歐亞茶房(ユーラシアのチャイハナ) <ЕВРАЗИЙСКАЯ ЧАЙХАНА> 

「チャイハナ」=中央ユーラシアの町や村の情報交換の場でもある茶店。それらの地域を含む旧ソ連圏各地の掲示板を翻訳。

再び生存報告+新疆の情報封鎖が未だに続いている件(1)

2010-04-29 23:27:44 | 東トルキスタン関係

前回の更新から1ヶ月近くも間が空いてしまいました。管理人はまた死んだのではないか?と思っている人もいるかもしれませんが、一応まだ生きています。

で、長らく更新ができなかった理由なのですが、実はちょっと用事があって、今月の初めごろから新疆のウルムチの方に行っていました。あちらでは、何ヶ月か前の日記にも書いたような“ネット鎖国”状態が今なお続いており、ブログの更新どころか、ネットへのアクセスすら不可能だったのです。

というか、元々あちらでの滞在予定は一週間くらいであり、用が済んだらとっとと管理人が現在住んでいる国=クルグズスタン(キルギス共和国)に引き揚げるつもりだったんですけどね。

それが、ちょうどウルムチを出ようと思っていた矢先に、何とその国で5年ぶりの“革命”が勃発してしまったわけで...。

“5年ぶり”というと地震か何かの話をしているようですが、一応“革命”です。“IT革命”みたいなモノの喩えでもないし、“脳内革命”や“人間革命”のような怪しい革命でもない。ガチに政治的な“革命”ですよ。

これによって前体制は文字通り一夜にして雲散霧消。治安機関が麻痺した首都ビシュケクでは群集による略奪、政府関係の施設に対する襲撃が相次ぎ、国内は一時的に無政府状態に陥ってしまいました。

クルグズスタンは中国(新疆)と直に国境を接しているのですが、混乱が波及するのを恐れてか、中国政府は国境を完全に閉鎖。まあ、そちらのルートを通るには南部のカシュガルを経由せねばならず、ウルムチからだと第三国のカザフスタンを経由した方が便利なので、その辺は別に大した問題ではなかったのですが....

参考:クルグズスタン(キルギス共和国)の位置。なお、首都のビシュケクはこの地図には載っていないが、大体カザフスタンのアルマトゥの左下辺りだと考えればよい。

出展:“東トルキスタン情報センター”のサイトから引用

困ったことに、そのカザフスタンまでもが似たような理由でクルグズスタンとの国境を閉じてしまったのです。

ギャフン。

陸路 は全部ダメ。

となると、残るは空路です。ウルムチからビシュケク(クルグズスタンの首都)への直行便は、あちらの反対派(=現政権)勢力が比較的早い時期に空港を押さえたということもあって、この革命騒ぎの中でも一応、飛んでいるとの話でした。

でも、チケットが予想以上に高かったのと、あと、荷物の量が多くて莫大な超過料金を取られそうな雰囲気だったので、結局、これもパス。

そんなこんなで、それから一週間くらい後(4/16前後)にカザフスタン当局が第三国の人間に国境を開放するまで、ウルムチでしばらく足止めを食う羽目になったわけです。

まあ、こちらに戻ってきたら戻ってきたで、(一頃の無政府状態に比べればマ シだとはいえ)政情不安はまだまだ続いており、色々と面倒だったんですけどね。

それについてはまた後ほど書くことになるでしょう。

ところで、産経新聞のこの↓記事を読むと、新疆における情報規制は徐々に緩和されつつあるように思えるわけですが、

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 「約8カ月半ぶりにメール規制解除 監視は続く 新疆ウイグル自治区」   2010年3月22日
http://sankei.jp.msn.com/world/china/100322/chn1003222037004-n1.htm  
 
【北京=川越一】中国国営新華社通信などによると、昨年7月5日の大規模暴動以来、中国新疆ウイグル自治区で続いていた電子メールの送受信停止措置が、22日までに解除された。昨年末から徐々にウェブサイトの閲覧などが解禁されてきたが、暴動発生から約8カ月半を経て、ようやく市民の通信環境は正常化に近づいた。

中国政府は暴動発生後間もなく、国外の独立派勢力がインターネットや携帯電話を利用して、暴動を扇動し連絡を取っていたとして、自治区内でのインターネットや携帯電話、国際長距離電話などの通信サービスを停止した。

(中略)

昨年末に官製メディアのウェブサイトの閲覧を解禁。1月には利用者の多い2つのポータルサイトの閲覧も可能になった。その後、長距離電話やショートメールの規制を段階的に緩和。今回は電子メールの停止措置と、1日20件までとされていたショートメールの送受信制限も解除された。 

暴動後、漢族の流出に伴い下落した不動産価格も回復傾向にあるという。規制解除は中国政府の自信の表れともとれるが、閲覧可能なウェブサイト数はいまだ32に制限されている。今年2月には自治区の公共治安法が改正され、違法犯罪行為を防止するためにインターネットの監視が強化されたとの情報もあり、住民は今後も規制の輪の中での生活を強いられそうだ。

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これには多少カラクリがあります。

確かに規制が緩和されているのは事実なのでしょう。 でも、既に昨年の秋の段階で、地元民や現地在住の外国人の間では、大企業や政府機関、党関係の組織やそれと強いコネを持っている個人は、自由にネットにアクセスできているらしい、というのが専らの噂でした。

地元民の中には,

“党関係のツテがあるから、これこれの金額(=かなりの大金)を払えば、ネットやメールが使えるぞ!”

と話を持ちかけてきた怪しい奴もいましたね。それには乗らなかったので、今となっては真偽のほどはよく分かりませんが....。

今回の規制解除というのは“元々(党に近い)一部の人々のみが使えていた”という状況を公に追認するか、あるいは使える人間の範囲を“上の方”でほんの少し拡げただけの話ではないか、という気がするわけです。

その一方で、かねてよりネット屋に通っていた人たち、つまり大多数の人民にとっての通信事情には、3/22以降も何ら変化はありません。

あちらのネット屋をちょっと覘いてみれば分かりますが、どの店でも閑古鳥が鳴いていますよ。この10ヶ月の間に、潰れた店も多いらしい。たまに繁盛しているところもありますが、ネットを使っている客は皆無。目に付くのは(非オンラインの)ゲームをやっている子供ばかりという....。

どうしてこうなったか?

理由は簡単です。

上の記事の中で

>閲覧可能なウェブサイト数はいまだ32に制限されている。

とありますが、

ネット屋で見れるサイトの大半は、自治区政府の公的サイトか、その息のかかったものばかりなのですよ。

要するに、ネット屋からアクセスできるのは、言わば“インターネット”ではなく、質の悪い新疆限定の“イントラネット”だというわけです。

あまり有用な情報は得られない上に、yahooやgoogleはもちろんのこと、ほとんどのwebメールも使えない。ネットゲームなんかも当然無理。見れるのは役所のサイトだけ。

こんなネット屋に誰が行くでしょうか?

海外への長距離電話についても、事情はほぼ同じですね。

新疆では、基本的に今でも国際電話は不可です。

但し例外が2つあって、一つはウルムチの“中国電信(China telecom)”に直接出向いてパスポートなどの身分証明書を提示。バカ高い通話料を支払うと言う方法。これも昨年秋の段階で可能でしたが、外国人と地元民では大分事情が違うのではないかと思われます。
 
もう一つは、中国でも新疆以外の地で登録されている携帯電話を使うこと。

今回、クルグズスタンで革命が起きたことをTVのニュースで知り、ビシュケクの知人に電話をかけようとバタバタしていたら、北京から来ていた知人が携帯を貸してくれまし た。

昨年の秋にはいかなる携帯も海外通話なんてできなかったことを思いだし、どうせ無理だろうと タカをくくっていたのですが、意外にすんなりと通話ができて驚きましたね。これも“緩和”の賜物なのでしょう。 

いずれにしても、普通の新疆の地元民、特に地方の人々には無理ですね。ネットと同じです。一部の人間には使えるようになっても、大多数の住民はアクセス不可という。

そう言えば、グルジャ(伊寧市)からウルムチに行く夜行バスの中で会った中国籍のクルグズ人も、“昨年の7月以来、あっち(=クルグズスタン)に住む親戚とずっと連 絡が取れなくて困ってる”みたいなことを言っていたような...。
                
→(2)に続く



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8 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (マーシャ)
2010-04-30 02:27:41
大変でしたね・・・
キルギス政変のwikiがもうできてるとは、知りませんでした。
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Unknown (Unknown)
2010-04-30 05:56:01
とりあえず、管理人さんがご無事でよかったです
ご報告ありがとうございます
続き待ってますね
あ、でも無理はなさらないでくださいね
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Unknown (Unknown)
2010-04-30 15:25:23
管理人さんが無事でよかった。
何かあったのではないかと心配しました。
ホッとしました。
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Unknown (Unknown)
2010-05-01 05:55:09
新疆のネット事情興味深いですね。同等以上の混乱があった筈のキルギスとの対比がまた。
くれぐれもお気をつけてくださいませ。
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Unknown (Unknown)
2010-05-01 12:08:23
生存確認カキコ
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Unknown (犬彦うがや)
2010-05-03 20:48:57
本物っぽいのでカキコ
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Unknown (裸族のひと)
2010-05-06 18:48:38
>管理人はまた死んだのではないか?

”また”死んだのではってwww 再生存報告を見て、おっ!と思ったのですが読んで見たら情報封鎖どころか国境閉鎖ですか・・・。とにかく御無事でなによりです。フゥ…ε=( ̄。 ̄;A

管理人さんは前にも新疆へ行ってきたとの事ですが、新疆関係の情報は全然ないので今後のレポートに期待しておりますよん。。。
(0゜・∀・)ワクテカ

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Unknown (管理人)
2010-05-11 23:23:49
>マーシャ-dono
>2010-04-30 05:56:01-dono
>2010-04-30 15:25:23-dono
>2010-05-01 05:55:09-dono

Okurebase nagara, doumo arigatou gozai masu.Maa, kore made mo , nani mo nakute mo 2-3 shuukan ma ga aitari mo shitetan desu ga ne.....

>裸族-dono
>新疆関係の情報は全然ないので今後のレポー
>トに期待しておりますよん。。。

Ryoukai shimashita.Toriaezu SERKAN-neta yori ha jyuyou ga arisou nano de...
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