露伴先生これからですよ、勝負はもう再開してます。
そう言って橋本陽馬 - 笠松将 がA(杜王町に住む人気漫画家:岸辺露伴) - 高橋一生 との勝負の続きをしようと走り始めたのだ。
マズい、ここでノーと言えば、おそらく僕はコイツにとって邪魔な存在に・・・。
露伴先生、どうしたんです。
Aは呆れた、いや呆れている。
好奇心は猫を殺す、そんなことわざがあったな。
はい?
今、少し反省している。
勿論、本当に少しだが。どうも僕は、超えてはいけないレッドラインをいつも超えてしまうらしい。
確かに「後悔先に立たず」ですね。
自分と勝負したことを、Aが悔やんでいるのかと橋本が自尊心に浸っていると
それを否定するかのように、Aは彼の言葉を修正する。
少し違うな、これからすることを後悔とは言わないだろう。
反省しているのは、この状況でもまだ君を全部読もうとしている僕の性格だ。
あ、そこ。そこに呆れてたんスか、先生。
Aはゆっくりと、自分のマシンに戻る。
後ろでは、高架を走る高速道がダイレクトに見え、人気のないジムで強い風の音だけが聞こえている。
マシンのスピードが徐々に上がり、Aのマシンの時速が22km/hに上がる頃
余裕たっぷりの橋本は、ハンデはこれくらいでいいですかね。と、ギアを上げにかかる。
22から、23、2人の時速が徐々に上がって行く。
そして、お互いのスピードが時速25km/hになったとき
2人がほぼ同時にリモコンへ手を伸ばすが・・・
リモコンを手にしたのは、A
ではなく橋本の方だった。
勝負に勝った喜びに、雄たけびにも似た叫びをあげる橋本。
自分のマシンを止めようと、リモコンのスイッチを押した。
・・・。
マシンの反応がない。
リモコンは反応しているのに自分のマシンは止まる様子がない。
スピードが徐々に落ちているのは、Aのマシンの方だ。
悪いが、念の為書かせてもらった。
Aはマシンスピードが完全に落ちるまで、走りを維持している。
そう、Aは橋本のページにこう書き込んだのだ。
リモコンは露伴のマシンに向けて押す
橋本は、マシンスピードに巻き込まれ
自分が割ったガラスの向こうへ落ちて行った。
マシンのスピードが完全に落ちた頃、Aはマシンの横に転がり降りた。
露伴先生。
橋本の声が聞こえたような気がして恐ろしく、とてもガラスの向こうを覗き込む気にはなれなかった。
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原稿料前借りの話のあと、自宅への坂を登る露伴と露伴の担当編集者:泉京香 - 飯豊まりえ
え、終わりですか、妖怪は?
聞いてなかったのか、どう考えてもそのランニング男がおかしいだろっ!
いや、おかしいですけど。なんか肝心なトコがフワフワしてて・・・その男Aって人がどうやってランニング勝負に勝ったのかとか。
・・・。
足が速かったんだろっ!
えぇ~っ!
それやっぱりただの都市伝説ですよぉ、本当だったら大騒ぎになってますよ。
事件にはなってた。ただそれぞれが結びついてないだけだ、証拠も無いしな。
それに、先生が買った山の妖怪伝説とは関係ないですよね。
その言葉に露伴の足が止まり、泉の方を振り返ってから言葉を探す。
場所というのは重要だ、よく幽霊は人に憑くというが、妖怪は場所に憑くと言うだろ。
それって、どういう・・・。そう言いかけて転びそうになった泉を、露伴の腕が支え起こした。
坂と言うのは、そういう場所のひとつだ。気を付けた方がいい。
家の前までたどり着いた露伴と泉。
兎に角事情はそういうことだ、前借りの件、編集長には話を通しておいてくれ。
そういって、いつものとおり泉を玄関前に残して扉を閉めた。
ちょっと露伴先生、せっかくここまで来たのにぃ~。
口をとがらせた泉は、ドアの向こう側に露伴の気配がないのを確かめると
身体の向きを変え、玄関前の石段を降りて行く。
名残惜しそうに、もう一度ドアの方を見る。
ここがなくなっちゃうなんてぇ、ヨォ~シッ!
なにかを心に決めたのか、泉は意気込んだ足並みで戻って行った。
1人机の前に立ち、上着を脱ぐ露伴。
橋本陽馬がその後、どうなったかは分からない。
ジムで最後に橋本の声が聞こえた気がする露伴。あれは何だったのか。だが何だろうと、橋本陽馬だった者が橋本陽馬でなくなったのは間違いない。
おそらく、あの場所で・・・
露伴がヘブンズドアを使って、橋本の本を読んだときに書かれていたあの場所。
お気に入りのランニングコースだ、左の頬の位置にはそう書かれていた。
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その頃、泉は社に戻り、自分のノートパソコンで男Aの話に該当する事件がないか調べていた。
ジムで心臓麻痺で亡くなった人の記事はあるけど・・・。
次に、目をとめた記事のタイトルがあった。
行方不明の女性、山林で発見 9/8(水)21:23配信
これそうじゃないかな、場所は・・・。六壁坂村?
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露伴が視線を右頬の位置に移すと、そこには
六壁坂。 そう書かれていた。
自宅兼スタジオで西日を浴び、そのことを思い出しながら笑みを浮かべる露伴。
間違いなく、破産した甲斐がある。
その笑みは更に大きくなるのだった。
エンディング
露伴先生、時系列は置いておいてなんとかやってみました。
敢えてアタクシから先生に向ける格言があるとすれば
反省すれども、学習せず。( ー`дー´)キリッ
と言ったところではないでしょうか。まぁ、学習しちゃったらお話にならないんですよね。