中国(新疆)とその隣国カザフスタンの間の越境地点は、鉄道まで含めると全部で十ヵ所くらいあるのですが、その中でも、アルマトゥ(カザフスタンの旧首都)とウルムチを結ぶ幹線上にあり、最も人と物資の往来が盛んなのが“コルガス(ロシア語名:ホルゴス)”の越境地点です。
こちらも、カザフスタンから新疆に出入りする場合は、大体ここを使ってますね。今回のウルムチ行きもそうでした。
↓中国-カザフスタン間の主要な越境地点“コルガス”の位置
↓ コルガスの中国側税関。こことカザフスタン側入管の間には数kmの緩衝地帯があって、徒歩での横断は禁止。必ずミニバスみたいな奴を使う決まりになっているのだが、わずか数分の乗車で1人40元(570円くらい)+荷物代と、現地の物価からすると異様に高い(40元あれば、普通の飯屋でラグマンが最低でも5杯は食える)。昨年までは中国人も外国人も一律20元で、それでも高いと思っていたほどなのに.....。何でも最近になって、中国側が外国人は1人につき “+20元の通行税”を課すと言う新ルールを導入したらしい。
ともかくも、“これは運転手がウソツキで、単にボラれてるだけなんじゃないか?”という疑念を抱いていたのは自分だけではなかったようでw、こちらが乗った車の中でも、運転手とカザフスタン人(=カザフ人やカザフ国籍のロシア人)乗客との間で、
-“40元?何それ?高すぎる!”
-“俺が信じられないのか?じゃあ、乗るな!”
と、しばしば激しい口論が起こっていた。(後で他の越境地点を通ってきたという旅行者の話によれば、そちらでも事情は同じだったらしい。つまり、値上げは公的なものだということ。)
↓その税関の周囲にいくつかある、中央アジア人向け卸売市場の一つ。カザフスタンの旅行会社なんかは、“中国買い物ツアー、~日間の旅”みたいなパック旅行をよく企画している。
前回のエントリーでも書いた通り、あまり長居する予定では無かったので、小さめのリュック+PCバッグのみという軽装でした。いつもであれば、こういう格好であれば中国側の税関で止められることなんて全然無いわけです。
それが、今回は少し勝手が違いました。 職員がロシア語で(場所柄、ここにはロシア語が話せる職員が配置されている)、
-“これに入ってるのはPCでしょう?”
と尋ねてくるではありませんか。
そうだと答えると、
- “では、貸してください。調べなければなりません。”
何のために?
-“そういう決まりですから。終わるまで、そこで待っていてください。”
PCをバッグから出すと、有無を言わさず別室に持っていってしまいました。
??????
これまで色んな国に行きましたが、税関でPCの中身を調べられるなんて、初めての経験ですよ。あのロシアですら、そこまではやらない。
というか、つい5ヶ月くらい前、新疆とクルグズスタンの国境を越えた際も、PCのチェックなんてなかったんですけどね。
それが、何故?
一つ思い当たったのは、何ヶ月か前にネットで読んだ新聞記事でした。
これ↓です。
-------------------------------------------------------------
『「反民族団結」の言論や情報収集を処罰 中国がウイグル自治区で』
引用記事/MSN産経ニュース(2010.1.4 20:05)
http://sankei.jp.msn.com/world/china/100104/chn1001042005009-n1.htm
【北京=野口東秀】中国新疆ウイグル自治区で昨年7月に起きた民族暴動から5日で半年を迎える。当局はこれを前に同自治区で、民族団結を妨げると判断した「言論」などを禁じ、違反すれば刑事処罰する条例を制定した。愛国教育にも力を注ぐことを決め、独立運動がくすぶる同自治区で暴動につながる芽の摘み取りを狙う。
「民族団結教育条例」と呼ばれる条例は、同自治区の人民代表大会で可決され、2月1日から実施される。条例は「いかなる個人、組織も民族団結に不利となる言論、情報収集、情報提供、(CDや文書などの)制作、発表、流布ができない」などとされ、民族分裂扇動の行為と見なされた場合、処罰は「相当厳しい内容」(国営メディア記者)となる。
条例制定の背景には、当局の発表で197人の死者を出した暴動の波紋が続き、民族間の対立感情は消えていないことがある。
自治区内では、すべての小中学校で毎日、国旗を掲揚し、国歌を斉唱するよう指示が出ている。当局はまた50曲の愛国歌を選定、児童・生徒に歌わせるよう指導するなど、同自治区で愛国教育を徹底させる方針だ。
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なるほど。
国外から“悪しき”w文書なり動画なりがPCに入れて持ち込まれ、それがばら撒かれるのを警戒していると言うことか?
だとしたら、ちょっとまずいことになったな、と思いました。
いや、別に、例の“新疆に核実験がもたらした悪影響について書かれた本のウイグル語版”がpdfファイルで入っていたとか、そう言うわけではありませんw。
問題は、前回(昨年の秋)に新疆で撮った写真のデータをカメラのメモリから携帯用HDに移す過程で、その画像データがPCにそっくり残っていたことです。
それほどヤバ目のものは入ってない、と自分では思うのですが、それを決めるのは彼らです。沢山撮っていた武警の兵士や車輌、それに街頭スローガンの写真が過剰に怪しまれ(まあ、怪しいけど)、下手したら入国を拒否される可能性も十分にありうる。
実に迂闊でした。こんなことになるなら(というか、普通の国では有り得ない事ですが)、消しておけばよかった。
- “どうして名所旧跡じゃなく、こんな写真ばかりなんだ?”
とか突っ込まれたら、どうしよう?
- “僕はとにかくポリスが大好きなんです!特に制服が!!ライフワークとして、世界中の警察の制服写真を集めています。”
みたいな、“マイク水野”的な言い訳で乗り切れるだろうか?
などと、思案をめぐらせていると、 別の職員がPCを持ってやってきました。何かブツブツ言っているんだけど、漢語なので分からない。
件の職員が訳して言うには、
- “バッテリーが切れたみたいなんだけど?コードは?”
あまり充電していなかったのが幸いしたようです。
ACアダプターはもちろん持っていたのですが、実は以前からPCの差込口が破損していて、接触が非常に悪くなっていました。ちょっと振動が加わると、すぐに切れてしまう。途切れないように繋いでおくには、相当のコツが要ります。
だから、彼には多分無理だろうと思いつつもACアダプターを手渡した所、案の定、10分後くらいには別室から出てきました。
再び件の職員を介して曰く、
- “繋がらないんだけど?”
やっぱり無理だったかw。
すかさず、こちらも件の職員を介して,
- “それ、コードに問題があるみたいなんですよ。ウルムチで新しいのに買い換えようと思っています(事実、ウルムチには大きな電気街があって、その手のものは中央アジア諸国よりも安くで買える。)。”
と適当なことを言うと、怪訝な顔をしながらも、一応は信じてくれたらしく....w。
PCはこちらに返され、そのまま放免と相成ったのでした。
翌日、ウルムチの宿に着いた後、写真を即効で消去したのは言うまでもありません。
↓コルガスの税関内で無料で配布されていたロシア語の月刊誌“キターイ(中国)”、2009年8月号。“キターイ(中国)”は“人民画報社”が出版している、お上の息がかかった旧ソ連圏向けプロパガンダ雑誌。定価は10元らしい。
↓中共言うところの“7.5事件”直後に出た号ということで、事件の特集記事が組まれていた。題して“ウルムチの騒乱”。雑誌の性格上、当然ながら“ラビヤ女史率いる独立派に唆されたウイグル人が暴れて大変でしたよ、まったく。うちらは何も悪くないんだけどね”みたいな、中国当局の公式発表そのままの内容。
↓記事内の小見出しは、以下の通り。
“ウルムチでの騒乱の背後にあるのは誰か?-ラビヤだ!”
“ラビヤとは何者か?”
“<東トルキスタン・イスラーム運動>によるテロ行為の数々”
↓ちなみに、管理人がこの雑誌で唯一ためになりそうだと思った記事は、北京料理“Цзинцзян жоусыツィンツャン・ジョウスィー”(読み方は自信無し。漢字でどう書くんだろう?)のレシピだった。
ただこれも、主要な調味料については“調味料<ヴェイツィン>”(味の素か?)や“シャオスィンの米酒”など、キリル文字表記の漢語がそのまま使われていたりして、普通の旧ソ連圏人にはハードルが高いかもしれない。
もちろん、こちらにも....。
→(2)に続く
こちらも、カザフスタンから新疆に出入りする場合は、大体ここを使ってますね。今回のウルムチ行きもそうでした。
↓中国-カザフスタン間の主要な越境地点“コルガス”の位置
↓ コルガスの中国側税関。こことカザフスタン側入管の間には数kmの緩衝地帯があって、徒歩での横断は禁止。必ずミニバスみたいな奴を使う決まりになっているのだが、わずか数分の乗車で1人40元(570円くらい)+荷物代と、現地の物価からすると異様に高い(40元あれば、普通の飯屋でラグマンが最低でも5杯は食える)。昨年までは中国人も外国人も一律20元で、それでも高いと思っていたほどなのに.....。何でも最近になって、中国側が外国人は1人につき “+20元の通行税”を課すと言う新ルールを導入したらしい。
ともかくも、“これは運転手がウソツキで、単にボラれてるだけなんじゃないか?”という疑念を抱いていたのは自分だけではなかったようでw、こちらが乗った車の中でも、運転手とカザフスタン人(=カザフ人やカザフ国籍のロシア人)乗客との間で、
-“40元?何それ?高すぎる!”
-“俺が信じられないのか?じゃあ、乗るな!”
と、しばしば激しい口論が起こっていた。(後で他の越境地点を通ってきたという旅行者の話によれば、そちらでも事情は同じだったらしい。つまり、値上げは公的なものだということ。)
↓その税関の周囲にいくつかある、中央アジア人向け卸売市場の一つ。カザフスタンの旅行会社なんかは、“中国買い物ツアー、~日間の旅”みたいなパック旅行をよく企画している。
前回のエントリーでも書いた通り、あまり長居する予定では無かったので、小さめのリュック+PCバッグのみという軽装でした。いつもであれば、こういう格好であれば中国側の税関で止められることなんて全然無いわけです。
それが、今回は少し勝手が違いました。 職員がロシア語で(場所柄、ここにはロシア語が話せる職員が配置されている)、
-“これに入ってるのはPCでしょう?”
と尋ねてくるではありませんか。
そうだと答えると、
- “では、貸してください。調べなければなりません。”
何のために?
-“そういう決まりですから。終わるまで、そこで待っていてください。”
PCをバッグから出すと、有無を言わさず別室に持っていってしまいました。
??????
これまで色んな国に行きましたが、税関でPCの中身を調べられるなんて、初めての経験ですよ。あのロシアですら、そこまではやらない。
というか、つい5ヶ月くらい前、新疆とクルグズスタンの国境を越えた際も、PCのチェックなんてなかったんですけどね。
それが、何故?
一つ思い当たったのは、何ヶ月か前にネットで読んだ新聞記事でした。
これ↓です。
-------------------------------------------------------------
『「反民族団結」の言論や情報収集を処罰 中国がウイグル自治区で』
引用記事/MSN産経ニュース(2010.1.4 20:05)
http://sankei.jp.msn.com/world/china/100104/chn1001042005009-n1.htm
【北京=野口東秀】中国新疆ウイグル自治区で昨年7月に起きた民族暴動から5日で半年を迎える。当局はこれを前に同自治区で、民族団結を妨げると判断した「言論」などを禁じ、違反すれば刑事処罰する条例を制定した。愛国教育にも力を注ぐことを決め、独立運動がくすぶる同自治区で暴動につながる芽の摘み取りを狙う。
「民族団結教育条例」と呼ばれる条例は、同自治区の人民代表大会で可決され、2月1日から実施される。条例は「いかなる個人、組織も民族団結に不利となる言論、情報収集、情報提供、(CDや文書などの)制作、発表、流布ができない」などとされ、民族分裂扇動の行為と見なされた場合、処罰は「相当厳しい内容」(国営メディア記者)となる。
条例制定の背景には、当局の発表で197人の死者を出した暴動の波紋が続き、民族間の対立感情は消えていないことがある。
自治区内では、すべての小中学校で毎日、国旗を掲揚し、国歌を斉唱するよう指示が出ている。当局はまた50曲の愛国歌を選定、児童・生徒に歌わせるよう指導するなど、同自治区で愛国教育を徹底させる方針だ。
------------------------------------------------------------
なるほど。
国外から“悪しき”w文書なり動画なりがPCに入れて持ち込まれ、それがばら撒かれるのを警戒していると言うことか?
だとしたら、ちょっとまずいことになったな、と思いました。
いや、別に、例の“新疆に核実験がもたらした悪影響について書かれた本のウイグル語版”がpdfファイルで入っていたとか、そう言うわけではありませんw。
問題は、前回(昨年の秋)に新疆で撮った写真のデータをカメラのメモリから携帯用HDに移す過程で、その画像データがPCにそっくり残っていたことです。
それほどヤバ目のものは入ってない、と自分では思うのですが、それを決めるのは彼らです。沢山撮っていた武警の兵士や車輌、それに街頭スローガンの写真が過剰に怪しまれ(まあ、怪しいけど)、下手したら入国を拒否される可能性も十分にありうる。
実に迂闊でした。こんなことになるなら(というか、普通の国では有り得ない事ですが)、消しておけばよかった。
- “どうして名所旧跡じゃなく、こんな写真ばかりなんだ?”
とか突っ込まれたら、どうしよう?
- “僕はとにかくポリスが大好きなんです!特に制服が!!ライフワークとして、世界中の警察の制服写真を集めています。”
みたいな、“マイク水野”的な言い訳で乗り切れるだろうか?
などと、思案をめぐらせていると、 別の職員がPCを持ってやってきました。何かブツブツ言っているんだけど、漢語なので分からない。
件の職員が訳して言うには、
- “バッテリーが切れたみたいなんだけど?コードは?”
あまり充電していなかったのが幸いしたようです。
ACアダプターはもちろん持っていたのですが、実は以前からPCの差込口が破損していて、接触が非常に悪くなっていました。ちょっと振動が加わると、すぐに切れてしまう。途切れないように繋いでおくには、相当のコツが要ります。
だから、彼には多分無理だろうと思いつつもACアダプターを手渡した所、案の定、10分後くらいには別室から出てきました。
再び件の職員を介して曰く、
- “繋がらないんだけど?”
やっぱり無理だったかw。
すかさず、こちらも件の職員を介して,
- “それ、コードに問題があるみたいなんですよ。ウルムチで新しいのに買い換えようと思っています(事実、ウルムチには大きな電気街があって、その手のものは中央アジア諸国よりも安くで買える。)。”
と適当なことを言うと、怪訝な顔をしながらも、一応は信じてくれたらしく....w。
PCはこちらに返され、そのまま放免と相成ったのでした。
翌日、ウルムチの宿に着いた後、写真を即効で消去したのは言うまでもありません。
↓コルガスの税関内で無料で配布されていたロシア語の月刊誌“キターイ(中国)”、2009年8月号。“キターイ(中国)”は“人民画報社”が出版している、お上の息がかかった旧ソ連圏向けプロパガンダ雑誌。定価は10元らしい。
↓中共言うところの“7.5事件”直後に出た号ということで、事件の特集記事が組まれていた。題して“ウルムチの騒乱”。雑誌の性格上、当然ながら“ラビヤ女史率いる独立派に唆されたウイグル人が暴れて大変でしたよ、まったく。うちらは何も悪くないんだけどね”みたいな、中国当局の公式発表そのままの内容。
↓記事内の小見出しは、以下の通り。
“ウルムチでの騒乱の背後にあるのは誰か?-ラビヤだ!”
“ラビヤとは何者か?”
“<東トルキスタン・イスラーム運動>によるテロ行為の数々”
↓ちなみに、管理人がこの雑誌で唯一ためになりそうだと思った記事は、北京料理“Цзинцзян жоусыツィンツャン・ジョウスィー”(読み方は自信無し。漢字でどう書くんだろう?)のレシピだった。
ただこれも、主要な調味料については“調味料<ヴェイツィン>”(味の素か?)や“シャオスィンの米酒”など、キリル文字表記の漢語がそのまま使われていたりして、普通の旧ソ連圏人にはハードルが高いかもしれない。
もちろん、こちらにも....。
→(2)に続く
あのまま何事もなくPCチェックされて、もし引っ掛かったらどうなってたんだろう…。
もし不審に思われてたらPC返還不可+拘束なんてこともあり得たんでしょうか?
次からはダミー画像とか入れとくべきですね
→ありがちにチンジャオロース?
PCチェックまでされるとは驚きです。撮った写真はローカルには残せないですね…。
最近のウイグル関連記事を拝見したところ、暴動のせいでそちらはどうもかなりぴりぴりした雰囲気のようですね。また、お住まいのキルギスでも革命が勃発とのこと。
中央アジアの状況はよくわからないのですが、政情がどうあれ、管理人さんが無事にキルギスに戻られることをお祈りしています。
さて、「ツィンツャン・ジョウスィー」ですが、keiさんの言われる通り、チンジャオロウスーですね。あと、「シャオスィンの米酒」は紹興酒でしょう。
それでは失礼します。
>→ありがちにチンジャオロース?
>リンチェ殿
>keiさんの言われる通り、チンジャオロウス
>ーですね。あと、「シャオスィンの米酒」は
>紹興酒でしょう。
“チンジャオロースー”ですか。なるほど。米酢も紹興酒も、革命前ならビシュケク市内の中華スーパーで手に入ったんですけどね。今は無理です。というのも、そのスーパーは革命のドサクサで全焼してしまったので….。
葡萄酢とウォトカで代用できないものでしょうか?