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無煙映画を探せ  

映画のタバコシーンをチェック。FCTC(タバコ規制枠組条約)の遵守を求め、映画界のよりよい発展を願うものです。

スリー・ビルボード

2018-02-06 | 2018外国語映画評


「スリー・ビルボード」 マーティン マクドナー監督 ☓ NTS ☆

 娘を殺された母親が警察を叱咤する看板を立てたことから起きる人間ドラマを描きました。
 被害者の母親ミルドレッド(フランシス マクドーマンド)は警察が犯人逮捕できないことに苛立ち家の近くに朽ちて放置されていた看板に大きく署長や警察を告発する広告を出します。小さな田舎町では署長は尊敬されていて、看板を設置したミルドレッドの方が町中の人を敵にしてしまい、広告会社まで嫌がらせを受けるようになります。特に白人の警官ディクソン(サム ロックウェル)は暴力的な行動まで取るのでした。
 娘のために闘う母親をフランシス マクドーマンドが笑顔を封印して熱演しています。看板の設置がきっかけとなって人びとのそれぞれの思惑が表に出てくる過程が緊張感のある展開でスリリングに楽しめます。予想外のラストは母親の笑顔が救いです。1回しか笑わないのでお見逃しなく。
 さまざまな差別主義と闘う姿勢が垣間見え作品を重厚にしています。(☆)
 タバコは、出てきます(☓)がそれほど広告的でもありませんでした。


バダッド・カフェ

2018-02-05 | 2018外国語映画評


「バダッド・カフェ」(ニューディレクターズカット版) 
              パーシー アドロン監督 米 △ ☆☆
 
 1987年に公開された「バグダッド・カフェ」を2008年に再編集したデジタル版です。
名作を再上映する「午前10時の映画祭」で上映されました。
 小さなモーテルを舞台に白人と黒人、アメリカ人とドイツ人、といった違いを超えて友情を育む二人の女性を中心に二人を巡る人々を描いた人生賛歌の名作を復活させました。
 ラスベガスから200キロほど離れた砂漠の中のモーテル「バグダッド カフェ」に、旅行中に夫と喧嘩したドイツ人のジャスミン(マリアンネ ゼーゲブレヒト)がやってきます。モーテルを経営しているブレンダ(CCH パウンダー)もその朝夫と喧嘩して追い出したばかりでイライラしていました。はじめは「あやしい女」と保安官まで呼んだブレンダでしたが、少しずつ理解し受け入れていくのでしたが・・・。
 奇妙な住人と大雑把なブレンダときちんとしたジャスミン、それぞれの個性をお互いに受け入れあっていく過程が丁寧に描かれています。折々にあの名曲「コーリング・ユー」が効果的に流れます。冒頭で流れた時は日本語訳がついていましたがラストでは省略されていました。ラストでもう一度あの歌詞の意味を確認しながら聴くことができたらより感動できたと思うのですが、ちょっと残念でした。
 タバコは、冒頭でドイツ人の夫が車内で葉巻を咥えます。ジャスミンがそれを取り上げて投げ捨てる場面がありました。マイナスイメージでした。その後もう一度その夫が喫煙する場面あり。しかし、モーテル内のカフェでも誰も喫煙せず、喫煙率の高かった時代を考えれば奇跡的でした。(△)


ゾウを撫でる

2018-02-04 | 2018日本語映画評


「ゾウを撫でる」 佐々部清監督 ☓☓☓
 
 映画製作に関係する人びとを群像劇で描きました。
 久々に映画を撮ることにした映画監督、それに関わるわがままな中年女優、出演を迷う俳優、子役あがりで行き詰まっている俳優、離婚した妻の孤独死に戸惑う老年俳優、大型のセットをロケ地に運ぶ運転手、その上主役の新人女優は雲隠れ・・・。果たして撮影はできるのでしょうか。
 映画業界「あるある」物語です。観客は完成した作品をいつも気軽に楽しんでいますが完成まではいろいろ大変なようです。
 「ゾウを撫でる」のタイトルは映画を「ゾウ」に例え本来の故事の意味とはちょっと違うような気もしますが、映画というゾウにはさまざまなパートがあるという意味として捉えているのでしょうか。
 タバコは、映画業界のタバコ事情が紹介されていて、ベテランでわがままな女優は禁煙の楽屋でメイクの人がそばにいても平気で喫煙(☓)。この女優は撮影が始まって「待ち」の禁煙のテント内で他の俳優もいる中「吸ってもいいかしら?」と断られるわけはないという態度で喫煙(☓)し、実際の現場でもきっとこういうわがままな行動がまかり通っているのだろうとうんざりさせます。
また、バーの場面でも喫煙(☓)。飲食店禁煙は日本では無理なのか、悲しいです。


2018-02-04 | 2018日本語映画評


「光」 河瀨直美監督 ◯

 映画の音声ガイドをする人びとを描きました。
 視覚障害者が映画を楽しむことができるよう、音声ガイドというシステムがあります。その作業ではモニターからさまざまな意見を聞いてよりわかりやすい表現ができるよう修正をしていきます。思い込みの解釈を語らない、セリフにかぶらない、など制約があるなか少しでもわかりやすいガイドにするために悩み工夫する姿を描きました。
 音声ガイドや聴覚障害者のための日本語字幕などはビデオで体験したことがあります。聞き取りにくいセリフが字幕で確認でき、見落としてしまうような場面も音声で紹介されわかりやすくなっていました。
 タバコは、いつも喫煙する永瀬正敏が主演でしたが今作では喫煙しませんでした。(◯)


羊の木

2018-02-03 | 2018日本語映画評


「羊の木」 吉田大八監督 ☓

 山上たつひこ原作、いがらしみきお作画のコミックが原作です。
 海辺の地方都市に、あるプロジェクトで元殺人犯の男女6人が移住してきます。彼らの過去を知らず市職員の月末(錦戸亮)は受け入れを担当しますが、なんとなく違和感を感じるのでした。一方、高校時代の同級生も都会からUターンしていました。移住した6人はそれぞれの落ち着き先でさまざまな対応をされますが、とりあえずはつつがなく過ごしていました。漁港で遺体が発見されたことから疑いの芽が芽生えるのでした。
 勧善懲悪のハッピイエンドではなくなんとなくもやもやとした想いを残したまま終わってしまいます。観客それぞれの人生観や道徳観を照らし合わせながら何度も考えさせられる作品です。
 公開初日の東京での舞台挨拶を全国の映画館に生中継するというイベントがあり、地方でも舞台挨拶を楽しめてそれはそれでいい企画でした。ただ、折角俳優7人と監督が揃っているのに映画とは直接関係ないような質問をして時間の無駄になっていました。もっと撮影の裏話とか工夫したところなどを聞かせてもらった方が映画の宣伝にもなったのではないかと思います。役者揃い踏みの舞台挨拶にしてはいまひとつ盛り上がりに欠けて残念でした。
 たとえば「何度も反芻して考えてほしいです。」と監督が言っていましたが、「反芻すると羊じゃなくて牛の木になっちゃいますね。」くらいのツッコミはいれてほしかったですね。
 タバコは、月末のバンドの仲間が一人だけ2回喫煙しました(☓)。「幼稚園の娘がいるなら家族のためにさっさと禁煙しなさい。」と言いたいですね。


辺野古ゲート前の人びと

2018-02-02 | 2018日本語映画評


「辺野古ゲート前の人びと」 藤本幸久、影山あさ子監督 ◯

 名護市辺野古の新基地建設反対の座り込みを続ける人びとを取材したドキュメンタリー映画です。
 基地建設に反対してキャンプ・シュワブゲート前で座り込みをしている人びとに対して、権力側は機動隊の屈強な力で強引に暴力的に排除をしています。それでも毎日のように手弁当で集まる普通の人びとをインタビューし、その思いを伝えます。また、リーダー的存在である沖縄平和運動センターの「泣き虫ヒロジ」こと不当逮捕され長期勾留された山城博治さんの経緯についても詳しく伝えました。
 非暴力で反対の意志を主張し続ける人びとに頭が下がります。建設に動員されている民間の建設会社のドライバーに沖縄の歴史や未来のことなどを話して説得する姿は胸を打ちます。
 機動隊員の暴力で怪我をしている人もいますが、これは国家の犯罪です。どんなことでも権力に歯向かうものは暴力で排除していくという現在の権力の方向性がここでは顕在化されています。
 沖縄の問題はそのまま日本全体の問題です。一人でも多くの人びとに観て考えて、そして行動を起こすきっかけとなってほしい作品です。
 タバコは、反対派の若者がタバコを持っている場面がちらりと映りましたが一瞬だったのでおまけの◯です。

否定と肯定

2018-02-01 | 2018外国語映画評


「否定と肯定」 ミック ジャクソン監督  英米 ☓☓

 1994年、ユダヤ人虐殺=ホロコーストを巡って「ホロコーストはなかった」とする書籍を真っ向から否定した歴史学者が著者から名誉毀損で訴えられた裁判の経過を描きました。
 イギリスの歴史小説家アーヴィング(ティモシー スポール)は彼が「ホロコーストはなかった」と主張する著作に対し、アメリカ人の歴史学者デボラ リップシュタット(レイチェル ワイズ)が彼の著作を否定した書籍を出版したことをイギリスの裁判所に「名誉毀損」で訴えました。イギリスの司法制度では被告の側に立証責任があり、デボラと出版社は弁護士のリチャード(トム ウィルキンソン)を中心にした弁護団を結成しアーヴィングと闘うのでした。
 デボラは証言者として矢面に立つことを禁じられ、アーヴィングの挑発にイライラしますが「決して相手と同じ土俵に乗らない。」というリチャードの方針は裁判が進むに連れデボラにも納得がいき協力的になるのでした。
 アメリカの裁判は映画にも度々登場しますが、趣が異なるイギリスの裁判そのものが一つの見所です。「差別主義者ではない。」と言いながら言葉の節節に差別的な発言がある嫌味な小説家をティモシー スポールが名演しています。日本でも同じように歴史を歪曲する人々がいますが彼らに対応する方法を探るテキストにもなる作品です。
 原題は「DENIAL」(否定)です。どうして「肯定」が加わったのか疑問です。
 タバコは、20年ほど昔とは言えリチャードがプライベートの時間で喫煙(☓)するだけでなく打ち合わせ中に喫煙(☓)していました。
 タバコを巡る裁判が幾つかありましたが、タバコの有害性はもはや誰も「否定」できませんね。