に対する将来の方向性については会田氏が「太陽光発電などエネルギー源を多様化し、原発に過度に依存しないバランスの取れた産業構造にすべき」と「原発依存からの脱却」を目指しており、原発反対派も応援に回った。一方の桜井氏は「原子力中心の産業構造にしたい」と原発推進のまちづくりを訴えた。
なるほど....そういえば、柏崎って原発があったんでしたね。忘れてましたよ。
一方、前回の記事で紹介した“チャンネル桜”の番組にも出演していた三井田柏崎市議は、この数年来、積極的にアタテュルクの銅像護持運動に従事されているわけですが、政治的には自民党に所属。当人のブログなどを読んだ限りでは原発推進派であり、反市長的な立場をとっているらしい。
あえて単純に図式化すると、ここ数年の柏崎市政においては、
会田市長(反原発/民主+社民が支持)
vs
三井田市議(原発推進/自民+公明が支持)
といった左右の政治対立があり、一連の銅像騒動においては、右派の市議が左派の市長と行政の落ち度を糾弾し、激しく攻撃している。そして、産経をはじめとする保守系メディアは市議の側に加勢して騒ぎを大きくしている、というのがこれまでの状況かと。
つまり、今回の銅像騒動はあくまで“局地戦”であって、“本丸”はこの会田市長だということでしょう。銅像騒動がトルコを巻き込んで大きくなればなるほど、後の“本丸”を追い込むことができるというわけです。それが“国際問題”にでもなれば、なおのこと良いはず。
まあ、政敵の瑕瑾に徹底的して付け込むのは政治の常道なのだろうし、今回の事件での市長側の失態は十分それに値するでしょう。政治家が社会運動を利用して名を売るのも、いたって普通のことです。この辺りは理解できるんですよ。こちらは柏崎市民ではないし、原発問題にも正直、さほど強い関心はない。だから、この市長が失脚しようがどうしようが個人的には別にどうでもいいのですが.....。
ただ、騒ぎを大きくするために、わざわざ外国まで巻き込むような方法はどうか、と思うのです。
1.ある特定のA国に自らの政治的理想を投影して、これを現実とは無関係に都合よく美化。
↓
2.国内で自らの政敵や論敵を攻撃できるようなA国絡みの揉め事を“発見”して、それをA国のマスコミ等にリークする。
↓
3.A国のマスコミで報道されると、“A国の人たちは怒っているぞ!”という外圧を用いて自らの政敵や論敵を倫理的に糾弾。その際、A国内の騒ぎが実際にどのようなものであるかは大した問題ではない。
↓
4.国内でもその“揉め事”に善意からコミットする人間が増え、“揉め事”は本格的な“問題”として実体化。どんどん尾ひれがついていく。
↓
5. 日本での騒動をさらにA国のマスコミが報道し、こちらでも問題化。これにより、本格的な“国際問題”に。
↓
6. この“国際問題“=さらに大きな外圧を背景に政敵・論敵を攻撃。自らの政治的勢力の伸張に利用する。
本件の場合はまだ<4>の段階までは達していないかもしれないんだけど、何かどこかでよく聞いたような話ではありませんか?
そうです。保守派が大嫌いな朝日のような左派メディアが、中国や北朝鮮・韓国を使って散々やってきた手法と同じですよ。そうした自らの党派優先の報道姿勢が、“実際の”東アジア諸国民の相互理解にいかなる害悪をもたらす結果になったかは、今さらここで語るまでもないでしょう。
今回の銅像事件が“国際問題”に発展するまでの過程を時系列的に整理すると、以下↓のようになります。
2007年7月、中越沖地震発生。倒壊の危険から、アタテュルク像は台座から降ろされる。
↓↓↓
2007年8月、かねてより銅像護持の運動を続けていた三井田市議が、自らのブログや掲示板等に倒れたままの像の写真を掲載。
http://miida.cocolog-nifty.com/nattou/2007/08/post_20af.html
↓↓↓
2007年9月30日、産経新聞が倒れたアタテュルク像に関する記事を掲載。Web版の方には写真は無いが、新聞の方には写真も一緒に掲載された模様。
トルコ建国の父像横倒し 柏崎の文化村跡地 2007.9.30 16:43
http://sankei.jp.msn.com/life/trend/070930/trd0709301643010-n1.htm
ケマル・アタチュルクの銅像横倒し 市「事業者と近く協議」 - (2007.10.3)
http://sankei.jp.msn.com/region/chubu/niigata/071003/ngt0710030218002-n1.htm
↓↓↓
2007年10月8日にトルコの新聞“サバフ”紙、10月9日に“ラディカル”紙が、ネット上で銅像問題についての記事を掲載。ただし、その内容は銅像の粗末な扱いに恨み言を述べるようなものというよりは、“地震で倒れたアタテュルク像がメディアで報道されるほど日本での我らが国父への関心は高い”という意味合いのものだった。 そして、その“メディアの報道”というのは、産経以外に報じた所は無いところを見ると、どうも9月30日(か10月3日)の産経の記事のことを指すと考えて間違いはなさそう。
↓↓↓
三井田市議、上記の二つのトルコの新聞記事を、恐らくその内容をよく確かめることなく、自らのブログ等で、“トルコの新聞で日本が非難されている!ついに国際問題となった!”と大々的に紹介。※これについての詳細は後述。
↓↓↓
2009年2月、2chを中心にBBCの世論調査の結果と銅像事件を結びつけ、“トルコの親日度が低下しているのは銅像事件のせいだ!”とする騒ぎが突然起こる。J-castがこの現象を記事として紹介。
↓↓↓
2009年5月、産経がネット上で盛り上がっている銅像護持運動を記事として紹介。その際の“「建国の父」に対して非礼だとして、トルコ紙でも報道された。”という記述は恐らく元の記事を照会したわけではなく、三井田市議のブログがソースである可能性高し。←イマココ
こうして見ると、“マッチポンプ”とまでは言えないとしても、何だか同じ当事者の間を情報が循環していることが分かるかと思います。もちろん、三井田市議と産経新聞、両者とトルコの「サバフ」紙との間で直接情報が好感されたか否かは何とも言えないのですが、件の「サバフ」紙のサイトに載っている倒れた像の写真が、市議のブログに載っていた写真と酷似している点がとりあえず気になりますね。
参考↓
三井田氏のブログ
http://miida.cocolog-nifty.com/nattou/2007/08/post_20af.html
サバフ紙のサイト
http://arsiv.sabah.com.tr/2007/10/08/haber,8729D0E359D24EE892A589BD7C18ED3F.html
→(6)に続く
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トルコは日韓ワールドカップの時にテレビで親日的なことを報道してたのもあってかなんとなくいいイメージ持ってる一般人とかも多そうかなぁ
ネットあんまりしない人でもそんなこと言ってたし
あとコメ見たらアメリカやEUにはいい印象ないのかな
トルコはEU加盟で苦労してるイメージがあったけどイスラム教徒多いから難しいのかなぁ
歴史的に強国として欧州諸国を圧迫してきた背景に対するアレルギーも底流にあるんじゃないかと想像してみたり
特にバルカン諸国含む東欧は
私個人はトルコに好印象(食べ物的にw)持ってるので
日本のぶっちゃけ言っちゃ悪いけど田舎の市長選ごときに他国を巻き込むなと言いたいかなw
この人、YouTubeでみたお。チャンネル桜の「長野聖火リレー・民放が伝えない真実」で、フリチベ派として善光寺からデモ行進の先頭で旗手をしていたっけ。
確か昭和47年生まれとか言ってたから、まだ37歳か。若いのに策士だのう。チャンネル桜での言動を見た感じでは、保守バリバリの若手行動派というように見受けられました。
だけど”策士、策に溺れる”にならなきゃ良いのだが・・・。
訪問させて頂きました。
親日・反日・自虐感など面白い観点だと思い読み進んでいましたが、ちょっと気になった所が。
>ただ、騒ぎを大きくするために、わざわざ外国まで巻き込むような方法はどうか、と思うのです。
これはちょっと違うのではないか、と。
アタティルク銅像について無難に解決する時間が前にあったのに先延ばしをしたのが会田市長で、
何度かいくつもの方法で解決を求めても答えなかったから広く知らせた人がいた。
これだけ広く知られる前に、市長は事を収めればよかったのでは?と思います。
外国を巻き込んだ、ではなく、外国絡みで事が起きているのだから、早く解決しない方が問題かと。
ただの市内の話ならここまで知名度も上がらなかったでしょうに。脇が甘いんだと思いますよ? 市長は。