きれいなきれい〈田添公基・田添明美のブログ〉

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淀川さんぽの世界をさんぽ

2009年05月03日 22時56分12秒 | 日記・エッセイ・コラム

 ガロで1969年の9月号の「少年」が入選作品でデビューした漫画家に「淀川さんぽ」がいます。

 当時は,ガロの強烈な個性の作家達の中の一人と思っていました。その後,美術手帳の劇画特集の付録の「復活」を読んだ時は,絵柄が変化していて,その作品に,ゾクッとしました。

 そこに登場する「ビチビチうんのたれ吉君」のキャラクターは,それから十数年経っても,印象に強く残ってました。

 淀川さんぽの活躍時には,彼の作品集は出版されることはありませんでした。20年程前に,ガロも美術手帳も数冊を除いて,ほとんどを処分してしまいました。もう読み返すことはできない,と諦めていました。

 最近気まぐれに検索してみたら,なんと,淀川さんぽの作品集が出ていました!
ただ,残念なことにすでに絶版! 古本ではどうか? と探すと,「淀川さんぽベスト作品集」の在庫があり,すぐ注文しました。2100+300(送料)円。
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 その本が届くと,あった,あった。あの「復活」が。記憶とちがってあのキャラクター名は「ビチビチうんのたれ吉君」だった。ガシガシと描かれたペンのタッチが心地よく,記憶のままに素晴らしい。のらくろや冒険だん吉なども登場し,漫画のキャラクターたちは不死身である,のメッセージが込められています。と,そのように単純に受け取っていいかどうか分からないけど……。
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 この「淀川さんぽベスト作品集」の出版社は「原っぱ社」といって,彼自身が少部数の本を発行するために作った会社であることも,そのホームページで知りました。1999年発行,限定500部で,A5版,見返しに銀色のペンで著者のサインが入っていた。奥付に「ありがとう」の文字。なんだかとてもうれしい。

 ただ,この「淀川さんぽベスト作品集」の「復活」は,印刷物をスキャンして復元したようで,線や網点や文字が若干粗くなっていました。またこの本はインクの色も黒ですが,記憶では違う色だったような……。
「元のままの作品を見たいなー」と,「淀川さんぽ+復活+美術手帳」で検索すると,これも古本でありました。1500+180(送料)円。
B

 

 それが届くと,発行から長時間が経過して紙は少し茶色にやけてましたが,青いインクの鮮明な画面です。38年前に目にした通りの画面です。
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 ガロはある時期から興味をなくして購入するのを止めてしまいました。「淀川さんぽベスト作品集」には,その購入を止めた後で発表した「墓ない男の物語」という,初めて目にする作品が最後に納められていました。この本の後書きの解説で,淀川さんぽがマックを使って24年振りにガロに発表したものであることを知りました。ソフトは何でしょうか? ペインターかなぁー?

 この「墓ない男の物語」がいい。ソ連に抑留されて,その異国で亡くなった日本兵が主人公である。小さな石ころの下で,土に還っていく日本兵の亡霊の話しである。主人公は「日本に帰りたい」という思いを抱き続けているが,仲間たちは次第にその意欲も薄れていく……。この作品に関連する情報がネット上に少ないのは,読んだ人が少ないためでしょう。
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 これも,「もしかして,ガロに発表の画面は,画像の劣化もなく,より繊細かもしれない」と,今度はその作品のあるガロが欲しくなってきました。
調べると,「ガロ,1996年2月号,通巻372号」であることが分かり,検索。これも「キララ文庫」という古書店にありました。600+(送料)160円。
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 これも届いて,大きな画面で,淀川さんぽの手描きとマックの処理による,重厚で繊細な画面を隅々まで満喫できました。上の「墓ない男の物語」の画像は,このガロの画面をスキャンしたものです。でもデジタルデータがあるため,「淀川さんぽベスト作品集」はガロの画面と比較して劣化はなく,画面の大小の違いだけでした。31ページの「墓ない男の物語」を,発行部数の多いコミック誌が再現してくれて,もっと多くに人に読まれるといいなぁーと願います。

 それと,彼の2000年頃の作品を,音楽入りで,読むこともでることが分かりました。これも魅力的な世界です。また新しいブログもありましたよ。

 ということで,ここしばらくは,淀川さんぽの世界をさんぽしているような日々でした。また新作を読める機会を,気長に楽しみに待つことにします。