本橋美弥(第四中学校2年生) - 横溝菜帆 は、図書館で本を見ている。
本の左上には、「次は 700-3-27-256」と文字が書かれていた。
彼女は、つい音読してしまう。
何かの気配を感じて、本から目を外して見渡すがこちらを見ている人もいなかった。彼女が本を閉じると、表紙には黄色いワンピースと黄色い風船が描かれている「ダークブルーな夜に」という本が手にされていた。
夕方、歩道で彼女がお参りをしているとき、黄色いワンピースの女性が道の向こうを通って行った。道に出ていくとトラックが近付いており、クラクションが鳴る中、黄色い風船の割れる音が響いていた。
高槻の研究室には、健司(警視庁捜査一課の刑事・高槻の幼なじみ) - 吉沢悠
がソファーに腰かけている。スクラップブックを眺めながら、「俺の忠告を無視して、テレビに出るからだ。」と、説教口調だ。
どうやら、先回のエンディング間近に尚哉(青和大学文学部の新入生)神宮寺 勇太と高槻がマグカップを購入しようとしていたとき、現れた女性のことを言っているらしい。
高槻:そうだね。健ちゃんの言う通りだったよ。
健司:そう思うなら、これからは俺の言うことにも耳を貸せ。だいたいお前は、自分から呪われようとしたり、危なっかし過ぎるんだ。いい加減、これ(スクラップブック)も捨てたらどうだ。こんなものにこだわってるから、いつまでたっても・・・。
高槻:それを捨てたとしても、僕の頭の中には、その記事の内容は全て頭に入ってる。
校内で、高槻と一緒に買いに行ったマグカップを見つめる尚哉。
どうやら、そのときのことを思い出しているらしい。
女性:あの頃、天狗様にはたくさん助けていただいたわよね。
尚哉:天狗?
高槻:霧島(高槻の知人) - 小林美江 さんですね。旦那さんとは別の若い男性とドライブされていたのは、よく覚えていますよ。
女性:(慌てて)あら、何をおっしゃっているのかしら。見間違いじゃございませんこと?
尚哉の顔が苦痛を浮かべていた。
高槻:急いでおりますので、失礼します。
呆然とする女性を置いて、高槻と尚哉は、店の中へ入っていった。
マグカップを眺めながら、それを思い出す尚哉。
「え、呪いって、マジ?」大声で呪いについて、彼女と話す 難波(尚哉の同級生) - 須賀健太 と 彼女。スマホの画面を見ているようだ。難波は尚哉をみつけ、丁度いいとばかりにスマホの画面を見せ、尚哉はその画面にある数字(あの本の数字)を音読してしまう。難波は「ゴメン、お前今呪われたかも。」と言い出す。
高槻の研究室
高槻:この数字を声に出して読むと呪われる・・・か。
難波:はい。確か「図書館のマリエさん」だったかも。
高槻:図書館のマリエさんか、初耳だな。瑠衣子君(高槻の研究室に所属する大学院生) - 岡田結実 は?
生方:私も初めて聞きました。
難波の彼女 谷村愛美(尚哉の同級生) - 吉田あかりが
昨日、妹 谷村柚香(第四中学校2年生・谷村愛美の妹) - 平澤宏々路 の友達が呪いを受けているかもしれない。と相談を受けて、で暗号を解かなければいけなくなって、
高槻:暗号?
生方:珍しいですよね、ミステリー仕立ての呪いなんて。
難波もこの暗号を解こうと思ったが、全然分からず、そこに尚哉を見かけたので相談しようと思ったところ、尚哉が暗号を音読してしまった(呪いにかかった。)という。
尚哉:え、俺のせい?
難波:や、あれは違うよ。本当にゴメン。
高槻:その子が呪われたって思ったってことは、なんか変なことが起こったってことだよね、何かわかる?
難波:実は愛美もそこまでは聞いてなくて、今、第四中まで行ってます。
第四中・・・だったらここに来てもらえる?と言って、高槻は店のカードを渡した。難波は受け取ると、すぐに連絡してきますと研究室を去っていく。生方は調べたいことがあると言って研究室に残り、高槻は難波と二人で待ち合わせ場所に行くという。尚哉は呪いをかけられているかもしれないのだから、留守番するようにと研究室に残されることになった。
待ち合わせ場所は、佐々倉古書店だった。
中には愛美と妹、そして呪われているかもしれない妹の友人が待っていた。
高槻:君がマリエさんに呪われたっていう。
美弥:はい。
高槻:何があったか聞かせてもらえる?
美弥:図書館の近くに、信号のない横断歩道があるんです。そこを渡ろうとしたとき、私ちらっと見たんです。黄色いワンピースを着た高校生くらいの女の人。そのすぐ後に、私もう少しで(トラックに)ひかれそうに。その話を柚香にしたら、「図書館のマリエさんの呪いだ」って。
柚香:図書館の本の中に何冊か、数字の暗号の書かれたものがあるんです。それを見つけても、声に出して読んじゃだめ。「マリエさん、お忘れください。」と三度唱えて図書館をでないと、マリエさんの呪いで三日後に死んじゃうんです。
難波:マリエさんっていうのは、そもそも何者なの?
柚香:図書館に住み着いている幽霊です。図書館が好きでよく通っていたけど、事故で死んじゃって。
難波:事故・・・。もしかして美弥ちゃんが見たっていう、ワンピースの女の人がぁ。
愛美:ちょっと。美弥ちゃんを怖がらせないで!
難波:あぁ、ごめんなさい。
柚香:三日以内に暗号を解けば助かるんです。お願いします。暗号を解くのに力を貸してください。
難波:美弥ちゃん。大丈夫だよ、この先生。俺が不幸の手紙の呪いにかかったかもってときも、瞬殺で助けてくれたから。今回もババッと解決してくれるよ、ですよね先生。
高槻:そうだね、暗号の解き方はもうなんとなく見当はついてるけど
柚香:本当ですか。
高槻:うん、そのためには一度図書館に行かなきゃだけど。
難波:よし、じゃあ図書館に行きましょう。
出かけようとした高槻たちに、美弥はクラスの子にもマリエさんのことを知っているか聞いてみたところ、そしたら「図書館にはもう行っちゃだめだ」と言われたことを告げた。
いや、ここからオープニングかいっ!(4291文字)
研究室でマトリョーシカをいじっている尚哉。生方はパソコンに向かって何かを調べているので尋ねると、謎の問いかけをうける。
生方:ねぇ。大きいツヅラと小さいツヅラ、あなたならどっちを選ぶ?知ってるでしょ、舌切り雀。ちっちゃい頃から思ってたんだけど、自分だったら絶対おっきい方選んじゃうなぁって思って。
尚哉:多分俺も大きい方です、で、痛い目にあう。
やっぱりそうだよね、とため息をついて生方はまたパソコンに向かうのだった。パソコンを閉じて行きたいところがあるからと、尚哉は一人で留守番を任される。まだ大仏君と呼ばれるので、買っておいたカップを研究室の棚に置くことにした。研究室にかかってきた電話を取る際に、高槻の机の脇にあるあのスクラップブックを落としてしまう。片付けようとして尚哉は、記事を読んでしまった。記事には「誘拐事件」「12歳」「京都の鞍馬で無事保護される」「高槻彰良くん」と写真付きで掲載されている。
そこへ難波が戻ってきた。呪いについていろいろな人にヒアリングをしてみたが聞く人によって話が違っていて、大変だったという。
マリエさんの呪いは、大きくわけて3つのパターンがある。
①呪われて、3日後に死んでしまう。ただし、暗号を解いたら助かる。(柚香が部活の先輩から聞いた話。)
②呪われた後図書館に行くと、マリエさんに異世界へ連れていかれてしまう。(美弥がクラスの友達から聞いた話。)ただし、これも3日以内に暗号を解けば、マリエさんに許されて助かる。
③3日以内に暗号を忘れないと、マリエさんが現れて殺されてしまう。
(柚香の部活の先輩の友達から聞いた話。)
どれが本当の話なんですか?と尚哉が尋ねると
高槻:三つ目だけ異質の話だよね。暗号を忘れないと殺されるという話になっている。実はこれに似た都市伝説で「むらさきかがみ」という都市伝説があるのを知っているかな。「むらさきかがみ」という言葉を、20歳まで覚えていると死んでしまうという都市伝説だ。理由として、二十歳で事故死をした女の子の鏡だという説もある。
難波:あれ、マリエさんも確か事故死ですよね。
高槻:そうなんだ、だからこのオチも「むらさきかがみ」を知っている人が考えたんじゃないかと、僕は思っている。
尚哉:考えた?
高槻:都市伝説は噂話が広がるなかで、より面白くより怖く話が作られていくことが多いんだ。きっとマリエさんの話は、まだ生まれてから日が浅いから話の体裁が整ってなくて、いろいろなオチが残っているのかもしれない。つまり、僕たちは新しい都市伝説が生まれる瞬間に立ち会っているんだよ。すばらしいよね。
尚哉:じゃぁ、呪いは存在しないってことですか?
高槻:そうとも言い切れない。実際に美弥ちゃんは、怖い思いもしているんだよ。話が生まれるには、その話の土台があるのが普通だ。もしかしたら、そこに本当の怪異が潜んでいるのかもしれない。
高槻は、難波に美弥が暗号を読んだ時間をきき、タイムリミットを確認する。尚哉にはまだ猶予が二日あるから、自分と図書館に来て力を貸して欲しいという。尚哉は承諾する。
難波と高槻と尚哉の三人は図書館に向かう、高槻は暗号について調べるから二人は図書館の人にマリエさんの噂について聞いてみて欲しいという。
高槻は、図書館のスタッフ 雪村桃子(図書館職員) - 松本若菜 に美術のコーナーの場所を尋ねる。マップを見るように促されたが、地図を見るのが苦手だと案内してもらう。ここは広くて、自分も子供の頃は迷っていたと雪村が話す。こちらの出身なのかと高槻が尋ねると、高校生の頃までよく通っていたという。市の職員で、一年前にここに異動してきたらしい。
美術コーナーに案内されると、高槻は雪村に「図書館のマリエさん」の話を知っているかと尋ねると、聞いたことがないというのだった。
高槻は、最初の暗号の記憶をたどりこの美術本コーナーにやってきた。
果たして、該当の本にはまた暗号が書かれており
「次は908-2-14-205」と記されていいた。やっぱり。高槻は確信を得たようだ。
難波たちの聞き込みは手ごたえがなく、だれもマリエさんについて知らないということだった。尚哉は高槻がどうだったか尋ねると「あの暗号を解くのは難しいかもしれない。」と答えるのだった。研究室に戻り、あの暗号の最初の3桁は図書館で使われる本の分類番号であることを説明する。次の番号は棚から何番目かを、次の番号は端から何冊目か、最後の3桁は暗号が書かれているページ数だと予測したという。尚哉は暗号は解けると思ったが、高槻は3冊目を見つけられなかったという。この暗号が書かれたのが何年も前だとしたら、紛失したり、すでに廃棄された可能性も考えられるからだ。そうなると見つけられない。しかし、明日には解決してあげなければタイムリミットがきてしまう。
あとは、生方からの連絡を待っていた。今、美弥が事故にあいかけた現場にいっているらしい。
ツヅラの話の件を高槻に相談しようとしたとき、生方から研究室に連絡が入る。事故のあった交差点では、やはり15年前の夏休みの最後の日、妊婦さんをかばった高校生が亡くなっているという。名前は「きたじままりえさん」その日は図書館に行く予定だったそうだ。まりえさんの同級生にきいたところ「雪村さん」という親友がいたらしいとのことだった。その人に聞けば、何かわかるかもしれないと生方は伝えるのだった。
雪村・・・。高槻には心当たりがある。スタッフおすすめの蔵書に「雪村桃子」と名前が書かれていたからだ。
美弥と柚香が図書館の前に座っている。尚哉が生方を見つけ、忙しいのでは?と聞くと、女の子が呪いの窮地にたっているのに、高槻ゼミの院生として美弥を救わなければと駆け付けたのだ。高槻はきっと美弥を助けてくれると励ます。
高槻は図書館のカウンターに雪村を訪ねる。雪村とはあの女性だったのだ。図書館の外で雪村は 私マリエさんなんて知りません。という。その声は歪んでいた。戻ろうとする雪村に、柚香は必死で教えて欲しいと頼み込む。もういいからという美弥の目の前で、柚香はあの暗号を読み上げる。美弥とは小学校のときからずっと一緒だった。これからもずっと一緒だからと言うのだった。
高槻:雪村さん。二人は小学生のときから親友同士なんです。あなたと「きたじままりえさん」のように。二人のためにも「きたじままりえさんのこと」話してもらえませんか。
回想
まりえ:一緒に本を読んでくれる友達がいるって、最高だね。
雪村:ごめんね。あれは呪いなんかじゃないの。だから安心して。
あれは、マリエのちょっとしたいたずらだったという。高校二年生のとき、告白してくる後輩の男子に残した暗号だというのだ。返事を保留にしていたマリエに、男子は毎日好きですと告白してきたそう。夏休みの直前、マリエは告白の返事をすると決めたらしい。彼に自分と同じくらい本のことを好きになって欲しい、彼には「図書館の本に暗号を書き込んだ、それを探して暗号の答えをみつけて。期限は夏休みいっぱい。もし暗号をといて正解をみつければ、告白の返事をしてあげる。」と伝えたそう。夏休みの最後の日に亡くなってしまったマリエさんは、返事をしないままだった。
男子生徒は暗号を解けたのかを、美弥が雪村に尋ねると、自分もすっかり忘れていて分からないという。それが昨年の異動で、利用者が暗号を読み上げていたときに雪村が通りかかり、マリエの筆跡で残したものだと気づいたそう。
利用者が消しておくか聞いたところ、雪村が「待って。この落書きはこの図書館が大好きだった女の子が亡くなる直前に書いたものなの。だから消さないでそっとしておいて。」これが、都市伝説の始まりだったらしい。
美弥たちは、友人を幽霊にしてしまったことを詫びる。
できれば、暗号をときたいと思い。高槻は、最初の一冊がなんだったかを雪村に尋ねた。
その本は、美弥が最初に見つけた本だったのだ。
雪村は、最初の一冊しかマリエにその話を聞いていない。
では、三冊目は分からないままで、きっかけの女の子が見つけた本は二冊目で
「次は908-2-14-205」だと、尚哉がいうと908は文学の双書・選書・全集の何かだと高槻が話す。それを聞いた雪村は、その本はメンテナンス中で書庫にある本かもしれないという。
書庫の中で、美弥が三冊目の暗号が書かれた本を見つける。次々と暗号をみつけて、本を揃えていく。違う本を戻しに行くとき、尚哉は「鞍馬の天狗伝説」という本を見つけるのだった。キリシマが「天狗様」といい、「12か月間行方不明」などとあのスクラップの記事が思い出されるのだった。
高槻は雪村に、図書館に勤めているくらいだから暗号の解き方は分かっていたはず、なのにどうして解かなかったかと尋ねる。
あれは、マリエが告白相手にだけ送った秘密のメッセージだから勝手に見てしまうと、マリエに怒られそうな気がして。そう答える雪村。今自分が座っている場所がマリエのお気に入りの席で、高槻が座っている椅子が自分の席だったと語る。夏休みの最後の日も、この席で待ち合わせをしていたがマリエは来なかった。翌日、彼女が事故死したのを聞いて、彼女のお気に入りのワンピースが血で真っ赤に染まっていた話をする。
そこへ美弥たちがやってくる。暗号が変になったというのだ。
9-1-1700+1F-NE(W)S wは〇がついている。
これだけ暗号のパターンが違うものがついていると、生方が高槻に報告する。
高槻:あぁ、これが最後の暗号だね。
尚哉:え、どうしてこれが最後だってわかるんですか。
高槻:これまでの暗号と数字の桁が違うよね。これは9月1日17時に1Fの西側(ウエスト)で会いましょう。って意味だと思う。
柚香:二学期最初の日。
美弥:暗号を解いて、会いに来てくれた男子に返事をするつもりだったんだ。
高槻:いや、もうマリエさんは返事をしているよ。
柚香と美弥:え?
生方は、そういうことかと本を順番にならべ、背文字を見せる。その一番上の一文字ずつをつなげると。
「ダイスキデス」
というメッセージが現れたのだ。
高槻が、それに対する彼の答えもさっき見つかったという。
マリエのお気に入りの席の向かいにある角の場所。
置時計をどけると、壁には
僕も、ずっと大好きです 2006.9.1
と書かれていたのだ。彼は15年前にここに来ていて、思いは繋がっていたことを喜ぶ美弥と柚香。そのとき雪村には、お気に入りの席に座る黄色いワンピース姿の図書館のマリエさん - 清田みくりが目に浮かぶのだった。
図書館の外、生方は美弥と柚香を送っていく。
雪村:今日はありがとうございました。呪いが消えて本当に良かったです。
声の歪みに顔を背ける尚哉。館内に戻っていく雪村を見ながら高槻は「雪村さんの声が歪んだんだね。」と尚哉に話しかける。雪村さんは呪いが消えて欲しくなかった。どうしてだろうという高槻。
佐々倉古書店で、高槻は美弥が見たという黄色のワンピースの女の子のことがずっと気になっていると話す。でも、図書館のマリエさんが黄色いワンピースを着ていたという情報は、誰も言っていない。どういうことですかと、尚哉は問いかける。そこへ健司が話に入ってくる。高槻が「幽霊の話」だというと健司はおびえだす。ひよっとして幽霊が怖いのかと尚哉が聞くと「お前の前では言わん。」と健司は背を向ける。
尚哉:大丈夫です。声が歪まなくても怖いって、ちゃんと伝わってます。
健司:びくっ。
高槻:えっ?
尚哉:佐々倉さんも意外に子供っぽいところ、あるんですね。
健司:うるさいよ。
高槻:え、なんでちょっとまって。(声の歪みのこと、健司に話したの?)
健司:安心しろ、こいつの耳のこと。こいつから話したんだ。
高槻:ほんと、尋問とかしたんじゃないよね。
健司:そんなことしないよ。
尚哉が自分から、健司に秘密を話すことができて喜ぶ高槻。尚哉の頭をうりうりと撫でる。健司は高槻に電話で頼まれていた件について知らせる。
図書館から雪村が退勤しようとする。そこへ高槻が現れる。高槻は雪村に「あなたはまだマリエさんの呪いが消えて欲しくなかったんですよね。」と語りかける。最初にマリエの呪いについて聞いた時、雪村はすぐに知らないと答えた。聞き返すこともせずに、この質問がくるのを分かっていたかのようだったと。雪村は来月結婚し、この図書館ももうすぐやめるつもりだという。しかし、自分が辞めたらマリエのことを覚えている人間がいなくなってしまう。そんなときあの暗号がみつかったので、敢えて呪いの噂が広がるのを放置していたのだ。マリエが望んでいる気がした、自分を忘れないでずっと覚えていてほしいと。
高槻は、マリエを覚えているのは雪村だけではないという。そもそも、図書館のマリエさんが黄色いワンピースを着ていたことは、誰も言っていない。なのに美弥は事故にあいかけたとき、黄色いワンピースの少女を見たと言っていた。それがなぜなのか、知り合いの刑事に確認してもらったところ、美弥はマリエが助けた妊婦さんのお腹の中にいた子供だったという。そして、自分を助けてくれた少女のことを忘れていなかった。毎月、あの事故にあった交差点で美弥は、お腹の中にいた自分を助けてくれた少女にお参りをしていたのだ。
現れる美弥、黄色いワンピースを着た女の子が、自分とお母さんを救ってくれた。そのことをずっと忘れないようにしようと、母親と話していて。だからあのとき、黄色いワンピースの人に気を取られて立ち止まって、そのおかげで事故にあわずにすんだ。マリエさんがまた、自分を助けてくれた。
雪村に美弥は、図書館のマリエさんのことをもっといろんな人に話します。怖い幽霊じゃなくて、図書館が大好きでみんなのことを守ってくれる優しくて、素敵な女の子だって。いいですか?と尋ねた。
もちろんよ。ありがとう、本当にありがとう。と、雪村は答えるのだった。
研究室に戻りながら、高槻と尚哉が話している。まさかマリエさんと美弥につながりがあり、またマリエさんが美弥を助けるとは。これって本当の怪異ですか?と尚哉が言い出す。高槻は、健司に調べてもらって分かったことが二つあり、ひとつは15年前マリエが助けた妊婦は、美弥の母親であったこと。もうひとつは、美弥が事故にあいそうになったとき防犯カメラには、本当に黄色いワンピースの女性が通るのが映っていた。ということだった。
しかし、不思議なのはあと一か月もすれば雪村は図書館をやめており、あの暗号が見つかっても誰も解くことができなかった。そういう意味ではその偶然を怪異と呼ぶことができるかもしれない。どんな都市伝説も、最初は個人的な想いから始まっているのかもしれない。その想いをいろんな人が繋がっていくことで都市伝説は広がっていく、いやぁ、勉強になったな。と。
研究室に入る高槻。
すると、生方と佐々倉たちが高槻にサプライズの誕生日会を企画していた。あのツヅラの話は、ケーキの大きさについて悩んでいたのだ。ごちそうは健司の母に頼んで、高槻が喜びそうなものを頼んだそうだ。
尚哉が、自分には内緒で企画していたことを生方に話すと、尚哉に話すと態度でバレるからと言われ、納得する。大仏君と尚哉を呼んでいた生方が、棚にある新しい尚哉のカップに気づく。それにしても、今日の美弥への励まし方で生方が本当に高槻を信頼しているのだと、感心したことを話す。生方に眼鏡をとってみろと言われて嬉しそうに拒む尚哉。こんな風に大勢ではしゃぐなんて、子供の時以来だと、高槻に話す。
そんなこと言ってるけど、次は尚哉の番だと高槻に言われる。生方には「ここの人間になったからには、サプライズの餌食になってもらう。」と言われる。
高槻に「君は僕の大切な友達だからね。」と言われて、お手洗いに行くと席を外す尚哉。高槻のスマホに連絡が入る。どうやら父親の秘書黒木(高槻の父の秘書) - 夙川アトムが、高槻に父親から渡したいものがあると階下にいるようだ。
階段で眼鏡をはずす尚哉。そこで偶然、秘書と高槻の会話を聞いてしまう。ありがとうと伝えておいて、でも本当はそんな用事で来たわけじゃないですよね。さっさと要件を言ってくれないか。という高槻。先日 霧島(高槻の知人) - 小林美江 という夫人にとった態度が高槻の父親の耳に入り、そのクレームを言いに来たのだ。秘書を見送った高槻の両眼がまた青く光る。声をかけた尚哉の瞳には、青く光った自身の目が映っているのだった。
第6話 終了。
今日、急いでおこしてみたけど。目が死んだ。死んじまったよw