→(3)からの続き
.....おい、“角刈り”。
ホタン(漢語名は“和田”。“フーティエン”と読むらしい。)は未開放地区(中国には、法的に外国人に開放されている地域と、そうでない地域がある。)じゃないし、街中にはちゃんと渉外賓館(法的に外国人が泊まっても良い宿)だってある。もし仮に何ヶ月も居たとしても、ビザさえちゃんとしていれば、法的には何の問題も無いはずだろうが?
まあ、こういう変な国だ。お前も単に職務に忠実なだけなのかもしれない。余計なやる気を出されてこっちは大いに迷惑だけど、だからと言って、別にお前個人を恨もうとは思わない。
ただ、一つだけ言わせて欲しい。
何なんだ、その髪型は???
頭頂部から側頭部にかけて.......まるで分度器で図ったかの様に90度じゃないか!
下敷きが乗るぞ!
お前の頭本体って、そんなに角ばってないだろう?
自然の摂理に反しているとは思わないか?
そればかりか、両端の部分はそれぞれ斜め上の方向に逆立ちつつある。
断言しよう。
このまま行けば、君の将来における属性は間違いなく“エスパー魔美”もしくは“デビルマン”だ!
漢人でもウイグル人でもなく、“デビルマン”だ。
統計的にも、
<新疆における民族別人口(単位:人)>
ウイグル人:(8000000)
漢人:(7000000)
カザフ人:(1250000)
クルグズ人(150000)
デビルマン:(1)
みたいにカウントされるに違いない。
いいのか?それで?
田舎のご両親は泣いているぞ!
….まあ、それはいいとして、
“角刈り”と件の職員、それに自分の3人で再び別室に戻ることになったわけですが、職員曰く、
-“心配しないで下さい。この部屋にはカメラが付いているので。”
とのこと。
取調べの模様はカメラで記録されているので、荷物の中身が不当に押収されることは無いのだ、と言うことなのでしょう。ただ、カメラの有無はこちらでは確認できず、どこまで信用できるかは甚だ疑問なのですが。
その時、こちらが持っていた荷物は2つ。一つはPCバッグで、入っていたのは外付けのCD-ROMプレイヤーとACアダプター、それにデジカメの充電器のみ。だから特に問題は無かったのですが、もう一つの荷物、ソ連軍仕様の軍用布リュック(今でも旧ソ連圏各地で普通に使われている)の中には、ウルムチで買ったウイグル語の本が何冊か入っていました。
普通に本屋で売っているような本である以上、当然、政治的に“危険な”内容のものではない(“危険な”内容の本は全て当局によって焚書処分にされており、表社会では流通していない)訳ですが、“角刈り”も職員もどうせウイグル語なんて読めないだろうから、過剰に反応してくる心配がありました。
何よりも、それで身体検査までやるとなったら、非常にまずい。デジカメのケースはベルトにくくりつけていたので、ちょっとシャツを捲ればすぐに見つかるでしょう。USBはシャツの胸ポケットに入っており、こちらは多少見つけにくいかも。でも、それだって、少し調べれば分かることです。
さて、どうしたものか。
もしそうなったら、とりあえず適当な理由をつけて、ゴネられるだけゴネてみるか?
といったことを色々と考えていたのですが、件の職員が反応したのは、何故かまったく別のものだったのです。
-“これ、何ですか?”
-“えーと…..”
ウルムチの電気街で買った、“ミスター味っ子”のDVDでした。
↓DVDのジャケット。漢語のタイトルは“火頭智多星”らしい。何て意味?2枚組で16元。吹き替えではなく元の音声に漢語の字幕が付いたもので、普通に見ることが出来た。画質はとてつもなく悪かったけど….。
↓ジャケットの裏面にあった英語の説明文。“南米の人食いアリの群れは、地震の活動が活発になるまで、アラスカの地中に潜んでいたが….”って、“黒い絨毯”じゃねえか!
-“これってDVDですよね?何の?”
-“日本のアニメです。”
-“どんな?”
-“料理の上手い少年の話なんですが…。”
これだけじゃ不十分か?
しかし、
“その料理があまりに旨すぎて、食った人間はショックで体が大坂城と同じサイズに巨大化したり、海水を吐きながらフンドシ一張で海の上を走り回ったりする。”
とか、
“その少年は、悪の料理人組織<味将軍グループ>と日々戦っている”
みたいな細かな補足を加えても、話はもっとややこしくなるだろうし、下手したら単なるキチガイだと思われそうだし…..。
といった感じでそれ以上の説明は躊躇していたのですが、それ以上は突っ込まれませんでした。職員の関心は“味っ子”の内容よりも、専らこちらがDVDを持っていたという、その事実の方にあったらしい。
-“他にもCD-RとかDVDはありますか?”
普段はUSBとか携帯用HDばかり使っているのであまり意識しないのですが、考えてみれば、CD-RもDVDも一応“記憶媒体”です。彼らにとって“不都合な”文書や動画を持ち運ぶことは十分に可能な訳で。
リュックの中にCD-Rは入っていなかったのですが、DVDなら沢山ありました。というのも、ウルムチでは、日本語の映画やアニメ等の(恐らく海賊版であろう)DVDを大量にまとめ買いしていたからです。ジャケットは嵩張るので上述の“味っ子”など一部を除いては全部捨て、中身はCDホルダー2個に詰め込んでいました。
こちらが机の上に出ていた、それらのホルダーを差し出すと、
-“調べるので、暫く待っていてください”
と言いつつ、“角刈り”と2人でどこかへ行ってしまいました。
同じく机の上に出ていたウイグル語の書籍類は、完全にスルーです。
まあ、こちらとしては有難いことですが….
おい、お前ら! 何かここにウイグル語の本を持ってる怪しい外人がいるぞ?
もしかしたら、USBとか隠し持ってるかもしれないぞ?w
いいのか?
20分ほどが経ち、ホルダーを持った職員が、1人で戻ってきました。
どうやら、自分らのPCで、一通り再生してみたらしい。
-“上官によれば、問題のあるものは無かったとのことで….。”
そりゃそうだろう。映画とアニメばかりですからね。
-“これで終りです。出国ブースの方に行って下さい。”
やっと終りか。
とりあえず、身体検査が無くてよかった…。
時間は既に10時半を過ぎていました。急がないと。 並んでいる人の数はさほど多くないので、この分で行けば11時前にはカザフ側も通過できるかもしれない。
でも、あれ?
何か、また別の職員が近づいてくるぞ?
年齢は“角刈り”と同じくらいでしょうか。
でもこの男は“角刈り”とは違ってロシア語を話すらしい。非常に訛りの強い発音だけど…..。
-“このバッグはPCが入っているね?”
-“もう既に検査は受けました。こっちのリュックも検査済みです。”
-“PCは検査しないといけない”
-“はい????? もう検査したって言ったでしょう?”
-“でも、検査しないと。規則なので。”
何を言ってるんだ?この男は?
-“急いでますから。”
無視してそのままブースの前まで行きました。そうすると、中の係官までもがロシア語で、
-“検査には応じるべきだ。時間はそんなにかからないだろう?”
と、言ってくるではありませんか…。
いや…..もう1時間以上かかってるんだけどね。それも、物凄く能率が悪く、かつ効果も薄そうな方法で。
というか、こちらに休む間を与えず、入れ替わり立ち代り新手の職員が検査を挑んでくるって何なんだよ。
“車掛の陣”か?
いい加減にしろよ。
こちらの忍耐力もほとんど限界です。
とはいえ、無駄に連中を刺激して“身体検査だ!”となる事態もまた、避けねばならないわけで。
こちらは既にブースの真ん前まで到達しています。まさか、ここまで来て新手の職員が現れることなんてないでしょう。それを思えば、おとなしくPCを渡した方がいいかもしれない。どうせヤバいものは入って無いんだし。
そこから先は、前回とまったく同じパターンです。
事情を説明して一緒に別室に行き、電源を入れる。
↓↓↓
“終わるまで外にいろ”と言われて追い出される。
↓↓↓
20分くらい経ってから、部屋の中に招き入れられる。
また、“解体”とか“独立”みたいな漢字にいちいち反応しては、くだらない尋問でもしてくるのかね?ああ、面倒くさい。 と思っていたのですが、今度は少し勝手が違いました。
PCの画面上には見知らぬフォルダが開いてあります。
そして、そこには何と、こちらのPC内の“秘蔵エロ動画フォルダ”から抽出されたと思われるファイルがずらずらと並んでいるではありませんか。
そして、PCの側面には見知らぬUSBが挿さっています。
彼がそのUSBを指差して言うには、
-“これを、ここへ!”
-“はあ??? あの、どういう意味ですか?”
-“ここへ!”
-“コピーしろってことでしょうか?”
-“ここへ!”
なるほど。
つまりこの男は、職権を濫用して “今晩のオカズの提供を要求”しているという訳ですよ。w
必要最小限の言葉しか発しない所を見ると、部屋にカメラがあるのは案外本当なのかもしれない。
しかし、なんて奴だ!
もしこれがロシアとか中央アジアの国々であれば、こうしたことは日常茶飯事ですから、大して驚きもしないんですけどね。
自分の中では、中国の官僚機構(特に末端)はその手の国々に比べると“まだ”というか“大分”まともに機能しているというイメージが強かっただけに、ちょっと意外でした。
まあ、確かに彼のやっていることは良くないです。でも、普通にネットにアクセスできていれば、ここまでエロには飢えていなかったかもしれない。その点においては、ある意味、彼も今回の情報封鎖による犠牲者の一人だと言え…… る訳が無いだろうが、このラーメンマン!!!
こいつはいかに末端とはいえ、完全に“情報を封鎖する側”の人間です。その同じ権力を使って、自分だけ“役得”にありつこうとは言語道断。
お前らの偉大的領袖↓も、
文革の波に消えていった革命的先達たち↓も、
草葉の陰で嘆いておられるぞ!
貴様に渡す動画など1バイトも無いわ!林彪の顔でも見て抜いてろよ、この人民の敵め!
フハハハハハ…..。
…はぁ。
そう啖呵を切りたい気持ちは山々でしたが、こちらも多少は脛に傷持つ身です。逆上されて身体検査なんてされると非常に困ったことになる。
動画をやるだけでこの場が切り抜けられるなら、安いものです。
というわけで、ファイルをコピーすることにしたのですが、どうもうまくいかない。何度やっても、エラーが出るのです。考えれみれば、普通にデータが移せるのであれば、わざわざこちらに頼まずとも、自分でやっていたはずで。
恐らくUSBの方に何か問題があったのでしょう。色々試してみたのですが、結局、原因は分からず。
-“出来ないみたいです”
-“そうか…….じゃあ、行っていいぞ。”
…..て、こいつは本当に“それ”だけが目的だったのか?
しかも何か偉そうですね。ついさっきまで職権を濫用してエロ動画を揺すり取ろうとしていた人間の言い草とは、とても思えない。
ともかくも、どうにか“昼休み”前に中国を脱出することができました。
カザフ側は入管・税関合わせてもチェックは十分程度。ミニバスやらバスやら乗り継いで、夕方5時半くらいまでにはアルマトゥに着くことができたのでした。でも、革命によってクルグズスタンとの国境はかなり混乱した状態にあり、その後ビシュケクに帰り着くまでに色々と苦労することになるのですが、それについてはまた項を改めましょう。
ところで、ビシュケクに戻った後、新疆方面から空路や陸路でやってきた外国人旅行者(日本、オーストラリア、フランス、韓国etc.)と何度か顔を合わせる機会があったのですが、彼らによれば、新疆の東隣、甘粛省方面との境界付近では荷物のチェックなど一切無かったとのこと。
また、ウルムチの空港でも国際線・国内線とも荷物をX線に通すくらいはやるものの、その中身を詳しく調べたり、PCやらUSBの中身を見せろ、なんてことは無いらしい。
つまり、新疆に出入りする際は空路か、もしくは第三国→中国の他の地域を経由して東側から入れば、PCやUSBのチェックなどいくらでも回避できるということです。“不穏な”w文書やデータなんて持ち込み放題でしょう。
だとしたら、こちらがコルガスで経験した2時間にわたる“スパイ大作戦”は壮絶に無意味だったと言うことになりますね。そもそも、USBに入れて持ち出した写真にしても、客観的に見ればそう大した内容でもないのですから。
→(5)に続く
.....おい、“角刈り”。
ホタン(漢語名は“和田”。“フーティエン”と読むらしい。)は未開放地区(中国には、法的に外国人に開放されている地域と、そうでない地域がある。)じゃないし、街中にはちゃんと渉外賓館(法的に外国人が泊まっても良い宿)だってある。もし仮に何ヶ月も居たとしても、ビザさえちゃんとしていれば、法的には何の問題も無いはずだろうが?
まあ、こういう変な国だ。お前も単に職務に忠実なだけなのかもしれない。余計なやる気を出されてこっちは大いに迷惑だけど、だからと言って、別にお前個人を恨もうとは思わない。
ただ、一つだけ言わせて欲しい。
何なんだ、その髪型は???
頭頂部から側頭部にかけて.......まるで分度器で図ったかの様に90度じゃないか!
下敷きが乗るぞ!
お前の頭本体って、そんなに角ばってないだろう?
自然の摂理に反しているとは思わないか?
そればかりか、両端の部分はそれぞれ斜め上の方向に逆立ちつつある。
断言しよう。
このまま行けば、君の将来における属性は間違いなく“エスパー魔美”もしくは“デビルマン”だ!
漢人でもウイグル人でもなく、“デビルマン”だ。
統計的にも、
<新疆における民族別人口(単位:人)>
ウイグル人:(8000000)
漢人:(7000000)
カザフ人:(1250000)
クルグズ人(150000)
デビルマン:(1)
みたいにカウントされるに違いない。
いいのか?それで?
田舎のご両親は泣いているぞ!
….まあ、それはいいとして、
“角刈り”と件の職員、それに自分の3人で再び別室に戻ることになったわけですが、職員曰く、
-“心配しないで下さい。この部屋にはカメラが付いているので。”
とのこと。
取調べの模様はカメラで記録されているので、荷物の中身が不当に押収されることは無いのだ、と言うことなのでしょう。ただ、カメラの有無はこちらでは確認できず、どこまで信用できるかは甚だ疑問なのですが。
その時、こちらが持っていた荷物は2つ。一つはPCバッグで、入っていたのは外付けのCD-ROMプレイヤーとACアダプター、それにデジカメの充電器のみ。だから特に問題は無かったのですが、もう一つの荷物、ソ連軍仕様の軍用布リュック(今でも旧ソ連圏各地で普通に使われている)の中には、ウルムチで買ったウイグル語の本が何冊か入っていました。
普通に本屋で売っているような本である以上、当然、政治的に“危険な”内容のものではない(“危険な”内容の本は全て当局によって焚書処分にされており、表社会では流通していない)訳ですが、“角刈り”も職員もどうせウイグル語なんて読めないだろうから、過剰に反応してくる心配がありました。
何よりも、それで身体検査までやるとなったら、非常にまずい。デジカメのケースはベルトにくくりつけていたので、ちょっとシャツを捲ればすぐに見つかるでしょう。USBはシャツの胸ポケットに入っており、こちらは多少見つけにくいかも。でも、それだって、少し調べれば分かることです。
さて、どうしたものか。
もしそうなったら、とりあえず適当な理由をつけて、ゴネられるだけゴネてみるか?
といったことを色々と考えていたのですが、件の職員が反応したのは、何故かまったく別のものだったのです。
-“これ、何ですか?”
-“えーと…..”
ウルムチの電気街で買った、“ミスター味っ子”のDVDでした。
↓DVDのジャケット。漢語のタイトルは“火頭智多星”らしい。何て意味?2枚組で16元。吹き替えではなく元の音声に漢語の字幕が付いたもので、普通に見ることが出来た。画質はとてつもなく悪かったけど….。
↓ジャケットの裏面にあった英語の説明文。“南米の人食いアリの群れは、地震の活動が活発になるまで、アラスカの地中に潜んでいたが….”って、“黒い絨毯”じゃねえか!
-“これってDVDですよね?何の?”
-“日本のアニメです。”
-“どんな?”
-“料理の上手い少年の話なんですが…。”
これだけじゃ不十分か?
しかし、
“その料理があまりに旨すぎて、食った人間はショックで体が大坂城と同じサイズに巨大化したり、海水を吐きながらフンドシ一張で海の上を走り回ったりする。”
とか、
“その少年は、悪の料理人組織<味将軍グループ>と日々戦っている”
みたいな細かな補足を加えても、話はもっとややこしくなるだろうし、下手したら単なるキチガイだと思われそうだし…..。
といった感じでそれ以上の説明は躊躇していたのですが、それ以上は突っ込まれませんでした。職員の関心は“味っ子”の内容よりも、専らこちらがDVDを持っていたという、その事実の方にあったらしい。
-“他にもCD-RとかDVDはありますか?”
普段はUSBとか携帯用HDばかり使っているのであまり意識しないのですが、考えてみれば、CD-RもDVDも一応“記憶媒体”です。彼らにとって“不都合な”文書や動画を持ち運ぶことは十分に可能な訳で。
リュックの中にCD-Rは入っていなかったのですが、DVDなら沢山ありました。というのも、ウルムチでは、日本語の映画やアニメ等の(恐らく海賊版であろう)DVDを大量にまとめ買いしていたからです。ジャケットは嵩張るので上述の“味っ子”など一部を除いては全部捨て、中身はCDホルダー2個に詰め込んでいました。
こちらが机の上に出ていた、それらのホルダーを差し出すと、
-“調べるので、暫く待っていてください”
と言いつつ、“角刈り”と2人でどこかへ行ってしまいました。
同じく机の上に出ていたウイグル語の書籍類は、完全にスルーです。
まあ、こちらとしては有難いことですが….
おい、お前ら! 何かここにウイグル語の本を持ってる怪しい外人がいるぞ?
もしかしたら、USBとか隠し持ってるかもしれないぞ?w
いいのか?
20分ほどが経ち、ホルダーを持った職員が、1人で戻ってきました。
どうやら、自分らのPCで、一通り再生してみたらしい。
-“上官によれば、問題のあるものは無かったとのことで….。”
そりゃそうだろう。映画とアニメばかりですからね。
-“これで終りです。出国ブースの方に行って下さい。”
やっと終りか。
とりあえず、身体検査が無くてよかった…。
時間は既に10時半を過ぎていました。急がないと。 並んでいる人の数はさほど多くないので、この分で行けば11時前にはカザフ側も通過できるかもしれない。
でも、あれ?
何か、また別の職員が近づいてくるぞ?
年齢は“角刈り”と同じくらいでしょうか。
でもこの男は“角刈り”とは違ってロシア語を話すらしい。非常に訛りの強い発音だけど…..。
-“このバッグはPCが入っているね?”
-“もう既に検査は受けました。こっちのリュックも検査済みです。”
-“PCは検査しないといけない”
-“はい????? もう検査したって言ったでしょう?”
-“でも、検査しないと。規則なので。”
何を言ってるんだ?この男は?
-“急いでますから。”
無視してそのままブースの前まで行きました。そうすると、中の係官までもがロシア語で、
-“検査には応じるべきだ。時間はそんなにかからないだろう?”
と、言ってくるではありませんか…。
いや…..もう1時間以上かかってるんだけどね。それも、物凄く能率が悪く、かつ効果も薄そうな方法で。
というか、こちらに休む間を与えず、入れ替わり立ち代り新手の職員が検査を挑んでくるって何なんだよ。
“車掛の陣”か?
いい加減にしろよ。
こちらの忍耐力もほとんど限界です。
とはいえ、無駄に連中を刺激して“身体検査だ!”となる事態もまた、避けねばならないわけで。
こちらは既にブースの真ん前まで到達しています。まさか、ここまで来て新手の職員が現れることなんてないでしょう。それを思えば、おとなしくPCを渡した方がいいかもしれない。どうせヤバいものは入って無いんだし。
そこから先は、前回とまったく同じパターンです。
事情を説明して一緒に別室に行き、電源を入れる。
↓↓↓
“終わるまで外にいろ”と言われて追い出される。
↓↓↓
20分くらい経ってから、部屋の中に招き入れられる。
また、“解体”とか“独立”みたいな漢字にいちいち反応しては、くだらない尋問でもしてくるのかね?ああ、面倒くさい。 と思っていたのですが、今度は少し勝手が違いました。
PCの画面上には見知らぬフォルダが開いてあります。
そして、そこには何と、こちらのPC内の“秘蔵エロ動画フォルダ”から抽出されたと思われるファイルがずらずらと並んでいるではありませんか。
そして、PCの側面には見知らぬUSBが挿さっています。
彼がそのUSBを指差して言うには、
-“これを、ここへ!”
-“はあ??? あの、どういう意味ですか?”
-“ここへ!”
-“コピーしろってことでしょうか?”
-“ここへ!”
なるほど。
つまりこの男は、職権を濫用して “今晩のオカズの提供を要求”しているという訳ですよ。w
必要最小限の言葉しか発しない所を見ると、部屋にカメラがあるのは案外本当なのかもしれない。
しかし、なんて奴だ!
もしこれがロシアとか中央アジアの国々であれば、こうしたことは日常茶飯事ですから、大して驚きもしないんですけどね。
自分の中では、中国の官僚機構(特に末端)はその手の国々に比べると“まだ”というか“大分”まともに機能しているというイメージが強かっただけに、ちょっと意外でした。
まあ、確かに彼のやっていることは良くないです。でも、普通にネットにアクセスできていれば、ここまでエロには飢えていなかったかもしれない。その点においては、ある意味、彼も今回の情報封鎖による犠牲者の一人だと言え…… る訳が無いだろうが、このラーメンマン!!!
こいつはいかに末端とはいえ、完全に“情報を封鎖する側”の人間です。その同じ権力を使って、自分だけ“役得”にありつこうとは言語道断。
お前らの偉大的領袖↓も、
文革の波に消えていった革命的先達たち↓も、
草葉の陰で嘆いておられるぞ!
貴様に渡す動画など1バイトも無いわ!林彪の顔でも見て抜いてろよ、この人民の敵め!
フハハハハハ…..。
…はぁ。
そう啖呵を切りたい気持ちは山々でしたが、こちらも多少は脛に傷持つ身です。逆上されて身体検査なんてされると非常に困ったことになる。
動画をやるだけでこの場が切り抜けられるなら、安いものです。
というわけで、ファイルをコピーすることにしたのですが、どうもうまくいかない。何度やっても、エラーが出るのです。考えれみれば、普通にデータが移せるのであれば、わざわざこちらに頼まずとも、自分でやっていたはずで。
恐らくUSBの方に何か問題があったのでしょう。色々試してみたのですが、結局、原因は分からず。
-“出来ないみたいです”
-“そうか…….じゃあ、行っていいぞ。”
…..て、こいつは本当に“それ”だけが目的だったのか?
しかも何か偉そうですね。ついさっきまで職権を濫用してエロ動画を揺すり取ろうとしていた人間の言い草とは、とても思えない。
ともかくも、どうにか“昼休み”前に中国を脱出することができました。
カザフ側は入管・税関合わせてもチェックは十分程度。ミニバスやらバスやら乗り継いで、夕方5時半くらいまでにはアルマトゥに着くことができたのでした。でも、革命によってクルグズスタンとの国境はかなり混乱した状態にあり、その後ビシュケクに帰り着くまでに色々と苦労することになるのですが、それについてはまた項を改めましょう。
ところで、ビシュケクに戻った後、新疆方面から空路や陸路でやってきた外国人旅行者(日本、オーストラリア、フランス、韓国etc.)と何度か顔を合わせる機会があったのですが、彼らによれば、新疆の東隣、甘粛省方面との境界付近では荷物のチェックなど一切無かったとのこと。
また、ウルムチの空港でも国際線・国内線とも荷物をX線に通すくらいはやるものの、その中身を詳しく調べたり、PCやらUSBの中身を見せろ、なんてことは無いらしい。
つまり、新疆に出入りする際は空路か、もしくは第三国→中国の他の地域を経由して東側から入れば、PCやUSBのチェックなどいくらでも回避できるということです。“不穏な”w文書やデータなんて持ち込み放題でしょう。
だとしたら、こちらがコルガスで経験した2時間にわたる“スパイ大作戦”は壮絶に無意味だったと言うことになりますね。そもそも、USBに入れて持ち出した写真にしても、客観的に見ればそう大した内容でもないのですから。
→(5)に続く
やはり辺境に赴任するといろいろ溜まるんでしょうな~
ワロタ。
よっぽど質の良いの持ってたのかw
それとも餓えてればなんでも美味しく感じるのかw
お疲れ様でした。
いっそ細かく説明された方がよかったのではw
何れにしろご苦労様です
遼寧省の出身で、ホウキみたいに逆立った角刈りの子を見たことがあります。中国全域に分布してるんでしょうか。
中国人の男性って、7割以上が角刈り愛好者なんですよねぇ。あとは7・3分けかな。少し都会の若者になると、パーマや茶髪が増えてくる感じです。(流石に上海は別格)
しかし、今までの流れから緊迫した尋問シーンが始まるのを期待していたのに、DVDアニメに関心が行くとはラッキーでしたねー。
しかも、しつこくPCの再チェックする理由が自分のオカズ用にエロ動画コピーしろ!なんて、超斜め上の展開でワロタww
*'``・* 。
| `*。
,。∩ *
+ (´・ω・`) *。+゜ もうどうにでもなーれ~
`*。 ヽ、 つ *゜*
`・+。*・' ゜⊃ +゜
☆ ∪~ 。*゜
`・+。*・ ゜
って感じでしょうかね。取り敢えず、秘蔵の御宝動画わ、ここへ!!
ウルムチに行けばその手のDVDは手に入るんですけどね。
>牛殿
あまり大したものではなかったです。
>裸族殿
ちゃんとコピーが出来ていれば、職員の士気も0.5ポイントくらいはあがっていたかもしれませんw。