2019.08.28 WED 08:00
アマゾンの森林火災は“必然”だった──急速に進む恐るべき「緑の喪失」のメカニズム
南米のアマゾンで発生した森林火災が深刻な状況になっている。熱帯雨林であるアマゾンでは、本来なら火災は早い段階で沈静化するはずだった。それがなぜ、いまこうして燃え広がっているのか。背後には、人間による農地開発によって森林が乾燥し、植生が変化し、焼き畑農業が加速するという“必然”ともいえる恐るべきメカニズムが存在していた。
アマゾンで起きている大規模火災の根源にある問題は森林伐採だ。DADO GALDIERI/BLOOMBERG/GETTY IMAGES
■アマゾンに「燃えやすい枯れ葉」が増えた理由
しかし、アマゾンの一部を周囲から切り離した場合、話はそれほど単純ではない。島のように孤立した熱帯雨林では、動物たちは一定のエリアに閉じ込められてしまう。鳥も密集したアマゾンの環境に合わせて進化しており、捕食者に狙われる危険の高い何もない空を飛ぶことを避けようとする傾向がある。
一方で、熱帯雨林の周縁部では環境が大きく変化する。木々の生い茂るアマゾンの奥地は暗く湿度が高いが、農地などと隣接する“へり”の部分では湿度が大幅に低下し、気温も急上昇する。湿度が下がって菌類が減ると、落ち葉などの分解が進まなくなり、残されたものが乾燥して枯れ葉となって火災が燃え広がりやすい環境が生まれる。
周縁部では樹木などの植生も変わってくる。ブルーナは「十分な量の水がないため大きな木は枯れて倒れてしまい、熱帯雨林のなかに巨大な空間が生まれます」と説明する。そして、この空間に新しい植物が侵入してくるのだ。具体的には樹木の密生の度合いが低くなり、炭素の蓄積量も減少する。「こうなると生態系が変化し、植物の在来種が死に絶えてしまいます」
これは生態学では「エッジ効果」と呼ばれるが、特定の区画が孤立化していなくても、例えばアマゾンのどこかに道路を1本通すだけで、境界部分は外部からの影響を受けていく。道路の数が増えるにつれ変化は進行し、トラックのドライヴァーが窓から投げ捨てた1本のたばこが大火災にまで発展するような状態になってしまうのだ。
■恐ろしい「ジャングルのパラドックス」
一方で、現在起きている火災の主な要因は、言うまでもなく焼き畑だ。熱帯雨林の開拓では、まずは余分な木を伐採し、乾燥するまで放置してから焼却する。そして“裸”になった土地で、大豆などの商品作物を育てる。こうして切り開いた農地はなぜか土地が痩せているため、焼き畑を定期的に繰り返さなければならない。
ブルーナは次のように説明する。
「ジャングルのパラドックスとも呼ばれています。アマゾンの熱帯雨林を見れば、誰もが楽園の庭に違いないと思うでしょう。何を植えても簡単に育つに違いないと考えるはずです。ただ、熱帯雨林は数千年という長い時間をかけて植物を育む上での効率的なメカニズムを構築し、ここまで成長してきたのです」
木を燃やせば作物の肥料になる灰ができるが、土壌の栄養素などは燃焼の過程で失われ、結局は貧弱な土地しか残らない。つまり、その土地はすぐに農地としては使い物にならなくなり、新たな土地を求めて熱帯雨林を焼き払うという悪循環が生まれる。ブルーナは「本当にあっという間に、緑豊かな熱帯雨林が完全に非生産的な牧草地になってしまうのです」と付け加える。
■アマゾンが温室効果ガスの排出源になる日がやってくる
アマゾンで行われている熱帯雨林の破壊は、組織的でとどまるところを知らない。火災では燃焼の過程で二酸化炭素(CO2)が生じるだけでなく、森林が失われればそこに溜め込まれていたCO2が大気中に放出される。そしてアマゾンの場合、熱帯雨林が失われれば、火災が起きていないときでも地域全体で見て温室効果ガスの排出源になってしまう可能性がある。
熱帯の河川や湖には人間と同じようにCO2を出す生物がたくさんいて、熱帯雨林がなければCO2を閉じ込めておくことはできない。アマゾンの森林火災はこのような観点から、将来的に地球規模の大惨事につながる恐れがあるのだ。
◎上記事は[WIRED]からの転載・引用です
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* 「地球の肺」に最悪危機=アマゾン熱帯雨林で大火災-ブラジル 2019/8/25
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